相隣、近隣問題についての基礎知識

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目次

  1. 奥の深い相隣・近隣問題
  2. 敷地境界の確認
  3. 境界をめぐるトラブルとその対応
  4. 建築前の近隣説明
  5. 近隣・相隣問題に絡む民法と建築基準法
  6. 建築工事をめぐる近隣・相隣紛争
  7. 紛争時の諸手続き
  8. キーワード
  9. 本掲載文に関する注意事項

 


1.奥の深い相隣・近隣問題

建築を行おうとすると、必ず出くわすのがこの相隣、近隣関係。すんなりと行けばよいものの、こじれるとこんなに大変なものはないのです。善意でやったことなのになかなか理解されないこともあれば、悪意をもつ人間に弄されたりもします。それを上手に整理していくためには、地道に話し合いを積み重ねていかなければなりません。当事者でらちがあかない場合には行政や裁判所に訴える手もありますが、できるなら穏便にとはだれしもが望むところです。

ここでは交渉を進める上で理解しておくとよさそうな下知識を整理してみようと思います。私は法律家ではないのですが、これらのことを勉強するときに作成したノートを掲載します。(なお、本文に基づいて行われたいかなる問題についても関与いたしかねますのでご了解願います。ご意見など歓迎いたします。)

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2.敷地境界の確認

建築を立てるにあたり、最初に必要なことは、敷地を確定することです。実務では隣地所有者との間で境界確定を行うことになります。ここで合意が成立すると、この合意は「境界協定」と呼ばれる合意となり、書類にすると「境界協定書」という書面になります。当事者間の話し合いでうまくことが運ばなければ裁判所に調停を申し立てたり、所有権確認訴訟を起こしたりします。そして、あわせて分筆ならびに移転登記を請求し登記まで得ておくと安心です。

さて、当事者間で境界を合意により確定するということは裏を返せばこの境界は動くことになります。それでは、登記簿に記載されている地積(公簿面積)や公図と食い違ってくることがありうるのではないでしょうか?。そして現実は公募面積と実測は食い違うことが多いのです。それでは一体なにを拠り所として自分の敷地を主張すれば良いのでしょうか?

ここで一つ境界について勉強しましょう。境界には2つの種類があります。一つは「地番の境界」と呼ばれ公的な性格を持つもので、もう一つ「所有権の境界」と呼ばれ当事者間の権利関係におけるもので境界協定に基づく境界はこれに属します。そしてこの二つは必ずしも一致しません。以下にその特徴を整理します。

地番の境界

地番のさかい。いわば公的なもので、不明な場合には境界確定訴訟(けいかいかくていそしょう)と呼ばれる裁判で裁判所の判断で決めてもらう。歴史的な背景から登記簿の地積、公募面積や公図は信用できない。

境界を確定する一資料にはなるが、確定する効力は持たない。勝手に動かせない。

所有権の境界

所有権のさかい。それぞれ自分の所有権の範囲を確認した同意に基づいて決めた境界。売買、時効取得などにより変動する。きちんと明快にしなければならないという法律上の義務はない。

境界協定を行うと原則として協定どおりの境界に確定する効力を持つ。調停や所有権確認訴訟により確定する場合もある。

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3.境界をめぐるトラブルとその対応

それではこの時点で起こりがちなトラブルをみてみましょう。

1.相手が境界確定に応じてくれない。話し合いすらしようとしない。

当事者で境界確定を行うのですから対象となるのは所有権の境界であるとした場合、この境界はたとえ所有権者であってもきちんときめなければならないという法律上の義務はありません。相手を強制的に確定に協力させることはできません。

話し合いによる確定が一番なのですが、利害的に感情的に大きく対立したりしているときは裁判に調停を申し立てたり、裁判を起こすことも一つの方法です。所有権確認訴訟を起こすと、相手が話し合いに応じない場合、裁判所は「欠席判決」という出席当事者の主張だけに基づいて判決をくだすことになるので、その意味では相手を引っ張り出せます。ただし、これは境界を立証するだけの証拠がないといけないので、本来の境界確定の目的どおり自分の主張する境界が確定するわけではないということも重要です。

