高齢者に多い疾患・在宅高齢者食事ケア
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高齢者に多い疾患・在宅高齢者食事ケア。




  1. 循環器疾患(高血圧・心臓など)。
  2. 呼吸器疾患(肺炎など)。
  3. 神経疾患(認知症・脳など)。
  4. 消化器疾患(糖尿病など)。
  5. 運動器疾患(骨粗鬆症など)。
  6. 廃用症候群。
  7. 肥満。





  8. 高齢者にみられる代表的疾患を取り上げる。これらの疾患をもっている人には,

    各疾患に適した食事療法があり,日常の生活において注意すべき点を助言する必要がある。

    なお,ここでは在宅ケアを行う上で、最低限必要と思われる内容にとどめた。

    各病態の詳細については専門書を参照されたい。



    1)循環器疾患(高血圧・心臓など)。



    高血圧症



    正常血圧は,130/85mmHlg未満である。合併症があればきちんと降圧する方がよいが、

    高齢者では,血圧の下げすぎが意欲低下やめまいを招きやすいため,注意が必要である。

    血圧は夏は低く,冬は高くなるというように季節や気温による変動があり,

    さらに興奮するとたちまち高くなる。


    降圧剤は,血圧を定期的に測って,医師の指導のもと用いる。

    降圧剤は1日1〜2回の内服が多いが,欠食があった場合でもきちんと服用するようにする。


    高血圧予防には,塩分を1日!0g未満とすることが勧められているが,

    在宅ではなかなか守りにくいのが現状である。

    佃煮やしょうゆなど塩辛い味が好みの人は過剰摂取になりやすいが,医師の指示が厳重な場合を除き,

    10gを超えない程度の緩やかな減塩とし,食事の楽しみを損わないよう注意する。

    食塩は,ミネラノレが豊冨な自然塩を用いるとよい。



    表1


    高血圧の分類

    ★成人における血圧の分類


    分類 収縮期血圧(mmHg)拡張期血圧(mmHg)


    至適血圧 <120かつ<80

    正常血圧 <130かつ<85

    正常高値血圧 130〜139または85〜89

    軽症高血圧 140〜159または90〜99

    中等症高血圧 160〜179または100〜109

    重症高血圧 ≧180または≧110



    ★高血圧患者のリスクの層別化


    ●血圧分類


    @軽症高血圧

    A中等症高血圧

    B重症高血圧


    A.血圧以外のリスク要因の危険因子なし


    @低リスク

    A中等リスク

    B高リスク


    B.糖尿病以外の危険因子(注1)あり

    @中等リスク

    A中等リスク

    B高リスク


    C.糖尿病,臓器障害(注2),心血管病(注2)のいずれかがある

    @高リスク

    A高リスク

    B高リスク


    注1)

    高血圧,喫煙,高コレステロール血症,高齢(男性60蔵以上,女性65歳以上〕,

    若年発症の心血管病の家族歴


    注2)

    心臓:

    左室肥大,狭心症・心筋梗塞の既往,心不全脳:脳出血、脳梗塞,一過性脳虚血発作

    腎臓:

    たんぱく尿,腎障害,腎不全 血管:

    動脈硬化性プラーク,大動脈解離,閉塞性動脈疾患

    眼底:

