方広寺表参道 椎河龍王 場所の地図
方広寺の山門から本堂へ向かう表参道の途中に、椎河龍王(しいがりゅうおう)を祀った祠があります。祠の前に、次の説明文があります。
開山さま(無文元選禅師)が中国でのご修行を終えて帰国され、行脚の途中浜松市天竜区鹿島のあたりで河を渡ろうとされた際、たまたま暴風雨のあとで増水し、渡河に難儀をされた。この時、龍神が現われて、その身を橋として、開山さまをお渡ししたという。
その龍神は開山さまがこの方広寺に入られたあと、また姿を現して、「どうぞ、皇子禅師のお徳で、このいまわしい蛇身の苦しみから解脱させて下さい」と懇願、開山さまがこれを哀れんで、経典でその蛇身を撫でられたところ、たちまち五百年来の苦しみから脱して昇天した。
その龍神は、嘗て桓武天皇の命ををうけた将軍坂上田村麻呂が蝦夷征伐のため関東へ下向した折、美女と化して将軍と契りを結び、一子を産んだという遠江国袖ケ浦磐田の海の大蛇で、その後、磐田の里の椎河渕に身をひそめ、里人から椎河大龍王と畏敬されていたもので、開山さまのお徳で五百年来の蛇身から脱することが出来た龍王は「永久にこのお山の水を守護します」と開山さまにお誓いした。
方広寺の裏山にある珠の窪は、龍神が持っていた珠を埋めた所といい、また奥山にある地名の、尾沢、鰭田(ひれだ)、胴満渕などはいずれも龍神に因んだ名称といわれる。開山さまに誓った龍神の霊験はあらたかで、方広寺はもちろんこの奥山の里は、以来一度も水不足で悩んだことはなく、また旱天の際、この椎河龍王に請雨法を修してお祈りすれば必ず雨に恵まれるので全国からお参りする人が絶えない。この椎河龍王と半僧坊大権現、それに七尊堂を合わせて「奥山三社」という。
≪令和3(2021)年2月14日撮影≫ |