身体に効く栄養成分・食材・調理方法
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ドリンク剤の甘味料は要注意







肥満傾向の目立つ現代人の食生活は、砂糖やぶどう糖などを含んだ甘味料の飲用をさける 風潮が支配的です。

糖分はインシュリンの分泌を促して、体脂肪の合成・蓄積を刺激し、 肥満の元凶と目されるからです。

具体的には、コーヒーや紅茶の砂糖パックの砂糖量がこ の二○年間で一○グラムから六グラムに減ったように、砂糖の摂取そのものが減少してい ます。

これに対して砂糖よりも約一・七倍甘味度が高い果糖を砂糖に混合して、なるべく 少量の糖分で甘味を十分に味わわせる工夫もされています。

果糖は血中インシュリンを上 昇させる作用が小さいので、甘味料として広く使われています。

砂糖や果糖などの天然甘 味料に加えて、
砂糖の二五○〜一二○○倍の甘味を持つステビオサイド(天然甘味料)、
サッカリン(砂糖の一二○○倍の甘味度)、
マルチトール(還元麦芽糖、砂糖の○・八倍 の甘味度)、
フラクトオリゴ糖(ネオシュガー、砂糖の○・八倍の甘味度)、そして、
ア スパルテーム(パルスイート、砂糖の二○○倍の甘味度)をどの、低カロリー性や非栄養 性の人工甘味料が代替甘味料として飲料用に利用されています。

砂糖は消化・吸収された あと、全身の細胞でエネルギー源として利用されて、グリコーゲン合成に利用されます。

また、砂糖はインシュリンの分泌を促すので、糖代謝をより積極的にすすめる栄養効果を もちます。

果糖もエネルギー源となるほか、グリコーゲン合成の材料になります。
これら は、スポーツで疲労したとき、疲労回復の目的で飲む甘い飲料に期待できる作用です。

し かし、ステビオサイド、マルチトールやフラクトオリゴ糖などは、体内で利用されなかっ たり、利用されてもその程度は僅かで、砂糖や果糖のように糖質としての作用、つまりグ リコーゲンの材料となるとか、インシュリン分泌を促すなどの作用は期待できません。

以 上のことから明らかなように、砂糖や果糖などの甘味料が使用されていないドリンクの甘 さには、砂糖や果糖のもつ運動後の疲労回復作用を期待できません。

したがって、スポー ツドリングなどの飲料を飲むときは、容器のラベルをよく読んで、使用されている甘味料 の種類を確認することが大切です。




○マラソンでスパートを成功させるスーパードリンク


昭和五七年二月の東京国際女子マラソンは、マラソンの勝負どころの三五キロでスパート を成功させるドリンクの栄養処方のあり方を教えてくれた意義深いレースでした。

この大 会では、ロサンゼルスオリンピックの日本代表として活躍した佐々木選手と、イワーノワ 、ツフロの二人のソ連選手が激しく勝負を争いました。

スタートしてから二○キロ地点ま で、他を離してこの三選手がトップグループを形成したのです。

ソ連の選手はそれまでの 間に二〜三回、水分の補給をしました。
そして、二三キロ付近でソ連の二選手はややスピ ードを上げて佐々木選手を引離しにかかりました。
ニ五〜三ニキロで、ソ連選手たちはそ れまでの「ただの水」をオレンジジュースの「スペシャルドリンク」に変えて飲みました 。
その後、二人のソ連選手は佐々木選手を一方的に引き離し、結果はイワノーワ選手が優 勝(二時間三四分二六秒)、途中で足にけいれんを起こしたツフロ選手が二位、佐々木選 手はフランスのラングラス選手にも扱かれて四位に終わりました。

このレースのなかでみ せたソ連選手の見事なスパートの原動力こそスペシャルドリンクの秘められた効果だった のです。

イワノーワ選手は、三○〜三五キロの五キロを一七分四一秒という、それまでの ラップタイムを三○〜四○秒も上回る驚異的なタイムで走破しました。
レースの後半から 終盤にみせたスビードの維持とスパートの切れ味の良さは、基本的には二人のソ連選手の 優れた素質と無駄のない走法、トレーニング効果、さらに合理的な食生活に支えられたも のといえます。

しかし、それに加えて、残り三五分のタイミングで補給したスペシャルド リンクの素晴らしい効果は大いに注目されます。

マラソンのような持久性ランニングでは 、脂肪酸もかなりよくエネルギー源として利用されますが、途中でオレンジジュースのよ うに糖分に富む飲み物をとると、一五分くらいたって筋肉をはじめ全身のエネルギー代謝 は、一気にぶどう糖やグリコーゲン中心に代わります。

脂肪酸のエネルギー代謝はその時 点から急激に抑制されます。

スパートのように、筋肉への酸素供給が十分にできなくなる 条件下では、ぶどう糖とグリコーゲンが重要なエネルギー源です。
ぶどう糖や砂糖を飲み 物として補給することは、エネルギー源の補給となるほかに、インシュリンの分泌を促し て筋肉へのぶどう糖の取り込みを活発化する効果もあります。

ところで、糖分をレース中 にとることが有効に作用するには、スタートから中盤を過ぎるまで、グリコーゲンを節約 して乳酸の発生があまり高くならないようにエネルギー代謝が運転されていることが肝心 です。
もし、それまでに乳酸が筋肉中に蓄積していると、外からのぶどう糖や砂糖の補給 でいっそう乳酸の生成が高まり、筋肉が酸性化に耐えられないからです。

それを防ぐため に、脂肪酸のエネルギー代謝を十分に活発化した条件で、前半を走り込んでくることが下 地として必要です。

マラソンにかぎらず、競技の後半の勝負どころで瞬発的なパワーを発 揮するには、ぶどう糖や砂糖を含むオレンジジュースのような飲み物を考えるのはたいへ ん合理的です。









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