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香草家の四季--冬-- |
はじめに
今やハーブというものが市場にあふれていて、生の素材であっても乾燥したものであってもいつでも手にいれることが可能な状況となっている。
特に乾燥ハーブについては多くの種類があって、これらを自分の好みで買い揃えて、また、その中でいろいろのブレンドをして自分だけのハーブティを楽しむことができるようになった。3度の和茶よりも4度のハーブティを楽しむようになったらこれは完全にハーブに侵されてしまったハーブ愛好家といっても過言ではない。
一方、我々、つまり、自分でハーブを楽しむためにハーブを育てているハーブ栽培家(以下「香草家」という。)という人種がいる。
ハーブ自体は商品価値が高いので、これ専門に栽培している人たち・・・つまりハーブ農家・・・もいる。これと、香草家とは区別して考えるべきであろう。その理由としては、業としての栽培と趣味としての栽培の違いである。
業としての栽培であれば、市場の要求にしたがって栽培品種をかなり特定したり、あるいは季節にかかわり無く一定品種は作り続けなければならないことになる。味の均質性、大きさ、柔らかさ、香りなどを確保するために大規模な栽培施設が必要であり、旬の季節以外の時期においても供給する必要があるため、時には温室での栽培を行う必要が出てくる。人力を掛け、経費をつぎ込み、常にベストの状態で市場に出荷する苦労は大変なものであろう。
もちろんハーブは、野菜と同じで、直接・間接的に人間の体のなかに入るものである。そのため、栽培に際しては、無農薬・有機栽培が原則で、減農薬などといって栽培されたものでは、なんのための栽培だか分からなくなってしまう。そこにハーブ農家の苦労がある。これはもちろん、香草家にとっても大きな問題であり、多品種を少量ずつ栽培している我々にとっては、苦労のしがいがあるところでもある。
たとえば、きれいすぎる野菜が店に並んでいるとまず疑うのは農薬の使用である。自分が無農薬で育てているキャベツや白菜がいくら丹念に虫捕りをしても、固い筋を残してスダレ状なってしまう現実がある。これが頭にあると、店先に並ぶ虫食いのない野菜は怖くてなかなか買うことができない。 日本人の主食である米だって同様である。玄米であっても精米であってもその米がブランド米であっても、年何回かその田んぼに行ってみて栽培状況を確かめないと購入意欲がわかないものである。
米についてさらに怖いのは除草剤である。若い精力的な生産者のいない米農家では、重労働を伴う仕事、例えば畦の草取りはしない。その代わりに、背中に除草剤を入れたタンクを背負って畦を歩き回るのである。これである程度の期間草を枯らすことが出来るし、また、次の草が生えるまでの期間も延長すことが出来るのである。多くの米農家がこの草取り作業を簡単に済ませるために除草剤を撒く。効果は覿面で緑の雑草がたちまちのうちに黄・茶変し、へたり込むように枯れてしまう。一方、除草剤を使わない農家では畦の草を鎌や草刈り機などで丁寧に刈り取ってある。これはそれが畦にあっても緑を残した白っぽい色になり乾燥した草というのが一目でわかるのである。6月、7月に畦の草が変色しているのを良く見ることが出来るがこれは除草剤をまいた跡である。
話を元に戻すと、ハーブを育てる時に、春から夏の時期に雑草の除去が大変だからといって除草剤を使う香草家はいないはずだ。何のためのハーブ栽培だか分からなくなってしまうからである。
○ 香草家の冬
さて、この香草家たちの冬の過ごし方である。
日本は南北に3000km以上もあって、北海道が厳寒の季節であるときに沖縄や小笠原では海開きが行われ海水浴が楽しめるという状況がある。
当然に、暖かければ植物は育ち成長するし、寒ければこれをあきらめざる得ないことにもなる。
関東地方はこれらの季候のちょうど中間点にあたり、雪も積もってしまうこともあれば、それなりに温かい冬を迎えて寒さに強い植物が成長・収穫する時もある。まあ自然には逆らえないということで考えれば、その年の気候や天候に大きく左右されるのが香草家の宿命でもある。