    高血圧性網膜症

    資料〕高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会,2000年〕に注を加筆



    虚血性心疾患

    心臓を取り囲む冠動脈の循環障害により,心臓に虚血(酸素不足)を起こす病気を総称して

    虚血性心疾患といい,狭心症と心筋梗塞に代表される。



    ★狭心症




    冠動脈が動脈硬化などによって細くなり,通過障害をきたし,

    その冠動脈の分布する心筋に虚血が起こることから,胸の圧迫感や痛み,

    苦痛などが発作的に起こる状態をいう。

    狭心症のうち,運動負荷によって胸痛発作が起こるものを労作性狭心症、

    安静にしていても胸痛発作が起こるものを安静時狭心症という。

    安静時,特に早朝に周期的に発作が起こるものを異型狭心症,症状が最近3週間以内に発症した場合や

    発作の悪化が見られるものを不安定狭心症という。

    心電図による診断が必要であり,心筋梗塞との鑑別が重要である。


    通常は数分〜10分前後の発作で終わることが多く,寒冷,運動,興奮,食事後,排泄時などに起こりやすい。

    発作は,頓服の舌下錠や胸部に貼るテープ剤の利用で改善することが多い。

    動脈硬化を促すような高脂肪,高塩分,高カロリーの食事を避け,

    血液中のコレステロールが異常に高くならないようにし,血圧をコントロールすることで予防できる。



    ★心筋梗塞



    冠動脈の一部分が完全に詰まり,その血管の分布する心筋に壊死が起こった状態をいう。


    多くの場合,激しい胸痛が10分以上続き,冷や汗を伴ったり,

    呼吸困難などバイタノレサインに異常がみられる。

    高齢者では強い症状を訴えない人もいるので,全身状態やバイタルサインの観察が重要である。

    高齢者の心筋梗塞のうち,典型的な胸痛を示すものは30%に過ぎず,無症状のものが40%もある。


    「胸が痛い」,「苦しい」という発作が起こったとき,狭心症であるのか,

    それとも心筋梗塞であるのか区別が難しいことがある。

    労作性狭心症で急死することはまずないが(不安定狭心症や異型狭心症では急死もありうる),

    心筋梗塞の場合は一刻も早い対応が望まれる。

    心筋梗塞を疑う症状を表2に示した。


    表中A,Cの症状はショック(循環不全)状態によるものである。

    また心筋梗塞では,死因の多くが合併する不整脈であることから、

    Dの状態では早急な治療が必要である。

    脈や血圧については普段の状態をよく観察しておく必要がある。

    判断がつかないときには受診し,心電図検査を受けることが大切である。



    ★心不全



    心臓のポンプ機能が悪くなったために,

    心臓から全身に血液を十分巡らせることができなくなった状態をいう。

    心臓には予備力があり,運動や発熱,貧血,甲状腺機能亢進などの場合には,

    必要に応じて血液を補充するが,この予備力を最大限に活用してもなお,

    全身組織の血液の需要に十分応じられない状態である。

    高齢者では,虎血性心疾患と高血圧症が原因となるものが最も多く,次いで脱水,感染症(発熱),

    貧血,不整脈,心臓弁膜症などである。

    明らかな心臓疾患がないのに起こることも少なくない。

    心不全の頻度は加齢とともに増加するので,高齢者の心疾患では最も注意を要する。



    T.慢性心不全(潜在性心不全)


    最も見逃しやすい状態である。

    何の自覚症状もないのに日中の尿量が減り,夜間頻尿の傾向となり(慢性心不全の90%にみられる),

    下肢にむくみが出るようになる。

    そのほか,表3のような症状があれば,初期の心不全を考える必要がある。


    特に,ショートステイ(短期入所生活介護,短期療養介護)

    を利用する高齢者の中に足がむくんでいる人を多く見かけることから、

    在宅で症状のないむくみが軽視されているように思われるので注意が必要である。

    慢性心不全の時期には,安静時には頻脈になることは少ないので,

    尿量やむくみの有無のチェックが大切であり、

    入浴時などに下肢を観察することも必要である。

    日常生活での注意点を表4に示した。


    また,初期に治療を開始すると,尿量が増えて体が軽くなり,心機能の悪化が予防できる。

    参考にNewYorkHeartAssociation(NYHA)による心機能分類を,表5に挙げる。



    U.急性心不全


    急性心不全発作時の主な症状を表6に示した。

    一見,気管支喘息の発作に似ているが,過去に喘息発作の経験がない人にも起こる。

    高齢者では,心臓が原因で起こる呼吸困難の方が圧倒的に多く、

    急性心不全による喘息様の発作を心臓喘息ともいう。

    ときには冷や汗や四肢の冷感,意識障害等を起こすこともあり、

    死亡率も高いので,緊急な治療が必要である。

    特に寒い季節の夜間などに発症することが多く,救急車を呼ぶなど,緊急の対応が必要である。

    原因を特定し,適切な治療を行って退院した後でも,

    塩分や水分制限の指示や生活方法を適切に守らないと再発の可能性があるので,

    本人及び家族も,病気への正しい理解をもつことが非常に大切である。



    V.不整脈


    脈の乱れ(不規則)を不整脈という。

    不整脈には,治療を行わなくとも心配のないものと治療や管理の必要なものがあり,

    心電図による診断が必要である。

    特に,高血圧症や心臓病など基礎疾患をもっている人の不整脈の中には,

    突然死など命に関わる危険なものが多いので,慎重な診断が必要である。

    また,常用している薬の副作用による不整脈もあるので,服用中の薬を確認することも大切である。


    高齢者の不整脈の中で多いのは,心室性期外収縮と心房細動である。

    健康な人でも24時間ホルター心電計をつけて脈の状態をみてみると,心室性期外収縮が約65%の人にみられ,

    70歳以上の高齢者では約80%に現れる。

    心房細動のある人では,脳塞栓(後述)の予防の意味で普段から血小板凝集抑制薬(アスピリン製剤など)

