8月13日
旭川〜雨竜〜新十津川〜浦臼
−−− 雨竜まで −−−
午前4時50分、目が醒める。実にゆっくりと眠った。昨夜は9時前には眠っている。睡眠は
充分である。これなら快調に走れそうである。
起きてすぐにシャワー。部屋の空調はずっと「Hi」にしてある。おかげで、昨夜、部屋に持ち込んだ、寝袋、テント、マットなどは充分に乾燥し、「いつでも使って!!」と叫んでいるようだ。
今日の最初の作業は、このキャンプ道具の収納となった。また、コッフェル、ガスストーブなどの点検・整備も十分に出来た。コッフェル類はサイドバッグに詰め、一番上に命の「米」。米は重たいのだが、水さえ確保できれば、確実に調理できる。いざとなればおかずなどいらない。
今度は、もうひとつのサイドバッグである。着替え用の下着、Tシャツ、半ズボン、タオル、薬、洗面道具、そして雨具である。重量的には左右バランスがとれるような重さになっている。
更にウェストバッグは,ツーリング地図,デジカメ、手帳、自転車用工具、財布、日焼止めクリーム、パンク修理セット等である。
朝食はバイキングである。7時過ぎに行くと満員状況である。入り口でトレイをとり、『今日は日本食で行こう!!』と決める。結局これが正解だった。睡眠充分で体調も良く、久しぶりにご飯と味噌汁を御代りした。もちろん、おかずなども殆どダブルで食べてしまった。
午前8時ちょうど出発。行き先は「新十津川」である。過去1回通りぬけたことはあるのだが、今度は泊まろうと思っているのだ。地図を目算で見ると約70キロメートルというところか。先ずは、神居古潭までである。
出発してしばらく行くと旭川の郊外に出る。しかし、ここで最初の試練。登り坂がしばらく続いた。やっと下り坂になったのにスピードが出ない。かなりの下り坂なので、本来なら一気に下り、朝の涼しさを体中で感じることが出来るはずが、自転車は何故か走らない。
やむを得ず自転車を止めて点検をする。ブレーキがタイヤに引っかかっていることもない、荷物が接触している状況もない。タイヤの空気圧を調べると、後輪がかなり抜けている。
『パンクか?』
と思い、しばらく様子を見ても状況は変わらない。携帯の空気入れで空気をほんのわずか追加して、再び走り始める。とりあえずは注意しながら走るしかない。
旭川から数km走ると神居古潭に近づく。空気抜けタイヤの走行にもなれてきたところでトンネルにぶつかる。トンネルの長さは約2キロメートル。入り口の手前に、やや広い路側帯があったので自転車を止め、トンネル走行の準備に入る。と、言ってもダイナモをセットし、実際にタイヤを回して、前照灯がつくかどうか、尾灯が点滅状態になっているかを確認するだけである。何れもOK。トンネルに入ろうとするが、自転車の通る余地が全くない。しばらく自動車の切れ目を探すのだが、ここは北海道でもメインの道路である。なかなか切れ目ができない。
ふと、トンネルの入り口にかかっている看板を見ると、「歩行者・自転車通行不可」となっていて、下のほうに回り道の図がある。
『もっと早く言ってくれよな〜』と思いながらダイナモを外し、迂回路へ。
しかし,この迂回路は,実に快調であった。初めこそ砂利道の急坂となっているもののあとはゆったりとした下り坂が、石狩川の川岸伝いにどこまでも続いている。
前後に全く人を見ないことから、若干恐怖感もある。道はわずかに荒れている。整備が行き届かないといったほうが良いのかもしれない。トンネルを通れば2キロメートルほどの距離であったが,迂回路は3キロメートル程度であった。人に遭ったのは、最後の国道に再び帰る場所。ここに茶店があり、アツアツのトーキビを買い求めたときであった。
国道12号に戻って少し走ると、神居古潭の交差点がある。ここで道道57号へ。
今日の予定では,このまま深川まで行き、そこから右に折れて国道233号に入り、秩父別を経て北竜へ、更に、北竜からは国道275に入って、新十津川までの、コースを考えたのである。
