トイレの守り神ー烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)
現在、昨年の台風による倒木被害で破壊された本堂のトイレを修復しています。その旧トイレの入口に、トイレの守り神といわれる烏枢沙摩明王が祀られていました。修復されたトイレの入口にもお祀りすべく、その長年埃にまみれていた烏枢沙摩明王を、きれいにすべく、埃をとり、汚れた箇所の清掃をしました。
烏枢沙摩明王は、人間界と仏の世界を隔てる天界の「火生三昧」(かしょうざんまい)と呼ばれる炎の世界に住んでいるとのことです。全ての不浄を焼き払い、浄化させる火神です。人間界の煩悩が仏の世界へ波及しないよう、聖なる炎によって不浄、つまり煩悩や欲望を焼き尽くします。そして、慈悲の心を怒りのパワーに変えて、人々を救い、目覚めさせようとする明王とのことで、五大明王の一尊です。そして、世の中の汚いものを全て焼き尽くす火神ということから、きれい好きの明王さま、トイレの神さま、ということになりました。日本には平安時代に伝えられ、その不浄を除くという力を借りるために特に密教や禅宗などの寺院のトイレ(東司/とうす)などに烏枢沙摩明王が祀られました。
1つの面に3つの目、手が4本でそれぞれに宝剣、羂索(けんさく:五色の糸をなって作る縄状の仏具)、三鈷杵(さんこしょ:杵の形をした仏具)、棒を持つ1面4臂(一つの顔に4本の手)で、全身火炎に包まれている姿が一般的とのことです。髪の毛は、逆立てた焔髪(えんぱつ)で、上部に蛇が取り巻いているものが多く、タヌキのような蜜目(みつもく)という黒目が小さな目をしているのが特徴的です。主に明王が左足を上げて片足で立った姿を多くみます。
烏枢沙摩明王の足元には何やら動物のようなものがいます。合掌し、正座をしていたり、烏枢沙摩明王に踏みつけられたりしているのは、「猪頭天(いとうてん)」といい、人の身体で頭がイノシシをしています。態度の悪い鬼神を烏枢沙摩明王が調伏している様子が表現されています。参考HP「仏像リンク」。
当寺が所有する烏枢沙摩明王は、平成10年に購入したとの記録がありました。そして、1面4臂で、三鈷杵、剣、どくろを持っており、一つの手は何も持っていません。なくなったものと思われます。もう数日で、トイレの内装が完成します。その時、トイレの入口にお祀りしたいと思います。
この烏枢沙摩明王の像がある禅宗寺院として、高岡の瑞龍寺【第390号】、袋井の可睡斎【第1418号】が有名です。
≪令和元(2019)年7月25日撮影≫ |
釣月寺和尚の一日一題 話題提供 【令和元年7月28日(日):第3024号】