再び、南仏プロヴァンス その1

   9月25日から10月2日までの1週間を、妻と二人で南仏プロヴァンスの旅を楽しんできた。
 この間、平日は夏休みを利用し、夏休みで足りない分は有給休暇にした。
ニース湾:天使の湾
 旅といっても、旅行社が主宰するパックツアーに参加しただけである。単独で飛行機の予約を取ったりホテルの予約を取ること方が多分インターネットの世界では簡単で、料金も安いはずである。が、現地での行動はどうしても英語かフランス語が必要となってくる。もちろん外国語とは縁遠い。まして、都市間を移動する手段もなかなか難しく、海外旅行へ行くのならばツアーに限る、とかってに合点して、決めたわけである。
ここから「モナコ」の道路標識
 ヨーロッパに行くなどの長距離の海外旅行の最大の難関が13時間に及ぶエコノミー席である。今回も、前回同様にエールフランス277便(21時55分、成田発)である。パリのシャルルドゴール空港に到着するのは午前4時過ぎ。形式的に見れば、所要時間は6時間強だが、この間に7時間の時差が隠されている。そのため実質の拘束時間は13時間半近くになるのである。これさえ、無事過ぎれば後は楽しい観光となる。もちろん、この後に、ジャルルドゴールからツアーの最初の出発点となるニース空港に飛ぶのである。ただし、これは比較的楽で、時間も1時間半程度である。
 ニース空港と簡単に呼んでいるのだが、正式にはニース・コートダジュール空港である。この呼び名だといかにも南仏と言う感じがする。
 8時51分、そのニース空港に到着。
 大型バスでニース市内に。天気は素晴らしく良く、事前にインターネットで調べておいた通り「快晴」である。空港からバスに乗り込んでニースに行くまでの間、当地のガイドから詳しいニース周辺の説明を聞く。それによると
ピンクペッパーの実
 『9月下旬から10月にかけてのニースの最高気温は日陰で23度から24度程度、でも今日は少し肌寒い感じがする。ニースは海岸通をずっと通っていくことが出来るのだが、今日はニースの海岸から山の手までを使って国際トライアスロン大会が開かれている。したがって、交通規制が敷かれているため、今日は海岸通を全部見ることが出来ない。これから最初に行くのはシビエ地区と言う閑静な住宅街にあるシャガール美術館である。見学後、ニースの花市・くだもの・野菜市が開かれているところにあるレストランでの昼食。そして、午後はエズ村からモナコを巡って夕方5時過ぎにホテルに到着とのこと。もちろんホテルはニース市内の比較的海まで近い、かつ、中心街に使いホテルである。』など。
モナコ市内、
高いビルがあるところはモンテカルロ
 もちろんこの間、ニースの町の歴史や、コートダジュールと言う名前の由来などかなり細かく説明してくれるのだが、聞いているだけで覚えられるものではない。『ああ、そうなんだ!』と思う程度である。
 最初のシャガール美術館では1時間ほど時間を取ってゆっくりと見学。ストロボがなければ写真撮影もOKである。シャガール描いた絵画17点とモザイク画1点、そして彼が設計したステンドグラスを堪能し、かなりの作品を写真に収めてバスへ。この間もガイドの方が一点一点の絵画の説明を丁寧にしてくれたので、ただ単に見て回るよりも良く理解できたのである。もちろん美術館には日本語の説明シートがあるのだが、単にタイトル説明だけで、詳細な説明はない。したがって、このようなガイドによる説明があるととっても便利である。
 そして、その後市内に戻り、朝市を楽しんでから昼食。この朝市で、ブルーベリーとスグリを購入(これはホテルで夜食に食べてしまった)。
 昼食後はエズ村に直行。ニーチェの小道を通り、更に上に登り、最後のサボテン公園を抜けて城壁の上に。
 ここからの景色はまさに絶景。コートダジュール、つまり紺碧海岸の名前の通り、地中海が濃い群青色に見えるのである。2年前にここに来た時は、2度と見ることが出来ないと思っていた景色だっただけに、感無量である。天気も抜群で、今回もこの場所だけで10枚も写真を撮ってしまった
 

