8 月 8 日

自宅〜羽田〜稚内空港〜宗谷



−−− 出  発 −−−

 自宅の最寄の駅を午前9時06分に乗ると、モノレールの羽田空港駅には10時56分に到着した。
 今回の輪行バッグの色はショッキングピンクである。電車に乗ろうと、モノレールに乗ろうと目立つことこの上ない。はじめは皆「あいつ!何を持っているのだろう」と考えるのだが、次第に興味薄れていくのがわかる。
 しかし,この輪行バックに入れて持ち歩くMTBはかなり重い。羽田空港のの搭乗手続きをするカウンターまでで両肩にストラップが食いこみ痛いくらいだ。特に、モノレールを降りた羽田空港駅の地下3階から出発便ロビーのある2階まではのろのろしているので一番最後を歩かざるを得ず、搭乗手続きの場所に着くまでにぐったりと疲れてしまった。
 搭乗手続きのロビーでまず最初にこの重たい荷物を預けようとしたら、
「荷物をお預けになる前に、先に搭乗手続きをお願いします!」
と言われ、早速コンピュータ相手に搭乗手続きを開始。禁煙席(この飛行機は全て禁煙席だった。)を指定してボタンを押すと
「うむ!!?」
窓際の席は全部取られている。
「ざ!残念!!」
と思いつつ通路側の席を確保。若干、高所恐怖症気味であるので、できればしっかりと地面が見える窓際の席が良かったのにぃ−・・・・しかも,今日は抜群に天気が良い。これだったら上空から日本地図を見るような気分で、稚内まで行けたのに・・・。

 それでも、無事手続きを終了して自転車を預けたのだが、出発までは1時間以上時間がある。出発ロビーの奥にあるカフェテリアで生ビールとカツカレーを食べる。
 重たい自転車を運んだ後だけに実に生ビールが美味い。ビールを飲んだ後のカツカレーはチョットきつかったが、これで夕食まで何も口にしないことを思って、全部食べてしまった。
 そして、出発ロビー3階に上り、全体の写真(左の写真)を撮ってから搭乗ゲートに。中央のエントランスで荷物のチェックと身体検査を無事通過。一番奥にある23番ゲートへ。皆は動く歩道を更に歩いていくのだが、こっちはゆっくりと身を任せておく。まだまだ時間があってそんなに急ぐ必要がないのだ。それでも11時50分には23番ゲートに到着してしまった。
 ゲートの上の電光掲示板では、丁度,北海道の天気を流している。これをみると今日・明日ともに稚内地方は天気がよい。殆ど快晴のようだ。気温も28度となっている。これならば涼しい真夏の北海道を走れるとひそかに期待する。
 飛行機は、12時43分離陸した。全日空573便、稚内行きである。
 窓側に座った若い男性が手持ちで機内に持ちこんできたノートパソコンでゲームをやっている。そんなのを横目で見ていると先ほど飲んだビールと今までの疲れが出てついうとうととしてしまった。気がつくと飛行機はすでに北海道上空。しばらくして飛行機は大きく左に旋回し、着陸体制に。