    を内服している場合が多い。




    表2

    ●心筋梗塞を疑う症状


    @発作的な胸痛や胸内苦悶感が10分以上継続している。

    A冷や汗をかいていて顔色が悪い,あるいは手足を触ると湿って冷たい。

    B顔面蒼白やチアノーゼがみられる。

    C最高血圧が80mmHg以下,あるいは通常より30mmHg以上低い。

    D頻脈か徐脈,あるいは不整脈がある。

    E意識障害がある。

    F呼吸困難を伴う。

    G発作時に頓用する舌下錠や貼付剤(テープ)が通常のように効果を示さない。

    H胸痛や胸内苦悶感が改善しても顔の表情がさえず,四肢が冷たい。



    表3

    ●初期の心不全が疑われる症状


    @日中の尿量が減る。

    A夜間に頻尿となる。

    B階段を昇った後などに息苦しくなる。

    C風邪に引き続き,夜の咳が何日も続く。

    D焦るとすぐ脈が速くなり,動悸がする。

    E夕方になると足がむくむ。

    F体が重い。



    表4

    ●慢性心不全の日常生活での主な注意点


    @精神的・身体的なストレスを避ける。

    A無理な運動を避ける。

    B食塩を制限する(10g/日未満)。

    C水分の過剰摂取を避ける。



    表5

    NewYorkHeartAssociation(NYHA)による心機能分類


    ●心機能分類と身体症状


    T度:

    心疾患を有するが,身体活動に制限はなく,一般的な活動は,何の症状も呈さない。


    U度:

    身体活動は,軽度ないし中等度に制限され,一般的な活動でも臨床症状が出現する。


    V度:

    身体活動は,極度に制限され,軽い運動でも心不全の臨床症状を呈してくる。


    W度:

    絶対安静までの制限を受け,少しでも身体を動かすと心不全症状を訴える。



    表6

    ●急性心不全発作時の主な症状


    @呼吸困難。

    A起坐呼吸(呼吸困難のため仰向けに寝ていられない状態)。

    Bゼイゼイ,ヒュウヒュウという苦しそうな呼吸。

    C薄い痰。

    D頻脈(100拍/分以上)。

    E尿量の減少。

    F下肢や体のむくみ。



    ●バイタルサイン


    生きている証拠となる所見をいう。

    意識の有無,呼吸(循環),脈、血圧、体温(代謝)が主であるが,

    広義には瞳孔反射,便通,排尿なども含み,人が死ぬとこれらすべてのサインが失われる。







    2)呼吸器疾患(肺炎など)。



    肺炎



    肺炎は,“老人の友"といわれるほど高齢者に多い疾患である。

    食欲が落ち,体力,免疫力が低下することによって風邪をひき,

    気管支炎や肺炎を起こす場合が多い。

    また,嚥下困難による不顕性誤嚥から肺炎を起こす場合も多い。

    原因不明の発熱を繰り返す場合には,まず誤嚥性肺炎を疑うことが大切である。


    肺炎は,胸部レントゲン検査によって確実に診断できる。

    治療は,適切な抗菌剤の使用と,発熱や食欲不振に伴う脱水への早期対応である。

    食欲を回復するには,好みにあった食べ物や飲み物を口腔機能に合わせて提供する。

    発熱には,まず冷却と水分補給の対応が原則であり,解熱剤は慎重に用いるべきである。






    3)神経疾患(認知症・脳など)。



    脳卒中及びその後遺症




    脳の血管障害を総称して脳卒中という。

    脳卒中には,脳出血と脳梗塞がある。

    さらに,脳出血には脳内出血と、くも膜下出血が,

    脳梗塞には脳血栓と

    脳塞栓(心疾患が原因で血管に血栓が詰まるもので,高齢者の原因としては心房細動が多い)

    がある。


    介護施設には,急性期を過ぎ,ある程度の機能低下を伴った脳卒中後遺症をもった高齢者が多い。

    この状態では,再発予防のための薬の内服と,血圧,高脂血症,糖尿病,肥満,低栄養などの管理と,

    機能回復のためのリハビリテーションが必要である。

    特に,食事管理は非常に重要であり,適切な指導が必要である。

    動脈硬化を促進しないための食事療法が自宅や施設でどこまで実践できるかがポイントであり,

    そのためには今後,在宅において多くの管理栄養士の協力が必要である。



    痴呆(認知症)




    いわゆる“ボケ"には,老化現象としての生理的なボケと病的なボケ(痴呆)がある。

    100歳を過ぎても加齢による生理的なボケがみられるだけの人もいる。

    大きな病気がない65歳以上の約85〜90%は,生理的なボケを起こすだけで

    病的なボケには至らずに一生を終えることができるといわれている。

    しかし,これらの人も日中何もせず無為な生活を送ったり,人とのふれ合いを失うと,

    脳の働きが低下し,廃用症候群として痴呆に近い状態になることがあるので,

    早期に生活訓練が必要である。

    また,大病や大きなストレスの直後に一過性の痴呆症状を呈することもある。


    残りの10〜15%の高齢者は,脳の器質的な病気のために,病的なボケ,つまり痴呆になる。

    痴呆では,単なる物忘れにとどまらず,物忘れを取りつくろう健忘性作話や見当識,判断力,理解力の障害,

    認知障害,幻覚,妄想,せん妄,徘徊,不潔行為など,各種の問題行動や精神症状が現れる。


    痴呆の診断は,生活上のさまざまな症状と行動に加え,知能テストや画像診断(CT,MRI,MRAなど)