道道57号は、実に走りやすい。歩道があるのだが、自転車用の路側帯も1.5メートル程度確保されていて、かつ、アップダウンがない。初めは、田んぼが続いていたが、次第に畑となり、あちこちに玉ねぎ畑が広がる。カボチャ畑もある。地平線が見える。そして、摂氏30度を越えているためだろうか、直線道路のずっと先が霞みながらゆれている。そして逃げ水が走る。
こんなに気持ち良く走っていたのだが、道道57号はそのまま道道47号になり、大きな交差点などのないまま雨竜まで行く道となっている。今まで、向かい風を受けながら比較的順調に走ってきたので、距離の感覚が麻痺したらしい。気がつくと妹背牛。ここで地図を調べると、すでに7キロメートルも先に進んでしまっていて、曲がる場所を見失ったらしい。いまさら引き返すわけにも行かず、このまま雨竜まで行くことにし、追分から国道275号に入り、昼食は、道の駅「うりゅう」でと決めた。
こうなると話が早い。たまたま妹背牛の街中で見つけた自転車に飛び込んだ。先ず空気入れを借りる。前後のタイヤにピッチリと空気を入れる。同時に26インチMTB用のチューブを1本買う。これは万が一パンクした場合、チューブを交換して走ったほうがその日の行程が楽になるからである。この場合、パンク修理は泊まるところについてからということになる。時間の節約がこれからの走行に大切だと考えたわけである。
タイヤに空気を入れると、やはり軽い。一旦、スピードを出すとしばらくは空で走ることが出来る。元気一杯追分に到着。ここを左に曲がれば、道の駅「うりゅう」まではあと2km。
「道の駅 うりゅう まであと1Km」の看板で自転車を降り、水を飲んでいると、学生らしい3人組みに抜かれてしまった。急いであとを追いかけたのだが、結局、追いつくことが出来なかった。彼らは、道の駅に寄らずに先に進んだらしい。
12時58分、道の駅「うりゅう」に到着。
水を求めて、売店の裏側に行くと、水道がある。ここでたっぷりの水を飲み、「道の駅スタンプラリー」のスタンプを押し、最後に正面右側にあるレストランに行く。が・・・・、人が多い。中のテーブルは全部埋まっている上に、長い列が出来ている。やむを得ず、この長い列のでうしろに並ぶ。たちまち後ろに10人以上が並んだ。しばらく待ったが全く前に進まない。そのうちにウェートレスが、「席に着かれるまで、あと30分以上かかると思います。また、その時点でメニューを伺っても、更に30分以上かかります」と言っている。これでは待てない。
『もう、1時を過ぎているのに何でこんなに込んでいるのだろう?』
『うっ! 今日は13日! しかも金曜日、みんな実家に帰るのか〜』
そうなのである。お盆で実家に帰るのである。したがって、札幌方面からの車が多いのである。これではとてもここでは食事が出来ない。自動販売機の処で、缶を入れている店の人に
「この先で、食事できるところありますか?」
と聞くと
「この先に、中学校があるんだけれども、そこに食堂があるよ!」
礼を述べて,取り敢えずはその食堂に行くことにした。水だけでは腹が膨れない。
−−− 昼食・そして新十津川まで −−−
道の駅を午後2時近くなってから、出発し、中学校前の食堂にはすぐに着いた。すっきりしたものが食べたくなって、ざる蕎麦を注文。15分で出来あがり。窓際の席で食べた。クーラーがないので窓が空いているのだが、この窓から入る風が涼しい。そして、ざる蕎麦。熱い体にはベストの対応である。
地図を見ると、ここから新十津川までは10km強、それにそこから、キャンプ場までは3Km程度。時間的には1時間もかからないほどである。
食事を終えて出発して驚いた。道が突然悪くなってるのである。まず、歩行者用道路以外の処で自転車を走らせるスペースがない。路側帯が非常に狭く、ここは危険過ぎるのである。そこで歩行者用の道路に入るわけだが、ここの管理状況が悪くでこぼこである。そして狭い。出発は2時30分過ぎだが、先ほどまでと違って風が正面から吹きつけてくる。
それでも何とか、新十津川に到着。今度は、キャンプ場探しである。ところが,これは実に簡単であった。いろいろな場所に道案内の標識が立っていて、すぐにどこに行けば分かるようになっている。道順にしたがって行くのだが、当初地図で予測した、新十津川から3Km程度という距離はとうに走っている。そしてやっと「新十津川町青少年交流キャンプ村」に近づいたのだが、最後は、強烈な登りであった。
