身体に効く栄養成分・食材・調理方法
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作り方


 糖質原料を発酵させて生成する酢酸の酸味を利用した調味料。

穀物や果実をアルコール 発酵させて酒を造り、それに酢酸発酵させて作る。

合成の酢酸に味や香りをつけて製造す ることもできるので、前者を醸造酢、後者を合成酢と呼んで区別する。

 米を原料とする米酢は、蒸し米に米麹を加え、清酒と同様に発酵させた後、純粋培養の 酢酸菌を加えて三○℃で一〜ニカ月発酵させる。

これを熟成させた後、水で酸度を調節、 火入れして製造する。




米以外の穀物酢の場合もほぼ同様である。

酸味成分として約四%の酢酸を含み、果実酢は 、ブドウ酒やリンゴ酒を原料として、やはり酢酸発酵させて作る。

約七%の酢酸を含み、 穀物酢よりも酢酸濃度が高い。




種類・特性





食酢の種類




 製法によって醸造酢と合成酢に分かれ、醸造酢をさらに原料によって穀物酢と果実酢に 分け、この穀物酢のなかに米酢とそれ以外の穀物酢、また果実酢のなかにリンゴ酢、ブド ウ酢とそれ以外の果実酢がある。

原料により粕酢、麦芽酢などと呼び分けることもあり、 また玄米酢、大豆黒酢、ハトムギ酢など、特定の原料の名を冠した製品もある。




食酢の酸味成分




 糖質原料から醸造によって作られた穀物酢や果実酢は、酢酸菌による酢酸発酵で作られ るのが条件なので、酸味の主成分は酢酸である。

 一方レモン、ダイダイなど柑橘類の搾汁はそのまま酢として使われる。

その主成分はク エン酸で醸造酢とは異なるが、これも広く果実酢と呼ぶことがある。

酢酸の酸味がどちら かといえば単純な刺激性の味であるのに比べて、クエン酸の酸味は一見おだやかだが押し が強い。





酢の特微




 食酢は単に食物に酸味を与えるだけではなく、むしろ醸造によって生じた風味や旨みを 目的とすることが多い。

主成分の酢酸を含めて、食酢の成分には揮発性物質が多いので、 風味を保持するためには、酢漬けのようなもの以外は、なるべく調理の最後に使い、長い 加熱を避けるようにする。

調味料として食酢だけを単独で使う料理はなく、必ず食塩、砂 糖、旨味料などと併用する。

食塩と同様、食酢にも、調味の目的以外にいろいろな調理上 の役割がある。





いろいろな食酢




米酢


 わが国古来の伝統的な酢で、おだやかながら押しの強い酸味と、こくのある旨み、複雑 な香りを特徴とする。

日本料理、とくに寿司、酢のもののように、酢の味を主役にする料 理によく合う。




粕酢


 米ではなく酒を絞った後の酒粕を原料とする。

市販品ではもっとも多い。

米酢より麹の 香りが少なく、味が軽くあっさりしていて、料理への用途も広い。

かくし味のように他の 味に添えて使うのにも適している。




果実酢


 リンゴ酢、ブドウ酢が主で、でんぷん質の原料ではないため、味は軽くさわやかで、果 実の香りが生かされている。

日本料理にはあまり用いられない。




ぽん酢・レモン酢


 ぽん酢はダイダイ、ユズ、スダチ、カボスのような柑橘類の果汁に醤油を混合したもの 、レモン汁も同様にまったく発酵によらない絞り汁である。

したがって香りだけではなく 酸味も違い、酸味の主成分は純粋なクエン酸である。







基本的調理と使い方のコツ






使用農度


 食酢には約四%の酢酸が含まれ、通常の料理では材料の約一割を用いるので、摂取する ときの酢酸濃度は0.3〜0.4%である。

この濃度では微生物の繁殖が抑えられるので 、食酢には防腐作用がある。




酢を加える時期 




 食酢の主成分は酢酸で加熱により蒸発する。

また食酢の香りも熱で失われる。

このため あまり早くから酢を加えるのは好ましくない。

また「せ」「そ」はいずれも香りを大切に する調味料で、普通はでき上がりぎわに加えるものである。

したがって「さしすせそ」の 順になる。




縁色野菜に酢は禁物




 野菜の色素クロロフィル(葉緑素)は水に溶けないので、ゆでても水にさらしても、色 が溶け出すことはない。

その代わり長い加熱に弱く、ゆですぎると色があせてくる。

この 変化は酸性で急速に進むので、酢を加えて長く煮るのは禁物である。

醤油も数%の酸を含 むので、同じように色を悪くする。




ゴボウ、レンコンなどを酢水に漬ける




 これらの野菜には、空気に触れると褐色になるポリフェノール系の成分が多く、褐変を 進める酵素ポリフェノールオキシダーゼも強力なので、切って放置すると酸化が進み褐色 になる。

