PEM(低栄養) 在宅高齢者食事ケア
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高齢者食事ケアQ&A。PEM(低栄養)。


  1. PEMとは何ですか?。
  2. 1回の食事量が少ない場合や1日1〜2食の場合は,PEMと考えてよいのですか?。
  3. PEMが疑われるのは,どのような人ですか?。
  4. PEMのアセスメント(評価)とは?。
  5. PEMを発見する指評にはどのようなものがありますか?。
  6. 血液中のたんぱく質について教えてください。。
  7. PEMの改善にはたんぱく質が必要といわれていますが,なぜですか?。
  8. アルブミンが不足すると,どんなリスクが現れますか?。
  9. 食事療法後の血清アルブミン値による評価の時期を教えて下さい。。
  10. 体重減少率の評価・判定について教えて下さい。。
  11. PEMへの対応のポイントは?。
  12. どのような食事を心がけれぼよいですか?。
  13. サプリメントとは何ですか?。
  14. 高齢者にビタミン剤を勧めてもよいですか?。
  15. 施設などで使用している特殊な栄養食品は、どこで購入できますか?。
  16. 食事をとろうとしない認知症高齢者への対応を教えて下さい。







  17. 1)PEMとは何ですか?。




    Protein energy malnutritonの略で, その人に必要な量のたんぱく質とエネルギーがとれていない低栄養状態をいいます。 ビタミンやミネラノルなど各種の栄養素の不足も伴い, 体重減少と免疫力の低下を招き,感染症など多くの病気にかかりやすくなります。



    2)1回の食事量が少ない場合や
     1日1〜2食の場合は,PEMと考えてよいのですか?。




    PEMかどうかを知るには1日の食事摂取状況を観察し,記録する必要があります。

    その上で医師や管理栄養士(栄養士)が判断することが大切です。

    高齢になると1回に食べられる量は少なくなる傾向があります。

    そこで1日1〜2食ではPEMになる可能性が高くなります。

    また,PEMよりもまず水分の不足が疑われます。

    食生活の状況のみではPEMかどうかがはっきりしない場合には,

    体重の変化や血清アルブミン値など具体的なデータを求めることも必要です。

    そこから食事との関連性が把握できれば,

    栄養改善のためにケアチームの他職種を動かす動機付けにもなります。




    3)PEMが疑われるのは,どのような人ですか?。




    以下のような人が当てはまります。


    @体重減少のある人(全身の皮膚組織の老化)。

    A偏食,食べむらのある人。

    B摂食・嚥下障害,ADL(日常生活動作)低下のある人。

    C各種の病気や,うつ病や神経症などの心の問題を抱えている人。

    D浮腫など慢性疾患があり,食事制限を受けている人。

    E重度認知症のため,食べる意欲がない人。

    F意識障害のある人。




    4)PEMのアセスメント(評価)とは?。




    その人が普段食べている食事のアセスメントを行い,何がどのくらい足りないのか,

    偏っているかなどを知る必要があります。

    また,食べる速さや摂取量の変化などを観察し,

    その人の食事が摂食機能に適したものかどうかの検討も必要です。


    @食事状況調査を行い,脱水状態の有無や食欲,喫食率などをチェックし,

    普段食事をどのように食べているか,どこに問題があるかを引き出します。


    A体重,皮下脂肪厚(TSF),上腕筋囲(AMC)などの身体計測値,

    血清アルブミン値(Alb)などを指標として評価します。→Q5


    Bケアチームの他職種と連携し,協力を得ながら,栄養改善方法の計画,実施,評価を行います。

    生活背景(食習慣,社会的条件なども含めた生活全般)を把握することも,

    一人ひとりに沿ったより具体的な指導に結びつきます。

    現場に足を運んで,積極的アプローチを心がけましょう。




    5)PEMを発見する指評には
     どのようなものがありますか?。




    基本となるのは,食事状況調査の結果,体重減少率,血清アルブミン値などです。


    @食事状況調査:

    できるだけ早く簡便にPEMリスク者をみつけ,リスクを軽減・解消するための適切な栄養管理を行います。

    その際、簡単なアセスメント表を使用し,チェックすると効果的です。


    A体重減少率:

    体重はエネルギーやたんぱく質の代謝低下を示す重要な指標となります。→Q1O


    B血清アルブミン値:

    3,5g/dl以下では内臓たんぱくの減少を引き起こし,免疫力の低下を招きます。→Q8




    6)血液中のたんぱく質について教えてください。。




    食物より摂取したたんぱく質はアミノ酸に分解され、肝臓で、再合成され血液を介して、

    各組織に送られます。

    加齢による肝機能の低下や食事摂取量の減少によって、

    血中のたんぱく質の減少が起こりやすくなります。

    体内たんぱく質のアンバランスは、浮腫(むくみ)や胸水を引き起こします。

    血液中のたんぱく質は、アルブミンが50〜70%と大半を占め、

    その他はグロブリンなど100種以上のたんぱく質が存在しており、

    各々生命の維持に重要な役割をもっています。




    7)PEMの改善にはたんぱく質が
     必要といわれていますが,なぜですか?。




    たんぱく質は人体の細胞をつくる主要な成分で,感染に対して抵抗力をつける働きがあります。

    たんぱく質は20種類のアミノ酸の組み合わせでできており,その種類は10万種類にも及びます。

    多くのアミノ酸は他のアミノ酸から体内で合成することができますが,

    必須アミノ酸9種類(イソロイシン,ロイシン,リジン,メチオニン,フェニルアラニン,スレオニン,

    トリプトファン,バリン,ヒスチジン)は,体内で合成することができないので,

    必ず食物として摂取しなければなりません。

    PEMでは,生体を維持するために絶えず補給されていなければならないたんぱく質が

    少ない状態であるので,改善のためにはたんぱく質の補給が必要となります。




    8)アルブミンが不足すると,
     どんなリスクが現れますか?。




    血清アルブミン値は栄養状態を示す指標であり,健康な人では4〜5g/dlです。

    3,5g/dl以下では次のようなリスクを引き起こします。


    @免疫力の低下により感染症や合併症を起こしやすくなります。

    A浮腫をきたしやすくなります。

    BADL(日常生活動作)が低下します。




    9)食事療法後の血清アルブミン値による
     評価の時期を教えて下さい。




    データに基づく栄養状態の評価は,おおむね1か月単位で評価し,

    3か月は継続して観察する必要があります。

    血清アノレブミン値への反映はやや遅れるので,あまり頻回に測っても意味がありません。

    栄養状態のより早い反応をみるときは,血清プレアルブミン値やトランスフェリンなどを測定し,

    その変化をみますが,これらの検査は費用も高く,また飢餓,栄養不良,

    低栄養などの病名がつかない場合は保険が適応されないことから,あまり利用されません。

    月1回の血清アルブミン値測定を基本に,食事調査などを踏まえて総合的に判断するのが現実的です。

    また,褥創などの傷は改善の様子がはっきりわかるので,写真などで記録しておくとよいでしょう。




    10)体重減少率の評価・判定について教えて下さい。。




    体重減少率は次の式で求めます。


    ★(平常時体重一現在の体重)/平常時体重×100


    平常時体重とは6〜12か月問の安定している体重のことで,

    この経時的記録から栄養状態の変化が推測できます。

    体重減少率が1か月で5%,3か月で7.5%,6か月で10%以上を,低栄養の目安にします。

    しかし,浮腫や下痢,発熱,脱水がある場合や,

    利尿剤服用時は体重が著しく変化するので指標として用いることはできません。

    PEM改善の指標として体重の変化をみる場合は,

    最低でも月1回程度は観察することが望ましいとされています。




    11)PEMへの対応のポイントは?。




    @なぜ食べられなくなったか,個々の食の問題点や原因,背景を探ります。

    そのためには,食事状況調査を行うことが効果的です。


    A栄養状態を的確に評価・判定し,一人ひとりのQOL向上を考えた適切な栄養、補給計画を考えます。

    食習慣やBMI,血清アルブミン値などの栄養指標を総合的に判断して,食の細い高齢者には,

    少量頻回食や間食(分食)で補う方法も有効です。


    B栄養をきちんと摂取してもらうには,その方が長年慣れ親しんできた味や食習慣へのこだわりを受け止め,

    「食べたいという意欲」を持ってもらうことから始めます。


    C噛む力や飲み込む力が弱く,寝たきりなどで十分な食事量がとれない方には,

