- 家庭でできる簡単な摂食・嚥下障害の判断方法を教えて下さい。
- 「むせ」とはどのような状態をいうのですか?。
- 水分でむせる方への対応は,どうすればよいでしょうか?。
- 水でむせる人と,食事でむせる人の重症度の違いはありますか?。
- 酢を使った料理でむせますが,酢は避けた方がよいですか?。
- 摂食・嚥下困難音の食事介助のポイントは?。
- 飲み込みやすい姿勢とは?。
- 嚥下困難者に適した食事とは?。
- 嚥下困難者のための調理の工夫を教えて下さい。。
- 嚥下困難者に適した食事形態とは?。
- 食事形態を変える目安はありますか?。
- 飲み込みやすい大きさを教えて下さい。。
- 増粘剤の使い方を教えて下さい。。
- のどにへぱりつきやすい食べ物にはどんなものがありますか?。
- 嚥下困難者の食事作りに便利な食事器具を教えてください。。
- ミキサーにかけられない食品はありますか? 。
- 嚥下をスムーズにする体操等を教えて下さい。。
- 誤嚥性肺炎とは何ですか?。
- 誤嚥性肺炎の対応のポイントは?。
- 逆嚥下とは何ですか?。
- 逆嚥下の食事介助のポイントは?。
- スプーン咬みのある切合の食事介助のポイントは?。
- 口腔ケアは、なぜ必要なのですか?。
- 手軽にできる口腔ケアの手順を教えてください。。
- 口を開いてくれない場合や抵抗する場合にはどうすれぱよいでしょうか?。
- 舌苔はどうしてできるのですか?。
- 義歯の作成について教えて下さい。。
まず水を飲んでむせないか,確認します。
次にどんな食べ物でむせるのかを確認して,
医師などに相談しましょう。
また,普段何気なく見逃していたことが,
実は摂食・嚥下障害のサインかもしれません。
以下に摂食・嚥下障害のある人の特徴を挙げました。
@食べ物や飲み物が飲み込みにくくなる。
A食事時間が長くなる。
Bむせやすい物や硬い物を避け,食事に偏りがみられる。
C口から食べ物がこぽれる。
D長時間口に食べ物をため込んで,なかなか飲み込めない。 食後,口の中に食べ物が残っている。
E上を向いて飲み込む。
F特定の物(水分など)でむせる。
G食事中にむせが多くみられる。
H食事中や食後にせき込む。
I食事中や食後に声がかすれる。
J喉にゴロゴロ感があり,痰の量が増え,粘稠の高い痰の中に食べ物が混じる。
K食事中に疲れを感じ,目をつぶったり,寝てしまうことがある。
L食欲がない。
M特定の位置の皿をいつも残すなど,認知障害がみられる。
Nのどに残留感がある。
N体重の減少がある。
気道の粘膜が異物を排泄しようとする生体防御反応で,むせることによって,
水や食べ物が誤って気管に入ること(誤嚥)を防いでいます。
摂食・嚥下障害のある人では,口の周りの筋力の低下や,嚥下反射の遅延または
咳反射の低下が原因で食べ物がのどに残りやすく、むせることが多くなります。
むせたら,呼吸が整うまで食事を休み,落ち着いてから再開します。
また,誤嚥を繰り返すと生体防御反応が低下し,
誤嚥をしているがむせを訴えないという危険な状況に陥ることがあります。
危うく窒息をまぬがれても,微熱が続いたり,
ゼイゼイといつもとちがう呼吸音が聞こえる場合には誤嚥性肺炎(→Q18)が疑われます。
医師に相談しましょう。
特に次のことに注意して,食事の様子をよく観察しましょう。
@現在の食形態を確認する:
むせやすい人は嚥下反射が低下するため,
喉に入るスピードが速いさらっとした液体でむせやすくなります。
また,まとまりのないパサパサした物もむせやすいです。
汁物などの水分は増粘剤(トロミ剤)などで粘度を調整することが必要です。
A食事をするときの姿勢をチェックする:
できるだけ起きた姿勢(起座位)で食事をするようにしましょう。→Q7
★ワンポイントアドバイス。
市販の増粘剤は,入れて混ぜればトロミが付きますが,入れすぎてしまうと団子状になってしまい,
咽頭残留してしまいます。
また,作ってから粘度が出る(粘度が安定する)までに少し時間がかかるため,入れすぎに注意しましょう。
ジューサーにかけた生ジュースは,トロミが付いて飲みやすいという方もいらっしゃいますので,
お試し下さい。
