8月14日
浦臼〜月形〜当別〜石狩
−−− 月形まで −−−
午前4時40分起床。
今日は、スッキリとした目覚めなのだが、体中が痛い。昨日、最後の15キロが向かい風であったことに加え、道の状況が悪く、そんな中で無理をした結果かもしれない。いや、突き詰めて考えれば、中年だからかもしれないと思う。でも、そんなことはどうでもいいと自分に言い聞かせ、今日の準備に入る。「中年」と言う言葉に罪をなすりつけるほど簡単なことはないのだが、それはいけない。責任は自分が取るべきであるのだから。
大体、地図を見ると、このまま国道275号を走りつづければ、札幌に入る。距離としては、ここから70キロメートルである。向かい風であったとしても夕方には札幌市街に到着するはずである。しかし、それでは面白くない。また、いずれ苫小牧まで行かねばならない。と考えると、出発した宗谷から浜頓別まではオホーツク海を楽しんだ。このまま札幌に行き苫小牧まで行ってしまうと、日本海を見ずに太平洋となる。これでは面白くないのである。日本海を見るためには、当別から石狩に出れば良い。このルートを調べていくと、石狩川のもっとも海沿いの橋を渡ることも出来るし、河口の海水浴場で、もしかしたら日本海に沈む夕日を見れるかもしれない。
そんなこんなで、検討を重ね、結論は『本日の目的地、石狩浜海水浴場キャンプ場!!』と決定した。
ゆっくりと仕度をし、朝食を取って、出発。最初の目的地は500メートルほど戻ったところにある、道の駅「つるぬま」。昨日は疲れきっていて通過してしまったのだ。この駅の道は、今年の8月オープン予定なので是非見ておきたかったのである。この中にある「ヘルシー食品物産館」で豆腐のアイスクリームを食べようと思ったのだが、生憎、機械の調子が悪いらしく、並んでいる最中に販売中止。
ここを8時15分に出発した。
引き続き道が良くないので、ゆっくりと走った。夕方までに石狩浜まで行けば良いのである。次の目的地は、月形である。距離としては約20キロメートル。
最初に浦臼駅に寄ってみた。無人駅なので自由に中に入ることが出来る。
ホームから新十津川方面を見ると、線路に夏草が茂り、あまり電車の数がないのがわかる。もっとも、この路線は、単線で、浦臼を出た後の6番目の駅が新十津川で終点である。
地図で名前を調べると「札沼線」となっている。札沼線というのでは終点が合わないと思い、地図を出してもう一度調べてみる。新十津川の先は昨日通ってきた場所で、その先が秩父別である。この秩父別の北に沼田と言う町がある。もしかしたら、この線路はそこまで続いていたのかも知れない。赤字路線のため廃線になったとも考えられる。これは自宅に帰ってから調べてみようと思う。
10キロメートル程度走ったところで、小休止をしようと、街中をゆっくり走ってみる。町外れの左手にこれも札沼線の駅が見える。ここで小休止。
「札比内(さっぴない)」という駅名である。
駅の中に入ると、改札から流れ込んでくる風が心地よい。
駅舎の中に、ノートがあり、ここにきた旅人が、いろいろと書いている。過去分を読みながら、直近の書きこみを探すと、8月4日が最終の書き込みとなっている。これは書かずにはいられない。サイドバッグからボールペンを取り出し、日付、ここにきたまでの簡単な理由、そして名前を書いた。最後に、ノートには筆記具が付いていなかったので、次の人のためにボールペンを寄贈する旨を記載して、ボールペンを挟んで、はじめにあった駅舎の棚においてきた。
待合席にすわり、ホームのほうの窓から眺める景色が抜群である。この窓からの景色を、春夏秋冬を通じて見てみたいと思う。
月形温泉に到着は午前11時5分。温泉は国道275号からみえ、左に折れるとすぐに到着する。入り口に自転車を止め、ウェストバッグにタオルなどを詰めて中に入る。温泉は久しぶりなのでここでゆっくりしていこうと思う。
先ずは汗で汚れた体と、埃にまみれた髪の毛を洗う。そして浴槽につかる。あ・つ・〜・い。
日焼け止めが効かないせいではない。お湯が熱いのだ。隣の湯船(ジャグジー)で何とか入ることが出来た。
しばらく浸かっていると外に露天風呂がある。これは入らずにいられない。外に出ると,風が気持ち良い。岩風呂のように石を組んだ湯船に浸かる。
石を枕に大空を見上げる。雲が流れている。ゆ〜っくりと。黙ってみていないと分からないくらいゆっくりと流れていく。こっちもゆっくりと湯に浸かり充分ふやけた頃に湯からあがる。考えてみればこの温泉の建物が「ゆりかご」である。ゆったりした気分になれるわけだ。
風呂から上がって、休憩室に行く。完全冷房である。和室部分と洋室部分があり、和室は畳に座布団・座卓、洋室はソファーに小型のテーブル。もちろん和室に行く。荷物を座布団の上において、ビールを買いに行く。「サッポロクラシック」の500ミリリットル缶である。北海道限定と言う言葉に惹かれてしまった。風呂上りの一杯はたまらない。口当たりは軽いのだが、ホップが効いている。これは美味い。アルコール度5度を一気に飲み干してしまった。
