7月17日:アルル 朝食は午前8時。娘が用意したのはバゲット、クロワッサン、ミルク、トマト、コーヒー、チーズ、野菜サラダと多彩な顔ぶれである。ゆっくり朝食を食べ、ゆっくり出発である。 10時30分、エクスのいつもの高速バス発着場からバスに乗りアルルに出発した。 その記憶さえも怪しいのだか、加えて、アルルがフランスのプロヴァンス地方にあるとは思いも及ばなかった。 無知と言えば本当に無知なのだが、「アルルの女」を初めて聞いたのが中学校くらい、1960年台初頭である。 中学生になりたての自分が音楽としての「アルルの女」を曲として分かったとしても、アルルという場所を認識していなかったということは今考えればやむを得ない状況ではなかったかと自己弁護してしまう。 ところが、その認識していなかった「アルル」が意外にエクスからは近いのである。 高速道路をおよそ100Km/hで飛ばして約2時間という距離にある。 アルルは伝統文化に育まれた古来からの都市で、その歴史は凄まじいものではなかったと推測できるのである。 アルルにある高速バスのバス停から20分くらい歩いたところに今日泊まるホテルがある。 ホテルのチェックインタイムは午後1時。時間的にはピッタリである。 ホテルの名前は入り口の上に「HOTEL DU FORVM」と書いてある。 で、これでは読めないではないか、スペルの間違いではないかと思われるのだがこの「V」と「U」を何故か書き換えている。ちなみに、ホテルのホームページはここをクリックしてみてもらいたい。ここでは「FORUM」となっているが、建物の外の名前は「V」なのである。 後で調べたのだが、ホテルの名前は日本語で言えば「広場前ホテル」っていうようなものである。 ホテルに入ってインフォメーションで予約してある旨を述べるとパソコンで予約を確認し、すぐに案内の女性が来て部屋まで案内してくれた。 部屋は2階の一番奥の場所にあった。 1回部屋に案内されただけではとても覚えられないほど2階の通路が迷路的で超複雑な場所で、その迷路の終点に今晩泊まる部屋があった。 部屋に入って先ずその広さとエアコンのあることに驚いた。 フランスにきて始めて見たエアコンであった。 部屋の広さは20畳ほどだろうか、天井がとても高い。そのせいもあって部屋が実に広く感じられる。 部屋の奥にあるバス・トイレも広く12畳ほどである。 部屋にはベッドが二つ、テーブルと椅子(2脚)、それに籐製の洋服ダンス、更に大型の実にしっかりと作られてる木作りの箱(う〜ん、多分、貴重品入れだろう・・・)などがある。 こんなに家具が一杯あっても狭い感じはしない。 このホテルのランクは☆☆☆である。5星まであるフランスのホテルの中では中程度なのだろうが、対応も良く、また、部屋も広く清潔で、浴槽付きの風呂も嬉しい。しかも、価格はこのホテルの最低ランクの69ユーロ(約8200円)である。 なんといってもまず腹ごしらえだ。 カフェの名前は La Bistrot Arlesien(「アルルっ子の居酒屋」とでも言ったところか?)。 店内50席、広場50席の大型カフェである。 メニューを頼むとムチャクチャ沢山の料理が載っている。 天気もよく空気も乾いている。 最初はビールで決まりである。 この状況では当然の成り行きである。 頼んだのはLoburgというビール、どこで飲んでもフランスのビールは美味い。 1杯目はほぼ一気飲み。 2杯目のビールでやっと落ち着きを取り戻し、味わいつつ楽しみながら飲んだ。 そして食事。 昼食として食べたのはシーフードスパゲッティである。 小海老が入っているからシーフードといったところなのだが、それでも充分に美味い。 また、メニューに日本みたいに「海鮮・・・」と書いていないところがえらい、実に良い。 食事を終えて午後2時半。 これからアルルの街の散策である。 気温は優に30度を上回っている。 ただ、湿度が低いのでたまに吹いてくる風が心地良い。 陽に焼けた石畳の道を歩いて最初に着いたところが「闘牛場」L'anphitheatreである。 先ほどのPlace du Forumから大体200メートルの距離にある。 ゆっくり歩いて行っても10分程度で到着する場所にある。 この闘牛場は、古代の建造物をそのまま現代まで同じ目的で使い続けていると言うからすごい。 作られたのは紀元前90年ということで、その時代に20000人の観衆を収容できる建物を建てたのも驚きなのだが、20000人以上の人がこの近所に住んでいたということもすごい。 もちろん建物自体は2000年を経ているので完璧な姿ではなく一部崩れたりして修復などが行われているのだろうが、それはしょうがない。 ただ残念なことに今日は闘牛をやっていないということだ。 そのため中に入っての見学はしなかった。 闘牛場をぐるりと右に回っていくと、やはりこれもローマ時代に建てられた「古代円形劇場」Le theatre antiqueに着く。3ユーロを払って中に入ってみる。 ステージの後ろから入場し、ステージに立ってみる。 かなり広い。 とても不思議な気がする。 少なくとも2000年前にここに座っていた人間がいた訳である。 もちろん目の前に見える大聖堂などあるはずがなく、遠くまで緑の森が続いていたのであろう。 そしてこの劇場のうしろには闘牛場が建っているだけである。 それはいったいどんな景色だったのだろうかと娘としばらく話し込んでしまった。 この最上層の席に座っていると風が吹きぬけていってとても気持ち良い。 2000年前も、この季節にこの席に座って、劇の始まるのを楽しみにしていた家族がいたのだろう、と、ふとそんなことを考えて午後の柔らかな日差しと快い風を十分に楽しんでしまった。 で、この円形劇場なのだが、今座っている最上階から見るとステージの中央に円柱が2本立っているのがわかる。 