川湯〜広尾


 8月28日である。
 昨夜の野村川湯YHは2度にわたり温泉につかり実に快適だった。
 この日の食事は6時過ぎから可能であったので、早々に済ませ、7時5分発、川湯駅から一路標津に向かった。
西別駅
 さすがの天気も今日は悪い。昨日までの連日晴天というのが嘘のように悪い。
 10時52分、野付半島に到着したが、雨がかなり強いのと寒いのとで、ここで予定していた観光船に乗るのを中止した。そのまま、汽車に乗りっぱなしで、釧路まで行くこととした。
 13時30分 西別駅
 14時35分 厚床駅
 西別駅から厚床までは時間にして約1時間。
 途中20分ほど居眠り。
 吉本も眠っているようだ。昨夜は、結構、良く眠ったのに、と思うのだが、これだけ天気が悪いと、外を見る気もしない。結局、うとうととしてしまう。
厚床駅
 17時25分 釧路駅に到着する。
 時間的には相当遅い。
 本来ならこのあたりで泊まるところを見つけておかねばならないのだが、お互い「どうしようか?」といいつつも、行動しない。
 結局、帯広を通って広尾まで行き、そこでどうするかを考えることにした。
 時刻表で確認すると、広尾着はどんなに早く見積もっても22時25分となってしまう。
 『・・・今日は泊まりは無理か〜。』
 20時14分に帯広到着。
 そして、予定通り、22時25分、広尾駅に到着する。
 これから先は汽車はない。
 いや、線路がないのである。
 まさに終着駅ということである。
 駅構内の待合所で仮眠しようと準備をしたが、駅員がだめだという。
 雨はやんだが、かなり冷え込んでいる。吉本と二人で駅から線路に沿って歩いていくと、ちょうどよい倉庫がある。
 中には何も入っていない。戸は開きっぱなしである。取り敢えずは雨・風はしのげる。早速中に入る。外の冷え込みが厳しいので、持ってきている服を何枚も重ね着して、バッグを枕に、睡眠体制に入る。

 フッと気がつくと午前1時過ぎ。かなり寒い。吉本は完全に猫みたいに丸まって眠っている。
 一度目が醒めると寒さでもう眠れない。
 10分ほどはじっとしていたのだが、寒くてどうしようもない。どっか店でも開いていないのかと思い、仮の宿と決めた倉庫に荷物を置いたまま付近を歩いてみる。
 大きな公園のそばまで行くと公園の向こう方に明るい光が流れている家がある。何だろうと思い近づいて行くと「う〜ん!!まずい・・・・」、パトカーが来ていた。何か事件があったようだ。これは関わり合いにならないほうが良いと思い、来た方向に戻ろうとすると、警官が後を追ってきた。
 これは、かなりまずい。早足で歩くのだが相手は2人、すぐに追いつかれる。深夜の1時半過ぎに広尾警察所まで任意同行を求められる。
 やむを得ない。
 パトカーに乗せられすぐに警察署に連れて行かれてしまった。
 警察では、早速指紋を取られ、尋問が始まる。

広尾駅
「名前は」
「どこから来たのか」
「職業は」
「一人か」
等を答えたところで、「もう一人はどこにいる」と聞かれたので正直に話すと、しばらくして、吉本もパトカーで連れてこられた。吉本には拝むようなかっこうして謝り、そのまま、尋問が続けられた。
「学生?  どこの?」
「両親はどこに住んでいるの?」
「両親の職業は」
「うん? そうか、じゃー電話してもいいか?」
 今、午前3時である。これは親父に怒られると思ったのだが、意外に親父は怒らずに電話に出てきたみたいだった。
 電話が終わると、
「こんな時間、うろついていちゃだめだよ。近所で強盗があって、君たちだとは思わなかったけど、まあ、倉庫で眠ったり、うろうろしているといろいろ有るから、ちゃんとしなさい。2人とも法学部じゃないか!」と諭され、しばらくは説教をされてしまった。

 空が白々と明けてきて、昨日とはうって変わって天気が良い。
 快晴である。
 お巡りさんから、熱いお茶を入れてもらい、お菓子なども若干差し入れられ、2人で頭を下げて、広尾警察署を出たのが午前6時丁度。

 さあ、これから今日は襟裳岬である。
 警察署の前で2人で大きく背伸びをした後、歩いて広尾駅に…。


続く