- 褥創とは何ですか?その原因は?。
- 褥創にはどのような段階がありますか?。
- 褥創のできやすい人・できにくい人というのはありますか?。
- 褥創が皮膚の皺からできることはありますか?
。
- 褥創と他の傷は見分けがつきますか?。
- 圧迫で皮膚が赤いのか、感染して赤いのか、
わかりにくいのですが・・・。
- 褥創が治ったとは、どのような状態ですか?。
- 褥創治療でよ<使われる医学用語と意昧を教えて下さい。
- 褥創のケアとはどのようなものですか?。
- 誤ったケアにはどんなことがありますか?。
- 入浴はしてもよいのですか?。
- 洗浄、入浴時の注意点は?。
- 体位交換で褥創は防げますか?。
- エアーマットレスの有効性を教えて下さい。
- 背中全体に褥創が広がっている場合のケアを教えて下さい。
- 車椅子の人の尾骨部(仙骨部)に褥創ができ,痛みのため座っていられず,
離床時間が短<なるという悪循環になっています…。
- フィルム状のドレッシング材を貼ったのですか゛、
おしりの割れ目から便が
侵入してしまいます。どうすればよいでしょうか?。
- フィルムをはがすときに,皮膚がはがれそうでこわいのですが…。
- 肛門周囲の便はどのように取ればよいのですか?。
- 創がある場合,紙オムツと布オムツはどちらがよいですか?。
- 褥創治癒時の栄養面での注意点とは?。
- 医師から「栄養のあるものを食べなさい」と言われます。
どのようなものがよいのですか?。
- 在宅で点滴療法を受けている場合の栄養、食事について教えて下さい。
「褥」=しとね(寝床や敷物の意味),「創」=きずという意味をもつように,
一般的には床ずれと言われ,皮下組織などが壊死し,その部分の機能が停止した皮膚の潰瘍を指します。
その原因は,長時間の持続的圧迫です。
骨の飛び出した部位に体重がかかり,骨と体表にはさまれた軟部組織が圧迫による
血流障害(虚血)を起こし壊死することによります。
仰臥位でいることの多い高齢者では,尾骨(仙骨部),臀部で好発します。
褥創には,表皮が保たれている早期のものから,深くえぐれたものまであります。
褥創の深さによって,1度〜W度に分けられます。
各段階(ステージ)によって,治療方法,治癒に要する期間が異なります。
栄養状態がよくて,特に口から食べている人にはまずできません。
栄養状態が悪い人にできやすいのが,褥創の特徴です。
極端な場合を除いて体型はあまり関係ありません。
仙骨や背骨などが飛び出した人では褥創ができやすいといえますが,
これも栄養状態に関連しています。
日頃からバランスのとれた食事を摂取することが大切です。
基本的に圧迫がなければ,褥創はできません。
しかし,皺があるところにはズレがあり,さらに皺には汗が溜まりやすく,
浸軟(ふやけ)がみられることが多いものです。
このようなズレや浸軟は,褥創の発生促進因子になります。
褥創は必ず骨突出部にできます。
骨突出部以外のところにできた傷は褥創ではありません。
赤くなっている場所が骨が飛び出していて,圧迫を受けている部位であれば,褥創の可能性があります。
さらに浸出液がみられれば,皮膚感染を合併している可能性があります。
いずれにしても治療が必要です。
この段階は褥創初期の兆候です。
局所はすでにI度またはU度のステージの褥創に進展していると考えられるため,早めの治療が必要です。
創部が皮膚で覆われた状態,つまり表皮化が完了した状態です。
V度やlV度の褥創では,治っても毛嚢や汗腺,皮脂腺が再生しないことからドライスキンになるので,
一生スキンケアは必要です。
●ドライスキン
潤いのない肌のこと。
皮脂腺から分泌された皮脂が汗などと混ざり,皮脂膜をつくり,水分が蒸発するのを防いでいる。
ドライスキンは,皮膚表面の水分保有量が減った状態で,かゆみを伴うことが多い。
@ポケット:
V度の褥創でみられるクレーター状の潰瘍で,周囲がポケット状にえぐれていること。
Aドレッシング材:
創面を覆う清潔なカバーのことで,軟膏やガーゼあるいは板状やフィルム状の創を覆うもの,
装具を含めた総称です。
Bデブリードメント(デブリ):