そのため、香草家の冬の時期の過ごし方としては、この季節育てることができるハーブの面倒をみつつ、春から始まるその年の栽培計画を練るということになる。また、昨秋収穫したハーブの乾燥後の処理もその時々にこまかく発生する仕事なのである。
いろいろな種苗メーカーからいろいろな種が発売されている・・好みで・・
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ハーブ作付け計画
この栽培計画を立てるということは実に楽しい作業である。
去年までの栽培の失敗などの反省を礎に、わずかな土地ではあっても、そこに植えるハーブの選定し頭を悩ます。
ルバーブなどの移植がかなり困難なハーブの場所はそのまま固定したままにするにしても、1年草で春に種を蒔くハーブについては連作障害などが無いようにしなければならないし、また、コンパニオンプラントという観点からも植える場所を決める必要がある。更に、これに加えて、ハーブの草丈を考慮し、日当たりが出来るだけよくなるように植える場所を決めるのである。
決めるにあたって、大体の設計図を作る。当初は、新聞チラシの裏紙や比較的大きいメモ用紙などに大まかなものを書きつける。何回か作り直したところで、これをパソコンに移す。パソコン上ではペイントソフトを使うわけだが、追加・変更が簡単なので最後まで悩み調整をすることになる。
大体のものが決まったところで、今度は、種の手配となる。
今はインターネットがあるから日本国内だけでなく世界中から自分が欲しい種を捜し当てることが可能となっているし、また購入することもできる訳だ。かっては、ハーブの種などどこにも無く、またインターネットもない状況であった。園芸店やホームセンターなどに2月ごろから足繁く通いだし種を蒔く時期までの間に粘り強く種を探す時代であった。したがって、やっと手に入れた種は大切にし、例えば何回かに分けて蒔いたり、種袋の裏面にある英文の説明文の指示に従って蒔いたりしたものであった。
ハーブの種が一般化して園芸店の種コーナーなどでハーブ種専用の段が設けられている現在、よく使われるハーブの種は殆ど一年中常置してあるし、時にはかなり珍しいハーブの種なども置いてあることがある。特に最近は、各地にハーブ園といわれる施設が多く作られていて、そこに置いてあるハーブ種の種類はかなり充実したものとなっている。例えば一般的なハーブであるバジルやミントやセージなどは10種類以上あって、逆に言えばあまり多すぎてわからない場合がある。もちろん、そんな場合は代表的なものを購入するわけだ。ただ、一方で、なかなか新しいものに手を出せないというのが本音で、栽培適地、栽培方法、利用方法などがあまり詳しく書いていないものは購入しがたく実際に購入して蒔くと言うのは稀である。
そして、インターネットやら近所のハーブ園などから購入した種は、まず説明書を丹念に読むことから始まる。栽培に関して大体のことは理解していたとしても、見落としなどがあっては面白くない。それに、せっかく買った種を無駄にする訳にはいかない。そしてこの説明書を読んだりハーブ関連の参考書を読むことによってますます春への期待を高めることにもなる。
そういえば、種の話の続きとなるのであるが、種は必ずしもすべて購入することだけで対応しているわけではない。多くのハーブが春から夏にかけて花を咲かせ秋には種をつける。バジルやルッコラやボリジなどがその代表例である。必要な場合には、これらの種を収穫して翌年に備えることもある。その結果としてハーブの種を購入するのは、思っている以上に限定される場合が多い。
多くののハーブは確実に種をつけるし、種を取り忘れてしまえば、地面に落ちた種はすぐに発芽する。そして、この落ちた種の中には直ぐに発芽するものもあるのだが、翌年の春に発芽するものも多くある。その結果として収穫した種をわざわざ蒔かずとも、この実生苗を利用するという手もあるわけだ。
例えば我が家のバジルはこの翌年春に芽を出す実生苗で毎年更新されることが多い。そのため、バジルの種を購入するのことはめったにない。当然、種の採取も行わないほうが多いしその方が良い場合もある。この実生で生えてきたバジルを育てることでその年の利用分は十分に間に合うのである。何年かして葉が硬くなったと感じたら、新しい種を購入して更新すればいい。
