身体に効く栄養成分・食材・調理方法
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疲労はどうして起こるか?
試合に限らず連日のハードトレーニングがもたらす精神的・生理的な圧迫はかなり大きな
ものがあります。
スポーツはこのように精神的緊張をあたえ、生理的な疲労をもたらすな
ど、一種のストレスとして選手にいろいろな影響をあたえます。
ストレスがあるとき、体
はいつも決まったパターンで反応します。
運動中に起こる筋肉疲労の発生にはいろいろな
原因がからんでいますが、原因として、運動のためのエネルギーづくりの過程で生成され
る乳酸とアンモニアが体内に蓄積することがあげられます。
筋肉に乳酸がたまると酸性度
が強まり、普通は中性から弱アルカリ性で高い活性を発揮する酵素群が、逆に活性を低下
させ、筋肉運動に必要なエネルギーが合成できなくなります。
乳酸の蓄積による筋肉の酸
性化は、このようを理由によって筋肉運動を停止させ、運動による筋肉疲労をもたらすの
です。
筋肉への乳酸の蓄積は、ウエイトリフティングのようなタイプの運動でも、スプリ
ントランニングやサイクリングなどの強い運動、さらにはマラソンのような運動でも、い
ろいろな程度で起こります。
そして、筋肉の乳酸濃度の上昇はpHの低下と直接的な関係
にあることが分かります。
陸上や水泳、ボートその他、多くのスポーツでは一日二回も競
技が行われることがあります。
一回目の競技で生じた生埋的変化を速やかに回復させてお
くことは、二回目の競技の成績や記録を高める上で大切です。
乳酸を速やかに処埋するこ
とは、筋肉と血液のpHを正常化して、筋肉はもちろんのこと全身の組織の代謝を正常化
する上で重要です。
五○秒間の全力自転車エルゴメーター運動で発生した乳酸の処埋につ
いて、整埋運動として、最大の努力の三五パーセント程度の軽い自転車エルゴメーター運
動を四○分間行うのと、全力の六五パーセントにあたるかなり強い自転車エルゴメーター
運動を四○分間やった場合、そして、まったく運動をせずに体息しながら回復を待った場
合の三つの条件について比較をした実験があります。
それによると、血中乳酸の消失速度
が遅かったのは、かなり強い運動(六五パーセント)をしながら回復を待ったときであっ
て、何もせずに休息状態で回復を待ったときは、それよりやや早い乳酸の消失がみられま
した。
しかし、血中乳酸が最も速やかに消失したのは三五パーセントの軽い運動をしたと
きでした。
このことからも分かるように、全力運動をした後では、そのまま体息するので
はなく、必ず軽いジョギングをするなどして、しばらく血液循環を高めに維持して、乳酸
の処理を早めることが必要です。
筋肉に発生した乳酸は筋肉細胞でピルビン酸に転換され
、炭酸ガスと水に分解されるか、ピルビン酸からアミノ酸のアラニンに転換したあと筋肉
で利用されて血中に放出されます。
血中の乳酸は心臓をはじめ全身の細胞で筋肉と同様の
代謝を受けるか、肝臓でアラニンに変わったあとぶどう糖に変身し、血糖となって血中に
放出され、再び筋肉やその他の組織に取り込まれます。
筋肉で生成した乳酸がアラニンと
なって肝臓に向かい、ぶどう糖に変身して再び筋肉に戻る流れは「ぶどう糖−アラニン・
サイクル」とよばれます。
いずれにしても、乳酸の処埋にはB1、B2、B6、パントテ
ン酸、ナイアシンなどのビタミンが必要なので、競技終了直後にこのような水溶性ビタミ
ンをとったあと、乳酸消去のための軽い運動に入るのがより合埋的といえます。
運動によ
って血中のアンモニア濃度が上昇します。
疲労に至るまでの腕の屈伸運動では、運動前に
九四・四(umol/l)であった濃度が運動後には一四九・九に上昇し、
トレッドミル
ランニングでは三七・八から六八・一〜七七・九、
自転車エルゴメーター運動では九○・
九まで上昇したと報告されています。
アンモニアは筋肉で解糖系を刺激して乳酸生成を促
し、筋の興奪性を低下させ、脳神経系に作用して筋肉群を硬化させることなどによって、
運動時の疲労の原因になると考えられています。
肝臓はアンモニアを尿素に転換する場で
あって、アミノ酸分解により生成するアミノ基を、ケトグルタル酸に結合させてグルタミ
ン酸にしたり、ピルビン酸に結合させてアラニンに取り込み、アンモニアの無毒化に貢献
しています。
アンモニアと運動による疲労の開係は、まだ十分に分かっていませんが、次
の二つのことが考えられます。
一つは、アンモニアの脳に対する作用で、脳にアンモニア
が蓄積すると、グルタミンの生成が増してグルタミン酸が減少します。
グルタミン酸は神
経細胞の活性の調節物質アミノ酪酸(GABA)の原料なので、グルタミン酸の減少はG
ABAの減少を引き起こして、神経系の機能低下をもたらします。
これが、運動中に蓄積
するアンモニアの中枢的疲労作用と考えられます。
もう一つは、アンモニアの筋肉に対す
る作用で、アンモニアによるホスホフルクトキナーゼの活性化は、解糖系を活発化して乳
酸の生成を促し、筋肉のpHを低下させて、筋肉疲労をもたらします。
pHの低下は、エ
ネルギーの生成と利用を低下させて、筋肉疲労の原因となりますが、アンモニアはそのき
っかけをつくっていることになります。