重症度の違いは一概に言えませんが,一般的な摂食・嚥下障害では,
食事(固形物)よりも水でまずむせるようになります。
ただし,食道に狭窄がある場合などでは,水よりも固形物でむせやすくなります。
重症度よりも障害の部位の違いともいえます。
酢はむせの原因になりますが,だし汁で割ったり,火を通したりすれば,刺激を和らげることができます。
料理に用いるとよいでしよう。
★〈食事環境〉
食事に集中しやすい静かな環境(テレビやラジオを消す,カーテンで仕切るなど)を整えましょう。
★〈食事を始める前に〉
目が覚めていることを確認しましょう。
寝たきりに近い状態の人では,意識がぼ一っとしていたり,しっかりと目覚めていないことがあり,
食欲がわかなかったり,誤嚥の可能性があり危険です。
口腔ケアや冷たくしたスプーンで唇に軽く刺激を与えるなど,意識の覚醒を促します。
料理の見た目やにおいで食欲をそそり,食事をするのだという気持ちをもってもらうようにします。
★〈食事中〉
@認知を促すため,食事は視界を考慮し,視線を落として約30cm以内に置きます。
A介護者(介助者)は座って,相手と目線を同じにし,前方から表情を観察しながら介助します。
高い位置からの介助は,顔が上向きになるためうまく嚥下できません。
顎を引くことで咽頭がしっかり上がり,飲み込みやすくなります。
B口に入れる1さじの量は,ぺ一スト状のもので4〜5g(ティースプーン1杯)を目安にしましょう。
多すぎるとあふれ出たり,のどに詰まることがあり危険です。
逆に少なすぎても嚥下反射が起きにくくなります。
その人に合った量を確認しましょう。
Cおいしさは上唇で感じとることができるため,食べ物をいきなりのどの奥に入れずに,
スプーンを下唇にのせ,食べ物を上唇につけるようにします。
D口が半開き状態では飲み込みにくいのできちんと閉じさせます。
閉じない場合は,手で介助します。
唇が閉じたらやや斜め上に向かってスプーンを抜きます。
Eのどの動きに注目し,咽頭が上がったこと(「ごっくん」と飲み込む動き),
食べ物が口の中に残っていないことを確認してから,次の食べ物を口に入れます。
F食べ物をうまく飲みこめずもぐもぐしている方は,舌の動きが鈍くなっているので,
重力を利用して食べ物を食道に落とす30°仰臥位(気管が閉じやすい体位)がよいでしよう。
G食事中の様子を観察し,調理方法や食べ物の大きさなどが適しているか確認しましょう。
食後は口の中に食べ物が残っていないか確認しましょう。
H食事による疲労は,集中力を失い誤嚥や窒息を招くので,食事時間は45分以内が適当でしょう。
基本は,リラックスできる安定した姿勢です。
座位で上体を起こし,首を少し前に曲げた姿勢がよいでしょう。
★ワンポイントアドバイス
食事をとっている時の表情やペ一スを前方から常に観察していないと,
誤嚥などの危険状態になっても気がつきません。
必要であれば,見守りながらの食事介助,また認知障害がある方には,
「このおかずも食べましょう」などと,声をかけましょう。
また,脳血管障害(脳卒中)などの後遺症で口の中にマヒがある場合には,
マヒしていない方向から食べさせてみましょう。
適当な粘度があり口腔から咽頭部をなめらかに通り,ばらけず,べたつかず,のどこしのよいものが,
嚥下困難者に適した食事の基本です。
むせのある方には,適度なトロミを付け,
あんかけのようなとろりとした食形態の方が水分の重さでゆっくり食道に流れていくため,
誤嚥による危険が減少するといわれています。
嚥下障害は,重度から軽度の症例まで様々な病態があり,さらには個人差もあって千差万別です。
症状に合わせて,ゼラチン,増粘剤,寒天などをうまく使い分けることも必要です。
@やわらかくする:
小さくするのではなくある程度の大きさにして,舌でつぶせる程度までやわらかく調理します。
調理方法としては,時間をかけて煮込む,ゆでてから炒める,
蒸し物にする,ミキサーでぺ一スト状にするなどです。
Aトロミを付ける:
口の中でばらばらにならないようにトロミを付けます。
食塊になりやすいと,のどへの移送,飲み込みがしやすくなります。増粘剤(→Q13)を利用するほか,
片栗粉やくず粉であんかけ風,くず湯風にしたり,