壊死した皮膚や組織・異物を切り取り,新しい組織や皮膚の再生を促すこと。
主なケアを挙げます。
@除圧:
体圧分散マットレス,体位交換で圧迫を取り除きます。
Aズレ・摩擦と浸軟の予防:
ズレや摩擦は褥創を発症,悪化させます。
また,浸軟は摩擦力を増加させます。
浸軟の局所療法には,フイルム状のドレッシング材(ポリウレタンフィルムドレッシング材など)
を用います。
B栄養の改善:
特に,総摂取エネルギー,たんぱく質量,水分量が重要です。
ドーナツクッションの使用やマッサージが代表例です。
特に褥創において,マッサージは禁忌です。
たとえ褥創がT度であっても皮下には重大な変化が起こっています。
マッサージをすると皮下に出血を起こし,また血流障害がひどくなり,褥創は悪化します。
その他,褥創をドライヤーで乾かしたり,創面を消毒することも誤りです。
なぜなら褥創の創面では,肉芽組織や表皮細胞の分裂増殖によって,治癒が進んでいます。
創面の乾繰や消毒はこれらの細胞に対し,障害作用をもたらし,治癒の妨げになります。
ほとんどの褥創で入浴は可能です。
むしろ入浴はした方がよいのです。
その理由は,次のとおりです。
@血流がよくなり治癒が進む。
A創周囲の皮膚を清潔に保つ。
B創面がきれいになり,デブリードメント効果(壊死組織がなくなる)がある。
表皮化がほとんど完了しかかった状態では,フィルム材などで,密閉したまま入浴し
てもよいでしょう。
ただし,次のような状態では,入浴を中止します。
@熱が出ているなど、全身状態が悪くて入浴ができない状態。
A褥創が感染し,しかも痂皮(かさぶた)があって除去されていない状態。
創のステージにかかわらず,洗浄は可能です。
できるだけ多くの生理的食塩水で洗浄します。
壊死組織のある汚ない創面を洗浄するときは,
創内の汚れを流しながら,ふき取るようにして洗浄します。
洗浄,入浴時の際,肉芽が盛り上がってきたり,
表皮化しつつある創面を絶対にこすらないよう注意しましょう。
体位交換は,除圧だけでなく,肺血流の改善や脳循環にも有効性が認められています。
しかし,一般的に言われている2時間ごとの体位交換のみでは,褥創の予防,
治癒の有効性は認められていません。
褥創の原因には,長時間の圧迫が関与しますが,
長時間とはどれくらいの時間かは実ははっきりしていないのです。
栄養状態のよい動物に,2時間圧迫を加えると組織障害が起こることは示されており,
この点から2時間ごとの体位交換は有効な可能性があります。
ところが栄養状態が悪い場合,もっと短時問の圧迫で褥創が発症することから,
栄養状態の改善も大切な予防になります。
その他,さまざまな褥創発症要因があり,総合的な予防が大切です。
さらに,夜間,患者さんの睡眠を障害してまで2時間ごとの体位交換を行うと,それがストレスとなり,
全身状態が悪くなり,褥創発症の要因になる可能性も考えなければなりません。
このようなことから,圧迫による褥創発症予防目的としては,
エアーマットレス(→Q14)の導入による除圧が最も理にかなった方法といえます。
エアーマットレスは中に空気の層があり,人間の体を浮かし。
圧力をうまく分散し。
解放してくれます。
Q13で述べた点を考えあわせると,褥創の予防および治療においては,
エアーマットレスの導入が原則であり,体位交換は補助的役割であるといえます。
しかし,エアーマットレスを用いた場合も、体位変換は行うことが勧められています。
除圧効果の高いエアーマットレスの導入と栄養状態の改善,基礎疾患の治癒を行うことが基本です。
体位交換は通常の方法(約2〜3時間ごとに他動的に体位を変える)でよいでしよう。
特殊な方法としてうつぶせ寝の方法がありますが,
その場合もエアーマットレスの導入などは必ず行います。
離床時間が短<なるという悪循環になっています…。
除圧効果の高いエアーマットレスと車椅子用除圧用具(ロホクッションが勧められる)をまず導入します。
なお,車椅子はしっかりとした体位を取れず,ズレて座っていると,
尾骨部に褥創ができる原因になります。
車椅子に座るときは,たとえ除圧用具を使っていても,90°ルールを守りましょう。