    を総合して専門医により慎重に決定されなければならず,

    症状だけで簡単に痴呆と決めつけることは危険である。

    なぜなら,脳外科的対応で治る慢性硬膜下出血や欝病(うつびょう)による仮性痴呆など,

    完全に治せる痴呆を見逃すことになるからである。

    痴呆を疑ったら,必ず早めに専門医を受診する。


    痴呆の代表的なものとして,脳血管性痴呆とアノレツハイマー型痴呆がある。



    T.脳血管性痴呆




    脳の血管に何らかの障害が起こったことによる痴呆をいう。

    脳卒中の後遺症に伴うことが最多であるが,はっきりと卒中発作などの病歴がなくても

    画像診断の進歩により脳に多くの小梗塞が発見され,この多発性脳梗塞が原因で

    痴呆を起こしているとわかる例もある。


    a.症状

    脳の障害により,神経細胞があちこちで切れるため,

    はっきりしている部分とわからない部分があることから,“まだら痴呆"などともいわれる。

    また,情報の処理能力も低下するので,パニック状態になりやすく,たやすく興奮状態や混乱状態を招く。

    脳の血流量が減少するため,せん妄状態(意識障害)にも陥りやすい。


    b.対応

    脳は使わないと血流も悪くなり,働きも鈍るので,日中は規則的なリズムのある生活を心がけ,

    リハビリや,やりたいことを組み入れ,なるべく人と話したり笑ったりする機会をもつ。

    夜間は十分な睡眠を確保する。


    各種の精神状態に対しては,温かい対応は原則であるが,常識を越えるような行動や異常興奮,

    錯乱,不眠,せん妄,幻覚,妄想などに対しては精神科医を受診して,

    適切な対応のための助言や薬物治療を受けるとよい。


    痴呆高齢者に薬物治療をすることが,あたかも抑制のようにいわれることがあるが,

    適切な治療は本人の精神的な安定と体力の維持には欠かせないものであり,

    過剰な薬物の使用や,単に本人をおとなしくさせることが目的となるような

    間違った薬物の使用と混同してはならない。


    多くの精神症状の治療の原則は,まず夜間の快眠の保持であり,そのためには毎日の睡眠観察による,

    睡眠薬の量,精神安定剤の量の細やかな調整が大切である。

    高齢者の痴呆に熟練した精神科医との連携によるケアが望ましい。


    U.アルツハイマー型痴呆




    75歳以上で増加し,85歳以上では25%ともいわれている。

    脳皮質の神経細胞が広範囲で死滅していく病気で,現在でも原因ははっきりわかっていない。


    a症状

    部分的な物忘れに始まり,次第に全体的物忘れとなり,あるエピソードをすっぽり忘れてしまうようになる。

    (例:朝食を食べても,しばらくして「朝ご飯はまだですか)」などという)。

    遺伝子の関与するものは約30%であり,大多数のアルツハイマー型痴呆は遺伝子のみでは説明できない。

    なお,60歳以前に発病するものを,早発痴呆(アルツハイマー病)という。

    アルツハイマー型痴呆の経過と主な症状を図2に示す。

    合併症への早期対応により各時期を延長することができるが,

    一般的には約3年単位で進行するといわれている。

    しかし,これはあくまでも1つの目安であり,個々人で大きく異なる。


    b対応

    原因は不明なので,根治療法は今のところない。

    対応の基本は,不安や混乱を起こさせない温かな受容的な介護である。

    さらに

    @快眠(夜間の睡眠の確保),

    A決食(遭切な食事の提供),

    B快便,

    C快感(リズムのある生活,レクリエーションなど。)を心がける。


    不眠,異常興奮,暴力,幻覚,妄想,不安,不穏などに対しては,適切な環境,

    対人調整に加えて最小限の薬物治療も必要である。

    その際には,毎日の変化を観察し,過剰な薬物の副作用を予防するとともに、

    本人に合う薬の種類と量を決定しなければならない。


    また,アルツハイマー型痴呆は,進行に伴い各種の合併症を起こしてくる。

    発熱,脱水,低栄養,心不全,腸閉塞,転倒,骨折などにいかに迅速に対応し治療するかで予後が決まってくる。

    本人の記憶力,認知力,理解力が望めないので,介護者が細かく日々の生活の管理をするべきである。

    食事についても,脱水や低栄養を予防するため,毎日の食事摂取量の把握が大切であり,

    簡単な記録をつけるようにするとよい。


    図2

    アルツハイマー型痴呆の経過と主な症状


    第1期

    ・部分的な物忘れが主。

    ・不安や心配,混乱が強くなる。

    ・健忘性作話がみられる。


    第2期

    ・全体的な物忘れ、見当識障害(時間,物,人,場所などの見当がつかない),

    認知障害,道に迷う,妄想,幻覚,失禁など。

    ・意欲低下により他人への依存心が強くなる。


    第3期

    ・日常生活関連動作に困難が出てくる。