再び、南仏プロヴァンス その2

   翌日は、カンヌ、サンポール、グラス等ニースの近郊の町や村を巡る観光。
カンヌ映画祭会場

 カンヌでは、毎年5月に開かれる映画祭の会場の見学した。カンヌ市内に入った時には通勤時間帯にぶつかってしまっていて、かなりの渋滞である。そのため、少し先まで行ってバスからおり、少し戻る感じとなってしまった。渋滞する道路を渡ってからのカンヌ映画祭の会場の見学となった。ホール自体は2階建程度で思っていたよりも小さな会場なのである。入ってみれば中は広いのであろうが、外形からはちょっと拍子抜けである。それでも、さすがに世界中から有名映画人が集まる所だけあって会場に面した通りには超一流ブランド店が立ち並んでいる。その中で、いま一番人気があるのは、パリに本店があるクリスチャン・ラクロワだという。

フラゴナール香水売り場
 そんなカンヌの繁華街から抜けて今度は南仏の田舎道を走る。
 しばらくして鷹の巣、とも鷲の巣ともいえる断崖の上に作られた城壁に囲まれた村に到着した。サンポールの街である。町自体は縦長の町で、その中心に入り口から一番奥まで貫く細い路地がある。これがメインストリートと言うことであろう。入り口から出口までは真面目に歩けば10分程度で縦断してしまうほど小さい村なのである。そして行きついた村外れの場所に墓地がある。太陽が燦燦と輝いているなかで白い墓石が並ぶ風景もなかなかいいものである。実に、居心地のよさそうな場所を選んで、墓地があるのだ。この墓地に入ってすぐ右側にシャガールの墓がある。ローズマリーが良く育っていて墓の上部を埋め尽くしている。巡礼者の置いたものなのか小石が墓の上にわずかな厚みとなって積まれている。
上:サンポールのメイン通り
下:村内にあった塔
 この墓地から、今来た道を通ってゆっくりと入り口のほうに戻る。狭いメインストリートの両側かにいろいろな店が立ち並んでいる。が、どうもこの小さな町は、シャガールの影響もあるのだろうが、画廊が多いようだ。細いメインストリートの両側で10件近くの店が絵を展示し商売のために店を開けているようだ。そのために、観光地ではあるのだけれども、土産屋の数は極端に少ない。その少ない土産屋の一つに入り、いろいろお土産となるものを探したが、取敢えずここでは菩提樹(リンデン)の蜂蜜を買う。これは独特の香りと味がして我が家の人気アイテムの一つとなっている。日本ではなかなか手に入りにくい一品であることから1kgの大型の壜を購入した。
 土産を買った帰りに、女優のゴクミ(後藤久美子)が結婚式を挙げたという村の教会に行ってみる。小さな教会なのだが、なかなか雰囲気があって良い。教会前の広場もよい。教会はこの小さな村の一番高い所にあるようだ。この場所からの見晴らしもなかなか良い。
 そして、村の入り口まで戻ってくると、時間的には出発までに1時間近く残している。この村の入り口にあるカフェに座り、ビールを飲むことにした。
 カフェの前の広場では、中年のおやじに交じって、若者達もぺタンク競技を楽しんでいる。
 全くルールが分からないので、何とか理解しようと、黙って30分程見ていたのだが、どうしてもルールが分からない。やっている連中はそれなりにハイテンションとなっているので、かなり面白いゲームなのかもしれないのだ。このぺタンクについては帰国してからいろいろと調べてみた。競技自体は実に単純で面白く、仲間さえ集まれば、是非やってみたいと思う競技である。

 つぎは、グラースである。ここも鷹の巣のような町なのだが、サンポールに比べれば町が大きいようだ。が、ここでは街中の散策はせずに香水工場へ直行。30分程度の順路にしたがっての香水の歴史と作り方を見学した。いったのはフラゴナールと言う工場である。比較的大きくて観光客の受入体制も整っているからと言うことであった。もちろん、見学終了後は直販所に案内されて、後は自由にショッピングとなった。
ペタンク風景
 ここは女性には実にとっては楽しいところだが、男性にとってはあまり興味が湧かない場所である。それでも、イランイランのフレグランスの蝋燭を19ユーロで購入。プロヴァンス地方の衣装に関する本も買ってしまった。これは中に沢山ある写真が綺麗だったからである。