着いてみると、なかなか良い場所で広い敷地に、大きな建物が2つ。温泉に入りたい一心で、最初に左手のある温泉ホテルのようなところに入ったところ、実は本当にホテルであって、温泉もあるという。ためしに今夜の予約状況を確認すると、すでに満室とのこと。これは頭から泊まる予定などなかったので良かったのだが、今度は右の建物に行って空き室状況を聞くと全く空いていないという。やっぱりと思いつつ、キャンプ場に向かう。キャンプ場はこの二つの建物の間の道を上り詰めたところにあった。
サイトを見ると実に綺麗な芝生で、バンガローのところだけにテントが張ってあり、『今日はゆっくりと眠れる』と思いつつ、管理棟にいき、キャンプの申し込みをすると、
「今日はもう満員でぜんぜん空いていませんよ」
との返事。更に
「ここは、完全予約制ですから、突然来て、泊めてといわれても、私には権限がないので受けられません」
との返事。
「自転車1台と一人用テントだけなんですけれども・・・」
と言っても、とりつく島もない。
現在、午後4時ちょうど。再度地図を確認する。10Km程先に、キャンプ場がある。やむを得ない。今日は更にあと10Km走って浦臼温泉のある鶴沼公園キャンプ場を目指すことにした。
この時間になっても、テントが殆ど張られていない広々とした新十津川のキャンプ場を横目でにらみながら、ここを出発した。
−−− 浦臼キャンプ場 −−−
国道に戻ると予想した通り、すごい向かい風である。道は悪い。それでも泊まる場所を求めて、走らねばならない。浦臼キャンプ場までは更に1時間を要した。さすがにキャンプ場につくころには、体中、特に尻が痛くなって来ている。滑り込むように、キャンプ場について、管理棟でキャンプの申し込みをすると
「フリーサイトで良いのか?」
と聞かれ
「空いていればどこでも良いのですが・・」
と答えた。
入場料を払い、入り口で許可を得たという証明の旗を持って、フリーサイトに行く。湖岸に面した道路際の一角が完全に空いている。ただし、一人用のテントでなければ、設営は無理である。最高の条件の場所が見つかり、すぐにテントを張る。自転車はテントの隣に置いておけば問題ない。テント設営はわずか5分、荷物の整理に5分。疲れてはいるが、やることは早い。
荷物を下ろしたあとの軽くなった自転車に乗って管理棟へ。ここでビールを買おうと思ってきたのだが,管理人と話していたら、管理棟の中に温水シャワーがあって、10分間100円で入れるという。時間が足りなければ,また100円を追加すると更に10分間湯が出るという。これは渡りに船である。1日中走りこんできたうえに、今日の暑さである。すでに体中汗だらけである。
本当ならば、浦臼温泉に入ればいいのだが、ここに行くためには、ちっょと戻って、急坂を登らねばならない。
そんな体力はもう残っていない。すぐにテントに取って返し、タオル・下着を持ってシャワー室へ。10分間で充分である。熱〜いシャワーを浴び、髪の毛を洗い、またシャワーを浴び、そしてすっきりとしてテントへ。シャワーをバッチリ浴びたせいなのか、今日は不思議に夕風が心地よい。
次にコッフェルに米を入れて洗い場へ。米を砥ぎ、水加減をしてテントへ戻る。ガスストーブで早速ご飯を炊く。今日のおかずは、梅干。実に質素な食事であるが、こんな食事が実に美味い。食事を終えたころには夕闇が迫ってきており、急いで洗い物をすませ、荷物を整理してテントの中に。外では、これからがキャンプ本番を迎えるようである。カラオケなども始まっている。
カンテラの明かりを頼りに「地底旅行」を読み進む。そして、いつの間にか、ぐっすりと眠ってしまっていた。気がつくと12時近く。まだ、カラオケは続いている。カンテラを消して、本当に就寝。
[本日の走行距離:85.4Km、合計:368.3Km]
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