8 月 12 日

名寄〜士別〜塩狩峠〜旭川



−−− 和寒まで −−−

 午前4時30分起床。
 先ず、今日のコースを考える。昨日はかなり疲れていたこともあって、そんなに距離が出ていない。一晩、ホテルでゆっくり体を休めたことから体力は回復している。昨日の遅れを取り戻すためには,今日は旭川までは走らねばならない。なかなか、最終目的地が定まらず、最後には、『取り敢えず午前中に40Km走れたら、そこで考えよう!』ということにした。
 午前中に40Km、それほどきついとは思われない。場所的には「和寒」あたりである。外を見ると今日も天気が良い。

 7時30分に1階で朝食。和定食で充分に腹を満たして、ホテルのロビーへ。ここで電話帳を借りて、行けるかどうか分からない旭川のホテルを携帯電話に登録。旭川はどうしても「ターミナルホテル」に泊まりたい。特に自転車のような場合には「駅」に一番近いところが次の基点となって方向を定めやすい。また、昨年もお世話になっており、土地勘がある。旭川ターミナルホテルもしっかりと登録。
 部屋に戻って荷物(サイドバッグ2つにウェストバッグ)をもってロビーで精算。
「5300円です」
「えっ?、今朝の朝食も入ってですか?」
「はい!」
 安い。明細領収書をもらうと宿泊費が4300円、朝食1000円で合計5300円。こんなに安いとは考えてもいなかった。良いホテルで良いサービスがあって、値段が安い、これは本当に嬉しい。

 自転車にサイドバッグを取り付け、寝袋・テント・マットを載せ、朝食を食べた食堂からもらった冷たい水で水筒を満たして、さぁ出発である。8時5分。

 最初の目的地は昨日ホテルで調べておいた「名寄岩」の銅像。名寄スポーツセンター前にあるというのでここを目指す。ちょうど、和寒方面に行く左手にあるので戻らなくても良い。
 名寄岩については、かっての日活映画で「涙の敢闘賞」をみて、大相撲の力士であり、一時は大関まで張った力士であることは知っていた。そのときは「名寄岩」の名寄が北海道の名寄とは結びつかず、今回の旅行ではじめて、名寄出身の力士であることが分かった次第である。地図を見ると、名寄の市街に入ってすぐに名寄岩の生誕の地の前を自転車で通りすぎてきたことが分かった。

 そんなことを気にしながら地図を見ていくと、名寄市もいろいろと見るべきところが多い。しかし、今日は、あと3時間半程度で40kmを走らねばならない。スキー競技発祥の地や野口雨情の歌碑などはまたの機会(う〜ん、いつになるのだろう?)にまわして、今やることは「和寒」まで走ることである。
 スポーツセンターから再度出発し、国道40号へ。
 名寄を出た直後に風連川を渡った以外、あまり高低差のあるアップダウンがなく、順調に走る。走りながら、『今日は頑張るのをやめてみよう』と思う。頑張ろうとするとすごく疲れるのである。気楽にゆっくりで良いのではないかと思う。そんなことを考えながらも順調に距離は伸びていく。
 昨日の走行距離合計が200Kmくらいだったからと思って距離計を見ると積算距離で240Kmが表示されている。思わず、時間を確認する。まだ、11時30分である。場所確認しに,交差点のあるところまで走ると、「和寒駅前」となっている。なんと3時間で40Km走ったことになる。これならば、今日は旭川まで行ける。

 和寒駅前の交差点にある食堂でカレーライスを食べ、水筒に水をもらい出発である。ここのご主人の話では,この場所が名寄と旭川の中間地点で,ちょうど40Kmずつになるらしい。カレーが昔懐かしい味でかつピリッと辛く美味しかったことからお礼を述べて、元気一杯出発となった。
 もちろんカレーを食べた後、旭川のホテルに電話をかけ今夜の泊まりを確保したのは言うまでもない。しかも、最初の一発目で「旭川ターミナルホテル」がとれたのである。