 そして夕方に再びニースのホテルに戻って来た。
 時間的にはかなり早かったのだが、良い天気の中で相当の距離を歩き回ったことからちょっと疲れが出た。部屋に戻ってシャワーを浴びてから夕食までの間、仮眠をとることにした。
 夕食はホテルから歩いて数分のところにあるレストラン。メインディシュはムール貝のプロヴァンス風。つまり、オリーブオイルをニンニクで香り付けし、その中にムール貝を入れ白ワインをたっぷりと入れた後に塩・胡椒で味付けし、これにハーブを絡めたものである。これを食べ始める前に、合わせる飲み物を聞かれたので白ワインをボトルで頼んでみた。このワインはよく冷えていて美味かったが、ムール貝は塩が強過ぎて自分用に取り分けた一皿分を食べるのがやっとだった。一緒に行ったツアーの皆さんもしょっぱさには閉口したらしく、意外な程、沢山残ってしまっていた(ムール貝は大きな容器に入ってきており、これを各人自分の好きなだけ自分の皿取り分けると言う料理の出方だった。)。
 

再び、南仏プロヴァンス その3

   
マルセイユ
旧港魚朝市

 ニースに2泊した後は、古都エクス・アン・プロヴァンスに泊まる。今日の行程はニースから一気にマルセイユに行き、マルセイユで見学した後昼食を摂り、その後エクスに入る行程だ。
 朝一番の仕事は、バスに積み込むスーツケースの点検と確認である。そして、この点検の後に朝食を摂る。
 この二日間の朝食はホテルのレストランでのいわゆるバイキング形式なのだが、数種類のパン、4種類のチーズ、野菜、ヨーグルト、生ハム、ベーコン、紅茶、コーヒー 、牛乳、各種果物、シリアルなどがあり、好きなものを好きなだけとれば良いのである。
 この二日間のパターンは、コーヒーに自分で自由に切ったバゲット、生ハム、チー ズ2種(これも自分の好きな量に切り分ける)、野菜に果物、ヨーグルトと言ったものになった。日本にいるときは、平日はほどんとヨーグルトだけで済ませていた朝食だけに、カロリーの取り過ぎが気になったが、そんなことを気にしていては旅を満喫できない。
(上)ノートルダムドゥラギャルド
(下)寺院の内側

 朝食をおえて、ニースのホテルを午前8時に出発。
 「イギリス人の散歩道」といわれる海岸通りに出て、西へと進む。途中、ガイドの人からエクスやマルセイユの歴史などを細かく聞くのだがそんなことよりもどんどん変化して行く車窓の景色の方が興味がある。葡萄畑やオリーブ畑が続き、赤茶けた大地が広がる。遠くの丘や林の中に点在する古い城跡や石が崩れ始めた城壁や、オレンジ色の屋根瓦の農家など「プロヴァンス」がすぐそこにあるのである。
 プロヴァンスに来ていてプロヴァンスがすぐそこにあるとは矛盾した表現なのだが、ニー スやカンヌと言った都会を見て、更に「高速道路」を通っていると、これだけではいまいち「南仏プロヴァンス」にいるという実感がないのである。どうも、これは、自分だけの感覚なのかも知れないのだが、「プロヴァンス」という言葉の響きやこの地方を背景とした映画などの影響もあるのだろうが、葡萄畑の中に点在する赤茶けた土壁の農家とか、川沿いに見え隠れする漁師の家とか、自分の心の中でもっともっと多くの田園風景を期待しているのかもしれないのだ。
 そんなことを考えていたら、バスはいつのまにか南仏最大の都市、マルセイユの市街に入っていた。メインの通り道は広くてスムースにバスは走れるのだが、脇道に入ると道路が狭い上にかなり渋滞している。
(上)ミラボー通り
(下)ミラボー通りのカフェ

