8月2日:旭川〜黒岳〜幌加〜糠平


黒岳山頂を目指して

 前日呑んだビールがとても美味かったのか、朝の目覚めは非常に良い。午前5時ちょうどに起床。この間実に9時間も眠ったこととなる。最初の作業はパソコンの立ち上げ。先ずはインターネットへの接続。アクセス回数の確認、メールの確認、アンケートへの回答を行う。
 旭川のアクセスポイントに接続ができたものだからFTPも可能だろうと思い、「2000年北海道 夏」の地図を送ろうと試してみるが、これは全くできない。「タイムスタンプ取得中」が5分以上続いて、先に進まない。通常であれば全部で3分も係らない作業が5分たっても出だしのところで引っかかってしまっている。これでは今日はFTPをあきらめざる得ない。
 インターネットを終了して、今度は出発してから昨日夜までの写真の確認作業、これは昨夜取り込んだ分である。これは3分もかからなかった。撮った写真を調べて行くと、まだまだ無駄に写しているものが多い。スタンダードの映像で、244枚しか撮影できない。もっとピチッと撮影する必要があるようだ。
 荷物の整理をし、朝食は途中で何かボリュームのあるものを食べよう、ということで午前8時48分に出発。市内の道路から国道39号線に乗る。

男山酒造入り口

 距離として10kmも走らないところに、「男山」酒造がある。正式名称は多分、木綿屋男山本家男山株式会社であろう。ずいぶんと堅い名前なのだが、見学はフリーで、試飲コーナーもある。もちろん運転するものにとっては非常に悔しいのであるが。10年前に北海道に来たときに1度立ち寄ったことがある。そのときには資料館などなかったような気がする。先ずは資料館の見学である。資料館のある2階に上がると麹の香りがし、甘い酒の香りも漂ってくる。酒飲みにはたまらない香りである。

 こんな美味しそうな香りを吸いつつ、30分ほどで資料館を見終わり、1階にある販売コーナーへ。実はここが試飲できる場所なのである。当然、運転をするわけであるから、「試飲は少なめに、スピードは控えめに」とつぶやきつつ、何種類かの試飲をさせてもらった。ここではパンフレットにしたがった利き酒のコツを参照にしてみた。つまり
@目で見る:てり(さえ)の良否を調べる。
A鼻でかぐ:芳醇な清酒独特の香りのあるものが良く、熟成しすぎた老ね香(熟し香)や、容器等から移行してきた移り香は嫌われる。
B口で味わう:3〜5mlを口に含み、舌の上をころがすようにして舌じゅうに、まんべんなくいきわたらせて味わう。同時に口から鼻に抜ける香り(ふくみ香)を確かめ、吐き出してから口中に残る後味を調べる。味は5味(甘、辛、酸、苦、渋)の良く調和した、あと味のさっぱりとしたものが良い。
となっている。このコツを熟読しつつも、Bでいう、「吐き出してから・・・」はとてももったいなくてできず、それぞれのお酒を自らの腹の中にどんどん棄てつつ、合わせて喉越しの滑らかさ・香りも楽しんでしまった。
 結局、夏→冷酒という単純図式と蔵元のみの限定販売ということ、さらに辛口で呑み味スッキリという条件に合致した「特別純米 男山原酒」(原料:米、米麹、精米率:55%、アルコール度:18〜19度)ともう一本、これは妻が選んだものであるのだが、「特別純米酒 北のあじさい」(原料:米、米麹、精米率:55%、アルコール度:13度)というものである。「北のあじさい」は男山酒造の庭に咲いているアジサイを原料の一部としているとのことで、フルーティーな香りと味でかつアルコール度も低いので、女性向のお酒といったほうが良いのかもしれないが、飲んでみると、しっかりとしていて実に美味しい酒である。
 この後、同社の前庭にある「延命長寿の水」、これは大雪山の万年雪にその源を発する伏流水を地下よりくみ上げたもの、を20リットルのポリタンクに満たして、「男山」を後にした。

焼きラム肉ライス

 再び国道39号に乗り東を目指す。しばらく走ると大きなアミューズメントセンター的な場所に到着、遅い朝食と早い昼食をかねてここで食事をすることとした。
 何かボリュームのあるものをと考えていたのだが、展示ケースの中段にある「焼きラム肉ライス」とした。

 待つこと5分、軽くいためたキャベツや玉ねぎの上に焼いてたれをたっぷりつけたラム肉がのったものである。食べてみると焼き方も上手いのか、肉が柔らかく美味い。ラム肉の味がしっかりと残っていて、肉の美味さがたれと混じって更に増幅された感じである。
 また、軽くいためた野菜の中では、玉ねぎが甘くて抜群に美味い。ご飯も味噌汁も充分に美味しくて、加えて従業員の態度も良くこのような施設としては、久しぶりに満足できる食事となった。

 12時過ぎに今日の目的地のひとつ、層雲峡に到着。ここでみるのは、黒岳までの花々。ロープウェイの駐車場に車を止め、登山の準備。といっても、半ズボンから綿パンツに履き替え、足回りをしっかりと整え、更にウェストバッグには雨具とカメラを収め、出発である。

黒岳頂上

 ロープウェイで5合目まで一気に上がり、そこからはゆったりとリフトである。このリフトで7合目まで登るのである。ペアリフトであったが、ここは一人ずつ乗って15分間の孤独を楽しむこととした。ここのリフトが一番好きである。静かで蝉と鳥の声しか聞こえない。風が見える数少ない場所である。

