8月16日
札幌〜千歳〜ウトナイ〜苫小牧
−−− 札幌出発〜千歳まで −−−
午前4時55分起床。良く眠ったせいか目覚めが良い。シャワーを浴びる。シャワーを浴びたあとカーテンを開けると朝日が射し込む。今日も天気が良いようだ。
今日の日程を考える。フェリーの乗船予定は19日である。今日は16日とすればあと2泊したところで苫小牧まで行けば良いのだ。しかし、ここから小樽を回ってはきつい。といって、札幌にいつまでもいることもない。定山渓から支笏湖に抜けてとも考えたが、これでは1泊にしかならない。
午前7時までの結論は「もしも、今日、9時にブルーハイウェイラインに電話して、明日17日の午前9時30分の座席に余裕があったら、今日は苫小牧まで行こう。もし、満席の場合は、支笏湖、登別と2泊して苫小牧に行くべし。」と決めた。
ここまで具体的に決まれば、後は、ゆっくり時間待ちである。8時に1階にあるレストラン「スピカ」での朝食。和洋折衷のバイキング形式の料理であった。美味しかったのと、時間があるので、チョット食べ過ぎてしまった。
朝食後フロントで時刻表を借りてブルーハイウェイライン札幌支店の電話番号を控えて部屋に戻る。9時ちょうどに電話。しかし、お話中である。3回目にやっとかかって担当者が出てきた。
「明日17日の9時30分の大洗行き、自転車一台と人間一人、空いていますか?」
「明日の朝の便ですね、ちょっと御待ちください」
といったまま1分以上かかった。
「自転車ですね?」
「はい」
「そのままの形ですね?」
「ええ!」
「空いていますので、乗船できます、乗船予約番号は○○○番ですので・・」
早速、北海道撤収の準備に入る。サイドバックはそのまま持っていくとしても、テントなど入らない。このホテルの1階に毎朝臨時に設置される宅急便のコーナーにいき、テント、寝袋、マットを自宅に送ることとした。雨具も一緒に送るべきか考えたが、万が一、大洗についてから雨に遭ってはかなわない。これはもっていくことにした。
ホテルは10時ジャストに出発。先ずは、フェリーのクーポン券の書き換えである。駅前のJTBに行くと10時半の開店とある。近所をぐるっと回って、ちょうど10時半。
店内に入って、ガックリ。
「当店ではフェリーの予約等は行っておりません」の札が下がっている。カウンターの所にいた係りの人に、どこに行けば良いのかと聞いたところ、道を挟んで斜め向かいにある同じJTBでやっているという。
行ってみるとこちらは午前9時30分からの営業。思わず「何故」と独り言を言ってしまった。
ここで事情を話しクーポン券の日付を直してもらい、直したところにJTB札幌支店の訂正印を押してもらって出発。
札幌発 10時45分、ということになった。
走り出したところで、豊平川を渡るのだが、ここで、藻岩山を背景に実に札幌の町が美しく見えたものだから、橋の上に停止して、写真を数枚激写。
更に走り、清田区の十字路でそばにある回転すし屋で昼食。しっかりと腹ごしらえをする。店の親爺さんが
「どこまで行くの?」
と聞くもんだから
「これから自転車で苫小牧まで」
と答えると
「そりゃ大変だ!!」
という。
再び走り始めてはじめて、親爺さんの言葉がわかった。地図で見ると、何でもないように国道が続いているのだが、とんでもない。千歳まではズッーと登り道なのである。親爺さんはこのことをいったらしい。それでも頑張って、平均15Km/hで走る。体力が消耗していく割には距離が稼げない。だんだん足が痛くなってきたところで、やっと千歳に到着。ここからは楽である。
−−− 千歳〜苫小牧まで −−−
ところが、今度は下り坂で体は楽なのだが、天気が急変した。もう、太陽は見えない。風が冷たい。これが北海道の本当の姿だと思うのだが、かなり寒い。
苫小牧には、今日中というより、明日の朝までにつけば良いのだが、天気が悪くなったりはまずい。また、夜間走行も、実は怖いのである。ライトが付いているので、路面の状況などは何とかわかるのだが、先が見通せないのである。したがってスピードも出せない。看板が見えない、道路標識が見えない。道が分からないのである。どんなことをしても夜間走行は避けたいのである。
天気が悪いせいで、時間的には午後4時過ぎなのだが夕暮れという雰囲気である。しかし、ウトナイ湖と聞いては行かざるを得ない。しかもここは、国道からほんのチョットは行ったところにある湖である。
苫小牧市の看板の説明書きには
ウトナイ湖の自然環境
ウトナイ湖は道内3番目、国内4番目に、ラムサール条約による国際的な保護湿地として登録されています。
