3月22日(金)


さあー今日からホエールウォッチングだあ、と思ってハートランドに行くと、まだクジラは見つかっていないので午前中は船を出しません、というので急遽潜ることにしました。せっかく乾かしてパッキングした器材を、あわてて引っぱり出します。ウェットスーツは宿(マリンハウスざまみ)で着て、器材を持って前の道で拾ってもらいます。

潜るポイントは「浜中」。安慶名敷島のそばです。エントリーすると、海底に鉄棒がいくつも立っていて、そこにサンゴがくっついていました。そういえばここは前に来たことがあるなあ。

水底はガレ場で、ゆっくりと深くなっていきます。最初に20mのところにある根をめざします。途中でセジロノドグロベラやオグロベラ、キツネアマダイなんかを横目に見ながら深いほうへと移動していきます。

根につくと、まわりにノコギリダイの群れがいました。根の向こうにはアカヒメジの群れがいます。根の中をのぞくと、キンメモドキの群れがこじんまりとしています。白い砂地の上に、アカヒメジの色はよく似合います。

浅いほうへと移動しながら、途中にある根を見ていきます。アザハタが仕切っている根には、ハダカハオコゼがいました。まわりの環境と見事に一体化しています。

ハゲブダイのオスが突然やってきて、メスのまわりを回り始めました。するとメスも一緒に泳ぎだし、水面へ向けて上昇していきます。2匹そろって10mくらい上昇し、その頂点でぱっと分かれました。産卵行動だと思いますが、卵を生んだかどうかはわかりませんでした。
そのあとオスは別のオスを追い払って、離れていきました。

ボートの近くに戻ってきて、浅いところにある根を観察します。サンゴの枝の間をのぞき込むと、黄緑色に赤い点々のあるアカテンコバンハゼがいました。そばのサンゴの下では、ヘラヤガラが休息中でした。

午後は、山からクジラがいたとの情報が入ったので、出航することになりました。ところが、外海に出るとすごい波。しっかりつかまっていないと振り落とされそうな揺れです。クジラは30分間隔ぐらいで浮上しているということなので、だいたいの方角の見当をつけてゆっくりと進んでいきます。

やがて、「いたっ」という声、ブローが上がったようです。しかし、船の反対舷だったので、「しっぽ」という声がして、見る前にまた潜ってしまいました。
しかたなくまたもや待ち時間。波は相変わらず船を揺らしています。船首にいると、ときどき舳先が波につっこんで、しぶきをかぶります。それでもめげずに待つこと20分。「あと10分だけ待ってそれから帰ります」と言われ、手すりにしがみつきながら待っていたのですが、波はますます大きくなり、これは危ないと帰ることになってしまいました。結局クジラは見られずに終わりました。

帰ってくると、30分後にまたダイビングボートが出るというので、行くことにしました。ポイントは「嘉比前」港から目と鼻の先です。
まずはここの売り物のヤシャハゼを見に行きます。潜降して、サンゴのがれき混じりの砂地を下りていくと、ガイドの小崎さんが止まったのでその横で水底に着地します。ガイドの合図に合わせて、そっとそっと近づいていきます。呼吸も押さえめにして静かに前へ出ます。1.5mくらいのところで止まり、そのまま観察をします。ヤシャハゼはこちらに斜め後ろを向けていて、背びれのとげをぴんと立たせています。あまり警戒心を持っていないようで、同居しているテッポウエビがせっせと穴掘りをしては砂や石ころを穴の外に押し上げています。かなり大きい石でも平気で持ち上げています。
ヤシャハゼのほうは、向きを変えたり、少しだけ引っ込んではまた出てきたりしています。そのまま3分ぐらい見ていました。

いつまでも見ていては他のものが見られないので、そろそろ移動します。ヤシャハゼを引っ込めないように大きく回り込んで、なおも斜面を降りていきます。着いたところは「海底砂漠」というポイントの入り口で、青い水と白い砂がずっと向こうまで続いています。吸い込まれそうなところですが本当に砂ばかりで他に目に入るものはありません。本当ならここで深く人生の意味なんかについて瞑想にふけるとかしなければならないのかもしれませんが、なにせ凡人のことで何をしたらいいかわかりません。やっぱり生き物のいる場所のほうが面白いですね。

浅いほうへ戻ってきて、根から根へとめぐっていきます。もう時間も遅いので、魚たちの動きが明らかに違います。テーブルサンゴの下に大きなナンヨウブダイがじっとしているのは、たぶん今夜の寝場所にしようとしているのでしょう(取り囲んだら逃げてしまいました。迷惑だったかも)。
クマササハナムロも、水底近くにきてあまり動かなくなっていました。
ミツボシクロスズメダイが2匹、ゆっくりとお互いのまわりを回っています。よく見ると1匹は体を震わせていました。たぶん求愛行動か、産卵をうながす行動でしょう。メスのほうはまだその気でないようで、そのままくるくると回り続けていました。いつもよりひれの色が濃くなって、反対に体の色が薄くなっているように見えるのは、婚姻色のようなものでしょうか。

クジラが見られなかったのは残念でしたが、ダイビングのほうはそこそこ充実したものでした。


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