 そのため、10時過ぎに着く予定であった旧港の旅行案内所に到着したのは10時45分頃。ここで全員下車。時間的にはそろそろ終わりかけている魚の朝市を見学。十分に海の香りを満喫して、今度は、 この旧港から正面にみえるノートルダム・ドゥ・ラ・ギャルド寺院へ登る。この寺院の展望台からは、南に地中海、そしてすぐそばにあるイフ島が望める以外は、ほとんどマルセイユ市街地が一望できるのである。
 この寺院は船の安全を守る神様とも言われており、いろいろな国から安全祈願のための船の模型が多数納められているという。
 ところが、この寺院で一番興味を惹かれたのは、通風口からの香りである。時間はちょうど12時。寺院を1周する回廊の途中にある通風口のひとつから実に良い香りが流れてくるのである。香りから判断すれ ば、ニンニクと各種ハーブで鶏肉を炒めているようでありオリー ブオイルの香りも流れてくる。今日の朝食も比較的早い時間だったことから、この香りたまらなく食欲を刺激する。
 バスに急いで戻ると既に全員が集合していて、我々待ちの状態となっていた。昼食をとるために再びマ ルセイユの市街に戻った。レストランは先程魚市場が開かれていた所から程遠くない海岸沿いのレストランの一角である。ブイヤベースが美味いレストラン「ミラマール」から数軒おいたところにある「Au Sanglier」と言う名前のレストランである。日本で言えば「イノシシ屋」と言うことになるのだろうか。
 食事の後は、一気にエクス・アン・プロヴァンスへ行く。
 バスを、エクスの観光案内所の所で降りて、歩いてエクス市内の観光となる。このバスを降りたのが町の中心地の噴水の所である。ここはミラボー通りの基点ともなる。ここから歩いてミラボー通りを一番奥まで行く。そして、旧市街地へ入るために、建物の1階がアーチ状になったところを通って、市庁舎前の広場へ出る。ここで20分くらいの自由行動。早速、そばにあった生地屋に入って、セミ柄の布を3メートル購入。これが実に安い。9ユーロ/1メートルなのである。確かにソレイヤードではないので、安いのかもしれないが気に入った柄と色があれば先ず「買う」ことにした。
 市街地を少し過ぎたところで、再びバスに乗車。エクス市内からやや離れた場所にあるセザンヌの写生場所という所に行く。エクスの名所というのか、セザンヌの絵で有名になったかは分からないのだが、正面に「サント・ヴィクトワール山」が見える。とても見晴らしの良い高台である。セザンヌの絵に何十回もくり返し描かれているのと同じに形に、サントヴィクトワール山が正面に見える。ここは閑静な住宅地の一角で、この場所から50メートルくらい下った所までが細長い公園となっている。
サン・ソーブル大聖堂

 サントヴィクトワール山をカメラに納めてふと足元をみると、これがハーブである。ローズマリーはあたりまえとしても、チコリ、マロウ、フェンネル等が雑草の如く咲いているのである。
 もちろんここは公園となっているので、この時期の花壇の中には秋の草花が乱雑に植えられているのだが、ハーブも公園の中をウネウネと降りていく道の両側にもずっと植えられているのである。
 公園を抜けてそのまま徒歩で5分くらい行ったところがセザンヌのアトリエである。
 ここは幾度もテレビで見たことがあった。が、実際に行くのは初めてである。かってはエクス市内が良く見えた高台と言うことだったが、100年も経った今は、木立が高く生い茂り、セザンヌのアトリエがある2階からも殆どエクスの町が見えないのである。アトリエの見学は18名は多いということで2回に別れて案内・説明があった。
サントビクトワール山