−−− 稚内から宗谷まで −−−

 稚内空港で自転車とウェストバックを受け取り、先ず、飛行場の建物の外に出てみる。
 地平線から青い空が広がっている。雲一つない快晴だが風がやや強い気がする。
 早速、タクシー乗場の横で自転車を輪行バッグから取り出して、組み立てを開始する。今回は雨が降ることを予定して前後の車輪に泥除けをつけるようにしてある。ウェストバッグから工具を出しつつ、最初に、取り外してある車輪を前後にピッチリ取り付け、最後に高さを調整しつつ泥除けを止める。ギヤなどの保護材としたダンボールはひとまとめにして空港のごみ箱へ。水筒を空港内の水呑場の水で満たして自転車にセット、午後3時丁度、稚内空港を出発した。
 もちろん地図で行くべき場所、宗谷を確認してからの出発である。飛行場の駐車場を出てすぐに右に曲がり、200メートル程度行ったところで再度右に曲がる。これで後は暫らくはまっすぐなはずである。
 後ろを振り向くと、利尻富士が遥かに霞んで見える(右の写真の左側に薄く利尻富士が見える。) 。ここは国道238号である。はっきり言って、出発点となる宗谷岬までは、まだ北上を続けているわけである。
 サイクリングには絶好の気象条件である。しかし、先ほど羽田で見た電光掲示板の「稚内の気温:28度」とは何だったのだろう。どう考えてもこの気温は、摂氏30度を大きく超えている。それでも大体15km程度程先にある宗谷の「阿部旅館」に向かって、愛車「Spirit of Middle‐Agers号」を走らせる。
 水筒に入れた水は既に飲みきっている。しかし、水分の補給をしようにもコンビニも食料品店も何もない。やっと見つけたジュース類の自動販売機に倒れこむようにたどり着き、ポケットを探ると細かい金が全くない。1000円札を両替しようと、自動販売機を設置している家に声をかけるが誰も出てこない。
 やむを得ず、水分補給をせずに再度出発。道はずっと左手には海、右手には草原が続いている。長距離を走るには十分過ぎる環境である。しかし、暑い。実は原因はわかっている。ひとつはGパンである。Gパンが風が通らず、汗をそのまま含んでいるため、実に蒸し暑いのだ。これに加えて、明日からは半ズボンで走れるのだと思うと、なおさらムシムシ感は増大する。

 16時20分,宗谷の阿部旅館に到着。2階の部屋に案内される。目の前に宗谷湾、遠くに野寒布岬が望める。ここであらかじめこの旅館に送っておいた荷物のなかから,自転車のいくつかの部品を取りだし、再度自転車を組み立てしなおす。先ず、サイドバッグをつけるためにリアキャリアを取りつける。そのあとスタンド、ライト、走行距離計を取り付け、更にサイドバッグ、寝袋,テント、マットを全部載せてみて、近所を走ってみる。左右のバランスは大丈夫のようだ。距離計も正確な距離を出している。これなら明日、出発できる。
 組み立てが終わり、試乗を終え荷物を部屋に持ち帰り、風呂を浴びたところで丁度夕食の時間となる。夕食の仕度がされている部屋(1階)に行くと、今日の泊まりは2組5人の客らしい。もちろん一組は自分である。

 料理を見て最初にしたのが「おばさ〜ん、ビール1本ね」のコール。
 この料理を見て、また、風呂に入った直後だけに絶対ビールというところである。出てきたのが大好きなサッポロビール黒生。ビンで飲むのは久しぶりである。キリリッと冷えてちょうど呑みごろ。たまらない美味さである。
 先ずは一人で「無事到着!!明日から頑張るぞ〜!!」と乾杯をしたあと、活き北海シマ海老の踊り食いに挑む。ぴんぴん跳ねているえびを捕まえつつ頭を落として殻を剥きチョコッと生醤油をつけて口に放り込む。弾力ある歯ごたえと甘味がたまらない。
 ここでまたビールをぐびぐびと呑む。
 サッポロビール黒生ビンは、この飲んだときの喉越しが抜群に良い。これで2杯目だがこれも一気に流し込む。やっぱりビールは喉で味わうものなのだ。
 次は海胆だ。「むっむっむっ!!、とっ!棘が動いている。」
活き海胆の刺身である。これはさすがに踊り食いというわけにはいかない。そんなことをしたのなら口中血だらけになってしまうので、殻の中からスプーンを使って丁寧に食べる。本当に北海道にきて良かったぁと感じる瞬間である。活き海胆は全部で4個(匹?)しかない。もったいないので一個を充分に味わって食べたあと、次は刺身に手をつける。コリッという歯ざわり、口中に旨味が広がる。魚の名前をたずねると「今日の煮魚と刺身はソイ。」とのこと。思わず「そいですか!」と駄洒落も出てしまう。
 その後、煮魚、磯ツブ貝、茹でシマ海老、なまこ、モズクを堪能し、ビールの追加もして、8時ころに部屋に戻る。

 布団に横たわりながら夜風に身を任せていると、遠くで「ドーンドン」と音がする。目を凝らしてみると20kmも離れた稚内市での花火大会のようだ。暫らくは夜風を愛でつつ、窓に寄りかかりながら最北の都市稚内の花火を見て過ごす。