かっては8本立っていたというのだが今はこの2本が残っているに過ぎないのだ。 柱を建てた跡を見ればたしかに「遺跡」というのにふさわしい感じがするが、その歴史の深さに感動させしてしまう。 今日、ここではコンサートが開かれるという。 舞台にはすでに大型のアンプなども多数設置してある。 闘牛場と同様に2000年前の建造物が現代もそのままに生きていることは実に素晴らしいことだと思った。 石の文化を脈々と守り受け継いできたヨーロッパの歴史の深さを感じる瞬間でもあった。 ところで、ここが作られたのも紀元後の1世紀というから、年で言えば紀元何十年という時代である。 やっぱり2000年が経っている訳だ。 しかし、闘牛場の20000人という収容人数にも驚いたが、ここの10000名の収容人数にも驚ろいてしまう。 屋外のこの劇場のこの席で、2000年前に演じられた劇を是非観てみたい気がした。 フランス語の違いはLa primatiale saint-trophimeとLe Croitre Saint-Trophimeということだけである。 寺院全体と修道院を見学して約1時間。 かなり広くまた荘厳であった。 夕方になってゴッフォが療養したという場所、かっては病院だったEspace van Goghということろに行った。 しかしながらさすがに歩きつかれ、暫くは中庭の風景を見ながらベンチに座って休養せざるえなかった。 この休養が元気の回復に役だった。 5時を過ぎて再びPlace du Forumまで戻ったのである。 ホテルは目の前なのだが、なにか記念になるものを買いたい考え、その近所をぶらぶらと歩き回ってみる。 ローヌ川のほうに歩いて行くと店全部がサントンという専門店がある。 暫く外で様子をうかがったが、エクスで見かけたものに比べるとチョット値段が高い。 外から観ただけでは言えないのだが小さいものから大きなものまで数千点は置いてある。 確かにここで選べばよいものが手に入る。 が、既にサントンは購入済みである。 しかも次に買うときもエクスのあの店と決めてある。 更に川の方に向かってて歩いて行くと、左手に「ソレイヤード」のアルル店(?)があったのだ。これは嬉しい。 「Bonjour!」 と声をかけて店に入る。 入り口のある最初の部屋はプロヴァンス柄の布地で作った人形や小物などの雑貨が展示され、それにワンピースやブラウスなどの出来上がった商品も並んでいる。 プロヴァンス地方では幸運のシンボルである蝉を図案化したブローチなどの展示があり、この展示を境にして次の部屋になる。 ここに入ると、この部屋は一面が生地専用の部屋となっている。 天上まで積み上げられた生地をゆっくり見て選ぶことができるのである。 しかし、大柄の生地が意外に少ない。 蝉を図案化して細かく染め分けたものはいくらでもあるのだが、ボタニカルアート的でかつプロヴァンス的な色使いをしているものを探すのが難しい。 それでも何種類か気に入ったものを決めて、今度は値段の確認である。 選んだものの中で一番高いものは1メートル34ユーロ(約4000円)である。 逆に一番安い物でも23ユーロ程度である。 まあ、いいや!ってことで、全部を買ってしまった。かなりのおまけがついたのは言うまでもない。 お土産もゲットして一安心である。 買った荷物を持ってそのままホテルに帰った。 ホテルに戻って先ずシャワー。 暫くフランス語のテレビを見てから、午後7時半ころに夕食を食べに外に出かけた。 昼間と同じカフェでは面白くない。 隣のカフェに入った。 これが失敗だった。 夕食に選んだのはトマトとモッツァレラノサラダ、それに白身魚のプロヴァンス風煮付け。 もちろんビールを頼みつつ、白ワインも1本お願いした。 トマトとモッツァレラはサラダとしての量も多くまた味も良かった。 白身魚は辞書でひいてわかったのだが日本語名が「ヘダイ」という魚である。 何がひどかったかというと、煮付けたソースは多分トマトソースをベースにして、エルブドプロヴァンスをタッブリ入れて香りを出し、最後に塩で味付けをしたものである。 ところが「白身魚のプロヴァンス風煮付け」が酷かった。 ただ、魚の鱗がまったく取っていないので、美味しいソースの中に煮込んでる最中に鱗が剥がれ、沢山混ざってしまっているのである。 もちろんそのまま一匹使って作っているので、食べるときに魚皮を全部取り除きまさに肉だけを食べることになる。 ところが、魚自体がかなり骨っぽい魚であることに加え、ソースをつけるとソースに入っている鱗が口に一緒に入ってしまうのである。 やむを得ず、身だけを魚から切り離し、ソースを付けずに食べるしかないということになる。 その結果は、ソースなしということから、ビールと白ワインのがぶ飲みということになってしまった。 多分、ここではこの料理で良いのかもしれないが、鱗をとって料理する日本の魚料理になれた自分にとっては食べ難く、もう少し手をかけてもらえれ満足できる一品になったのにと、ソースが美味いだけにとても残念に感じてしまった。 ちなみに店の名前は「Cafe La Nuit-Vincent Van Gogh」 。 Place du Forumにある3つのCafeのひとつであるのだが、ゴッホの銅像を囲むようにあり、立地条件としては最高である。 ただ、この料理では次回は絶対に敬遠したいし、万一入ったとしてもこの料理は食べない。 食事を終わるころに気が付くと、昼間に昼食で入ったLa Bistrot Arlesienに比べて、この店は人の入りが少ない。 アルルっ子は皆な味にうるさいのだ!と思った次第である。 ホテルに戻り今日1日で撮った写真をパソコンに取込む。そして再度、シャワー・・・浴槽に入り・・あとは快適なクーラーの効いた部屋で爆睡した。 |