山芋,粥,冬瓜といった食品自体がもつ粘りを利用するとよいでしょう。
B盛り付けを工夫する:
食感や味に加え,食べ物の見た目は食欲を増進させます。
食事への意欲を減退させないことが大切です。
★ワンポイントアドバイス
高齢者では,のどの筋力が弱まり,のどの絞り込みが弱くなるため,
咽頭部に食べ物が残りやすくなります。
残った食べ物が呼吸再開とともに気管に入る可能性があり危険です。
残った食べ物を食道に送り込むためには,次のような方法があります。
@空嚥下:
口の中に食べ物のない状態で「ごっくん」と嚥下する。
A横向き嚥下:
頭を真横よりやや右下,左下に傾けて「ごっくん」する。
Bうなずき嚥下:
飲み込む瞬間に顎をできるだけ引いて「ごっくん」とする。
C交互嚥下:
水分と食べ物を交互に嚥下する。水分は,体温で溶けるゼラチンを使ったゼリーを用いるとよい。
理想的な形態は,口の中で食塊を作りやすく,のどへの送り込みがよく,
飲み込みやすい硬さであることが第一条件です。
@ゼリー食:
ミキサーで砕いたピューレ状の形態が食べられない場合に用いる,ゼリーで固めたものを指します。
介助者が,スプーンの上でその方の摂食機能に適合した食塊を作ることができ,
ツルリとのどを通過できます。
食塊は,スライス型がベストといわれています。
ゼラチン寄せは,舌で押してもまとまりがよいため飲み込みやすいでしょう。
Aぺ一スト食:
ミキサーにかけたものを鍋に入れ,滑らかになるまでよく練り上げたものです。
ぺ一スト食は口の中でややバラバラになりやすく,口の中やのどに食べ物が残ることがあるので,
交互嚥下を必ず行って下さい。
@食事に時間がかかるようになった,
A噛めない物が増えて食事を残すことがある,
Bむせやすくなったなど,
高齢者が食べにくさを感じるようになったら,今までの食事形態を変える必要があります。
摂食・嚥下障害がある方には,キザミ食はポロポロしてまとまりにくいので,
口に運びにくい,のどに残りやすいなど危険があるので,
素材の軟らかさや大きさに配慮した工夫が必要です。
ひと手間かけ,より食べやすい形態に変化させることから始めましょう。
★ワンポイントアドバイス
にんじんやいもなどの根菜は,ゆでてからミキサーやフードカッターなどで細かくし,
冷凍保存しておくと重宝します。
しかし,保存期間(2〜3週間が目安)には注意しましょう。
通常,咽頭から食道に落とし込める食べ物の大きさは,最大2cmといわれています。
次の切り方を参考に,その方に合った大きさを工夫しましょう。
@一口大キザミ:
2cm以下の一口大に切る。
Aキザミ:
5mm〜1cmに切る。
B超キザミ:
5mm以下のみじん切り。
食べ物,飲み物にかき混ぜながら加えていきます。
スプーンや小さめのマドラーが使い勝手がよいです。
食べ物の種類・量・温度によってトロミの付き方が違いますので,
その方に合った硬さに仕上げて下さい。
増粘剤は市販されており,通信販売などでも購入できます。
★ワンポイントアドバイス
在宅高齢者の場合,毎回ぺ一スト食を用意することはなかなか難しいものです。
介護の労力も軽減され,形態の安定も確保できるので,
市販のレトルト食品や嚥下困難者用食品などを活用しましょう。
もう一品ほしいときや,栄養バランスを整えたいときに使用するとよいでしょう。
そのまま使用するのではなく,ごまだれや,でんぷん,
コーンスターチなどを使った薄いあんをかけるとよろこぱれます。
“へばりつく"とは,食べ物が口腔内の粘膜に付着する状態をいいます。
へばりつきやすい食べ物は,あん,食パン,もち,はんぺん・かまぼこなどの練り製品,
白玉団子,わかめ・のりなどの海藻類,葉物,いも類などです。
ただし,切り方や調理方法などによって,へばりつきにくくすることができます。
特に,ミキサー食を作るときには,小型のすり鉢,裏ごし器,小型のハンドミキサーなどがあると便利です。
小型のハンドミキサーは,水分を入れなないと回転しにくいので,
注意が必要ですが茶碗一杯分(150ml)程度の少量のぺ一ストでも簡単に作ることができます。
また,様々な介護用食器や自助具が市販されています。