−−− 旭川まで −−−

 元気一杯にスタート、この分じゃ、旭川は午後3時ごろの到着、ゆっくりできると踏んだ。引き続き道は平坦で順調である。
 しかし、1〜2Kmも行かないうちに足が重くなってきた。
『しまった、午前中頑張りすぎたか?』
と思って、全体にギヤをひとつ落とす。はじめこそ楽だがすぐにきつくなってくる。しかし、ここでどんどんギヤを下げていくわけには行かない。汗だくになりながら頑張るが、スピードが次第に落ちていく。20Km/hが17Km/hにそして14Km/hにと、目に見えて落ちていくのがわかる。数百メートルに渡り道路工事が行われており、この区間を無事通りすぎたときにはすでに12Km/hまでに落ち込んでいる。
『おかしい、いくら疲れていても、平坦な道路でこんなにスピードが出ないわけがない、むっ!』
と思って今きた道を振替って驚いた。なんとずっと上り坂なのである。
 それもかなり登ってきている。前方を改めてみるとずっ〜と、上り坂が続いている。しばらく平地ばかりを走ってきたことと、若干の疲れもあって、高低差が目で見分けられなかったのである。ここで一回自転車を止めて小休止。
 汗をふき、水を飲んで,再び気力を充実させて坂道にトライする。スピードは10Km/hそこそこである。自動車で登っていく家族から「頑張って!!」の声が何度もかかる。全身汗だくでTシャツは体に汗で張りついている。足は棒のようになっている。ひざのなか側の盛り上がっている筋肉がギシギシと音がするような気がする。ペダルを新たな力で押しているのではなく、足の重みだけで動かしている状況である。
 この厳しい坂道に加えて、今日は超快晴である。汗だけではなく、日焼け止めクリームを塗っておいた額や足がひりひり痛む。日焼け止めクリームが汗で飛んでしまっている。どこかで、再度日焼け止めクリームを使わなければならない。
 右に大きく曲がりこむところで、500メートルほど先にコンビニらしきものが見える。
『よし、あそこに止まろう、あそこで小休止して、一気にこの峠を越えよう。』
しかし、目標を見ての行程はつらい、視線を道路において、下を向きながら一歩一歩自転車をこぐ。しばらくして,待望のコンビニに到着。自転車を止めて、店に入ろうとすると、左手に
「塩狩温泉YH」
とある。
 なんと、現在登っているのは「塩狩峠」なのである。しかも、塩狩温泉YHは、学生時代に泊まったことがある実に懐かしい場所なのである。27年ぶりの再開である。
 店に入って,水分を補給し
「隣のユースホステル、駅から近いですよね?」
と聞くと
「5〜6分くらいですね」と女将さん。
「池があって橋がかかっていたような気がするんですが?」
「池はあるけれども、橋はないですよ。」
 私の記憶違いである。そのときは確か、塩狩駅で汽車を降り、線路伝いに少し歩き、池の真中にかかっていた橋を渡ってYHに入った気がしたのだが・・・。もしかしたら、両側が池のところを通ったのかもしれない。四半世紀以上前のことである。
 塩狩峠と分かれば話は早い。店の人に聞くと、あと数百メートルで峠が超えられるという。15分ほど休憩してから出発。目標が分かれば頑張れる。よたよたながらも、「塩狩峠」を制覇。頂上で休むことをせず一気に下り。登りが長かった分だけ下りも長い。ずっと先まで見える下り坂を殆どブレーキをかけずに下り降りた。
 あとは平坦な道の連続。休憩も取らずに一気に旭川まで走りぬけた。