おしりの皮膚を引っ張って,平らな面をつくっておいて貼るとすきまができずよいでしよう。
ドレッシング材を使うときのポイントとしては,コーナーをカットして用いること,
皮膚にフィットしやすいように切り込みを入れることが挙げられます。
フィルムを横に引っぱって,はがすとよいでしよう。
おしり用薬用洗浄剤(植物性油脂。花王サニーナなど)を使うとはがしやすいです。
しかし,そのあと石鹸で洗浄剤を洗い流さなくてはいけません。
また,フィルムをはがすときに皮膚がはがれそうだということは,スキンケアがうまくいっておらず,
皮膚がもろい状態にあるということです。
このような状態では粘着性のテープやフィルムは使えません。
皮膚感染があるときは,ゲーベンクリーム(スルファジアジン銀クリーム)を塗布します。
ふき取るだけでは,便が皮膚に残るのでよくありません。
ふき取るのではなく,洗い流すことが大切です。
石鹸を泡立ててよく洗浄し,その後で洗い流します。
洗いにくいときは,市販のおしり用薬用洗浄剤で,
汚れを浮き上がらせて取ることでも代用になります。
紙オムツを勧めます。
布オムツは,排泄物を吸収しても水分保持能力がないので皮膚が浸軟してしまいます。
それに対し紙オムツは,吸収したものをよく保持し,皮膚を乾燥した状態に保ち,
皮膚の浸軟が予防されます。
紙オムツは,製品によって吸収力や水分保持能力に大きな差があるので,いくつか試験し,
適当なものを使うようにします。
半消化態栄養剤ラコールやエンシュアリキッドなど)での栄養補給が勧められます。
また,重症であれば経腸栄養法や中心静脈栄養法による栄養補給も考慮しなければなりません。
創傷治癒時に最も重要な栄養素はたんぱく質ですが,
十分なエネルギー(高カロリー)が投与されなければ,
アミノ酸からのたんぱく合成が低下します。
しかし,たんぱく質だけの過剰投与は,適切ではありません。
他の栄養素とのバランスをとることが大切です。
なお,ビタミンやミネラル,特にビタミンCや亜鉛の投与を意識しなければなりません。
ビタミンCは,体の組織,肉芽,特に皮膚構造の柱となるコラーゲンの合成に必須であり,
創傷の治癒時には大量のビタミンCが消費されます。
体内で合成,貯蔵されず,摂取後すぐに尿中に排泄されることから,毎日の摂取が必要です。
亜鉛に関しては,亜鉛不足による味覚異常は食欲を低下させ,
栄養状態を悪化させることがよく知られています。
また,創傷が治っていく時,たんぱく質合成が行われますが,
亜鉛欠乏ではたんぱく質合成が不十分にしか行えなくなってしまいます。
補助栄養剤によってはほとんど亜鉛が含まれていないものもあり,注意が必要です。
栄養状態が悪いと褥創が発生がしやすくなる上,傷が治癒するために必要なたんぱく質,
炭水化物,ビタミン,鉄,銅,亜鉛などが不足します。
具体的には,少量で栄養強化できる物がよいです。
食事が十分食べられない場合には,栄養バランスが整った,栄養補助食品や
濃厚流動食(術後の栄養補給などに使われる物)
を利用するとよいでしょう。
これらには,エネルギーだけではなくて,各種の栄養素がバランスよく含まれているため,
体の中で吸収されやすく効率よい栄養補給ができます。
摂食・嚥下困難の場合では食べる時間がかかり,
疲れ切って食べる意欲をなくしてしまうこともあります。
そんなときこそ,栄養補助食品などを上手に利用しましょう。
プリン,ムース状にしておやつ感覚で食べてもよいでしょう。
いろいろな種類があるので,個人の嗜好に合わせて,味,必要な成分の物を利用しましょう。
在宅で点清療法を受けている幻合の栄養,食事について教えて下さい。
点滴療法は,水分の補給がほとんどの目的です。
毎日の食事が非常に大切ですが,食事摂取量によって,全身状態や抵抗力に違いが出ます。
量がとれないときや嚥下困難があるときは,施設で用いられているプレ鼻腔食の応用がよいでしょう。
また,定期的な管理栄養士(栄養士)による指導が必要です。
栄養補助食品としては,
ペ一ストにしたチーズ・バター・プロテイン・きな粉・すりごまなどがあります。
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