    ・活動性の低下,転倒しやすくなる。

    ・徘徊,異常行動,パーキンソン症状(動作緩慢,つまずき歩行,震えなど)。


    第4期

    ・ほぼ寝たきりの状態で,全介助が必要となる。

    ・理解カ,判断力の低下。

    ・大小便の失禁(オムツ着用)。

    ・飲み込み困難により窒息の危険性が高まる。






    4)消化器疾患(糖尿病など)。




    糖尿病




    T糖尿病




    糖尿病とは何らかの原因により,糖の利用を促進するホルモンであるインスリンの作用が

    不足することによって起こる病気である。

    遺伝因子に加えて種々の環境因子によって発病する。

    糖尿病の分類を表7に示す。


    糖尿病の指標には,血糖値,HbA1c(糖化ヘモグロビン)がある。

    ヘモグロビンは,赤血球の中の色素たんぱくで,酸素を運ぶ役目をもっている。

    このヘモグロビンに酸素のかわりにブドウ糖が結合したものをHbA1cといい,

    血糖値が高いほど増えてしまう。

    この値が高いことは,全身の酸素不足を招くことになる。

    HbA1cでは,赤血球の寿命(約120日)から糖尿病患者の最近1〜2か月間の

    血糖コントローノレ状態を知ることができる。

    HbA1c、の基準値は4.3〜5.8%,血糖基準値は表8に示したとおりである。

    高齢者糖尿病の特徴としては,次のことが挙げられる。


    @口渇などの自覚症状が少ない。

    A2型糖尿病が多く,1型糖尿病が少ない。

    B血糖値180mg/dl以上であっても尿糖がプラスを示さないことがあるので,

    尿糖のみでは判断できない。

    C合併症として低血糖症を起こしやすい(次項参照)。


    U.合併症




    糖尿病の3大合併症として,

    @糖尿病性網膜症(網膜の微小血管が障害され,眼底出血などから視力が低下),

    A糖尿病性腎症(腎臓の微小血管障害から起こる),

    B糖尿病性神経症がある(病態など詳細は他書を参照のこと)。


    その他,心筋梗塞,脳梗塞や腹部大動脈,下肢大動脈に起こる閉塞性動脈硬化症,

    低血糖症などを引き起こす。

    特に閉塞性動脈硬化症は,足の指や爪の色の変化,冷感(左右差)などのほか,

    問欠性破行などの所見に注意し,早期に発見するべきである。

    手遅れとなると,血管が詰まった部分以下の下肢の切断を余儀なくされる場合がある。


    糖尿病合併症が起こりやすい条件としては,次のことが挙げられる。


    @発病後,10年以上経過している。

    A血糖値が高いままコントロールされていない。

    Bストレスが多く,不規則な生活を続けている。

    C定期的通院,検査,治療などをしていない。

    さらに,糖尿病患者で比較的多くみられるものに,低血糖症がある。

    これは,血中の糖(ブドウ糖)が異常に低くなる状況をいう。

    食欲不振や体調の変化により,血糖が60mg/dl以下になると,

    発汗,飢餓感,不安感,痙撃,失神,せん妄,昏睡などの発作を起こすことがある。

    高齢の糖尿病患者には特に起こりやすい状態なので,

    食事摂取量の観察や定期的血糖検査などから,常に最適の血糖コントロールをする必要がある。


    V.食事療法



    高齢者の糖尿病の食事療法は非常に難しい。

    高齢になってまで食事制限をされることは,本人にとって大きなストレスであり,

    自分の病気について正しく理解していなければなおさらのことである。

    糖尿病は長期間,自覚症状が出ないので,食事制限や治療の必要性を理解させることが大変困難である。

    実際,家庭や施設においては,病院と同じような厳格な食事制限はほぼ不可能である。

    また,何らかの原因で食欲低下があり,食事が十分にとれない状態では,制限食どころでなく,

    最低限必要な栄養分の確保すら難しくなる。


    しかし,食事療法を全く放棄すれば,たちまち各種の合併症のため症状が悪化し,

    入院を余儀なくされるであろう。

    高齢の糖尿病患者は10年以上の病歴をもち,合併症の出やすい準備状態にあると考えてよい。

    ときに管理栄養士(栄養士)の中にも『高齢になってまで好きなものを制限する意味がどこにあるのか?」

    などと考えている人もいるようだが,知識不足から血糖値500mg/dl以上の人に

    まんじゅうなどを与えて意識障害を招くような事態は避けなければならない。

    食事療法に対して,医師,看護師,管理栄養士(栄養士),介護スタッフが同じ姿勢でのぞむ必要がある。


    家庭や施設で食事療法を行う場合には,定期検査による血糖値を目安にすることが必要である。

    合併症は,適切な血糖値コントロールによって予防できることを,本人や家族などに十分説明し,

    理解してもらう必要がある。
    血糖コントロールについては日本糖尿病学会から示されている指標,評価値や

