3月の赤沢

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3月11日(日)

デジカメ(COOLPIX880)とハウジング(DIVの仔狸ハウジング)を買っちまったので、そのテストをしに赤沢に行きました。
出発は夜明け前、また車の窓がが凍ってたら大変だと心配でしたが大丈夫でした。やっぱり春は来ているようです。満月を横に見ながら車を走らせていくと、東の空がしだいに明るくなってきます。やがて日が昇り、ほとんど雪におおわれた富士山を赤く染めて行きます。と書いていくと天気がいいようですが、南のほうには厚い雲が見えて、赤沢に着いたときには曇りでした。

水面を見ると、相変わらずホンダワラは岸に近いところを真っ黒にしています(少し増えたかな)。来る途中、東向きの海岸は少し波立っていたのですが、南向きの赤沢はいたって静かでした。そのせいで、他のポイントから流れてくるショップが多く、岸はダイバーでびっしりです。

ところで、目的はカメラのテストだったのですが、着いてみると人手が足りないから手伝ってモードになり、視覚障害の人の講習につくことになりました。ついでに、記録用の写真も撮ってくれって(銀塩)、それじゃ仔狸ハウジングはどうなるの・・・。

さて、今回講習を受けているNさんは、昨日はプールで、今日が初めての海洋実習です。全盲なので、知らないところを歩くには誘導が必要です。
もちろん、水中でも先導者が必要で、しかも初めての海となれば、果たしてうまくいくだろうか、楽しむ余裕があるだろうか、という心配は・・・考えてみるとあんまりしていなかったなあ。とにかくエントリーします。
まずは浜まで降りていきます。右手は白杖を持つので、左手で先導者(自分のことだけど)の右肘に手を当てて歩いていきます。坂道や段差を教えるのはもちろんのことですが、特に何もないところでも周りの様子を話しながら行くといいかもしれません。
水際まで降りたら、まずは器材のセッティング(講習だからね)。すべて手探りですが、日頃なじみのないものを見ずに組み立てるのはなかなか大変です。メインとオクトパスのセカンドステージの区別なんてのも、ホースの長さを比べてみる、というのはものすごく難しいので他の方法を考えなければなりません。明らかに形が違えばわかりやすいのですが、ふつう同じメーカーのものは形も似ているので、いつもこの手を使えるとは限りません。ファーストステージからホースが左右に分かれて出ているタイプなら、左右それぞれのホースの本数を覚えておけば区別がつきます。ホースがくるくるまわるタイプのファーストステージは、ややこしくなるので不向きです。

順番が前後しますが、BCDをタンクにつけるのも苦労します。といっても、タンクベルトのバックルは、手先の感覚だけでできるものなので、覚えてしまえばなんとかなりそう。むしろ、タンクの位置決めのほうが難しそうです。BCDとタンクバルブを平行にするなんてのは結構やっかいかも。立てたままやろうとすると基準がないので、基本通りにBCDをうつぶせにして(これでBCDは絶対に下向きになる)、タンクのバルブを地面と平行にする、というやり方がいいでしょう。立てたまま合わせる手がないこともないですが、これはもう少し慣れてから。
そうすると、アルミタンクによく使われている、片側にノブがついているだけのものよりも、スチールタンクについているような、反対側にも張り出しがあるやつのほうが使いやすいのかもしれません。まあ、慣れればそれほどの差はないのかもしれませんが。

考えてみると、講習でやるようなダイビングのスキルって、意外と目を使わないものが多いことに気づきます。バックルやベルト類は手探りでできるように練習するし、レギュレーターリカバリーなんてのは見ようにも見えないし、マスククリアは目をつぶっちゃう人もいるぐらいだし、器材のとりまわしに関することではそれほど問題はありません。問題は動き回る時のことで、水中移動や中性浮力は誘導が必要です。

水中でのコミュニケーションは、Nさんは通常の手信号を出せますが、こちらから何かを伝えるには・・・声を使います。フルフェイスマスクと水中音出し器(会話装置ではなかった)を用意したのですが、これがどうも不調で、原始的な骨伝導音声到達法(頭にセカンドステージを当ててどなる)を使う羽目になりました。ちなみに、男性の声よりも女性の声のほうが聞き取りやすかったそうです。

海の中が初めてとは思えない落ち着きで、Nさんはスキルを終え、スクーバダイバーの認定を受けました。今回は時期が時期なのでドライスーツに厚い手袋でしたが、もう少し水温が上がって、もっと水を感じられる装備で入れるようになったら、もっと楽しめるようになるでしょう。

なおこの日は、読売新聞と月刊ダイバーの取材がありました。


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