8月の赤沢

5

ムレハタタテダイはカンパチと仲良しシマアジもムレハタタテダイと仲良し
無理やりに隠れたイソモンガラの幼魚

さて、台風も行ってしまって、静かになった赤沢からお届けします。

台風で何もかも吹き飛ばされてしまったかと思いきや、どっこい魚たちはしぶとく生き残っていました。
中には台風前より増えたやつもいます。

まずはムレハタタテダイから。岩のまわりの逃げ場がないところにいるので、いちばん影響を受けそうな魚ですが、ほとんどもとの場所にいました。でも数が変わっているのを見ると、やはり吹き飛ばされたものもいるのかもしれません。でも全体では数が増えているようです。泳ぎ方も少し大胆になって、岩の上の方でゆるい群れを作って泳いでいて、何かが近づくとさっと降りてきてかたまるという、本来のムレハタタテダイの行動パターン通りになっています。

中にはシマアジといっしょにいる群れもいてときどきシマアジをつっついたりしています。クリーニングの一種なのでしょうか。シマアジもあまりいやがらずにいっしょにくるくる回っています。

黄色いからだのモンツキハギの幼魚も健在です。それどころか数も増えて、同じ仲間どうしで小さな群れができるようになりました。中にはニセカンランハギやテングハギの幼魚がまざったりしていますが、今までのように関係ない魚と一緒にいることは減りました。黄色いのが群れになっているので、今まで以上に目立っています。

タツノオトシゴも生き残りました。同じ岩にいた他の魚が軒並みさらわれてしまったことを考えると、快挙といえます。相変わらず藻の間に隠れているので、探すのは難しいのですが、いるとわかっているのは安心できます。

コロダイの幼魚は、場所を変えていました。でもだいぶ大きくなっていたので、別の個体かもしれません。あまりくねくねしなくなってしまいましたが、黒と黄色の縦じまがはっきりしてきて、これはこれできれいになっています。

透明度が良くなったので、遠くの魚も見えるようになりました。そこでやってきたのはシマアジの群れ。さっと近づいてきて、ダイバーのまわりを回ります。こちらがちょっと動くと群れも反応して、向きを変えたり後ろにまわりこんだりと、久しぶりにシマアジの群れと遊ぶことができました。こちらも水平反転やきりもみをして、少しつきあってやりました。

防波堤の先端のカジメ林の上にいるホウセキキントキの群れもまた残っていました。大きさはあまり大きくなくて5cm前後ですが、いくつかの群れに分かれて漂っています。近づいていくと何げに向きを変えて、逃げるかな、と思ってもしっぽを向けるくらいで漂ったままです。こちらも深追いはせずに、脇を通り抜けます。

新顔では、テンクロスジギンポが3匹、入ってきました。水底に近いところのちょっと上をくねっとした感じで泳いでいるので結構目立っています。別に他の魚をクリーニングするわけではなさそうで、ちょっと隠れたと思ったらまたすぐに現れて、カジメの上でゆらゆらゆれています。独特の節くれ立った縦じまが、透明度の良くなった海にはよく映えます。

ヨスジフエダイは2カ所で見かけました。前に見たより大きくなって、地の黄色や縦じまが鮮やかになってきています。前のくすんだ色とは大違いで、俺はヨスジだぞ、と自己主張をしています。

そんなわけでたいていの魚は台風を乗り越えたのですが、カミソリウオだけが行方不明になってしまいました。前にいた場所の近くのそれらしきところを探してみるのですが、近くにはいないようです。どこかに行ってしまっても、せっかくできたペアが離ればなれになってしまったなんてことになったら寂しいので、どこかにいることを信じてこれからも探し続けたいところです。

砂地の真ん中にある岩の回りは、ハタタテダイの大集会所になっていたのですが、ここも無事でした。なぜかカンパチが仲良くしてます。餌と思ってないようで、一緒にいるのですが殺気は感じられません。ムレハタタテダイのほうもカンパチを仲間として受け入れているようです。しかしこのカンパチも。近くに小さいイワシの群れが近づくと攻撃性をあらわにします。でもハタタテダイの中に戻ってくるとおとなしくなっています。
いっぽう、同じ場所にいたスカシテンジクダイの群れのほうはいなくなってしまったので、これはカンパチに残らず食われてしまったのかもしれません。何はともあれ、カンパチとムレハタタテダイの間には休戦協定が結ばれているようで、ほのぼのとした雰囲気が漂っています。

奥の魚礁にはまだスカシテンジクダイが生き残っています。そしてその上にイサキの子供が何匹かいて、その上にムレハタタテダイが泳いでいます。近づいていくと魚礁のほうに固まってしまうのですが、カンパチの群れはここまでくるもののあまり手は出さないようです。むしろ砂地に群れているイワシの小さいのをねらっているようでした。

台風の影響もあんまりなかった赤沢でしたが、またもや台風が近づいてきています。この台風がまた何か新しいものをつれてきてくれるか、それともすっかりさらっていってしまうか、予断をゆるしません。何はともあれ、台風がそれていってしまったので、その結果は近いうちにまたお知らせしたいと思います。

ロープに従って戻ってくると、小さな錨が砂の上に突き出ています。ここは小さい魚の隠れ場所になっていて、マハタの幼魚やイソモンガラの隠れ場所になっていました。そこから少し離れたロープが団子になっているところでは、カミソリウオの小さいのもいて、なかなかいい隠れ場所になっているようです。


戻る 前へ 次へ