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JAPANESE






土の香りのする赤ワインと焦げた秋刀魚の出会い。







最後は応用問題。

日本の秋の代表的な味覚、秋刀魚に合わせるワインを考えてみよう。

魚 だから白ワインと反射的に決めてしまってはいけない。

ここまで述べてきたように、ワイ ン選びは、合わせる料埋の味や香りを想像し、ワインをどう合わせるかと考えるところか ら出発する。

ステーキに赤ワインが合うのは、赤い色をしているからではなく脂肪の甘み と相性のいい渋みが豊かに含まれているからなのだ。

脂のしたたるような秋刀魚にも同じ ように、渋みのある赤ワインが合うのでは、という思いつきがワイン選びの第一歩だ。

脂 の乗った身の旨みもそうだけれど、忘れてならない秋刀魚のもうひとつの魅力は苦味だ。

焦げた皮の苦味や、それから内臓の苦味がなければ、秋刀魚の味わいは半減してしまう。

この苦味を生かすようなワインを選択したい。

こういう具合に考えた結論はメルロー種の 赤ワイン。

この品種から造ったワインには、かすかな鉄分の香りが感じられる。

鉄分の香 りとは、わかりやすくいえば血の香りでもある。

この香りが秋刀魚の内臓の苦味を生かし てくれるというわけだ。

もちろん秋刀魚には白ワインという選択も可能ではある。

けれど 秋刀魚の香しい苦味が口の中で広がっている状態で、白ワインを飲むと、それが跡形もな くきれいさっぱり流されてしまう。

せっかくの苦味を洗い流してしまってはもったいない 。

メルロー種の穏やかな渋みで包み込んでやれば、その余韻はしばらく口中でたゆたった 後にゆっくりと消えていく。

さらにワインの持つ鉄分の香りと、内臓の苦味の出会いによ って生まれる風味によって、秋刀魚の味わいはより奥深いものになる。

これは正直言って 、こたえられない体験だ。

この秋、ぜひ一度はお試しあれ。

ちなみに、日本の秋の味覚に は日本のワインをという読者には、〈シャトーメルシャン信州桔梗ケ原メルロー〉(82 年で8000円)をお薦めしたい。絶品である。






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