7月15日:ラヴェンダー街道 今日はプロヴァンス地方でもっとも美しい「ラヴェンダー街道」を楽しむことになっている。 出発時間は午前9時ということで、ゆっくり朝食をとってからの出発である。 昨夜、オペラから戻ってきたのは深夜12時過ぎである。それでも今朝は午前6時半には起床して、今日のためにいろいろと準備をする。 問題がここでひとつ持ち上がった。 成田出発から昨日までに撮り貯めた写真が約150枚ある。これらは、128Mと64Mのコンパクトフラッシュメモリー(以下CF)2枚の中に収納されている。写真1枚が1.3M程度なのでCFの容量からしてほぼ満杯状態になっているはずだ。実際カメラにCFを挿入して、可能撮影枚数を確認すると両方併せて9枚程度という状況である。 今日のための準備作業としては、このCFに入っている画像すべてをパソコンに落とし、そのあとCF内の画像を削除して今日だけでも150枚程度を撮影できる容量を確保することである。 今回のメインであるラヴェンダー街道の撮影に備えての準備なのである。 VAIOに電源をいれて立ち上げ、さてデジカメと接続しようかと思ってUSBケーブルを探してみた。 持ってきたスーツケースの中にはUSBケーブルがない。あせって、小さい方のバッグを探したがここにもない。USBケーブルは絶対必要なのでを持ってきていないわけがないと考え再度スーツケースの中を調べてみるがやっぱりない。自宅のパソコンディスクの中に入れっぱなしで持って来るのを忘れてしまったようだ。 しかし、これでは、メモリー一杯のCFカードを持ったままで、これからの写真は一切撮れないことになる。 エクスでも電気店に行けばUSBケーブルなどすぐに見つかるはずである。娘に事情を話すと早朝にもかかわはらずあちこちに電話をかけてくれて、USBケーブルを売っているところ探してもらったが、エクスでは無理というのが皆の結論であった。 そしてもしカメラの規格に合うものがあるとすれば明日行く予定となっているニースだとの回答であった。 ところが問題は今日ラヴェンダー街道の写真をどうするかである。メモリーに殆ど余裕がないということなのである。 今回フランスに持ってきたメモリーは2枚である。再度調べてみると64Mの残容量はゼロ。128Mはと思ってみてみると、最高画質であと9枚程度撮影で、さっき確認したのと同じである。9枚程度の容量ではどうにもならない。デジカメの設定は画像サイズが2240×1680pixelsで画質は高精密となっている。そこでサイズを一番小さい640×480pixelsに落してみると撮影可能枚数は一挙に100枚まで増える。USBケーブルが手に入るまではこの対応でいこうと決める。それにしても今日はラヴェンダー街道を行くというのに実に残念だ。 (T_T) エクスの町で希望者があれば運行する小型の観光バスの出発に合わせて娘のアパートを午前8時半に出発した。 Office du Tourismeに着いて出発時間を確認すると、なんと出発は午前10時だという。1時間も早い。しかしアパートまで戻るわけにもいかないので、バス乗り場とはミラボー通りをはさんで反対側にある Le Festivalというカフェで時間潰しをすることにした。 「Bonjour! Coffee, s'il vous plait. 」 う〜む、完璧なフランス語と自分では思ったのだがウェイターには全く通じず、結局、娘にコーヒーを頼んでもらった。 コーヒーを飲んでいると40代ぐらいの外人が娘のところにきて 「Oh!Mariko,◯×△!、〜※△?□☆@●?」 娘がそのあと何かを答えている。中年男性なので学生でもないし・・・・??と考えていると、娘から日本の大学で習っていた先生で今はフランスに住んでいるという説明があった。 娘が紹介してくれたので、日本語で「はじめまして、磨理子の父です」というと、流暢な日本語で「はじめまして、私×△▲□です。よろしく」 あとで娘に聞いてわかったのだが、エクスで日本の伝統的芸術の「能」の公演があるので、彼はボランティアでそのポスターを張ってくれるようにあちこちの店にお願いをして歩いているとのことであった。 10時になる前に、Office du Tourismeに行くと既にバスは到着していて何人かが乗っていた。あせって乗り込んだのだが、出発は30分遅れとのことで、そのままバス内で待機することにした。 結局ラヴェンダー街道を走るバスは10時30分出発ということで30分遅れで出発した。 出発に先立って50台の女性運転手が自己紹介と挨拶をした後、「英語がわかる人間は手を挙げてくれ」という。5名が手を挙げた。乗客は10人。この、50才台の女性の運転手だがさすがにプロである。対面一車線の狭い道路を80km/hで飛ばす。若干怖い気もするのだが、彼女はおかまい無しである。 更に驚いたことは、彼女がハンドルを握りながら喋りっぱなしであるということである。 まずフランス語で説明したあとに英語での説明となる。しかもフランス語と英語の間に全く「間」を置かないのである。そのままフランス語の説明に続いて英語に入っていくものだから 、英語も苦手の自分にとってはかなり理解できない説明が多かった。 それでも、これから行くラベンダー街道には、3種類のラベンダーがあること。それはラヴェンダーとラヴァンダンとアスピックであるということ。