切ったゴボウ、レンコンを酢水にさらすと、食塩と同様この酵素作用を抑え、変 色が防げる。




 次に多くの野菜に合まれるフラボノイドという色素は、酸性では無色、アルカリ性では 黄褐色になる。

酢水に漬けたり酢を入れて煮ると、色が白く仕上がるのはこのためである 。

さらにレンコンにはムチンという糸を引く成分が含まれ、これが酢水に漬けると粘りを 失って歯切れがよくなる。




酢のものにする魚はまず塩締め




 酢のものまたは酢締めというと、おもに酢で味つけをするように受けとれるが、実際は 「塩締めのあと酢で味つけ」と考えたほうがよい。

食塩はまず筋肉のミオシンというたん ぱく質の溶解性を高めて柔らかく吸水しやすくする。

この水分を保持する性質を保水性と いう。

つまり食塩は魚肉たんぱく質の保水性を高める。

その後で酢を加えるとたんぱく質 は変性して身が引き締まる。

 塩なしでいきなり酢を加えると、こういう経過なしにたんばく質が凝固する。

すなわち 保水性が低下し、これを溶解させるために味つけの適量以上に酢が必要になる。

このこと から魚の酢のものは、塩と酢がリレー式に共同作用で進むことがわかる。

昆布で締めると 、旨味成分を魚に移すと同時に、余分な水を吸収する役にも立つ。




イワシのショウガ煮はまず酢で煮る




 イワシは安価で日常的なわりには、逆に冷凍や遠隔地への輸送にコストをかけることは 少ないので、目刺し、丸干しのような保存用の加工品以外は、かえって入手しにくい魚で ある。

鮮度も低下しやすく、トリメチルアミンのような魚臭成分も増加していることが多 い。

さらに小魚で組織も柔らかく、死後硬直が終わると急速に軟化が進む。

したがってよ ほど新鮮なもの以外は、濃い味を内部まで完全にしみ込ませ、熱をかけて組織を引き締め 、かつ骨まで柔らかくする調理法が行なわれてきた。

よく洗うのも、酒や酢を使うのも、濃い味つけで長時間加熱するのも目的は同じである。

食酢中の酸はカルシウムに作用して骨を柔らかくし、アルカリ性のトリメチルアミンを中 和して、魚臭を抑えることができる。




寿司飯は熱い飯に酢を手早く




 炊き上げた米飯は水加減が適切なら、米粒表面はほどよく乾いた状態になっている。

そ れが急に冷たい空気に触れると、水蒸気が凝縮して粒の表面が濡れる。

ここへ合せ酢をか けてそのままおくと、水で薄まった合せ酢が米粒内部にしみ込んで、水っぽい寿司飯にな ってしまう。

 乾いた木の飯台の表面を合せ酢で濡らし、その中央へ飯を入れて合せ酢をかけ、手早く 広げて米粒同士が密着しないよう切り始める。

こうしてすき間を作って表面への水滴の凝 縮を防ぎながら冷ましていく。

乾いた木が余分な水蒸気を吸収してくれる。必要に応じて うちわや扇風機で風を送るのも冷却を早めるため、また広く浅めの飯台を使うのも同じ理 由からである。






落とし卵を作るとき酢




 食品のたんぱく質は加熱をしたり、強く撹拌したりすると、分子の形や存在状態が変化 して性質が変わってくる。

これをたんぱく質の変性という。多くのたんぱく質は熱変性に よって凝固する。

卵は熱凝固が調理のポイントになる代表的な素材である。

熱変性は食塩 や酸によって促進されるので、落とし卵の湯に酢を加えておくとすぐ凝固してくれる。

ゆ で卵の鍋の湯に塩や酢を入れておくと、ひびが入ったとき流れ出さないのも同じ理由から である。




大根おろしの辛味を酢で柳える




 大根はワサビ、芥子と同様に、アリルイソチアネートという化合物が酵素によって分解 して辛味を出す。

大根おろしの辛味を出したくないとき、酢を加えるとこの酵素作用が抑 えられて、辛味が出にくくなる。






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