2.相手の建設物が越境している。

土地の所有権は土地の上下に及びます(民法207条)。基礎や塀が越境している場合、撤去請求や損害賠償が請求できます。撤去請求の場合、権利の濫用(形式的には権利行使のように見えるが、実質的にはそれが相手方や社会にむしろ害悪をもたらすもであるとときに、権利行使を否定する法理)にならないか気を付けましょう。質問者が被る被害の程度、越境の程度、撤去の難易や撤去費用の多寡、当事者の認識や交渉態度などが評価されます。なお、建物の隣地への越境について民法234号の類推適用を肯定する考え方があります。(岡山地方裁判所昭和43529日「判事55564頁」同条は境界線より50cm以上の距離を置いて建物を建築するべきことを規定し、これを違反した者に対して隣地所有者に建築の廃止や変更請求権を認めていますが、着工後1年系かまたは竣工後は損害賠償請求だけを認めるとの規定です。

3.隣地から張り出す樹木の枝や根

民法は、隣地の地区僕の「枝」が境界を越えている時には、「竹木の所有者」に対して枝を「削除」するよう請求できること(民法2331項)、また隣地の竹木の「根」が境界線を越えているときには、これを採取すことができることをそれぞれ規定しいます。

4.長期間占有したら?

他人の土地を所有の意志を以って平穏且公然に一定の期間所有すると、その所有権を取得する。一定の期間は占有を始めたときに自分の所有地だと思っていて、そう思うことに過失のなかった場合は10年、そうでない場合は20年です。

5.古い境界と新しい境界

境界協定の合意は、いりりろな状況でなされますから、客観的に境界がはっきりしているのを念のために確認してくこともあれば、あまりはっきりしていないので互いに主張を譲り合って文字通り確定する場合もあります、こうした状況によっては協定したあらと言って後に問題がまったくしょうじないわけではなく、互譲してきめたのに、後に本来の境界がはっきりしたという場合は、紛争がぶり返すでしょう。しかし、それでは確定の協議をしても効果が薄く安心できません。そこで、凡例では、特別な意志表示がなされていない限り本来の境界と境界協定との間の土地は、一方から相手へ譲歩する暗黙の合意がなされているのだとしています。(大阪江東裁判所昭和381126日版希有t)つまり、所有権が協定によって移ってしまうので、新たな合意境界が境界だというわけです。しかしどんな場合でもこの暗黙の合意があるとは言い難いので、本当に確定するには、暗黙ではなく、はっきりとそのように合意しておくほうかよい。

6.建築工事のために「隣地」に立ち入れるか?

民法は、土地の境界または近傍において、しょう壁もしくは建物を構築し、またはこれを修繕するために必要な範囲内において隣地の使用を請求するすることができる旨規定しています。(民法2091)したがって「建築主」側には、この規定により、建築工事のために隣地に立ち入ることが権利としてみとめられており、一方、「隣地所有者」は請求に応ずる義務があるといえます。隣地の使用形態としては、建築のために立ち入ることのほかに、足場を組むなども可能です、ただし、「隣地」ではなく「隣家」に立ち入るには、隣人の承諾が必要です。(民法2091)これはプライバシー保護の観点からで、隣人の承諾なしには認められず、承諾に変わる判決も求めるこてょはできません。

どうしても承諾してくれない場合、「調停」もしくは「訴訟」によるほかはありません。

なお隣地にたちいることにより隣地所有者に損害を生じさせた場合には、隣地所有者に損害賠償をしなくてはいけません。

7.隣地の土地をとおって都市ガスを引けるか?

敷地が袋路であったりした場合、民法の囲繞地通行権(民法210条)が認められています。したがって、類推適用により、都市ガスを間の設置を求め得る権利があると解されます。なお通行券を持つものは通耕地の損害に対して賞金を払うことを要すると規定していますので、承諾が認められたとしても金銭の支払は必要となるでしょう。

8.隣人からの目隠し設置を要求されたら

境界線より1m未満の距離において他人の宅地を観望すべき窓または縁側を設けるものは目隠しをすることが必要であると民法は定めている。(235条1項)

9.塀の修理の費用折半を隣人に要求できるか?