が、考えてみると、毎年実生を繰り返すといっても、だからといって決して葉は硬くなっているわけでもなく、また、香りも落ちるというものではない。自分がそう感じてしまうのである。これはその年に新たに購入した種から育てたバジルと、前年の落種の実生のものとを比べると殆ど違いがないのに気が付くのである。
つまり、こんなふうに実生でいくらでも生えてくるハーブの場合には、あえて毎年種を探し求める必要がないということになる。
そうすると、ハーブの種を求めなくてもいいものがたくさんあることに気が付く。我がホームページのハーブガーデンに掲載してある多くのものが、この種類に属してしまうのである。
そして1年草でなければ、他のハーブは殆どが多年草ということになる。これは種を採集する場合もあるのだが、それは株を増やす必要からあえて蒔く場合を除いては何もしないで放って置くだけである。それでも、この多年草のハーブから株の周りに落ちた種から実生で発生し、毎年その勢力を伸ばしていくものがある。また、地下茎で生息領域の拡大を図っているものもある。
結局、このように種を探し求めるのは、何らかの理由で育てていたハーブをだめにしまって場合であったり、新種のハーブを育てようと思ったときだけに限定されることになる。
作付け計画に基づいてハーブの種や苗などの確保に見通しがたつのは大体2月中旬になる。
ちょうどこの頃は立春直後といっても最も寒い時期に当たるので、畑の土起こしの時期となる。ある程度の深さまで掘り込んで天地をひっくり返すのである。これによって、土中にいる害虫などを自然に駆除するのである。ハーブや野菜を育てる場合には絶対にしておきたい作業のひとつである。そして畑の状態を確認しつつ暖かい春を待つことになる。
冬のハーブの管理
真冬のルバーブ
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冬の管理は、そこで育っているものが中心となる。
我が家で冬の時期に使える生ハーブは、ルッコラ、イタリアンパセリやローズマリー、タイム、ローリエなどのものがある。
しかしながら、ローズマリーなどの木性のハーブは管理するというよりも、何もしないでただ利用することが多いのである。1回植えておけばどんどん伸びてくるし、種が落ちれば自然に増えてくるからである。剪定は春の終りやら秋の終りにしておけば良く、冬の時期の管理はせいぜい草取りなどになってしまう。もちろんこれは地植えの話であって、鉢植えにして育てているのものであれば、水遣りという作業が欠かせないことになる。
残念ながら、我が家では鉢植えしているハーブは少なく、ミント類2種、ローズマリー、レモンユーカリ、イタリアンパセリなどである。
この中で、ローズマリーは鉢植え2種、地植え1種となっていて、2階のパソコンルーム前においてある鉢については、かなり頻繁な水遣りが必要となってくるのであるが、雨があたるところにおいてある鉢植えのものは夏の乾季を除いては水遣りの必要がなく、地植えのものはまったく手がかからないといってよいだろう。
ローリエ、タイムも手の掛からないハーブの代表選手みたいなものである。
一方、畑にあるハーブのルッコラやも手がかからないといえば掛からないのであるが、それでも、適度に利用するということと、周りに生える雑草の抜き取りなどの作業がある。大風など吹いて株が傾いた場合などは根元に土を盛って安定させるくらいのものである。
そして畑での全体的な管理といえば、あとは定期的に雑草を取り除くということが必要である。ホトケノザを中心としたものが多いわけだが、2週間〜3週間に1回程度、これらの雑草を取るのである。
そしてこのときに、秋の終りに芽を出してたりする多年草のホースラデッシュやルバーブなどの状態を確かめることになる。また、1〜2年草であれば昨年の秋の終りに芽を出して冬を越すディルやフェンネル、ベルガモットの芽の成長具合にも気をかけることになる。
で、この冬のハーブの管理の最後となるのであるが、やっぱり一番気を使うのは、レモングラスの越冬と言うことになる。
根をつけたまま鉢に移植したものは、地上から約10センチメートル程度のところですっぱりと切ってある。そこから、時間が経つにしたがって芽が出て伸び、今はいずれの株からの芽も30センチメートルを超えるほどに成長してきている。
