今日の課題は、四肢麻痺ダイバーのアシストです。障害者役のダイバーは全く何も動かないという想定で、潜降から浮上まで全てアシストします。
実際には、全く動かせなければ認定ダイバーにはならないのでダイブパートナーの担当範囲ではないのですが、一部麻痺でも場所や程度はいろいろなので、全部動かないものとしてアシストするのが練習になるわけです。
原則は、潜るときに自分がやっていることを相手にもすれば良いので、基本的なダイビングの技術をしっかり身につけておけば決して難しいことはありません。ただし自己流で覚えてしまったことがあると、自分ではできても他の人に対してはうまくいかないことがあるかもしれません。唯一特別なのはハンドシグナルで、というかハンドシグナルはいっさい出せないということなので、すべて聞かなければなりません。ということは相手がどんな状態か、何を必要としているかを想像することが必要になります。
この点、いわゆる「ダイビングのうまい人」は要注意でしょう。たとえば、「耳抜きなんてしたことがない、何もしなくても抜ける」という人は、相手が圧平衡を必要としているのに気がつかないことも考えられます。上手であることは必要なことですが、あまり苦労せずに身についてしまった人は想像力をめいっぱい働かせないと、十分なアシストができない可能性もあるので気をつけなければならないでしょう(これって障害のある人とそうでない人の関わり方の基本かもしれませんが)。
ひとまわりして戻ってくると、今度は水中スクーターを使って他のダイバーを引っ張ることをやってみます。移動力が十分にとれない人の場合、スクーターを使えば行動範囲が広がるので、そのときに戸惑わないために体験しておくらしいです。ロープをつけてつかまらせるのですが、スクーターにはロープを結べるところは一番前の取っ手しかないので、ロープがスクリューに絡まらないように注意が必要です(一回やってしまった)。
一人でやるとスタート時の加速がけっこうきついので、つかまる力が弱い人は振り落とされてしまうんじゃないかと心配でしたが、実際には二人だとトルクが半分になるのでそれほど急に引っぱられることはありませんでした。
やってみないとわからないことはいろいろあります。
ただ、モーター音はかなりうるさいようで、回したとたんに魚がびくっとします。地形を見たいから泳ぎ回りたいときは有効ですが、じっくり生き物を見たいときはむしろじゃまになるので、使い分けが大切だと思いました。
残りエアーはまだあるので、ちょっとだけ遊びます。講習専用のガレ場なので何もいないかと思いきや、意外に細かい生き物ががんばっています。
サンゴ質の岩なんかをじっくり見ていくと、けっこう遊べます。ガンガゼがいっぱいいますが、ヒカリイシモチがくっついているのでちゃんと見てください。
午後は同じく砂辺で、OW講習のアシスタントにつきます。講習生は琉球大のボランティア部の3人で、活動の一つとして障害者ダイビングをやってみようという学生さんです。
ボランティアの供給源として大学生は貴重な存在ではあるのですが、卒業するまでの活動になってしまうので、地元出身の人で参加してくれる人が増えればいいな、と田村さんは言っていました。興味のある方はホームページをご覧ください。
http://www.sea-canary.org
午後の講習が終わったところで、突然ですが真栄田岬にヒレナガネジリンボウを見に行くことになりました。タンクをチャージしてもらい、58号線を北上し、琉球村の入り口を曲がってしばらく行くと、畑の中に真栄田岬へ入る道があります。時間が時間なので駐車場にある車もほとんど帰り支度に入っていて、海への降り口のそばに車を停められました。さっさと支度をして、うわさの階段を降りていきます。
水面から3mくらいのところで階段はなくなり、あとはむき出しの岩場を降りていきます。足場は悪いのですが、石灰岩でぎざぎざしているので、滑る心配だけはありません。
30mを少し超えたあたりにいるというので、まっすぐ深場へ向かいます。透明度は、さすがに砂辺よりはずっと良いものの、離島に比べれば濁りがあります。リーフを通り過ぎ、ガレ場の斜面を下りて砂地に入ったあたりが共生ハゼのすみかになっているので、少し探しながらゆっくり移動していくと、田村さんが手招き。指さすほうを見てみると、ヒレナガネジリンボウです。
はは、かーいい(実は見たのは初めて)。この手のハゼってみんなそうだけど、写真はみんなアップで撮るので実物を見るとやたら小さく見えます。まあ20cmもあるネジリンボウがいたら、それはそれで恐すぎますけど。
ヤシャハゼもいるらしいのですが、それは見つからず。でもハナハゼ(沖縄型・尾びれからのびるすじが2本)がいました。中層にいたので、宿主はどこかと探したらダンダラダテハゼでした。
時間がなくなってきたので急いで浅場へ移動し、リーフにそって旧ツバメウオの場所に向かいます。旧がつくのは、「もぐりん」が沖で餌づけを始めたらみんなそっちへ行っちゃったからだそうで、ほんとにいないや。ここで少し昇って内側のリーフに入り、もと来たほうへ。暗いところにアオギハゼがかたまりでいるのに驚いたり、ちらりと見えたスミレヤッコで道草をしながら戻ります。カマスの親分が一匹、先導するように前を泳いでいきました。
リーフの切れ目から内側に入り、ダイコンをチェック。減圧指示が出ていないことを確認して、エキジットしました。
深場へ行ってしまったのであまり長くはいられなかったのですが、じっくり見ていけばもっといろいろなものが見つかりそうです。朝早く来て1本か2本入り、昼は近くの浜でバーベキューでもやって、夕方戻ってきてまた1本なんていうプランなら、1日おもしろく遊べそうです。


翌16日、この日は那覇からボートを出して慶良間に行きました。潜ったのは渡嘉敷まわりのアリガー(ケーブル)とサンドトライアングルで、どちらも砂地とサンゴの根のポイントです。粟国のハードなポイントと、講習のあとでリラックスしたダイビングを楽しみました。
翌17日朝一便のJALで帰ってきました。観光客はあまりいなくてネクタイ姿の仕事の人が目立ちました。予定通り羽田に着き、そのまま職場へ出て仕事に入りました。落差が激しすぎる・・・。