ミキサーにかけられない食品はほとんどありませんが、
食品によっては工夫が必要です。
例えば、こんにゃく・わかめ・きのこ類・春雨など単品ではミキサーにかけにくい食品でも
他の食品と一緒にかけると使用できます。
口の周りの筋肉を鍛える口腔リハビリは,口腔ケアと並び,口の機能回復に効果的です。
@口腔体操:
A食前食後の深呼吸:
リラクゼーション効果があります。
Bマッサージ:
のどぼとけ付近の骨の脇を下に向かってマッサージします。
C呼吸訓練:
予防訓練として効果的です。
D適度な運動:
できる範囲で体を動かし,体力や抵抗力をつけましょう。
体力や抵抗力が落ちると嚥下機能の低下や誤嚥性肺炎にかかりやすくなります。
特に食事前の口腔体操は,食べ物をのどへ運ぶ舌の動きをよくしたり,
喉につかえそうになった食べ物を押し戻す力を強くします。
また唾液の分泌を促す効果もあります。
食事に意識が向くように食事の前に行うのもよいでしよう。
摂食・嚥下障害のために,気管に入った食物残渣や水分,
あるいは胃から逆流した胃酸(pH2〜3の強酸)を含んだ食塊などを誤って、
肺に引き込むことを誤嚥といいます。
誤嚥により口の中の細菌を唾液と一緒に,
呼吸器の中に吸い込んでしまうと,肺炎になってしまいます。
これが,誤嚥性肺炎(老人性肺炎)です。
高齢者でかかる割合が高いことが報告されています。
栄養状態が悪く,抵抗力の弱い方は,二次的に肺炎などの感染症にかかりやすいのです。
誤嚥性肺炎を起こした人の多くは,夜間や日中でも無意識の内に,
口腔や咽頭内の細菌や溜まった自分の唾液を誤って飲み込むことがあります。
これをはっきりしたむせなどの症状がないまま起こる誤嚥(不顕性誤嚥)といい,
発見が難しいことからむせのある誤嚥よりも問題です。
誤嚥性肺炎予防のポイントは,口腔内の衛生を徹底することであり,
口腔ケアが最も大切だといわれています。
原因不明の発熱を繰り返す方は誤嚥性肺炎を疑い,
口腔ケアを徹底し,咽頭の中の細菌を減らしましょう。
むせることは,誤嚥の重要なサインです。
誤嚥性肺炎発症の原因には,食べ物の残留物が関与していることも多いので,
口腔内はいつも清潔にしておくのが肝心です。
また,しばしばむせたりすると,食事が苦痛になり,
食事量が減ってしまうことがあるので注意が必要です。
咽頭残留がある状態で横になり,呼吸のときに食べ物が気管に入ってしまうと,
誤嚥性肺炎の原因になります。
食事の後は最低30分は上体を起こし,すぐに寝かさない(体を横にしない)ようにします。
ゼラチンを使ったデザートを一品加えることも,誤嚥の頻度が低くなります。
ゼラチンが口腔や咽頭に残っている残渣を引き寄せ,まとめることで飲み込みやすくし,
口やのどの中をきれいにしてくれるからです。
逆嚥下(乳児様嚥下)とは,嘔吐する時に似た動作で,
口を大きく開けて舌を突き出すような嚥下動作です。
舌を前方に突き出すため,食べ物が口の外に出てしまいます。
逆嚥下は最も誤嚥しやすい状態なので,習慣化させないよう注意が必要です。
仰臥位で,長年にわたって無理に食物を口腔内に押し込んでいるような場合には,
逆嚥下が定着する可能性が高くなると考えられます。
食形態は,均一なトロミの付いたものが適しています。
訓練としては,嚥下促進訓練,顎運動訓練,摂食姿勢訓練などがあります。
食べ物を取り込むときには,口唇を閉じるよう介助します。
食事時に上を向いてしまったら,顎を引かせるようにしましょう。
また,水分摂取にはストローを使用してもよいですが,
ストローを口の奥まで入れないよう注意しましょう。
スプーン咬みは,高齢者によくみられる反射で,無理に引き抜こうとしてはいけません。
スプーンを咬んだらそのままにしておき,上下の唇をぎゅっと押さえて引き抜きます。
食事の際は口の前方部で食べ物をとらせるようにスプーンは下唇にのせ,
口唇が閉じたらゆっくり抜いてみましょう。
スプーンは,小さめで薄く,平べったい物が適しています。
深いと口唇で取り込みにくく,スプーンに食塊が残りやすくなります。
訓練としては,捕食訓練,口唇訓練,口輸筋訓練などがあります。
おいしく食事をする,楽しく会話をする,そして健やかな生活を送るためには,
