本尊修復過程①
本尊様の修復過程を、順次「補修作業報告書」に基づいて報告します。
全体説明
□対象
釈迦如来坐像 割1尺
脇侍像(文殊菩薩像・普賢菩薩像) 割5寸
□破損状態
・全体に埃などの汚れが堆積し、尊容を損ねていた。
・下地塗りの劣化にともなう木地との剥離が進行しており、尊顔部にも剥離が見受けられ、尊容を損ねていた。
・光背は接合強度の低下により脱落や部分的な欠損が見受けられ、非常に不安定な状態であった。
・葺蓮華座(ふきれんげえざ)は一部の蓮弁が脱落し、多くの蓮弁が欠失していたことでグラグラと不安定な状態であった。
・釈迦像台座框(かまち)では、接合部の緩みにより隙間が生じていた。また框透かし彫りの一部が欠失、破損が見受けられた。
・脇侍像禽獣座(象・獅子)は、接合に用いられていた膠(にかわ)が劣化し、完全に接合強度が失われていた。
□作業概要
・仏身、台座には締め直しを中心とした補修作業を施した。
・光背、禽獣座には下地及び塗箔を一新する修復を施した。
●仏身
・脇侍象宝冠など錺(かざり)金具を取り外し、堆積した埃を柔らかな刷毛を用いて払い落とした。
・取り外した錺金具は洗浄し、鍍金(ときん)直し修理を施し、古色で仏身と調和させた。
・尊顔部などに表れていた剥離を固定し、部分的に金粉を蒔き付けて周辺箇所と調和させた。
・膝や袖などの破損箇所には、人工木材を充填して整形し、部分的に塗箔・古色を施し、周辺箇所と調和させた。
●光背
・劣化した塗箔層を除去した。(堅牢な状態を保つ箇所は、研磨して整えた)
・必要な箇所を解体して組み直し、欠損箇所に木材を接いで削り合わせた。
・光背ホゾを調整して、安定性を向上させた。
・金箔下地塗りを施し、金箔を置き直した。古色で仏身と調和させた。
●台座
・葺蓮華座は脱落部分を組み直し、欠失していた蓮弁を新補した。
・欠失していた框や敷茄子(しきなす)の透かし彫りを新補した。
・台座内部に補強材を組み込み、強度を向上させた。
・釈迦像増し台は、高さを下げて新調取り換えし、脇侍像地擦りりを含め塗り替え、古色仕上げとした。
・補修箇所及び新補部材に塗りを施し、金箔を置き、古色で周辺箇所と調和させた。
●禽獣座
・部材解体し劣化した下地層を除去。玉眼を描き直して全体を組み直した。
・破損部を数利し、下地彩色・塗箔を一新し、古色で仏身と調和させた。
修復前 | 修復後 | ||
釈迦如来 | → | ||
釈迦如来 光背 |
→ | ||
普賢菩薩 | → | ||
文殊菩薩 | → |
釣月寺和尚の一日一題 話題提供 【令和5年12月28日(木):第4623号】