    コラム(「★血糖コントロールのポイント」)を参照されたい。

    その上で,管理栄養士(栄養士)は次の点に注意し,食事療法を行う。


    @食事調査を行い、エネルギー摂取量や砂糖の摂取量,間食の実態などを把握する。

    A血糖や糖化ヘモグロビンの値などを把握する。

    B本人が守れそうな範囲で献立を作る助言をする。

    調味料としての砂糖は1日8〜10g以内に制限するのが原則である。

    C内服薬やインスリン注射による治療を受けている人では,

    必ず主治医より血糖値の情報を得て食事療法の目安にする。

    D糖尿病の高齢者がショートステイやデイサービスなど介護施設を利用する場合には,

    主治医より食事(エネルギー)の指示と血糖値の情報を入手する。


    W.運動療法



    高齢者では,運動によるエネルギーの消費が難しいことが多い。

    膝や腰に痛みがあったり,日常生活動作に不便のある人では,

    動かせるところを動かして循環をよくする程度で十分である。

    運動が可能な人は,散歩や水中歩行,好きな運動を少し汗ばむ程度,

    脈が100拍/分を超えないように注意して行えばよい。

    なお,心臓病など合併症のある人では,医師の指示に従う。

    また,空腹時の運動は,低血糖を招くことなどから,運動に際しては,適切な運動指導が必要である。


    W.薬物療法



    食事療法,運動療法のみで血糖コントロールができない場合は,薬物療法も併用される。



    ★間欠性跛行(かんけつせいはこう)



    歩行中に足の痛みや筋肉の痙攣(けいれん),脱力感などのため歩けずに肢行(びっこをひく)となり、

    しぱらく休むと症状がとれ,再び歩けるようになる状態をいう。

    歩けなくなる距離が500m以下の場合には,血管造影(MRA)により閉塞の度合を確かめ,

    保存的内科療法か手術(血管再生術)治療かを判断する。



    ★血糖コントロールのポイント



    糖尿病における合併症の予防には,血糖コントロールが非常に重要である。

    普段の食生活では,特に次の点に注意するよう指導するとよい。


    @腹八分目を心がける:

    食べ過ぎ,まとめ食いにより,食後の血糖値が高くなり,血糖反応曲線下面積も広くなる。

    A食後の追加食いをやめる:

    食後に甘い物などを食べると,血糖を下げる力が追いっかず,下がりきらない血糖を逆に上げることになる。

    糖尿病患者では,健康な人と異なり,食後2時間で血糖値が正常な状態に戻らないため,

    10時や3時の間食はできるだけ低エネルギー(砂糖の使用を極力おさえた食べ物)とする必要がある。

    B欠食をしない:

    食事を抜くと食事の間隔が空き,糖の取り込みが強くなり,食後の血糖値の上昇が著しくなる。

    また,空腹のため食べ過ぎると,さらに血糖値が上がる。

    規則正しい適量の食事が重要である。

    C上手なタ食のとり方:

    タ食以降は,細胞の活動が少なくなり,血流も穏やかになるため,糖の処理に昼の倍の時間を要する。

    就寝後はさらに血流が穏やかになり,血糖が高い状態が続いてしまう。

    夕食は早めに適量をとり,夕食時刻が遅くなった場合は量を調整する。



    表7



    精尿病の分類


    1型糖尿病

    (インスリン依存型)

    膵臓のインスリンをつくっているβ細胞が破壌され,絶対的インスリン欠乏に至る。


    2型糖尿病

    (インスリン非依存型)

    インスリン分泌低下を主体とするものと,

    インスリン抵抗性が主体でインスリンの相対的不足を伴うものなど。

    食事や運動などの生活習慣が関係している場合が多い。


    その他の糖尿病

    遺伝子異常,原疾患の存在するもの,妊娠糖尿病など。



    表8 



    空腹時血糖及び糖負荷試験(OGTT)2時間値の判定基準(静脈血漿)


    ●空腹時値75g0GTT、2時間値


    正常域

    <110mg/dl

    く140mg/dl


    糖尿病域

    ≧126mg/dl

    ≧200mg/dl


    ●75gOGTTの判定


    <110mg/dl

    く140mg/dl

    両者を満たすものを正常型とする。


    ≧126mg/dl

    ≧200mg/dl

    いずれかを満たすものを糖尿病型とする。


    正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする。


    ・随時血糖値≧200mg/dlの場合も糖尿病型とみなす。

    ・正常型であっても,1時間値が180m/dl以上の場合は,

    ・180mg/dl未満のものに比べて糖尿病に悪化する危険が高いので,

    境界型に準じた取り扱い(経過観察など)が必要である。

    ・資料)日本糖尿病学会,1999.