 2階にあるアトリエに入ると意外に狭いのである。と言っても大体40畳ほどの広さである。北側の窓は腰から上以上がガラス張りでそこから見える緑が部屋を明るくしている。南側の窓は小さく2つある。これは普通の両開きの窓である。部屋には実際に使った筆やデッサンなどもあり、「確かに見た」という充実感がある。ただし、写真撮影が全く禁止されているのにはちょっと残念な気がした。
 見学後、再びバスに乗り、今夜のホテル、アクアベラに到着した。自分の荷物が着いていることを確認して、部屋に入る。
 まだ午後5時前である。外は明るい。でも、疲れを取るためにシャワーを浴びる。今日は本当に気持ち良く気持ち良くお湯が出る。
 夕食の7時までにはまだ時間がある。妻と近所を散策することにする。ここには2年前に一回来ているのでなんとなく土地勘がある。エクスの市街はミラボー 通りを中心に、旧市街地を半月状に取り囲む大きな通りがある。この道さ忘れなければ迷子にならないのだ。そんなうろ覚えの知識で夕方の町に出る。ホテルの前の大通りをグルリと右回りして、いろいろな街角を巡って町の様子を見学したり、商店街でウィンドウショッピングをしたりしながらホテルに戻る。戻るとちょうど食事時間である。夕食はホテルの隣に設置されたレストラン風の建物で摂ることになっている。豚肉料理であったが、夕食時のお酒は地元プロヴァンスのロゼをフルボトルで頼んでみた。
 ソムリエが来て、ワインのラベルを見せてくれて慣れた手付きでカヴァーを切りコルクを開けてからコルクにしみ込んだ香りを確認する。そして、ワイングラスに4分の1ほど注ぐ。
 こんな飲み方は20年振りで思わず緊張してしまったが、とりあえずワイングラスを持ち上げ軽くゆすって香りを確かめたあと、少量口に含んでみた。美味しいのである。即OK。
 夕食を食べ始めたところで、アメリカ人と思われる正装をした一団、大体20名くらい、が入ってきた。賑やかである。よく聞くとこれからそばにあるカジノに行くと言っているらしい。カジノに行くのならば正装が必要なようだ。
 

再び、南仏プロヴァンス その4

   
円形闘牛場

 今日もホテルの移動日である。早朝に荷物をスーツケースに整理・つめ込み、バスのところで自分のものがあるかの確認。その後、ホテルのレストランで朝食をとる。
 ここでの朝食も軽いバイキング形式である。たっぷりのサラダとチーズ2種。ヨーグルト、生ハム。バゲット、コーヒー 。リンゴと、また今日も、頬張ってしまった。食事の終わる頃に、昨日の陽気なアメリカ人の団体がレストランに入って来た。昨夜とは異なり、アメリカ人らしいラフで派手な服装になっている。陽気で明るく朝からガンガン食っている。
 今日は食事後、すぐに出発である。
 早朝の高速道路をアルルに向かう。最初の観光場所はゴッホの絵で有名な「はね橋」である。と言っても観光用に最近作られたもので、掛かっている橋も場所も違うのである。そのため、早朝ということもあってか、観光客が誰もいない。こんな観光施設でもない所にある「はね橋」をバックにして記念撮影をしてしまった。はね橋など、なければなくても良いのである。偽物に時間をかける必要のない場所ではないかと思った次第である。
円形闘牛場から見た
アルル市内とローヌ川

 はね橋からアルル市内へ入る。
 今度はバスから降りて円形闘牛場を見学。
 外からみるとかなり大きな施設に見えるのだが、中に入って中段の座席に座ると、意外に狭いような気がする。ところが、ガイドの説明を聞くと、ここに3万人が入るという。しかも、古代の石作りの闘牛場で今でも定期的に闘牛が開かれるというのも驚きである。
 説明を聞きながら闘牛場の一番高い塔に登ってみる。アルルの街が一望できるのである。そして、遠くに街を貫くようにローヌ川がゆったりと流れている。アルルもエクス・アン・プロヴァンスと同様に大きな近代的なビルなどは1棟も建っておらず、オレンジ色の瓦屋根がローヌ川まで続いている。
 この円形闘牛場の見学を終えて、次はゴッホが入院したという病院跡を見学。でも、ここはちょうど庭の花の入れ変えのときだったので時期的には最悪で、庭は一面裸の土がそのままという状態になっていた。これにはちょっと残念な思いがした。少なくともゴッホのこの病院を描いた絵には、庭の華やかな花が沢山描かれていたのに、と思った次第である。
 そこから街の中心の広場に出る。
 ここでしばらくガイドから、この街の歴史などの説明があった後に、50分程度の自由時間と言うことになった。
 ところが、説明を聞いている最中から、激しい腹痛に襲われてしまい、説明終了後にガイドにトイレの場所を尋ねる始末。結局、この広い市庁舎前の広場では、市庁舎の一角にある観光客用のものが1番近いところだと分かった。
 急いで行ってみると、トイレは男女1組ずつしかなく20人くらいの行列が出来ている。しかも、男も女も同形式のトイレだもんだから、女性も平気で男性トイレに入るのである。わずか3名くらいしか男性がいないのに、男性トイレには入れるまでは10名程度の用足しを待たねばならない。我慢・我慢で何とか対応が出来たが、冷や汗をかいたのは言うまでもない。教訓として、今後海外旅行に行く時は、腹痛が一発で治まる薬(最近、水なしで飲めるもので、直ぐに効くと言う薬が発売されているようだ。)を持参しようと堅く心に誓ったのである。
 やっとトイレに行けたことでほっとしてから時計を見る。自由時間があと30分もない。急いで広場から少し奥に入ったところにあるソレイヤードに走った。今回の目標である「ソレイヤードの生地でテーブルクロスを」を達成するためである。妻と二人でやや焦りながら生地を物色。大きな柄の明るい黄色を基調としたものと、細かいセミの図案化したものとの2種類をそれぞれ3メーターずつ購入した。が、メーター27ユーロである。単純に計算して
  27ユーロ*3メーター*2枚=162ユーロである。
  162ユーロは162ユーロ*140円=22680円となる。
 なかなか思いきった買い物である。これで妻の持って来たユーロの半分近くがなくなったはずである。
サン・ヴェネゼ橋