民法は、2等のたても斧が、その所有者を異にして、その空間に空き地があるときは、各所有者はほかの所有者と共同の費用を持って境界に囲障を設けることができると規定しています(民法2251項)そして、塀は板塀または、竹垣にして高さ2mとすると規定しています。また、囲障の設置および保存の費用は相隣者平分して負担し、一方が2252項の材料(板塀、竹垣)よりの良好な材料を用いたり、または、2mより高い塀の構築を希望した場合、そのものが「費用の増額を負担」することを規定しています。

10.隣地からの水

民法は、土地の所有者は「隣地より水野自然に流れくるを妨げることができないと規定しています。雨水が、高地からていちに流れるのは自然現象で、土地の所有者がこれを止めることはできないからです(承水義務)。この一方で、民法は土地の所有者「直ちに雨水を隣地に注背シムへ木谷ね尾のほかの工作物をつくってはならないと規定しいます。屋根がら雨水がりゅうにゅうすることは、自然現象ではなく、人工的なもの(工作物)によて生じる現象だからです。なお、擁壁の盛土については工事費用を双方で負担すべきとした凡例もあります。

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4.建築前の近隣説明

さていざ建物を建てようとするとき、建物の計画を進めるなかで、建設工事を始めるまでに、近隣説明を行い概要を住民に説明することが肝要です。最近は条例などで義務づけているところもあります。但し行政側から拘束力を及ぼすのは限界があるようです。これらをきっかけに、当事者(建築主、施工者、近隣住民)の間で説明を十分に行い、誠意を尽くして話し合いで解決するのが最善です。少なからず迷惑をかけることが多い点は十分に配慮するべきだと思います。建築する建物の入居者のプライバシーや、建物の保安上の問題のように、第三者への情報開示を不適当とするようなものでない限りは情報や資料を提供して、近隣住民の無用な心配を除去したほうが建築計画遂行に好ましい結果をもたらします

建築主側が(主に設計者を通じて)説明することには

事業概要

建築物の用途や事業概要・利用形態・稼動時間・騒音・光・物流・近隣への影響等の説明。

用途区域や都市計画との関連、開発行為である場合は関連法規との関係の説明。

建築概要

敷地に関する説明(形状、敷地境界杭の確定、敷地面積など)

建物の規模の説明(建築面積、延床面積、構造、階数、建築物の高さ、軒の高さ、)

建物の計画の説明(平面計画、入り口、車道、ごみ置き場、搬出入口、外溝、工期、外観のパースによる説明、宅地造成関連説明事項、)

建築物の構造(地中構造物、地盤の概要、構造)

上下水道・電気の引き込み、

近隣への影響(日照、通風、臭気や塵埃、目隠し、近隣通行の安全や自動車・駐車場騒音、機会騒音

周辺への影響

日影の影響、電波の影響、通風、プライバシー、近隣に寄与するもの(集会所、公開空地、駐車場、緑地など)あるときはその旨など

などがあげられます。

また施工者も

工事概要

工事期間、工事工程と各工程での現場および車両(搬入)状況、日影、工事期間中の車両誘導、騒音・振動とその対策、足場のシート関連、就業日や就業時間など

などが説明することになるでしょう。

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5.近隣・相隣問題に絡む民法と建築基準法

さて、これらの説明がすんなりと受け入れられれば良いのですが、そうでないときはどうすれば良いのでしょう。一般的なケースで関連する法律は民法と建築基準法です。

ここではまずどのような権利が現実にあるのかを見てみましょう。

民法の枠内で考えるとすれば、当事者には以下の3つの権利が関与します。なおここでは当事者として、相隣権を有するものは、土地所有者、地上権者のほか、永小作権者、賃借権者も含まれるが、施工者には認められていません。また、相手方には、土地所有者のほか、土地を占有している者も含まれます。地主と借地人との間で、賃貸借契約が解除され、明け渡し訴訟継続中であっても現実に占有使用しているものが相手方です。

相隣関係(民法第2編「物件」第三章所有権209-238条)

相隣接する土地相互の利用関係を調整するためのもの。土地所有権の内容ないし限界を定めたものと解されているが、地域、状況により、その限界は、まちまちとならざるを得ない。地上権にも準用される。

