甘露の法門

 今年も8月1日から檀家さんのお家でご先祖様の供養をするお施餓鬼会の棚経が始まっています。施餓鬼会は、字のごとく「餓鬼に施す会」です。「餓鬼」とは、地獄道の次に苦しい世界である餓鬼道に落ちていつも飢えと渇きに苦しんでいる亡者をいいます。そんな、自分の力ではどうしようもない餓鬼に飲食の施しをするのが「施餓鬼会」です。【第1582号】参照。
 この施餓鬼会の棚経で、必ずとなえるお経に甘露門があります。
 この甘露門の意味をお話しします。「甘露門」とは、「甘露の法門」の略称です。「甘露」とは、インドの古いヴェーダ時代から諸天の飲み物として信じられていた不老不死の水です。それが転じて、不老不死の理想郷を指すようになり、涅槃(修行を積んで、迷いを断ち切り、悟りに到達した最高の境地)を意味することとなったといわれています。「法門」とは、仏の教えをいいます。
 涅槃へ到達するための教えを実践すること、すなわち、飢えに苦しんでいる、御霊に、水や食べ物を与えることです。そのことにより、ご先祖様の御霊が他の人たちと同様に、平安な世界に入られるようにとお願いをすることが、「甘露の法門を開く」ことになります。

釣月寺和尚の一日一題 話題提供 【平成30年8月7日(火):第2669号】