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第1回駄買ワールドカップ
「ビター・スウィート・サンバ」               【日没開門】

 大学を出てから少しした頃に、ひょんなことから大学時代にあこがれていた女 の子と会う機会を持ったことがある。その子に対しては結局あこがれを持ち続け ていただけで、なにがあったのでもなかったし、心の中で少しの期待はあったも のの、当時はとてもそうなるとも思えなかった。  それに、当時はお互い”恋人”と呼ばれる存在があったことも事実である。と ころが、そんな彼女との話の中で、彼女は”あなたのこと好きだったのにな”と いう言葉を投げかけてきた。
 その瞬間に感じたことは、「あのときどうして彼女の気持ちに気付かなかった のだろう」という後悔の気持ちではなく,自分が”好き”という単語に過去形を 付けて語られてしまったことにたいする寂しさであった。

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 過去形を付けて語れば、何でもありになってしまうのだから、そういったこと については「黙して語らず」的なスタンスをとった方がよいのだろうが、やっぱ り、馬券を買うものとしては語らずにはいられない瞬間があることも事実である。

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 WINS後楽園に9時集合と言い出したのは確か”競馬ジャンキー”中村さん であったと思うが、東京以外に実際福島の馬券を全レース購入したのは久賀さん 一人に他ならない。彼が血統を語るシーンをあまり見かけないところから推察す るに独自のスタンスがあるのだと思わせるが、それが有効に機能するにはまだ先 のことではないか、と最近感じるようになってきた。  それは、3日目に訪れた向日町競輪でも遺憾なく発揮されていたように思う。 これを最後に京都を去るというレースで、冗談半分で大穴ねらいに徹すれば取れ なくもない8万車券(でもさすがに4、6、8の3点裏表を買う人はいないか) を取り逃す姿はまさに久賀隆司そのものという感じであった。大抵、超万馬券が でたりすると、人はふーんと他人事のように扱うものだが、あのときはもしかし たら取れたかも、という雰囲気にあふれていた点は、今後に期待を抱かせるもの である。 

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 一方の戸谷充志はどうもちぐはぐとした感がある。あれだけDSML上におい て血統云々言っておきながら,実際の馬券購入は、2番人気から薄めに流す、な どという”おまえ、何も考えてへんやろ”的な状態であったり、淀の3000と いう未知の部分を残したレースは急に血統を語りだしたりする(しかも真っ先に マチカネフクキタルとダイワオーシュウを切る)。
 1週前追いきりの天皇賞ではあれほどエアグルーヴ、エアグルーヴ言っておき ながら、雀の涙ほどの単勝しか持っていないのはまさに哀愁さえ漂ようになって きている。

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  ◎久賀 隆司  ○戸谷 充志

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 あまりに単純すぎるのかもしれないが、たかしのゾロ目に期待してみた。

 競馬に関する後悔の念と寂しさは,競馬をやっている誰もが感じたことがある だろう。競馬をやめても誰も悲しまないし、いや、喜んでくれる人の方が多いく らいだろう。でも、僕たちは競馬を止めずにここまでやってきたし、これからも そうなのだろう。
 "You can check out anytime you like, but you can never leave."
競馬ってそんなものかな、とも思う。                   ◆
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 山之内製薬(株) 薬理第一研究室
             戸谷 充志
E-mail:toya@yamanouchi.co.jp