もうひとつ、根元から上を切り取って水栽培にしたものは、根が伸びて複雑にかみ合いながら、草丈は大きいものでは80センチメートルを超えるまでに成長している。
この管理が個人の感じ方にもよるが実は結構大変である。
その理由は猫である。
我が家には雑種の猫が1匹いる。絶対に外に出さない箱入り猫なのであるが、これの大好物がレモングラスである。毛玉ケアのために好んで食べるのであるが、この猫からレモングラスを守る必要がある。
そのため、越冬している最中のいずれのレモングラスも、このパソコンルームのかなり高い場所においてある。猫のジャンプでは絶対に届かない天井近くに置いてあるわけだ。しかし、レモングラスには日の光を当てねばならず、天気の良い日には、その場所から日当たりの良い場所に移して日光浴をさせる。この時間帯はどんなことがあってもこの部屋に猫の侵入は許さないようにするのである。
更に、管理の面からいえば、鉢植えのものについては適度な水遣り、水栽培のものについては1週間に1回の水換えと栽培瓶の掃除という作業がある。
まあこれが問題なく出来ていれば殆ど心配は無いのである。
しかし今冬に入って、水栽培のレモングラスは2回ほど猫の被害にあってしまった。コーヒーを取りに行ったりするなどのほんの一瞬の隙を突かれて、猫がこのパソコンルームに侵入してきてしまうのである。そして日当たりの良い場所においてあるレモングラスをムシャ、ムシャとかじるのである。このムシャ1回で1枚の長い葉の半分がやられてしまう。そういう意味では、越冬中レモングラスの管理は、我が家では猫の管理と言うことになってしまうのである。
収穫物の保存
秋の終わりに収穫したものの保存にはいろいろな方法がある。それは今までもこのホームページを通じて紹介してきた。
当然、生のまま保存ができればそれに越したことはないのであるが、実際には不可能なものが多い。そのため、保存するにはそれなりの工夫が必要となる。
収穫して直ぐに対応しなければならないハーブは、ヴィネガーやオイルに漬け込むという方法がある。もちろん、お酒に漬けるという方法がある訳だが、これはかなり個人的嗜好で好みの問題となってしまう。
これらは秋の終わりの作業であって、冬に行う作業は漬け込んだ材料の引き上げである。時機を見て材料として漬け込んだハーブを引き上げて、ビネガーやオイルや酒を漉す作業をする。既にハーブの香りや成分はは漬け込んだものに移っているので、後はこれを上手に利用するだけである。
乾燥したステビアの葉
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保存方法してもう一つある作業は、乾燥である。
これも秋に収穫したものを中心に行う作業で、保存の最も一般的な方法である。
大量に収穫したハーブを水洗いなどで塵を落とし、水気を取ったあとでそれぞれ適した方法で乾燥させれば良いことになる。
ちょうど今頃が、乾燥し終わりそのまま保存できる状況になる頃である。
今年、わが家で乾燥の対象としたのは、マートルの実とレモングラスである。乾燥するハーブはその年によってかなり異なるのであるが、その中でレモングラスの乾燥というのは毎年行っているものである。
そこで、今まで乾燥を試みたものを挙げると、バジル、タイム、オレガノ、ローレル、レモンバーム、ミント類などの葉を主に使うハーブ、ホースラデッシュ、ヤーコン、ルバーブ等の根を主に使うハーブ、更にマートルやクコ、クチナシ、トウガラシ等の実を主に使うハーブなどがある。この中で失敗したものはヤーコンを薄くスライスして乾燥させたもので、完全に乾燥することは出来ず、生乾きの状態が春先まで続き、結果は柔らかい乾燥芋といった状態になってしまった。まあ、自然乾燥での対応なので、物によってはこの程度が限界だと感じた。
フランスでは乾燥したものをミックスし生産地の名をとって「エルブ・ド・プロヴァンス」で売られている