権利侵害に対する救済

住民側の受ける生活妨害が社会共同生活上、受忍すべき限度(受忍限度)を超えるときは、被害者は加害者に対し、その被った損害の賠償請求あるいは工事の一時差し止め、予防処置、一部建築の禁止や設計変更を求めることができる。その理論的根拠としては、最近は人格権ないし所有権の侵害として捕らえる傾向が見受けられる。

ものを直接的に支配することを内容とそする「物件」については、侵害の排除予防を請求できる(物件的請求権)。人の体、自由、名誉、氏名などの人格的所利益である「人格権」については、特に名誉毀損の場合、損害賠償のほか名誉を回復する適当な処分を求めることができる旨定められていることからも、物件と同様、侵害の排除、予防(差し止め)を求める請求権があるといえる。

問題は、「受忍限度」とは、どの程度をいうのか、あるいは侵害の排除、差し止めまではできないが、損害賠償の請求に止めるべきだという点である。この点については、具体的なケースに応じて、建築主側の状況と近隣住民側の状況を比較考慮して決定せざるを得ず、この辺の線引きは、訴訟になった場合の担当裁判官の考え方によって異ならざるを得ない。

また、建築主側からも、工事が妨害されたあるいは妨害される蓋然性がある場合、妨害の排除予防を請求できる。この場合被保全権利は、所有権、占有権などである。

不法行為に基づく損害賠償請求権

違法な行為によって人の利益を概した場合、それによって発生した損害を賠償しなければならないというのが不法行為制度である。住民からすると、建物建築が日影などによる生活妨害だということになり、建築主側からすれば建築工事を妨害するのは違法行為だということになるが、民法は不法行為があっても、原則として損害賠償という形での救済しか認めていない。

なお、受忍限度の判定は一律的なものでなく、程度、継続性のほか、工事の公共性の程度、被害を受ける側の主観的事情(たとえば病気で自宅静養中のものがいるなど)、加害者側の回避軽減努力、地域(例えば商業系、住居系など)、時間(中間、早朝や夜間)、曜日(住宅街での日曜日)によっても、その程度が異なるものとなります。

建築基準法と民法との関係をどうみるかについては見解が分かれているようです。たとえば、建築基準法に日影規制が設けられていることから、この規制の範囲内であれば適法な建物である、それ以上近隣住民からクレームをつけられることはないとの議論もありますが、個別具体的な状況は異なるので、実際に発生する被害に応じて公平をはかるという民法の立場からはそうも断定はできないなどと判断されることもあります。主として建築の技術的基準を定めることを目的としている建築基準法と、権利義務の調整を図る民法の観点からの受忍限度とは、問題の対象や基準が異なるのです。

建築基準法と民法との関係でもう一つ問題になる例として、敷地境界線から建物までの距離があります。民法2341項では50cm、建築基準法65条では防火・準防火地域で、外壁が耐火構造の場合には境界線に接して設けて良いとしています。この点については建築基準法65条を民法の特別法とするのが大勢だそうです。防火・準防火地域では建築基準法65条を準用し、土地空間の有効利用のほうが優先するという考え方となります。

以下に具体的な凡例を例示しておきます。

東京地方裁判所昭和56617日判決「判タ446175

建築基準法では盛土などで地盤面を変更することは特に規制がない。しかし、近隣に与える影響が大きくなるような盛土行為は違法という原則を示した上で、受忍限度を超える日照阻害を生ぜしめたとして損害賠償を命じた凡例

名古屋地方裁判所平成9221日決定(凡例集未登載)

第一種住居専用地域における銭湯の建設において実質レジャーセンターに近い内容のスーパー銭湯が計画された事例で、建築基準法のようと規制の実質に反しているとして、近隣への影響を原因として建築差止めを認める決定

大阪地方裁判所平成4221日判決

完成建物の一部撤去が命じられた例

大阪地方裁判所昭和59828日判決

工事の一部禁止が命じられた例

東京高等裁判所昭和59328日判決「判時111661頁」

賠償金の支払いがみとめられた例

東京地方裁判所平成3920日判決「判時141392頁」

請求が棄却された例

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6.建築工事をめぐる近隣・相隣紛争

以上関連する法律の考え方について触れましたが、当事者間では話し合いがつかず、建築主・施工者が我が建築工事を強行し、近隣住民側が工事の進行を阻止する行為に出たという事態が発生したときは、実際にはどのような手続きで公的に調整を進めてゆくことになるのでしょうか?。