 このあとアルルのフォーブス広場からバスの待っている所に抜け、昼食のためアヴィニョンに向かった。
 アヴィニョンでバスを降りた所はサン・ヴェネゼ橋の近く。あの有名な「アビニョン橋」である。石造りの巨大な橋が、ローヌ川川の幾度もの氾濫で途中で切れてしまったものである。バスの止まったところから、アヴィニョン法王庁の城壁の割れ目から市街に抜けて、予約してあったレストランへ行く。
ポン・デュ・ガール

 昼食は、前菜、メインの鶏肉料理そしてデザートとなる。今日も天気がよく、カラリと晴れている。そして、アルルでもかなり歩き込んだことから喉がカラカラである。レストランに辿り着いて最初にビールを注文。このビールの実に美味いこと・・・感激。
 昼食を終えて再びバスに乗り、世界遺産のポン・ジュ・ガールに行く。駐車場から1kmくらい歩いたところに世界遺産となった水道橋がある。観光案内所をぬけてゆるやかな坂道で写真を撮りながら歩くと、突然超巨大な石作りの橋が見えてくる。ローマ時代に作った水道橋である。遠くから見ているので大きさの実感が湧かない。ところが、橋に近づくに従ってその大きさに圧倒される。一つ一つの石の大きさにも圧倒されるのだが、それを組み合せてアーチを幾重にも連ね、その上に一定の傾斜を持たせた水道を作り、水の流れを制御した技術の高さに驚くのである。
 橋の下の流れはローヌ川の支流の一つである。
法王庁

 この川は思っていたよりも綺麗で、魚が泳いでいるのが良く見える。この穏やかな流れに小学生がカヌーを繰って流れて来たり、観光客らしい一団が大きなゴムボートでゆったりと流れを楽しんだりしている。橋の大きさに比べて人間の小ささにびっくりする。
 ポン・ジュ・ガー ルからアヴィニョンに戻り今度は徒歩でアヴィニョン市街、つまり城壁内の見学となった。
 サン・ヴェネゼ橋の入り口から入り、最初の見学場所が旧法王庁。
 ここは建物の中に入っての見学であった。残念なことにカメラが撮れない、撮影禁止なのである。1時間以上にわたりガイドが細かい説明をしてくれて法王庁内部を歩き回ったが、結局、外観の大きさも凄いし、内部の複雑さも相当なものである。更に、ここでの歴史はもっとすさまじく最後に辿り着いた地下にあるお土産売り場でやっとほっとした感じであった。お土産売場の出口から地上に出ると、明るいアヴィニョンの青空が待っていた。再び法王庁前の広場に集合して歩いて市庁舎前まで行く。
 ここでしばらく町の概要の説明があった。その後、ホテルにバスで直行。
 ホテルはアヴィニョンの城壁の外側で、フランス国鉄在来線のアヴィニョン駅の隣にあるアヴィニョングランドホテルである。
 ここで今夜と明日の晩の2泊となるのだが、部屋に入って驚いてしまった。今までのホテルとは違って豪華なのである。
 ベッドルームが2つに応接セット、洗面所に更に豪華な風呂、この風呂も、お湯を張ってはいれる浴槽とガラス張りのシャワールームが別なのである。窓の外はアヴィニョンの城壁がずっーと続いている。このホテル建物自体が2階建てで大きな建物ではないので見晴らしの良さは別としても、ライトアップされたアビニョンの城壁やその上に造られた監視塔を眺めつつワインを飲むのもなかなか良い気分である。
 夕食は7時から。ホテルの別棟にあるレストランへ。
 ここでは白ワインをボ トルで注文、ハウスワインで良いのかとの確認があり即「OK」。
 食事時間にツアーの皆と話してみるとホテルに戻ったあと、時間が大分あったので再度街に出て、サン・ヴェネゼ橋まで行って来たという。今日は結構な距離を歩いたので、疲れきっているのではないかと思っていたが、みんなの凄い体力と気力に驚嘆したのである。
 良く考えてみれば、18人のツアー だけど、明日オプションツアーをせずに、1日フリー にするのは3組6名だけである。12名はスペイン国境近くまで行くとのことで、朝8時から夜の8時までそれで12時間を費やすことになる。
 今回の旅行に来る前に、最後の1日くらいはゆっくりと、フリーで過ごしたいと思ったのである。そのためアビニョンの2日目を自由行動にしたのである。ただ心配なのは、見知らぬ土地で「言葉」が分からないことである。
 そんなことを妻と話しながら、たっぷりのワインを楽しみ、部屋に戻って、爆睡。