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乾燥したハーブは用途によってその後の処理が若干異なるのである。エルブドプロヴァンス的に使おうと思えばある程度細かくした後に、それぞれのハーブを混ぜ合わせて乾燥剤を入れた密閉容器で保存する。そして利用する都度、そこから取り出せばいいわけだ。
また、それぞれのハーブを単体で使う場合や、使うときにミックスするものについては、ホールのまま乾燥させ、それを保存瓶などにしまいこみ、必要なときに必要な量だけ使えば良いことになる。
もちろん、ハーブティなどを作る場合は小さいハーブであれば、そのままホールのものを使う場合が多いし、多きものであればティポットに納まる程度のこまかさに切り分けて利用すれば良い。
乾燥ハーブでホールのままの保存が難しいと思うものがある。これはわが家だけの問題なのかもしれないが、レモングラスである。大きく成長したレモングラスの葉の長さは1mを優に越える。乾燥するときは根元から吊るして乾燥させるのでそのままの長さで乾燥が完了してしまう。当然、ハーブティ用に適当な大きさに切って密閉瓶の中に入れるという方法があるのだが、どうもこまかく切ることによってせっかくの香りが抜けるような気がしてならない。二つ切りくらいで対応できる細長い瓶があるにはあるのだが、これだと量が入らない。まことに困った話なのだが、今は一番大きな梅酒用の瓶に入れることにしてある。瓶の長さに合わせてレモングラスを切り、乾燥剤等を入れて冷暗所に保存している状況である。この瓶だとかなり窮屈に詰めることも可能だし取り出す時に、広口瓶なので取り出し易いという利点もある。乾燥状態を維持しつつ酸化を防止するのにはそれなりの工夫がいるし、費用も掛かるのは已むを得ないことである。
そして、これ以外の方法としては、ペーストを作ったり、ジャムにしたり、あるいは冷凍や砂糖漬けにしたりして保存する方法もあって、それぞれのハーブの特性を生かした保存方法をとれば良いのではないかと思っている。
さて、この保存方法の中で、一番利用勝手がよい・・・これは自分だけの問題なのかもしれないのだが・・・のが酒につける方法である。
フレッシュなハーブを漬け込む場合は、漬け込んで1ヶ月程度でハーブを引き上げて、あとは熟成を待つ。これは材料となったハーブを引き上げてから、1〜3ヶ月で熟成する。まあ、ものによっては熟成を待たずに減って行くものもあるが、味見・香り見ということでしょうがないのである。
また、乾燥ハーブの場合でも大体1ヶ月程度で材料を引き上げて、そのあと熟成ということになる。
生が使える場合は生を使い、乾燥したものしか手に入らない場合は乾燥したものを使うのが原則ではないかと思う。
で、話は酒の話となってしまったが、お勧めのハーブ酒は「リンデン酒」ということになる。
香り・味とも最高で、ものの本などではシナモンスティックなども併せいれるというレシピとなっているものもあるが、リンデン単体でも十分に満足のいくものができるのである。乾燥したリンデンを大量に使うので、ホワイトリカーの量もそれなりの量となる。色は次第に濃い琥珀色になって行くのでその途中途中に香り・味を楽しむことができる。またこのリンデン酒は、材料を引き上げずに漬け込んだまま熟成してもよく、香りを楽しみつつそのまま飲んでも、オンザロックで飲んでも、お湯で割って飲んでも満足できるハーブ酒となるのである。
香り・美味しさからいうと、第2位フェンネル、第3位タラゴンといった順位付けになってしまう。
ハーブがふんだんに採れたときは是非挑戦してみたいハーブ酒である。
★ 主なハーブの主な保存方法
(注)その他欄の●はジャム、●は砂糖漬け、●はシロップを表す。
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で、結局、保存の話を長々と書いたわけだが、保存を開始したり、保存のための処置をする時期は実はハーブのそれぞれの収穫期であって、冬ではない。
冬は、保存したものの整理や保存したハーブの完成度の確認ということになる。だから、若干の作業を伴うものがあっても、それは本当に冬に限られたものであり、その多くが香りを楽しみながらできることなので、実に嬉しい作業となる。