口の中の環境を整えることが重要です。
口腔ケアの効果は次のとおりです。
@むし歯や歯周病(歯槽膿漏など)の予防。
A口臭などの不快感の解消。
B口腔内への刺激による唾液分泌量の増加。
C口腔や咽頭の細菌の減少による,誤嚥性肺炎や風邪の予防。
D口腔感覚の覚醒・充進による食欲の増進。
E咀嚼機能や唾液と混ざって飲み込みやすくする機能の維持。
入れ歯やミキサー食,流動食の場合でも口腔ケアは必要です。
口の中の環境は,ケアをしない限り悪くなることはあっても自然によくなることはありません。
口腔ケアを怠ると,口腔内に数千億個以上いるといわれる細菌がますます繁殖し,
様々な口腔トラブルを引き起こし,食生活の質の低下につながります。
口腔ケアを食事の延長ととらえ,無理なくできることから始めてみましょう。
口腔ケアの最終目的は,口から食べることへの食の支援と理解しましょう。
食事前後の口腔ケアは心身の健康と心の介助につながるので,毎日根気強く続けて下さい。
時間的制限もあるかと思いますが,長続きさせるためにも,おおらかに構え,
高齢者のプライドを傷つけないよう,コミュニケーションをとることからアプローチするとよいでしょう。
@体位:
椅子に座らせて上半身を起こすか,横向きなど,介助者が相手の口腔内を観察しやすい状態にします。
A準備:
声かけをして体をリラックスさせます。
入れ歯を入れている場合ははずします。
Bうがい:
口をゆすぎ,うがいをして食べかすを除きます。
食べ物が残りやすい部分は,舌の上,口蓋,歯と頬の間です。
うがいができないときは,水でぬらした軟らかめの歯ブラシやスポンジブラシを使うとよいでしょう。
Cブラッシング:
奥歯から手前に,あまり力を入れずに,毛先が歯から離れないように,
小刻みに動かしながら磨きます。
歯垢(プラーク)のたまりやすい歯茎(歯肉)や歯の付け根は念入りに行いましょう。
Dその他のケア:
舌の表面の舌苔をきれいに掃除します。
毛先の軟らかい歯ブラシか専用の舌ブラシを鉛筆を持つような感じで持ち,
奥の方からかき出すように行います。
本人の意思を尊重し,気長に口腔ケアを行える状況(信頼関係など)を作っていきましょう。
寝たきりの場合,動かせる範囲内で,口のマッサージや体操など,
全身のウォーミングアップから始めてみましょう。
声がけをしながら体位交換し,血液の流れをよくすることも欠かせません。
また無理に勧めず,うがいができたら次は歯磨きや口腔清拭へと,順次進めていきましょう。
舌苔は,食べ物のかすやカンジダというカビの一種から構成されています。
食べ物を咀囑・嚥下する際,舌の機能が十分でなかったり,脱水症や発熱を起こし、
唾液分泌量が極端に減少している時などにできやすくなります。
全身状態の反映によって付着するため,1日のうちでも変化し,
唾液分泌量の減少による自浄作用の低下,
口内炎,栄養状態の悪化などで増殖します。
口腔機能や上肢機能の低下した場合,その機能に合わせた義歯の作成が求められます。
舌で押す力(押しつぶす力)が弱くなっているので,せめて上の義歯(入れ歯)だけでも入れることで,
少ない舌の力で食べ物を送り込むことができます。
口唇や頬が麻痺した方は,義歯の歯ぐきの部分に食べ物のかすがたまるため,
義歯の歯ぐきの部分を厚くします。
また,舌の機能が低下すると,口蓋(上あご)に押し付ける力が不足して嚥下機能に支障をきたすため,
口蓋の部分を厚くする補助床で,押しつぶしが容易になります。
歯科医などの専門家と相談し,適切なアドバイスを受けることを勧めます。
★ワンポイントアドバイス
唾液には次のような役割があります。
@食べ物を消化しやすくする。
A飲み込みをスムーズに行うための潤滑剤となる
(食塊は舌の上で唾液の力を借りて,転がりながらやわらかい食塊になり,のどを通りやすくなる)。
B歯や口の粘膜を保護する。
C殺菌作用(唾液の自浄作用)をもち,口腔内の細菌の繁殖を防ぎ,むし歯や歯周病を予防する。
なお,高齢者の唾液は殺菌力が低下しているため,口腔ケアは欠かせない。
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