以下にその手続きを紹介します。

都、市、特別区などに、近隣紛争として「斡旋」、「調停」の申し立てをし、専門的な職員を入れての話し合いをする方法

行政庁が民事紛争の処理をすることには限度があり、当事者間の自主的解決を促進するための助力をするという立場で手続きを進める。したがって紛争が激化している場合には、効果が期待できない。

行政庁に建築確認の不服申立てを行う

行政庁の違法または不当な処分によって権利または利益を侵害されたものは、行政不服審査会により行政庁に対して不服の申し立てができる。建築基準法では、特定行政庁、建築主事または建築監視員の処分またはこれにかかる不作為に対する審査請求はその市町村または都道府県の建築審査会に対して処分の取り消しを申し立てることになっている。

裁判所による解決

裁判所に事件の解決を持ち込む方法としては、調停の申し立て、仮処分の申し立て(工事差し止め仮処分、工事妨害禁止仮処分、隣地使用承諾仮処分)、本案訴訟の提起、の3つが考えられる。ただし、仮処分申請は保証金の積み立てを要すので要注意である。

なお、建築反対運動も法的諸手段の枠内で行うべきものです。社会的相当性をかくような反対運動は、不法行為(民法709条、722条)として相手方に生じた損害の賠償や名誉回復のために適当な処分を命じられます。反対運動については、@被る不利益の性質や程度、A工事(特に着工)の態様、B双方の交渉態度、C妨害運動の目的や態様などが総合的に検討されます。住民が被る不利益が深刻であればあるほど、また、突然の着工や配慮を欠く工事方法あるいは住民に対して誠意のない交渉態度であればあるほど、反対運動の違法性は阻却されるでしょう。逆に、これらの事情が乏しい状況にかあわらず、強硬に工事妨害を行えば目的や手段に社会的相当性を肯定できなくなる不法行為と評価されることになります。紛争解決のためいに努力した建築主我、やむを得ず裁判所に妨害禁止の仮処分を申請し、認める決定が出されたにもかかわらず、これを無視し、さらに妨害行為を行うと住民が多額の損害賠償の支払いを命じられることがあります。

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7.紛争時の諸手続き

それでは、実際の紛争について肝要な手続きなどを説明します。

内容証明郵便

郵便法に基づき、郵政官署が郵便物の内容である文書の内容証明することをいいます(郵便法63条)この内容証明された郵便物(内容証明郵便物)いつ、誰から、誰に対して、どういう内容の文書が出されたかを郵便局という工務所が証明するものです。

法的な効果は日付が確定する点及び催告としての効力がある点です。催告とは債務者に対して、債務の履行を請求することで、その効力としては、@時効を中断させる(内容証明郵便物が相手方に到達したちう事実の発生により時効が中断となる)、A債務の支払期日が定められていない場合、相手方を遅滞に落とし入れる(内容証明郵便物が相手方に到達した時から、履行地帯として損害金の請求ができる)、の二つの効力があります。ただし、時効中断について注意を要する点は、ないよう長命郵便物が相手方に到達した時から、6ヶ月以内に、裁判上の請求(訴訟提起)、()差し押さえ、仮処分などの強力な手段をとらないと、時効中断の効力が失われる。

内容証明として送付する文書ができたら、同文のものを3通用意して郵便局に持っていきます。1っ通は郵便局に保管され、1っつうは相手方に、もう一通右派差出人の控えになります。この際、相手方に郵送するための封筒を用意し、相手方の住所、氏名を記載しますが、内容証明郵便物として書いた相手方の住所、氏名と同じでなければなりません。

また、内容性根異と配達証明とは違いますので、もし相手方に間違いなく到達したことの証明がほしい場合には配達証明付き内容証明郵便物として提出してください。

仮処分命令

工事をとりあえず差し止めたい場合、まず考えられるのは、建築工事禁止の「仮処分命令」の申し立てを地方裁判所に出すことです。この決定をもらうには被保全権利が存在すること、仮処分をする必要性があること。被保全権利とは、法理有情保護される請求権のことで、工事禁止を求める場合には、「人格権」ないし「所有権」に基づく侵害の予防請求権があることが必要です。

