脇付

 毎年、数多くの年賀状が届きます。そして、寺院宛の脇付(わきづけ)には、独特のものが用いられます
 脇付とは、手紙を出す相手の宛名に書き添えて、敬意を表す語のことで、脇付の多くは、名宛人に直接送付するのを避け、秘書などの侍従等に手紙を送るという謙譲の意味があります。一般文書で組織や集団宛に用いられる「御中」は、代表的な脇付です。
 寺院住職宛には、「老丈室侍衣下」または「老丈室侍史下」がよく使われます。「老丈室」は住職のこと、「侍衣」は、衣鉢侍者の略で、師家の衣服、資具、金銭を司る役。転じて、一派の管長の秘書役のことです。「侍史」は、そばに仕える書記である右筆(ゆうひつ)のことです。ですから、「侍衣下」は、秘書を通して、「侍史下」、右筆を通して文書を送るという意味です。
 また、公用文書等で、「親展」とか「○○在中」という、手紙の内容や添付書類についての説明を行うためのものは「外脇付け」といい、脇付けよりもさらに左下の位置に書き添えるのが通常です。

釣月寺和尚の一日一題 話題提供 【令和3年1月3日(日):第3549号】