横のテーブルに家族連れがきた。風呂上りなのは一目でわかるのだが、このチームはすごい。弁当を持参の上、更に大型のクーラーボックスを持ってきている。一通り、食べ物をテーブルの上に広げたあと、お父さんとお母さんはその大型クーラーボックスから缶ビール。子供はジュースである。全員揃ったところで乾杯。お父さんはあれよあれよと言う間に、500ml缶を3本も開けてしまった。美味しそうなおつまみ付ではいくらでも飲めそうな状況である。
12時過ぎまで畳の上でうとうとして過ごす。そして、長い渡り廊下を通って月形温泉ホテルの食堂に。何故か、ここでは、「中華丼」を頼んでしまった。
学生時代、第2食堂で良く食べたのだが、これは金のあるときだけ。いつもはラーメンとかうどんが中心だった。当時、ラーメンが40円、うどんが30円のときに、中華丼は120円もしたのだ。普通では食べられない。学生時代の唯一のご馳走は中華丼であったといっても過言ではない。そのため、今でも中華丼が大好きなのである。
アツアツの中華丼が出てきた。北海道を意識して作った中華丼なのだろうか、帆立がいくつも入っている。これは美味い。中華丼は、店によってベースとする味が違い、塩味のものと醤油味のものがある。ここは醤油味であるのだが、全体にバランスがとれた味、とでも言うのか、実に美味しい。これで750円は安い。
石狩浜まではあと30km程度。食事をしたあと取り敢えず出発をした。出口のところでもらった、月形町の案内図に「樺戸博物館」がある。行きがけにチョット見ていくことにした。
月形町開拓の歴史や先住のアイヌの歴史を綴った博物館だと思っていったのだが、樺戸に置かれた集治監の歴史が中心の博物館であった。明治14年から大正8年までの39年間の集治監、すなわち監獄の歴史であった。北海道、初期行刑史、とでも言ったほうが良いものである。見終わった後は、やはり重い。北海道開発の歴史に重要な役割を果たした「囚人」達の負の文化・負の遺産がここにはあった。
−−− 石狩浜まで −−−
国道275号を更に南下を続ける。月形町から当別町に入る。景色は抜群に良い。地平線が見える。そして、地平線から青空が広がる。自転車をこぎながら「北海道!」と幾度も叫ぶ。そんな景色が広がっている道なのである。
当別町のT字路を右に曲がる。今度は国道337号である。ここは交通量がやや少ない。道がかなり整備されているので走りやすい。ゴルフ場の看板がやたらに目に付く。道の右側は緩やかな丘陵地帯が続いている。多分、この中にゴルフ場があるのだろう。
そして左は畑やら農家が続く。
当別町で右に曲がってすでに17〜18Kmは来ている。曲がりくねった道で今いる位置が分からなくなる。
自転車を止めて地図で確認をする。周りの看板などを参考に確認すると、もう少しで石狩川を渡るようだ。大分進んでいる。
再び走り出してから10分ほどで石狩川に到着。
「石狩河口橋」という、石狩川のもっとも下流、もう海に流れ込む直前の橋を渡る。ここまで来るとさすがに川幅が広い。渡りきったところが信号になっていて、ここを右に曲がる。そして、最後に岬に向かう225号線に入る。約4kmでキャンプ場に到着。時間は5時を少し回っている。
砂の上の駐車場には夥しい車が駐車している。これが全部キャンプをしているのだろうかとと思うほどの台数である。
自転車の車輪が砂にとられて走りにくい。全体の様子を見ていると、駐車場より海側の一段高い場所にテントを張っている。駐車している車の間から自転車を持ち上げて、キャンプ場に入る。テントを張る場所はいくらでもある。人通りが一番少ないと思われる奥まったところにテントを張る。
荷物を全部テントにぶち込んで、海を見に行く。
この高台より10mほど下ったところに、砂浜があり、なだらかに傾斜をしながら波打ち際まで続いている。びっくりしたのは、この砂浜のテントの多さである。北のほうを見ると霞みがかかるくらい向うまでテントが続いている。南は大きく左手に曲がりこんでいるので遠くまでは見えないのだが、見える限りはテントの群れである。そして、西に日本海が広がっている。
まだ日が高い。テントに戻り夕食の仕度である。今晩は,カレーライスと決めてある。コッフェルでご飯を炊き、レトルトカレーを直接別のコッフェルで暖め、ご飯の蒸れたところでかければ出来あがりである。簡単といえば簡単なのだが、味は普通に作りあげるものに比べてもそんなに遜色はない。ただ、残念だったのは、カレーを食べるためのスプーンを持っていなかったことである。最終手段として箸で食べたのであるがさすがにこれは興ざめである。
食事の最後に、湯を沸かし、パックのお茶で締めくくる。食器を洗い、冷たい水を水筒に入れ、テントへ。今日もこれから日没まで「地底旅行」を読むのだ。
午後6時40分、日本海に沈む夕日を見に行き撮影。これで日本海も制覇した!!
夜中、目が醒めて、テントの中から星空を見上る。「満天の星」と言う言葉があるが、まさにその通りの夜空である。風が心地よい。寝ながらじっと目を凝らすと、天の川が見えてくる。降るような星空の中で、久しぶりに天の川を見た。真夏の北海道の夜空を堪能しつついつのまにかZZZZ・・・・・。
[本日の走行距離:67.5Km、合計:435.8Km]
|