身体に効く栄養成分・食材・調理方法
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オリーブオイルの特性
◎地中海沿岸地方の歴史とともにある油
南イタリア料理に欠かせないのがオリーブオイルです。
オリーブオイルは南イタリアだけ
でなく、地中海沿岸地域の歴史・文化とともに生まれ育ってきました。
オリーブの木は神
から授かったものとして、古来からこの地域では〈大地の恵み〉〈平和の象徴〉とされて
きたのです。
国連の旗にオリーブの枝が描かれているのも、こうした歴史的な背景がある
のです。
オリーブの木の実から搾ったオリーブオイルは人類が最初に使った油脂であり、
地中海地方の食生活にとっては偉大な存在です。
人類はオリーブオイルの他にも、ひまわ
り、大豆、とうもろこし、ゴマなどの植物から採った油や、バター、牛脂、豚脂などの動
物からとった脂を料理に使ってきました。
しかし、数ある油脂と比較してもオリーブオイ
ルには、他に比ベて優れた点がいくつもあります。
とりわけ、先進諸国で問題となってい
る成人病の予防といった面では、オリーブオイルにまさる油脂はありません。
◎もっともナチュラルで人間にやさしい油
オリーブオイルというのは、簡単にいえばオリーブの実を搾った油性の〃ジュース〃です
。
製法はきわめてシンプルで、現在でも何千年前の製法と基本的には変わっていません。
植物油の多くは、種子に化学的な処理を加えて抽出しますが、オリーブオイルはナチュラ
ルな方法でできます。
このため自然の風味が十分に残り、食物そのものの味を引き立てる
ことができるわけです。
オリーブオイルは植物油ですから、飽和脂肪酸の多い動物性脂肪
と異なり、不飽和脂肪酸がその成分のほとんどを占めています。
一般的に飽和脂肪酸が多
い油脂は、牛脂、バターなどのように固体で、不飽和脂肪酸が多い植物油は液体です。
オ
リーブオイルももちろん植物油で液体の形状をしていますが、成分上では他の植物油にみ
られない特徴がいくつかあります。
まず、オリーブオイルの油脂としての脂肪酸構成をみ
てみると、飽和脂肪酸13・1%、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸75%、多価不飽
和脂肪酸11・2%(リノール酸10・4%、リノレン酸0.8%)という構成になって
います。
これを母乳の脂肪酸構成と比べると、食用油脂の中でオリーブオイルがもっとも
母乳に近いことがわかります。
地中海地方では古くからオリーブオイルを、離乳食に使っ
ているのもうなずけるところです。
また、母乳ほど飽和脂肪酸(この脂肪酸摂取量が多い
と、生体内でコレステロールの合成が高まり、動脈硬化の原困の一つである血中コレステ
ロールを高める)を含まず、その代わりにオレイン酸をより多く含有しています。さらに
、母乳と同じようにリノール酸、リノレン酸といった多価不飽和脂肪酸をほどよく含む他
、人間の体を酸化から守るビタミンEをはじめとした抗酸化物質がかなり含まれているこ
とも大きな特徴です。
つまり製法の面だけでなく、脂肪酸の組成の面からも人間に優しい
へルシーなオイルであるということができるわけです。
オリーブオイルは油脂ですが、胃
に負担がかからないため、昔は胃炎や胃潰瘍の治療にも使われていたことも、その製法や
組成を考えてみると納得できます。
◎動脈硬化を二重に予防するオリーブオイル。
オリーブオイルを油脂として使う地域では、動物性油脂を使う地域に比べて、動脈硬化を
基盤にした心血管障害が圧倒的に少ないという、大規模な疫学調査の結果が出されました
。
それ以後、オリーブオイルがどうして動脈硬化を抑えるのかについて、盛んに研究が行
われるようになりました。その結果、オリーブオイルは、
@動脈硬化を促進させるLDLコレステロールの血中レベルを低下させるが、動脈硬化を
抑えるHDLコレステロールは低下させない。
A動脈硬化の原因の一つである過酸化脂質の生成を抑制する。
ということが明らかにされ
ました。
つまり、オリーブオイルは動脈を硬化から二重に守るというわけです。
第一の作
用は、オリーブオイルの主成分である一価不飽和脂肪酸のオレイン酸によるものです。
こ
のオレイン酸の分子構造は、コレステロール値を高める飽和脂肪酸のステアリン酸と同じ
18個の炭素数を持っています。
両者の違いは、構造式の上でCH3側から数えて9番目
の炭素原子が水素原子で満たされていないために、二重結合が一つあるという点だけです
が、オレイン酸はステアリン酸とは逆に、動脈硬化を促すLDLコレステロール値を下げ
る働きがあることが確かめられています。
植物油に多く含まれるリノール酸にもLDLコ
レステロール値を下げる効果はありますが、リノール酸はHDLコレステロール値を減ら
してしまうというマイナス面も持っています。
つまりオレイン酸には、LDLコレステロ
ール値だけを下げ、HDLコレステロール値を下げないという優れた特徴があるわけです
。
第二の作用はオリーブオイルが脂肪酸の他に、多量のビタミンEをはじめとした抗酸化
物質を含んでいることによるものです。
この抗酸化物質は酸化されやすい生体を酸化から
防御するのに役立っています。
生体の構成成分が酸化されると、さまざまな悪影響が人体
にひき起こされることが知られています。
専門的な話になりますが、たとえば酸化したL
DLコレステロールは、アテローム性動脈硬化症の病巣形成に特に深く関係しているとい
う事実が確認されているほどです。
オレイン酸は不飽和脂肪酸ではありますが分子構成上
、二重結合が二つ以上ある多価不飽和脂肪酸と比べて酸化はされにくく、そのうえ、オリ
ーブオイルには抗酸化物質を多く含んでいるため、生体にとって不都合な過酸化脂質の生
成を抑えるといった面で、多価不飽和脂肪酸を多く含むサフラワー油、ヒマワリ油といっ
た植物油に比べて有利です。
◎加熱による変化を受けにくいオリーブオイル
オリーブオイルのこうした特性は、加熱して料理に使う際に生かされます。
多価不飽和脂
肪酸の含有量の多い他の植物油に比べて、加熱による物理化学的変化が少なく、酸化現象
も起こりにくいのです。
加熱によって煙がでる温度(煙点)も、多価不飽和脂肪酸の含有
量の多い植物油より高く、加熱に対して安定した油といえます。
もっとも、オリーブオイ
ルを使って揚げ物をしたりソテーしたりする時に、煙が出るまで熱するのは体にとってよ
くありません。
オリーブオイルも生き物です。
優しく大切に扱うことを心がけるべきです
。
一般的にいって植物油や魚油は不飽和脂肪が主体のため、空気、熱、光に弱いのです。
オリーブオイルも暗所に、高温を避けて保存する必要があるでしょう。
オリーブオイルに
ついて最後に一言。
オリーブオイルは体にいいとはいっても、やはり脂質の一つであるこ
とには変わりません。
脂質は1グラムが9キロカロリーで、糖質やタンパク質の2倍以上
の熱量を持っています。
とりすぎは肥満を助長しますので要注意です。オリーブオイルを
適量使って、そのすばらしい風味を料理に生かす工夫をすることも健康を維持するうえで
は大切です。