建築工事により耐え難い騒音・振動が発生する、掘削工事のため建物が到壊ないし傾斜する危険がある、建物による日英がその地域での受忍限度を超えている、建物による圧迫感が強い、プライバシーが概される、越境して建物が建てられている、などが差し止め請求権の発生根拠となる。

差し止め請求が認められるためには、これらの事実が証拠に基づいて立証(疎明)されなければならない。疎明とは裁判官の心証形成の程度が確かに間違いないとまでいかなくても、間違いないだろうという程度にまでいたることをいう。そのため、証拠をそろえ、受忍限度を超えるものか否かの判断をしなければならないと同時に、必要性の要件がなければなりません。

また、決定に場合には裁判所が決定した保証金を供託する必要があります。これは、仮処分が不当であった場合、相手方(債務者)に発生する損害を担保するのが目的です。保証金の額は事件により異なりますが、目的物の価格の10~20%が通例です。

和解

紛争がこじれた場合、当事者の話し合いにより、お互いが譲るべきところは、譲る、守るべきところは守って解決する(私法上の和解)というのが、民事紛争のもっとも望ましい解決方法だと思います。

建設工事紛争審査会による解決

建設大臣、都道府県知事の各付属機関である「中央建設工事紛争審査会」、「都道府県建設工事紛争審査会」による「斡旋」「調停」「仲裁」により解決する方法がある。

裁判所による解決-調停

対立した当事者間では、おかく感情の対立関係が生じ、ただ面白くないというだけで若いができないというケースもある。そこで、裁判所(公正な第三者の立場にある)が紛争内容を整理し、和解成立のために積極的に協力するという制度が調停。

裁判所による解決-訴訟

調停不成立の場合はいよいよ訴訟に踏み切るしかありません。事件により必ず調停もへ萎えればならない場合(地代や朕の増減請求、離婚など「調停前置主義」)もありますが、いきなり訴訟に持ち込むこともできる。訴訟は@仮処分、仮差押えなどの保全手続き、権利義務を確定する判決手続き、権利を強制的に実現するための強制執行手続きの3つに大きく分かれる。

裁判所による解決-仲裁

当事者間の合意(仲裁契約)により、当事者間以外の第三者(公的機関ではない)に紛争可決を任せるという手続きです。

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8.キーワード

1.境界確定訴訟とは?

隣接する土地の境界線について争いかがある場合に、裁判所の判決によって、その境界線を確定してもらうことを目的とする訴訟。地盤の境界を確定するために行われる。所有権の境界を確定するには、当事者間の境界協定や裁判所の調停、所有権確認訴訟がある。

2.欠席判決とは?

民事訴訟の当事者の一方が、口頭弁論期日に欠席した場合に、出席当事者の主張だけに基づいてされる欠席当事者に不利な判決。

3.時効

ある事実上の状態が一定期間継続した場合、真実の権利関係にかかわらず、その継続してきた「事実関係」尊重し、これにほうりつこうかを与え、権利の取得または消滅の効果を生じさせる制度。「私法上」だけではなく、「公法上」もみとめられる。時効の基礎となる事実・状態と相容れない一定の事実・状態が生じたばあには時効が中断されることがある。

4.境界標識、界標

敷地の境界の目印として設置されるもので、石屋気、コンクリート製の杭、川、山、樹木

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9.本掲載文に関する注意事項

本ホームページの内容は森竹敏朗により編集されました。雑誌や実体験から学んだことをしたためているのですが、内容によっては不適切な個所もあるかもわかりません。本文章を参照して生じた事件や不祥事にについて、一切関与できませんしまた一切の責任を負いかねますのであらかじめご了解の上利用願います。不備はご指摘いただけるとありがたいです。また、さまざまな体験談や経験話などお知らせくださればありがたいと思います。その都度訂正、改善を重ねたいと思います。また、転載などは一声かけていただきたいと思います。なお、参照記事は「建築知識1998-5」「建築確認申請ノート」)

 

 

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