浜松市西区・龍雲寺 地獄極楽図⑯  場所の地図 

 浜松市西区にある龍雲寺【第3899号】にある地獄極楽図の第十六図で、これが最後になります。

 第十六図の解説は次のように示されていました。

第十六図 極楽3
 極楽の門の左下で鬼に何か案内を受けている者がいる。長い期間を経て、地獄の苦しみを何度も味わい、やっと極楽の入口にたどり着いたのだが、鬼に、おまえはまだ駄目だ、と最初からやり直す様に指示されたのである。ふりだしにもどるのである。罪多く暮らしていると、残された者が、どれだけ祈ろうと地獄の苦しみが続いていくのである。
 地獄極楽の世界について、過去の資料を参考に解説してきたが、現代の多くの人は、この世界を物語の世界としてとらえ、現実の世界として信じる者は少ない。
 現代は科学的な時代となり、多くの事が解明されてきた。それが故、科学的でない説明のつかないものは、ないものとして扱われている。昔は、この絵図を見たものは、こうなってはいけないと心底生き方を反省したものである。明日、太陽が昇ってくるのか、それさえも不確かな暮らしだったからこそ、日が昇るだけで感謝をし、何もわからず、目に見えない世界も多いからこそ、多くのものに畏れをもって暮らしていた。現在は、自然についても、天気予報などもあり、なにか自然まで自由になる気までしてくる。天変地異が起こった後で、はじめてそこで不確かな世界を感じ、畏れを抱く。そんな暮らしではいけない。この絵図を見て、様々な反省を我々はすべきではなかろうか。

≪令和3(2021)年10月26日奉拝≫

釣月寺和尚の一日一題 話題提供 【令和4年3月3日(木):第3973号】