今月の掛軸 bP4−鍾馗(しょうき)

 今月の掛軸は、この月にふさわしい鍾馗の墨絵です。鍾馗は、端午の節句において鯉のぼりと一緒にかかげられる武者のぼりの図柄としてよく使われます。鍾馗は、中国で広く信仰された厄除(やくよ)けの神です。唐の玄宗皇帝が病床に伏せていた時、夢に現れ、病気を治癒し、病気快復後、画士に命じてその姿を描かせたのが鍾馗といわれています。以来、鍾馗の図を門にはり出して邪鬼悪病除けにするようになったといいいます。初めは年の暮れの習慣でしたが、のちに端午の節句に移りました。この鍾馗の信仰が、日本にも伝わり、室町時代頃から鍾馗の像を、端午の節句に掲げるようになりました。
 ※端午の節句−端は初めという意味で、端午は月の初めの午(うま)の日のこと。中国では5月が午の月にあたり、5日をも午の日というため、5を重ねて5月5日を節日とした。鎌倉時代頃から「菖蒲」が「尚武」と同じ読みであること、また菖蒲の葉が剣を形を連想させることなどから、端午は男の子の節句とされ、男の子の成長を祝い健康を祈るようになった。
 鍾馗の作者は、平林寺第22世白水敬山(しろうずけいざん)老師(1897〜1975)、讃は、平林寺第21世峯尾大休(みねおだいきゅう)老師(1860〜1954)で、私の出生祝としていただいた旨の記述が軸にあります。先代である父が平林道場で修行していた縁でいただいたものと思われます。
 讃の「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」は、
「我は世界のうちで最もすぐれた者であるの意味です。釈迦が誕生するとすぐに、四方に七歩歩み、右手で天を指し、左手で地を指して唱えたといわれています。誕生偈(げ)ともいいます。」
 ※偈(げ)−経典中で、詩句の形式をとり、教理や仏・菩薩をほめたたえた言葉。

峯尾大休老師の讃拡大
掛軸全体 白水敬山老師の「鍾馗」顔部分拡大
≪平成24(2012)年5月4日撮影≫

釣月寺和尚の一日一題 話題提供 【平成24年5月5日(土):第384号】