    腸閉塞




    高齢者では腸管の動きが悪くなるマヒ性腸閉塞が圧倒的に多い。

    また,各種の精神疾患を伴うために向精神薬を内服している場合には,

    ことに合併症としての腸閉塞が起こりやすく,便秘の予防は非常に大切である。

    腹痛,嘔吐のため緊急手術が必要なこともある。

    排泄の把握は難しい場合もあるが,オムツ便用者では必ず排泄の記録を取ることが必要である。

    高齢者では,腹痛や腹満感などを訴えないこともあることから腸閉塞が見逃される場合がある。

    何日も排便がなく,発見したときにはすでに腸閉塞状態ということもある。

    一度腸閉塞を起こすと繰り返すことが多いが,

    早めに対応することで再発を予防できる。

    再発予防の手段として,漢方薬の下剤(下記のコラム参照)や,

    大腸を温めて動かす作用のある大建中湯(だいけんちゅうとう)や

    附子粳米湯(ぶしこうべいとう)などが非常に有効である。

    一番大切なことは毎日の快便の維持である。


    高齢者の便秘と漢方




    高齢者の便秘のうち,何らかの疾病をもっていなくても消化器の機能が弱く,

    体が冷えやすいようなタイプの人に対して西洋薬の下剤が思うような効果を示さず,

    かえって腹痛を起こしたり冷えを悪化させてしまう場合がある。

    漢方薬の中には,消化器の機能を補い体を温めることによって排便を促すような,

    温性下剤(弱った機能を温めながら補う薬)がある。

    各種の薬があるので,その人の*証に合わせて適切に用いると,

    自然な排便を促すことができる「小建中湯,(しょうけんちゅうとう)

    大建中湯,(だいけんちゅうとう)解急蜀椒湯(かいきゅうしょくしょうとうなど)」

    これらの漢方薬は,繰り返しやすい腸閉塞の予防などにも有効である。


    *証・・・病人の現すすべての自覚症状を,漢方独自の方法によって総合的に診断したものをいう。

    現時点での体力,体質,病態,性格(感情)などを現す証は,同時に使うべき薬の指標にもなる。

    証と薬は鍵穴と鍵の関係に例えられるように,ぴったり適合すれば急性症に対して即効性が期待できる。

    また,継続服用により体質の改善も可能である。






    5)運動器疾患(骨粗鬆症など)。



    骨粗鬆症




    骨粗鬆症とは,「全身の骨量の減少と骨の微細構造の変化により骨の脆弱化(せいじゃくか)が進み,

    骨折の危険度が高まった全身の骨系統疾患」と定義されている。

    本症は,第1に高齢者,第2に閉経後の女性に起こりやすい。

    また,ステロイドホルモンや抗がん剤などの副作用としても起こる。


    骨にかかる重力が骨を丈夫にするため,運動不足や寝たきり状態では骨に重力がかからないので,

    本症の促進因子となる。

    最も大きな危険因子はカルシウムの不足であり,食事のバランスが非常に重要である。

    骨折の予防には,適切な食事,適度な運動,日光に当たってビタミンDを体内で生成し,

    カルシウムの吸収を促すことなどが必要である。

    寝たきりの原因の第1位は骨折であることからも,日常生活での予防が大切である。






    6)廃用症候群。



    廃用症候群




    使わないこと(廃用)によって生じるさまざまな身体的・精神的機能低下の症状をいう。

    主な症状を表9に挙げる。

    廃用症候群のケアでは,次のことを念頭におくとよい。


    @ボケがなくて尿意,便意があり,つかまり立ちができればオムツははずせる。

    A重症患者を除くすべての寝たきりは車椅子での生活に変えることができる。

    B寝たきりは寝かせきりであることが多く,廃用症候群を人為的に作ることである。



    表9



    廃用症候詳の主な症状


    運動器

    筋萎縮,関節拘縮,骨粗鬆症など


    皮膚

    圧迫による床ずれ(褥創),かぶれ,湿疹など


    心臓機能

    寝たきりにより低下する。起立性低血圧,むくみ,めまいなど


    肺機能

    肺活量の低下,残気量の増加,呼吸障害,肺炎


    咀幅,嚥下機能

    食べる機能の低下,誤嚥性肺炎,窒息の危険


    排泄機能

    便秘,失禁,腸閉塞,尿路感染症


    精神機能

    知的活動の低下,意欲減退,せん妄,鬱,不眠,昼夜逆転,痴呆の進行






    7)肥満。



    低栄養ややせの高齢者がいる一方で,過食や運動不足により肥満がみられる場合もある。

    肥満は,高血圧,虚血性心疾患,糖尿病などの疾患と関わりが深いことから,注意が必要である。


    T.肥満の分類




    @単純性肥満(原発性肥満):

    エネルギーの摂取と消費のアンバランスから起きる。

    遺伝的要因に食習慣や運動不足,さらに環境因子が関与する。


    A症候性肥満(二次性肥満):

