身体に効く栄養成分・食材・調理方法
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パスタの効用
南イタリアが生んだ偉大な食品
◎硬質小麦を原料としたパスタ
スパゲッティやマカロニに代表されるパスタは、南イタリア料理を南イタリア料理たらし
める重要な食材の一つで、料理全体をへルシーなものにする大きなファクターとなってい
ます。
パスタは、小麦粉を水でペ−スト状に練った生地から作った食物の総称です。
パス
タには乾燥パスタと生パスタがありますが、南イタリアでは主に乾燥パスタを用いていま
す。
それは南イタリアで古くから乾燥パスタが発達したことと、保存食として優れていだ
ためでした。
パスタは小麦粉そのものなので、栄養素の面では糖質が大部分を占めますが
、同じ糖質食品であるご飯やパンなどと比べると、いくつかの長所があることがわかって
きました。
パスタを特徴づけているのは、古くから南イタリアで栽培されているデュラム
(Durum)小麦という硬質小麦で、パスタ製造の原科となるのはこれを粗く挽いたセ
モリナ(Semolina)粉です。
一般的に粒が堅い硬質小麦は、軟質小麦よりタンパ
ク質を多く含んだ強力粉に加工されます。
小麦粉を練った時には、小麦に含まれるグルテ
ンというタンパク質によって、特有の弾力と粘りが出てきます。
同じ穀類でも米やトウモ
ロコシなどには、グルテンが含まれないため、このような加工はできません。
小麦の中で
もデユラム小麦は、グルテンの量が多いために腰のあるパスタができるのです。
南イタリ
アではセモリナ粉でパスタを作ることが、法律で義務づけられています。
パスタはこれを
水で練って、圧力機で圧縮し、細い出口から射出成形させる製法で作られています。
それ
を自然乾燥させれば乾燥パスタの出来上がり、というわけです。
・ところで、パスタを料埋
する時に気をつけなければならない点をいくつかあげてみましょう。
@まずはパスタのゆで
加減。これはアル・デンテ(al dente)が基本です。
アル・デンテとは、乾燥パ
スタを歯ごたえのあるパスタに仕上げるためのゆで加減のことで、〃歯にまとわりつく〃
という意味のイタリア語に由未しています。
アル・デンテの状態で食べることは、おいし
く食べるうえで欠かすことができませんが、実はへルシーに食べるうえでもきわめて大切
です。
というのもアル・デンテにすると、ソースとからめた時にパスタがよけいなソース
を吸うことがなく、カロリーを抑えられるのです。
また、必然的によく噛んで食べること
になりますから、満足感も得られ食べ過ぎを防ぐ効果も期待できるわけです。
Aもう一つ、
パスタをどのようなソースでからめるかも重要です。
基本はニンニクをオリーブオイルで
ソテーしたソースにからめることにあります。
乾燥パスタをアル・デンテにゆでて、オリ
ーブオイルベースのソースであえることは、ロングパスタを使った南イタリア料理の伝統
的な調理法です。
この方法ですと、デュラム小麦の持つ小麦本来の香りを引き出しオリー
ブオイルの風味がそれと溶け合い、この上なくおいしく、また、健康的な食べ方なのです。
◎栄養学的にも優れたパスタ料理
南イタリアで食されている伝統的パスタ料理は、後述するように栄養学的にみてとてもへ
ルシーな料理です。
ところが残念なことに、世界のあちこちに伝わったパスタ料埋は、高
カロリーの高飽和脂肪食に変身してしまいました。
心血管障害を抑えるといった点では、
好ましくないものが多いのです。
同じイタリアでも北イタリアでは、乾燥パスタよりも生
パスタが伝統的に好まれています。
小麦粉に卵を加えたフェットチーネ(Fettocc
ine)などがその代表ですが、この地域ではこれにクリームやバターソースをからませ
て食べるため、どうしても高カロリーになってしまいます。
米国を経由して日本に伝わっ
たパスタ料理もパスタを調理の直前でなく、あらかじめゆでておき、調理のときにもう一
度温めて使います。
このためパスタは芯のない軟らかいものとなってしまい、これをバタ
ーで炒めたり、肉類を大量に使ったソースとあえたりするので、高カロリー、高脂肪食に
なり、ヘルシーフードとはかけ離れたものになってしまいます。
こうしだパスタ料理は、
パスタそのものの味を楽しむという本来の食べ方から大幅に逸脱しています。
極端にいえ
