身体に効く栄養成分・食材・調理方法
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日本に負けない豊かな海の幸と料理法。






◎成人病を予防する魚の調理法






日本では古くから庶民の食べ物として食卓をにぎわせてきたイカやタコ、イワシやサンマ といった海の幸を、南イタリアでも料理の中に巧みに取り込んできました。

西欧人には魚 介の味などわからない、と思っている人が以外に多いようですが、それは大きな間違いで す。

ナポリやパリの魚市場は、築地の魚市場もびっくりするほど魚の種類が豊富で新鮮で す。

三方を海に囲まれた南イタリアでは、食生活に魚や貝類は欠かせない存在なのです。




◆魚一つにしてもさまざまな調理法があります。


イワシを例にすると、揚げたり(frit to)、オープンで焼いたりする料理はもちろんのこと、5〜6センチほどの小イワシを 手開きにして、レモン汁といっしょに生で食べる習慣もあるほどです。



小イワシを塩とと もにオリーブオイル漬けしたアンチョビーは、パスタ料埋のソースの中に使ったり、いろ いろなイタリア料理の隠し味としても盛んに使われています。

海産物に恵まれた日本では 各地方によって、魚の料理法がさまざまな形で工夫されてきました。

日本人の魚料理への こだわりは、欧米人の理解の外にあるといっていいでしょう。

しかし、南イタリア地方の 人々の料理法には、成人病予防や健康増進といった面で、われわれもまだまだ学ぶべき点 が残されています。




・たとえば〈カジキマグロのグリル〉や〈サンマの料理〉をみてみまし ょう。これらは魚にオリーブオイルをかけてパン粉で包み、それをオーブンに入れて熱を 加える料理法です。

この料理法の長所は、調理の熱から魚を保護し、熱による変質から魚 を守ることにあります。

同時に魚の油を外に逃がさずに、焦げを抑えて調理することがで きるというメリットもあります。

日本では魚を直火で焼く調理法が好まれています。

この 調理法は魚の油が落ちるため、カロリー摂取利用を抑えられる半面で、焦げができやすく 、まだ魚に含まれる多価不飽和脂肪の酸化がうながされるという短所もあります。

魚の焦 げであるアミノ酸熱分解物の摂取は胃ガンの原因になりますし、魚油の過酸化物を過剰摂 取することは、動脈硬化や肝臓や腎臓といった臓器障害の一因になることが知られていま す。

この点でオリーブオイルを使ったオーブンでの魚料理は、とても理想的といえるので す。





◎魚の油を逃がさない工夫




魚の油を逃さない調理法は、次の諸点からしても有効です。

魚の中でもイワシ、サバ、サ ンマといった背の青い魚の食油には、多価不飽和脂肪酸の一つであるエイコサペンタエン 酸(EPA)を豊富に含んでいます。

EPAについては、エスキモー人に対して行った疫 学的な研究に端を発し、さまざまな効用が明らかにされました。

グリーンランドのエスキ モー人は、同じ北欧に住む白人と比べて動脈硬化性疾患や血栓症の罹患率が著しく低いと いう事実がありました。

それは主食としている海棲類に、EPAが豊富に含まれているた めであることが、疫学調査からつきとめられたのです。

このEPA自体についての研究も 進み、抗動脈硬化と抗血栓作用を合わせ持つ物質であることが解明されました。

EPAに は血栓の成因となる血小板の凝集能の亢進を抑えたり、動脈硬化を促進するLDLコレス テロールや中性脂肪の血中レベルを下げる顕著な働きがあることがわかってきたのです。

つまり、魚料理では魚油を逃がさない料理法が、心血管障害を予防するうえで有効という ことになるわけです。




・この点ではさきほども触れた魚のオーブン料理がもっとも適してい ます。

オーブンは熱く熱した空気(空気の放射熱)で時間をかけて素材を熱する調理器具 です。

この調理法では、素材の熱による変性を防ぐことができます。

すずきの丸ごとオー ブン焼き、をみてみると、焼く温度が200〜250℃程度なので、黒く焦がすというこ とがありません。

また、魚の油も逃がさず、香りやうまみがそのまま魚肉にとどまります 。

オーブンで調理する際、魚にオリーブオイルをかけニンニク、オレガノ、パセリといっ たハーブを載せています。

これはオリーブオイルをかけることによって、魚が熱によって 変質するのを防ぎ、また、ハーブによって香りのアップと塩分を軽減させることができま す。

この料理法による魚の丸焼きでは、魚の頭部もおいしく食べられます。

魚の頭部、と くに目の裏側に頭の働きを活性化させ、痴呆の予防になるといわれているドコサヘキサエ ン酸という脂肪酸を豊富に含んでいます。

オーブン焼きの他にもイタリアには〈紙包み焼 〉があります。

これは日本の〈奉書焼〉に似た調理法で、オーブンでの魚調理と同じよう な効果があります。

ところで、日本では魚の干物をよく食べますが、干物にはエイコサペ ンタエン酸をはじめとした多価不飽和脂肪酸が酸化した過酸化脂質が多く含まれています 。

このとり過ぎは動脈硬化や肝臓をはじめとした臓器障害、また発ガンといった面から好 ましくありません。

魚の油自体は有用なのですが、それが酸化した物質は体によくないの で、魚の食べ方には注意が必要なのです。

南イタリアではイカ、タコ、エビ、貝類も日本 と同様に食材としてよく使います。

以前はこれらの海の幸はコレステロールの含有率が高 いため、摂取をひかえようとする傾向がありましたが、実際には食べてもコレステロール 値はさほど上がりません。

その理由として、これらの海の幸には、コレステロール値を下 げる作用のあるアミノ酸の一種、タウリンがたくさん含まれているためとされています。








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