 旭川駅についたのが午後3時ちょうど。自転車を止めて「ターミナルホテル」へ。まず、自転車の駐輪場を聞いて自転車を回す。積んである荷物一式をもって受付カウンターで手続きを取る。
 部屋は9階。去年泊まったところとは逆向きになる。西日が部屋に差し込んでいるのだが、クーラーが実に良く効いているので少しもいやにならない。
 先ず荷物を全部床にぶちまけて、シャワーを浴びる。
 最高に気持ちが良い。今日は頭の中まで日焼けしたらしい。熱い湯を浴びると頭皮がヒリヒリする。もちろん、額、両腕、ひざ、ふくらはぎは言うまでもない。実に痛い。シャンプーを2度して体を洗い、タオルを巻いて浴室から出る。
 西日はまだ充分に部屋に差し込んでいる。  そのままソファーに座る。快い疲れが全身をしびれさす。腕から肩にかけてと両ももがジーンとしている。いつもならここでビール!というところだが、ホテルの案内を見ると歩いて5分のところに地ビール専門の店「蔵囲夢」がある。何でも古い倉庫を改造してのものであるらしい。北海道の地ビールの美味さは北見市のWさんから聞いている。ここで飲まねば男ではない。今夜は「蔵囲夢」で決定。それまではしばしの辛抱。

 午後5時になったのでフロントで道順を確認して「蔵囲夢」へ。

 行ってみると確かに「蔵囲夢」の中にあるのだが、本当の名前は「大雪地ビール館」。一人で来たことを告げお願いすると,カップル用のチョット長いテーブル席に案内された。メニューを持ってきたスタッフにいろいろ質問したのだが、受け答えが非常に丁寧で感じが良い。地ビールは4種類あって、何れも350ccのグラスで出されること、味についても説明があったのだが、これは飲んでみないと分からない。4つあるうちの先ず「ミンタル」というのを頼んでみる。
 グラスに注がれた程よく冷えたビールがきた。飲んでみる。これは軽い。フルーティーな感じである。
 おつまみは「合鴨の塩焼き」、「鮭のぬた」それにこれはあとから追加して注文したのだが「ジャガバター」。これを肴にしながらのビールの味比べである。
 2番目は「ケラピルカ」、これはちっと濁っている感じで、香りにチップの香りが感じられる。早い話が燻製の香りがする。これも飲み心地が軽い。
 合鴨の塩焼きにはラタトイュが添えられている。これが美味い。もちろん合鴨の塩味、柔らかさは抜群である。合鴨の下には新玉ねぎが敷き詰められており、良く焼けた鉄板の上での調理であるので,玉ねぎの甘さが合鴨の塩味と絶妙のバランスをとっている。ビールも絶品だが、料理も美味い。
 3番目は「モシリレラ」にした。これも若干濁りがある。味はビールそのものだが口に含むと柑橘系の香りが鼻を打つ。鮭のぬたを肴にしてみる。ねぎの甘味が生鮭の味とマッチしている。これは思わず『Good』と口ずさんでしまう。
 最後は「旭彩」。和名のビールである。多分、旭川の彩りという意味になのであろう。色はビールの色なのだが濁りがない。香りは「ケラピルカ」に近く燻製のような感じである。味もそんな感じが強い。これは、ジャガバターを肴とした。アツアツのジャガイモにバターそしてビール。まさに北海道である。
 旭川に良い場所を見つけた。ビールが美味しくて、料理が美味い場所。駅からも歩いて5分とかからない。来年ここを通るときは、北海道にいる友人などいろんな人に来てもらって、この店で楽しく過ごしたいものである。

 さて、仕上げである。この地ビール館を出たのが7時チョット過ぎ。駅の地下に行き、一番奥の「蜂屋ラーメン」。ここでラーメンを食べる。前回来たときは脂を少なめにしてもらったが、今回はたっぷりと入れてもらった。去年と味が変わっていない。美味い。汁まで全部飲んで650円。本当に癖になる味である。
(今日は,走るのに専念しあまり写真を撮っていなかった。花の写真は2種類、あとは、ホテルから見た夜景だけである。)

[本日の走行距離:82.6Km、合計:282.9Km]