ば、パスタに載った具のほうが主役になってしまっている感じが拭えません。
蕎麦を例に
するまでもありませんが、本当に蕎麦の味を楽しむには、ザルとかモリにして食べるわけ
です。
本書でいえばスパゲッティ アリオ オリオ エ ペペロンチーノなどが、まさに
〃ザル〃的な食べかたで、パスタそのものの味を楽しむ一品といえましょう。
いずれにし
てもパスタ料理には肥満、動脈硬化を助長するという不名誉なレッテルが貼られてきたの
は事実です。
しかし、私はこれはパスタ料理本来の姿ではないということを、声高に叫ば
ずにはいられません。
・それでは、パスタを栄養学的見地からみてみましょう。
まずパスタ
の成分は糖質が70%強を占めています。
かつて糖質のとり過ぎは、肥満や糖尿病の原因
とされ、糖質の摂取をなるべく抑えるべきだとされました。
しかし、現在では健康を維侍
するには、総摂取カロリーの55〜60%を糖質でとるべきだ、とされています。
そして
その糖質も水溶性繊維の多い複合糖質からとることが勧められています。
日本食でいえば
、ご飯をしっかり食べることがこれにつながります。
それも精白米でなく胚芽米、あるい
は玄米を混ぜた米を硬めに炊いて、よく噛んで時間をかけて食べることが理想的な糖質の
とり方といわれるようになりました。
これをイタリアの食事に当てはめれば、〃南イタリ
ア風にパスタを食べること〃が埋想的な糖質のとり方といえます。
つまりパスタをアル・
デンテにゆで、具を少なくしたオリーブオイル主体のノースでよく噛んで食べるというこ
とです。
パスタは糖質を主として供給する食品群の中にあって、栄養学的に優れた点をい
くつも指摘することができます。
◆第一は糖の吸収が緩やかであるということです。
食後の血糖値上昇の程度を示す目安に
、グライセミックインディクス(glycemicimdex)という指標があります。
ちょっと難しくなりますが、これは比較する食品を被験者が摂取したあと、血糖値を一定
の時間間隔をおいて測定し、その値の総和を同一カロリーのブドウ糖を摂取したあとの血
糖値の総和で割ったものです。
この指標によれば、他のさまざまな糖質供給食品と比べて
、パスタの糖質はとても緩やかに体に吸収されていくことが実証できます。
同じ糖質を供
給する食品であっても、種類によって血糖値の上昇程度が異なり、その中でもパスタがも
っともグライセミックインディクスが低くなっていることがわかるのです。
つまりパスタ
を食べると、食後の急激な血糖上昇が抑えられ持続したエネルギーの供給ができるという
わけです。
パスタはこのような性質上、糖尿病患者の血糖値のコントロールにも都合がよ
いのです。
◆第二の優れた点はパスタが食物繊維を多く含んでいることにあります。
食物繊維とは、
摂取しても消化酵素によって分解されず、便中に排出される難消化性成分の総称です。
消
化されないわけですからカロリーはゼロ。
しかし、大腸ガンや心血管障害、糖尿病患者が
増えている原因の一つとして、この食物繊維の摂取量の減少があげられているほど、体に
とっては有用な成分です。この効用をまとめてみると、
@腸の働きを活性化させ便通をよくする。
A腸管からのコレステロールの吸収を抑える。
Bブドウ糖の吸収を緩やかにする。
Cある種の発ガン物質の吸収を抑える可能性がある。
などで一言でいうと腸のそうじ役をしていて、成人病の予防に大きく関係していることが
わかります。
このように栄養学的に見直され、摂取が勧められている食物繊維を多く含む
パスタですが、近年、さらにその含有量を増やそうという研究が続けられてきました。
そ
の結果、精製されていない全粒小麦粉を使ったパスタや、食物繊維の多いホウレン草を練
り込んだパスタ、また可溶性食物繊維であるガー(Guar)を混ぜたパスタなどがすで
に商品化されています。
治療の現場でも、こうした食物繊維の含有量を増やしたパスタを
高コレステロール血症や糖尿病患者に用いる試みがなされ、血中LDLコレステロールの
低下や血糖値のコントロールに成果をあげています。
◆第三の優れた点は、カルシウムや鉄分、ビタミンB1やナイアシンを多く含んでいると
ころにあります。
特に鉄分とカルシウムは、精製パスタでも白米の実に3倍もの含有量が
あります。
ですからパスタは料埋の仕方さえ工夫すれば、へルシーフードの極め付きとも
いえる食品なのです。
南イタリアの伝統的料理が、へルシーフードとして注目されている
ゆえんです。