中日新聞 平成14(2002)年6月12日(水曜日) 東三河版

趣味が生んだ仏画”ギャラリー”
 
鳳来 釣月寺の鎌田さん
還暦から絵筆25年・・・
300点以上『ただ無心に』
   拝観OK 写真集も
 
 鳳来町副川の釣用(ちょうげつ)寺住職鎌田道源さん(85)が、六十歳から始めた仏画の創作を今も達者に続けている。独学だが、この二十五年間に描いた作品は本堂の天井絵、ふすま絵、びょうぶ絵なども含め、三百点以上。「下手も上手もない。無心で楽しんでいるだけ」。地獄図などの迫力ある絵柄とは裏腹に、老僧の語りは淡々としている。
 鎌田住職が絵を始めたのは、飾り気がなかった位はい堂の欄間に「ちょっと寂しい」と、天女の絵を描いてみたのがきっかけだった。
 「小学校の時は絵がうまいとほめられ、成績も図画と習字は甲だった」。だが、絵を描いたのはそれ以来のこと。それが「思いのほか、うまく描けた」といい、絵の楽しさに目覚めた。
 日本画の技法を本で学び、六十六歳から六十八歳にかけては、著名な絵巻物を参考に、さんずの川や閻魔(えんま)大王が登場する「地獄・極楽冥土(めいど)の旅日誌」の絵二十四点を仕上げた。
 人間の体もすべては無に帰す教えを描いた仏画「九柏観図」を描いた時には、ハエの姿を忠実に表現するため、ハエを捕り、手につまんで眺めながら筆を運んだ。
 天井絵は七十七歳だった一九九四年の作。眼光鋭い竜の絵約六十枚で本堂の天井を彩った。
 昨年は「百鬼夜行」と題したびょうぶ絵も仕上げた。ふすま絵やついたてなどの大作だけでなく、年忌などの際に檀家(だんか)に贈った色紙絵なども含めると、作品数は数え切れない。
 気が向いた時に画布に向かう日々。「書けなければ書けない、書けたら書けたでよし。絵は一番の趣味。生きがいかな」と話す。
 作品は堂内に展示され、希望者は拝観できる。地元の姿を写真で記録している中日写協奥三河支部会員松下洋一郎さん(73)の写真集でも仏画や書を眺められ、希望者に実費で分けている。問い合わせ先 松下さん=電05363(5)0035

(H15.3.23)