アヴィニョン2日目

 午前6時に目が醒める。まだ、空は暗いが、天気は抜群の様だ。
 8時少し前にレストランにいくと日本人は我々だけである。
 野菜サラダにトマト、チーズ、コーヒー、ヨーグルト、トーストの朝食。そのまま、外出。
サン・ヴェネゼ橋から

 地図でアヴィニョンの城壁内の通りを細かいところまで昨夜調べて記憶しているのである。従って迷うことはない。
 もし迷っても、ぐるりと回ることで、必ず街を貫くメインストリート(レピュブリック通り)に出るのである。
 最初に行ったのは、もちろんサン・ヴェネゼ橋。昨夜、皆の話で今日最初に行くことに決めた場所である。ついでに言えば、泊まっているホテルから一番遠い場所で、ここに最初に行くことで、後はホテルに向かって見学をして帰ってくれば良いわけだ。橋に入るために、チケットを買うと、係りの女の人に、どこから来たのか聞かれたので、「Japan」と答える。すると少し待てという。しばらくして奥からからかなり大きいハンドセットを2つ持って来た。
 そして、これを使えという。
 1台づつ借りて、ハンドセットに組み込まれた案内にしたがって操作する。すぐにサン・ヴェネゼ橋に関する日本語の説明が流れるのである。
プチパレ美術館

 この説明だけでたっぷり1時間はある。  ハンドセットを耳に当てながら、サン・ヴェネゼを少しずつ、歩いて行く。わずかな朝靄に太陽があたりその中を、ローヌ川はとうとうと流れている。10時過ぎくらいまでこの橋には観光客がなく、我々の貸し切りの状態になっている。静かでゆったり感覚で川の流れとサン・ベネゼ橋を楽しむことが出来た。
 橋から城壁をくぐり抜け市内に戻る。次に行く場所は法王庁の左隣にあるプチパレ美術館である。
 ここにはボッテチェルリの「聖母子」像があるのだ。以前から是非見たいと思っていたもので、もしもアビニョンにいくことがあれば絶対にこれだけは逃すまいと思っていたものである。
 が、それがどこにあるのかは不明なのである。この美術館はほとんど宗教画で構成されている。そのため多くの聖母子像がある。順路にしたがってどんどん行くのだが、ボッテチェルリにたどり着いたのは入館後約1時間程度経った頃であった。展示室の多くは必ず1人、説明者兼監視人がいる。が、この絵だけには、1枚の絵に1人の監視人がついていたのである。ボッチェチェルリの聖母子像は他の絵とは違うオーラを発しているので直ぐにそれと分かったのだが、残念なのは、この美術館も写真撮影が禁止されていたため、これらを写真に撮ることは出来なかった。残念。
 外に出ると中の重たい宗教画の世界とは違って、明るい太陽が燦燦と輝き、さわやかな青空のもとに戻るのである。時計は12時近くになっている。とりあえず、おいしいものを探しにアヴィニョンの公設市場に行ってみようということになった。
 地図は頭に入っている。プチパレ美術館から法王庁前を通ってメインの通りに入る。市庁舎を少し先に行った所で左に曲がり、あとは道なりに行けば右側にあるはずだ。10分とかからないうちにLes Hallesと書かれた公設市場に着く。ここは午前中だけしか開いていないということだ。ところが12時過ぎに行ってもまだまだ店は開いている。肉屋、八百屋、果物専門店、魚屋等々食品関係の店が目いっぱい軒を連ねている。
 それぞれの店の前に立つと、そこにある商品全部を買いたいという欲望に駆られるのであるがそんなことはとても出来ない。
 最初に買ったのは、栗虫入りのチーズである。店の親父さんはやたらに「special ×▽?◆」と叫んでいるが、意味が分からず、強硬に購入する。
恐怖の「ウサギ肉の赤ワイン煮」

