エビアン
澄んだ水と空気に恵まれたフランスはサヴォワ地方。
ヨーロッパで銘水中の銘水と誉れ高
い「エビアン」は、モンブランとレマン湖に挟まれた町エビアン・レ・ヴァンにある「カ
シャーの泉」を源泉とする。
この泉はアルプスの雪解け水がこんこんと湧き出る鉱泉で、
人口七千人ほどの小さなエビアン・レ・ヴァンの町をヨーロッパ屈指の高級保養地として
知らしめている。
中でも、一九○七年にイギリスのエドワード七世が別荘として建てたと
いう、高級リゾートホテル「ロイヤルクラブ」ば有名だ。
ここでの水治療は泌尿器系の疾
患や腎臓疾患、リューマチなどに効能があるとされている。
また、健康と美味を追及する
食事療法は完成度が高く定評があり、日本でも賞味会が開かれたことがある。
エビアンの
歴史そのものは一七八九年に遡る。
病気を患っていたド・セル伯爵がここを訪れ、村人た
ちが愛飲していたカシャーの泉の水を飲んだところ、たちまち病気が回復したという。
以
来、エビアンは多くの人の知るところとなり、一八七八年にはフランス厚生省からナチュ
ラルミネラルウォ−ターとして認可され、一九二六年には政府の保護に置かれた。
現在
では、年間約十二憶リットルも生産され、世界百四カ国余に輸出されている。
アメリカで
はミネラルウォーター市場の九割をエビアンが独占しており、その実績は世界のトップブ
ランドにふさわしい。
エビアンの水の硬度は約三百、モンブラン山系に降り積もった雪
や雨が、十数年という年月をかけて自然のフィルターでろ過されたものだ。
自然の滋味を
たくわえた、ピュアでとてもへルシーな水である。
そんなエビアンの水の優れた品質はE
Uにおける厳しいミネラルウォ−ターの統一基準に裏打ちされている。
その規定は一九八
○年にまとめられているが、内容は綿密で、細かく決められている。
というのも、日本で
は濾過、または加熱による殺菌が義務づけらているのに対して、ヨーロッパのナチュラル
ミネラルウォーターはいかなる殺菌処埋も禁止されているのである。
そのためには源泉を
汚染から確実に保護することはもちろん、ボトリングされるまでの品質管埋を徹底する必
要があるのだ。
例えば、地質学的な報告書を初め、地層の構成、汚染に対して源泉を保護
している証明、雑菌が存在しないことの証明、水一リットル当たりの総生菌数など、多岐
に渡って詳細なデータを提出しなければならない。
エビアンでも衛生状態はかなり厳しく
チェックされている。
取水口からボトリングされた水そのものまで、優に二百回を越える
検査を毎日実施しているのだ。
こうした品質へのこだわりは、われわれ日本人とヨーロッ
パの人たちの水に対する意識の違いをあきらかにしている。
彼らは殺菌処埋を行なってい
ない「生きている水」を、健康のために積極的に取り入れる。
だからこそ、源泉が保護さ
れ、化学的にも安全で、その効能が認められている水であることは不可欠な条件なのだ。
(カルピスKK)