前回に既に紹介したのであるが、例えば、「完成度の確認」と言いつつ出来上がったハーブ酒の熟成具合の確認というのは、香りと味をしっかりと楽しめることにもなる。また、乾燥したハーブ類の乾燥具合、保存具合の確認であれば、ハーブティにすることで色と香りを楽しむことができるのである。更に、作りおいたオイルもヴィネガーも料理にどんどん使うようになって、確認とは言いながらも実際にはそろそろ使い始めの時期ということの確認になり、食卓が豊かになる時期でもあるわけだ。
ということは、香草家の真冬というのはハーブの保存というよりも、保存したハーブの利用開始の時期の確認といったほうが良いようだ。これはさかのぼって、この項のタイトルを変えねばならんかなと思案しているところである。
利用方法の中で最も多いのはやっぱりハーブティということになるだろう。
今回はそのハーブティの話である。
ハーブティと言ってもいろいろ種類があるわけだが、とりあえず、いま我が家で乾燥ハーブとして在庫があるカモミールやレモングラス等のティの話をしたいと思う。
そこでまず、ティの基本的な入れ方についてであるが、
- @耐熱ガラスや陶製のポットを用意する
- ハーブティは色も楽しみたいものである。したがって、できれば耐熱性のガラスポットが色の変化なども楽しめてベターと考えられる。金気のあるものは、ハーブの成分の浸出に伴い化学変化を起こす可能性があるので避けるべきだと考えている。
- A湯の量
- 原則、1人200cc程度。お湯は沸騰しているものではなく「熱湯」を注ぐ。精油成分等が急速に蒸発するのを防ぐためである。
- Bハーブの量
- 原則、1人前小さじ2程度。これはあくまでも原則であって、使うハーブの種類によっても異なるし、また複数のハーブをミックスした場合なども異なるので、多すぎない量で自分の好みの量を早めに見つけることが良いのではないかと思う。
- C蒸らし時間
- 大体3分前後。これも好みになってしまうが、あまり長い時間を掛けると香りに含まれる有効成分が蒸発してしまうのでほどほどに。必ずポットには蓋をすること。
と言うことになる。
実際には何度も書くようだが、各人の好みにより使用するハーブの量は大きく変わるものである。まずは基本的な量でスタートするのが良いのではないかと考えられる。
また、使うハーブの種類や、ハーブの状態、つまり生であるのか、乾燥したものを使うのかによっても量は異なるものである。この生・乾燥から言えば、生:乾燥の割合は3:1ということになる。生のハーブのほうが乾燥ハーブを使うときの3倍程度の量ということになる。
上記でもわかるように、これがベストというものはなく、あくまでもハーブティのレシピは参考と考えて、あとは自分の「好み」で量を増やしたり、浸出時間を調整したりすれば良いということになる。
ただし、以前もこのコーナーで注意したことがあるが、大量のハーブを長時間「煎じ」これを飲用することは危険である場合があるので、専門家の処方などを確実に受けた上で対応してもらいたい。
さて、実際に我が家にある乾燥ハーブで作ったものがある。
左はレモングラスで、右はカモミールである。
レモングラスはティを作る直前に長いまま乾燥した葉を1cm程度の長さに切り揃えた。
いずれも乾燥ハーブとはいいながらも、飲む前の準備段階からかなり強い香りが楽しめ、またティ自体の色は薄いもののガラスポットで浸出中にかなり色が楽しめ、今回も十分にハーブティを作る段階から楽しむことができた。更に、生の使えないこの時期に、乾燥ハーブを使って夏と同じように香りが楽しめるというのも嬉しいものである。
で、香り・味であるが、レモングラスはやや硬い感じがするので、今回は浸出するときに乾燥したステビアの葉を2枚入れてみた。これは成功で、まだステビアから甘みが全部出切る前に浸出を終えて味わってみたので、ほんのわずかの甘みとレモングラスの香りがして美味しいハーブティにすることができた。
一方、カモミールはそのままの浸出で十分に甘くまろやかで香り高いティとなった。
まあ、いずれのティもいつもの味と香りと言うことになる。
今回で、「香草家の冬」はいったん終了して、この続きは温かい春になったところで春シリーズとして再開する予定である。
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