    原因となる疾患が存在するもの(内分泌性肥満,視床下部性肥満,遺伝性肥満,薬剤性肥満など)。


    U.肥満の判定




    肥満の判定に用いられる指標としては,BMI(表10),肥満度(表11),ウエスト周囲径などがある。

    これらの指標に加えて,臨床上の健康障害の程度を考慮して,肥満症の判定,診断を行う。


    V.肥満症の主な合併症




    @肺:

    肺胞低換気症候群,睡眠時無呼吸症候群

    A心・血管:

    心肥大,虚血性心疾患,高血圧

    B代謝異常:

    糖尿病,高脂血症,高尿酸血症

    C消化器:

    脂肪肝,胆石

    D腎:

    たんぱく尿

    E骨・関節:

    変形性関節症



    表10

    日本肥満学会BMlに基づく肥満の判定

    判定

    ★BMl

    @やせ

    〈18.5

    A普通

    18.5≦〜〈25

    B肥満・1度

    25≦〜く30

    C肥満・2度

    30≦〜<35

    D肥満・3度

    35≦〜〈40

    E肥満・4度

    40≦


    表11



    肥満度による肥満の判定

    判定

    ★肥満度

    @やせ

    一10%以下

    A普通

    ±10%以内

    B過体重

    十10〜20%以内

    C肥満

    十20%以上


    注)

    肥満度%=(実測体重一標準体重)÷標準体重×100

    標準体重kg=(身長m)×(身長m)×22


    資料)

    日本肥満学会(1993年)および池田義雄編:肥満症診断・治療・指導のてぴき,

    医歯薬出版,1993を参考に作成。



    体重計測指数



    近年,病院においては,NST(nutrition support team:栄養サポートチーム)による,

    各種疾患から来る低栄養のチームサポートが行われてきており,

    栄養アセスメントで体重計測指数が用いられることが多い。

    体重計測指数の内,理想体重比(%lBW:ideal body weight)は,%標準体重ともいい,

    肥満度の逆数である。


    %標準体重=実測体重÷標準体重x100

    標準体重=(身長m)(身長m)x22


    また,高齢に伴う生理的な体重減少はやむを得ないが,

    急激な体重減少は栄養不良の有力な手がかけとなるので,

    通常体重比(%UBW:usual body weight)が参考になる。

    %通常体重=実測体重÷通常体重×100

    この%通常体重の逆数を体重減少率といい,主観的包括的評価(subjective gloval assessment)

    における重要な項目の1つとなっている。

    体重減少率(%)=(通常体重一測定時体重)÷通常体重x100



    QOL(生活の質)向上のための高齢者ケアのポイント




    1.快感のためのレクリエーション


    @本人の好きなこと,やりたいことを探せるように考える。

    A人と会い,おしゃべりする機会を作る。

    B各年代の人と交わる機会を作る。

    C歌う,聞く,笑う,遊ぶ,体を動かす,散歩する,踊るなど,感情表現できる機会を作る。

    D音楽や自然に触れる機会を作る。

    E意識のない人や意欲のない人にもできるだけ声をかける。

    F介護者の心理的安定が相手に伝わるので,介護者もストレスを発散できる機会を作る。

    G介護者のチームワークを大切にする。


    2.快感のためのリハビリテーション


    リハビリテーションは,生活を快適にする(生活の質;QOLをよくする)手段である。

    高齢者の介護においては,「本人のできないこと」,「できること」,「できてもやろうとしないこと」

    などをみきわめ,できない部分をどのように補えぱQOLがよくなるのかを考えることが大切である。

    リハビリテーションの目的は,訓練や機能維持のためだけではなく,

    あくまでも生活を快適にするためである。

    リハビリテーションを目的にしてしまうと,「訓練しなけれぱならない」ということにとらわれ,

    ストレスになってしまうことがある。

    「食堂に来なけれぱリハビリになりませんよ」などと強制的に誘導するようなことは,

    本人の苦痛となり,日常生活動作のすべてをリハビリテーションにつなげてしまっては,

    生活を味気のないものにしてしまう。


    機能の回復の可能性がある段階,これ以上の回復は望めず,今の機能を維持することが大切な段階,

    本人の努力や意欲にかかわらず,機能の低下が進む一方で,次第に介助の割合が多くなる段階など,

    その人の段階を正確に把握し,PT(理学療法士)やOT(作業療法士)の評価や助言も参考にして,

    必要かつ適切な介護につなげる必要がある。


    高齢者の中には,できるのにやろうとしない人もいる。

    その場合には,精神状況,痴呆の状況,介護者や家族との人間関係などの要因を考え,

    本人の意欲をどう高めるかの工夫が必要となる。

    また,実際は無理なのに本人はできると信じて他人の介助を嫌う場合などもある。

    あらゆる場合において,まず本人の意志を尊重し,最初はその人の意に沿い,

    どうしてもできないことがはっきりした時点で,必要に応じて徐々に介入していくことが必要である。

    どんなに効果があるリハビリテーションでも,本人が納得しなけれぱ苦痛となり,ストレスとなる。

    コミュニケーションを第一に考えて取り組む姿勢が大切である。












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