 オリーブオイルなどもいろいろな種類があって、見るだけでも楽しい。妻は、と探すと、果物屋で、梨とリンゴ、プラム等をかごに入れて買っている。あした日本に帰るというのにどうするの! と思いつつもつい協力してしまう。ここで、好き勝手に買い物をして、メインの通りもどったのは1時過ぎ。さすがに空腹を抱えての散策はままならない。
 食事場所を探してメインの通りをさまよう。といっても、ほどんとメインの通りはレストランやブラッセリで占められているので、どこに入るか決めれば良いわけである。
 で、以前から、このような場合、「今日のお勧め」という看板を探してそれを注文すると失敗はしない、と言われていたことが頭の片隅に残っていて、それを思い出した。
 ところが、ここで問題になるのが「今日のお勧め」というフランス語が分からないことである。それでも図々しさとあてずっぽで「Plat du Jour」という言葉をその意味だと信じて、店を探した。
 ところが、この言葉を書いてある店の黒板が実に多いのである。この単語を見つけながらレストランがある中央通りをほぼ1周した。が、納得出来る(この単語群は書いてあるのだが、その下にやたらにいろいろな単語が書いてあるのである。でも残念なことに書いてある単語の意味が分からないのである。フランス語の辞書の必要性を感じた。)店がない。
 それでも、店を選ぶ基準として「直射日光にあたらないこと、簡易のテーブルやイスでない所」として、料理の内容は考えないことにした。価格は大体似たり寄ったりで8ユーロから10ユーロ程度である。
 結局、中央にある緑色で装飾した店に入り、直ぐに今日のお勧めを2つ注文。同時に500ccの生ビール2つも頼んで、ビールを先にと注文した。ビールで乾杯をした直後に、料理が出てきたのだが、とっても匂いが強い。なにか動物の骨付き肉であることはわかるのだが、これをレバーペーストで煮込んだような色と香りと味である。これが平らな麺の上に乗って出てきたのである。平らな麺は、日本で言えば、きし麺のようなもので、これはきし麺パスタと思えば満足できる味である。しかし、このソースとなるものが、一言でいえば「凄い」のである。
 妻は「こうもり」ではないかと言い気味悪がっているし、自分は「はと」ではないかという。食べ出したころはとても全部は食べられない、と思ったが、これをビールを飲みながら、食べ続けているうちに段々と「うまみ」を感じてしまうのである。結局、ビールが足らず、と言う状況で、二人ともこの料理をぺろりと平らげてしまった。後半からは「これ、美味いね!」と言い合いながら食べてしまったのである。
(日本に帰ってきて、写真に撮った看板の単語を確認したところ、「鳥の巣状にしたパスタとウサギの赤ワイン煮」であることが判明。ウサギを食べることは初めての経験であり、実に貴重な体験をすることが出来た。)

 最終日は、午前4時に起床。5時にマルセイユ空港に向けてバスで出発。6時40分の国内線でパリへ。パリでは約3時間の待ち時間があった。ここで残っているユーロを全部使い切るため、いろいろお土産を購入。
 最後にポケットの残ったのは、コインだけで10ユーロ程度。これは幸運のコインとして、そして次の旅へ続けるためにと大切に持ち帰った。