 リフトを降りると、登山口で登山者登録、出発時間は1時と記入される。頂上までの距離は約1.5キロメートル。途中何回小休止といいつつ休みを取ったことか。ふだん使わない筋肉を使うものだから、少し登ると、足が重くなってくる。もちろん息は上がったままである。途中、デジカメで咲いている花を撮影しつつ、ついに14時40分に1984メートルの頂上を征服することができた。
 登っている途中は曇りがちで天気も悪く、かつ暑くてたまらなかったが、頂上では真っ青な青空が見えたり、突然霧が前面にかかり何にも見えなくなったりを繰り返していたが、やはり心地よい風が吹き抜け、時々見える遠くの山々のパノラマが抜群であった。もちろん、8月の上旬というのに残雪が遠く近くの沢にみえ、登ってきて良かったと感じたのである。

 辿りついた頂上で30分程度の「大休止」を取って、今度はまたもとの7合目までの下りである。のぼりに比べてこんなに楽なことはない。ただ、かなり急峻な道(というよりも岩の飛び出して獣道と言ったほうが似合う道)である。注意をしながらくだり30分ほどで7合目に到着。何で2時間近くかけて登ったのか分からないほど早く降りてきてしまった。


幌加温泉、そして糠平湖へ

 層雲峡温泉に戻り今度は今日の第2の目的地、幌加温泉に向けて出発した。層雲峡から国道39号線に戻り、8km程度走ったところで、今度は273号線へ右折。ここからは登りにかかるのだが、運転を妻に代わってもらって三国峠越え。しばらくは北海道高原地帯の樹海を楽しむ。シラカバの林の白い木肌が目に痛い。

幌加温泉露天風呂

 しばらく走って、二股山荘のところで運転を妻から替わり右に折れて幌加温泉に。
 直線の登り道をしばらく走ると右の空き地の奥に自炊の宿的な2階建ての木造住宅がみえる。その前に車を止めてみるが、宿の入り口には鍵がかかり、最近利用した形跡がない。右側にぐるりと回りこむと川沿いの奥に滝が見える。滝まで行ってみると、その前に小さな露天風呂がある。手を入れてみるとちょうど良い湯加減である。左側の枝からかかっている札に「温泉利用の方は上の本館まで連絡お願いします」となっている。
 「えっ! この上にも家があるの」と思いながら再び自動車で坂道を上ると、登りきったところに旅館が2軒ある。手前の旅館で庭をはいている人に、露天風呂に入りたい旨を伝えるとすぐにOKの返事。何か注意事項がないか確認したところ「最近誰も入っていないので、ボランティアで掃除でもしていってください」とのこと。早速、裸になって飛び込む。本当に、本当に良い湯だ。後ろの滝の水音がすがすがしく、マイナスイオン一杯のなかで、一人でゆっくりと露天に浸かる。枝の切れ目に見える青空が目に痛い。
 風呂に入って少しして今度はボランティアの掃除である。傍らにある棒だわしで岩風呂に付着している汚れを取るのである。しばらくして、また綺麗になった湯船に浸かり、最後に回りを綺麗にして、服を着て愛車のところへ戻る。

 ところがここで問題が持ちあがった。出発の準備を終え、エンジンをかけるとセルモーターは回るのだがエンジンがかからない。10回やっても同じである。セルモーターが元気良く回っているので、バッテリーが上がったわけではない。やむを得ず整備手帳を確認するとこの症状の場合は30分くらいエンジンを停止したままにすると再びかかるという。しかし、ここに車を止めてから露天風呂に入り30分以上エンジンは止まっているはずだ。最後の手段ということで、JAFに修理の依頼をしようと携帯電話をとってみると、完璧に「圏外」となっている。これでは連絡もできない。しばらくエンジンルームの蓋を開けたりしながら時間をつぶし、最後の一回ということで、エンジンをかけると、これがかかったのである。
 神のお助けと信じて、すぐに幌加温泉を離れ、一気に糠平湖まで走る。
 今日はここでキャンプの予定である。

 糠平湖国設野営場という名前である。入り口で利用料400円を払い、キャンプ場に。
 ここのキャンプ場は車の乗り入れが禁止されているので入り口の駐車場に車を止め、後は荷物を持って、自分の好きなサイトにテントを張ることができるのだが、そのため入り口のところでリヤカーを貸してくれるのである。駐車場からテントサイトのある場所までは、平地なのでリヤカーがあればかなり荷物の運び込み・撤収が楽である。まずは荷物を持たずに、サイトを調べる。比較的閑散としており、どこでもテントが張れる。水銀灯の光を避けられる場所で水場に近くトイレに遠い場所を選んで、リヤカーで荷物を運びテントの設営。今日はゆっくり回ってきたので、テントが完成するころにはあたりは暗くなっていた。

 ガスランタンをつけて、ご飯を炊く。小型の携帯用ストーブしか持ってきていないが、これが実に良く働く。去年の自転車旅行のときに必要に迫られて購入したものだが、火力が強く安定していて、風にも強い。2人分のご飯もわずかな時間で炊けて、芯ができない。感心しながらご飯のできあがりを待つ。ご飯が炊きあがったところで、蒸らしの入る。この間にミネストローネをつくる。ミネストローネといってもインスタントである。アツアツの湯の中に入れ良くかき混ぜればできあがりという代物である。
 結局、かなり暗くなったところで夕食となった。
 今夜は時間もなかったので、ご飯にミネストローネとソーセージ、それに良く冷えたビール。
 良く動いて、働いた後のビールは抜群である。缶ビール(500ミリリットル)を2本飲んで夕食終了。
 さすがに山登りを久しぶり(小学校六年生の遠足で藻岩山登山して以来、実に30ン年振り)にしたこともあって、食後の片づけを終えたら後は寝袋でぐっすりと眠ってしまった。
 夜中に涼しくて目が冷め夜空を見上げると、本当に降るように星空が広がっていた。