また、ウトナイ湖は支笏・樽前火山山脈や海に近く、砂丘や火山灰性の原野や丘陵性の森林、美々川、トキサタマップ川、オタルマップ川の河川と湖沼周辺の湿原という自然環境の多様性を持つ淡水湖としてきわめて優れており、わが国でも有数の渡り鳥の中継地として、春秋の渡りの季節にはオオハクチョウ、コハクチョウをはじめマガン、ヒシクイ、カモ類を中心として数千羽の水鳥でにぎわっています。また夏には南からシマアオジ、ノゴマ、ベニマシコ、センニュウ類など飛来し野鳥の繁殖地になるなど、約250種類を超える野鳥の聖域となっています。
ウトナイ湖周辺の大部分は、ヨシ・スゲ類が繁茂する低層湿地ですが、一部にはホザキシモスケ、クロミノウグイスカズラ(ハスカップ)などの潅木が点在し、さらにハンノキ、ミズナラ、ヤナギ類などの広葉樹もみられ、高等植物、蘚苔類、地衣類などを合わせて約500種が確認されています。
このように変化に富む環境は、多種類の昆虫の生育を可能にしており、この地域から確認された昆虫は約3900種類に達しています。
苫小牧市
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となっている。調べてみると、平成3年12月にラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)の保護湿地として登録されたとのこと。もっとも昭和57年には、国設鳥獣保護区にも指定されているという。しばらくは、ここで湖を見ていたのだが、小雨交じりの様相を呈してきたことから、再び国道に戻る。あとは、下り坂のような状況で平均時速25Km/hで走りつづけ、午後5時25分。フェリーターミナル到着。
[本日の走行距離:74.9Km、合計:562.6Km]
−−− 苫小牧フェリーターミナルにて −−−
フェリーターミナルの正面玄関の横に自転車をつけると、札幌の横断歩道ですれ違った若い人と目があう。彼も今着いたばかりらしく、自転車の荷物を調整している最中である。お互いに「お疲れさん!!」と言い合う。自転車を入り口の横に固定し、先ず向かったのは、お土産売り場。500ミリリットルの缶ビールを買う。
『取り敢えず、無事、北海道縦断、おめでとう。』
と心の中でつぶやき、更に
『乾杯!!』
このビールは一気のみである。
フェリーターミナル2階から、次に出るフェリーを見る。まだ明るい。自動車が次々にフェリーに吸いこまれていく。窓のいくつかには、明かりが灯っている。
こんな風景を見ながら、ビールもう1本と思ったが、夜は長い。これから「地底旅行」の最後をゆっくりと読みながら過ごすことにし、入り口に置いてある自転車が見えるところに席を取る。
午後6時過ぎになってさっき挨拶を交わした若い人が来て
「キャンセル待ち、やっと取れました、午後7時15分発の仙台行きなんですよ」
「え?仙台で良いの?」
「学校が福島の郡山なので、ちょうど良いんですよ」
「じゃ〜、降りたら近いね!!」
「いゃ、まだまだ走らなくては。」
「そうか〜、じゃあ、気をつけて。」
「どうも有難うございました。」
頗る気持ちの良い青年であった。キャンセル待ちの前に少し話したのだが、実家の横浜から離れて郡山で勉強しているという。今回の北海道旅行は、突然思いついてきたのだけれども、苫小牧から小樽・札幌の周辺を中心に回ったということ、急いではいないのだが予約していないのでキャンセル待ちして取れた便で帰ること等を話していたのである。
さて、今度は、今晩の算段である。眠るのはどこでも良いのだが、入り口に近いところにちょうど良いスペースがある。ウェストバッグをもって、場所を確保。再びビールを買い求め、「地底旅行」にはいる。
ところが午後11時過ぎに、フェリーターミナルで仮眠を目論んだ10数名が施錠するからとの理由で追い出されてしまった。
外は雨である。一人が、中で仮眠できないんですか、と聞いたのだが、規則でだめだという。追い出されたのは、オートバイと自転車の連中である。ここではじめて、今朝、テントと寝袋を宅急便で送った反省をした。しかし、レインギアは幸運にも持っていたので、これを着て、正面玄関脇で野宿。雨が吹き込み眠ることが出来ない。
考えてみれば、正面から吹き付ける風と雨である。じゃあ、反対がわに行けば、雨・風をよけられるのではないか。そんな風に思って、自転車を今度は海側に持っていく。ちょうどフェリーに乗るための入り口があって、ここの入り口は3メートルほど中にくぼんで作られているので、雨風はよけられる。サイドバッグから大型ビニール(250cm×100cm)を出してコンクリートの上に敷き、そのサイドバッグを枕にし、レインギアで完全武装をして、眠りにつく。このころ(午前0時30分)になるともう、フェリーターミナルの作業も終わって、静かな時間となる。
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