そのあと、それぞれラヴェンダーの特徴や耕作場所つまり標高の差による栽培種の違い、利用方法などを事細かに説明してくれてはいたが何とかその場では理解できたものの、メモもとれず結局そのまま聞いて忘れしまったのである(聞き取り能力が劣っていることをいまさらながら再認識 (T_T) )。 高速道路から一般道にはいり、更に田舎道に入る。南仏プロヴァンスの田園風景が広がる。広い畑の所々に農家が見える。南仏は何処にいっても薄い赤系の壁とオレンジの瓦である。大地の色にマッチした配色となっている。 突然右手に紫のラヴェンダー畑が現れる。 「Oh!! ◯※×・△!、▲j〜※ Waaowooo!!」と騒いでいる。 運転手が何かを叫んだあとバスが止まりドアが開いた。ラヴェンダーの香がバスの中に流れ込む。娘に聞くとちょっと休憩して写真を撮りたい人は撮るようにということだった。 外に出て十分にラヴェンダーの香を楽しむ。頭のてっぺんから足の爪先までラヴェンダーの香を詰め込む。そして目にも焼き付ける。もちろん小さいサイズながら写真も撮りまくった。 日本なら一大観光地となるところだが、すれ違う車も10分に1台程度である。何箇所かの広大なラヴェンダー畑を見学したあとに大きな岩山の麓にある村Valensoleに到着する。ここで2時間の休憩となる。もちろん昼食をどうぞ、ということであろう。 バスから降りて、取り敢えずと言うことで村の中を散策したが雨が土砂振りとなってきたので雨宿りを兼ねて昼食とすることにした。 それにしても外人(皆から見れば自分が外人だったりして)は凄い。この土砂振りのなか傘もささずに歩いている。雨などに気をとられていないようだ。 食事はペンネとシチュウと野菜サラダを1枚の大皿に盛り合わせたものだったが味もよくて美味しく食べることができた。もちろん雨にあたっているので体を温める必要がある。そこでワインを頼んだ。ワインは Chateau de Rousset(1999年)でこの地域で作られたものだそうだ。味も香も良く料理にもあっていて美味い。雨が降り続いているのでゆっくりとワインを楽しみながら食事をとった。 食事を終えて外に出るとまだ雨が降り続いている。さっきよりも大粒で激しい。娘が最初に止まっていた場所よりも先に止まっているはずのバスを探しにいったが結局見つからずに戻ってきた。そこで皆が集まっているPharmacyの入り口で雨宿りとなった。 ここで10分ほと雨宿りをしていると村を1週してバスが戻ってきた。 全員が乗り込み再びバスツアーはスタート。 強い雨の打ち付けるなかを次の目的地に向かう。 バスの中でオックスフォードから来たという二人づれの英国人女性が、6年連続このプロヴァンスに同じ時期に来たけれども雨にぶつかったのは始めてだと教えてくれた。彼女らは「雨のプロヴァンスに会えてラッキー!」と言っていた。 そこで初めて気が付いたのだが、乗客・乗員11名中男性は自分一人であった。うむ、心の中で思わずオックスフォード娘のように『ラッキー』と叫んだのだが、良く考えると何がラッキーなのか・・・? 幹線道路をしばらく走ったあと、バスは左手に大きく折れて1軒の家の前で止まった。娘が看板を見て「蜂蜜屋だ」と教えてくれた。中に入ると意外に広い。ショップがあり本などの展示室がありその奥に蜂蜜の採取に関する道具の展示室があった。嬉しいことに蜂蜜の試食が付いているのである。 アカシア、リンデン、ラヴェンダー、セージ等々10数種類の蜂蜜を食べ(舐め)比べることができるのである。 更に'これを全部食べると、ここのオーナーが蜂蜜占いをしてくれるという。 この蜂蜜屋ではリンデンつまり菩提樹の蜂蜜をお土産として購入した。 エクスに帰りついたのは午後7時近く。いつもはカッー!と暑い太陽が天頂近くにあるのだが雨が続いているのでかなり暗い雰囲気である。肌寒い感じがする。バスの停車場から真っ直ぐレストランが多く立ち並ぶ地区まで歩き、そのうちの1軒に入った。 最初にワインを頼んだところ、ずぶ濡れの我々を見てマスターが乾いた服を貸すから濡れた服をよこせという。 話を聞くとレストランの中で服を乾かす装置があるのでそれを使って乾かしてやるという。 実にありがたく、乾いた服を借りて先ずはワインで乾杯。 メニューをもらい、前菜はトマトとモッツァレラのサラダ、メインは鴨肉のオーブン焼きである。 トマトとモッツァレラが出てきたときには感動した。 盛り付けがまったく想像を超えるものであったからだ。 オリーブオイルはバジルを漬け込んだものだ。 ただ、季節的に新鮮バジルが出回っているこの時期に、バジルはほんの少しだけしか使っていなかった。 これがとても残念で、かつ、不満であった。 味は塩味がチョット強い感じがした。 メインの鴨肉のオーブン焼きは我々が座った場所の横に大きな石のオーブン(暖炉といったほうが良いのかもしれない。)があって、目も前で焼いてくれたものだ。 それがそのまま熱々で出てきた。 これが不味かろうはずかない。 このメインディッシュが出る前にすっきり乾いてアイロンがかけられた服が戻ってきた。 暖かいのですぐに着替えたのだが、そのあとは気持ち良く食事をすることができた。 こんなサービスをしてもらうと、本当にありがたく、次回もこの店に来ようと思ってしまうのである。 |