    食事全体の量を増やすことなく,必要な栄養素を補うことができる栄養補助食品の

    使用を試みるとよいでしょう。

    栄養改善には,効率的な補給が必要です。




    12)どのような食事を心がけれぼよいですか?。




    高齢者のPEMは,慢性的なエネルギーやたんぱく質の補給不足が原因で起こります。

    栄養補給を行うときは,腎臓疾患がない限り,

    良質のたんぱく質を含むエネルギーの高い食事が望ましいとされています。

    高齢期に不足しがちな肉や魚,卵や牛乳などの動物性たんぱく質を豊富に含む食品を

    積極的に食べることも大切です。

    食べる動作の中心となる口腔の機能も当然低下するので,うまく噛めなくなったり,

    食べるのに時間がかかるようになります。

    食べやすい食材の調達や,食べやすい大きさに切ったり,隠し包丁をいれてからやわらかく煮るなど,

    調理の工夫をしてみましょう。

    少量しか食べられない時は,個々人の嗜好に合わせた食べ物を,

    食べたいときに好きなだけ食べるようにします。

    また,市販品は「手抜きのようでイヤ」という介護者もいらっしゃいますが,

    高齢者介護は長期的なので,市販品も上手に利用して,介護者がゆとりをもつことも大切です。

    少量でたんぱく質・エネルギーを補給できる栄養補助食品を利用するのもよいでしょう。




    13)サプリメントとは何ですか?。




    サプリメント(supplement)は「補足,追加」という意味。

    いわゆる「栄養補助食品」{健康補助食品」を指す言葉として使われています。

    あくまでも食事からとれない不足分を「補う」といった使い方が重要です。

    表示されている用法,用量を守るのが効果的なとり方です。

    一度に多くとることは避け,摂取量を守りましょう。




    14)高齢者にビタミン剤を勧めてもよいですか?。




    「日本人の栄養所要量」では,高齢者のビタミン所要量は成人と同量に策定されています。

    エネルギーやたんぱく質が,成人より少なく策定されている分,

    ビタミンの摂取割合は成人より多めに必要といえます。

    適切なビタミンの摂取は代謝がスムーズになり、

    病気に対する防御力上昇につながるといわれています。

    高齢者は,消化吸収のスピードや食欲の低下があるので,

    食事に加えて足りない栄養素をサプリメントで補うことは有効でしょう。

    また,ビタミンC,ビタミンB群は,水溶性であるため,朝摂取すると夜には尿として排泄されてしまうので,

    必要量を朝夕2回に分けてとるとよいと言われています。

    ただし、ビタミンDの過剰摂取による高カルシウム血症の危険性や、ワーファリン(抗血栓薬)

    服用時のビタミンE過剰摂取による出血傾向の危険性などがあることから,

    ビタミン剤の摂取には注意が必要です。




    15)施設などで使用している特殊な栄養食品は、
     どこで購入できますか?。




    たんぱく質調整食品や高カロリー食品などの特殊食品を専門に取り扱っている販売店で購入できます

    1部の食品は全国の百貨店スーパー,薬局,健康食品店,介護用品専門店などでも手に入りますが,

    全国病院用食材卸売業協同組合加盟の会社などの中には通信販売や宅配をしているところもあるので,

    上手に利用しましょう。



    16)食事をとろうとしない
     認知症高齢者への対応を教えて下さい。




    まず,なぜ食事をとらないのか,原因を考えることが必要です。

    病気のため,痴呆のため,または心配事があるなど,原因はさまざまです。

    次に,どれくらいの食事をとっているか実態を観察し,記録します。

    特に心理的な原因で食事をとろうとしない場合には,食事介助をする人が辛抱強く接しないと、

    心を開いてくれないこともあります。

    相手の行動様式から心理面を探り、好き嫌いを速やかに判断することも大切です。

    介助する人と本人の間の信頼関係が最も重要なので,まず信頼関係の確保が望まれます。

    痴呆性高齢者の食行動の特徴は,次のとおりです。


    @心配事や気になることがあると,食べるための集中力が低下します。


    A食べ方を忘れ,咀嚼,飲み込みができない場合や,食べ慣れたもの,

    同じものばかり食べる傾向があります。

    B味覚・温度感覚の鈍化がみられます。熱い料理で火傷をしやすいので注意が必要です。


    C自分の気持ちを訴えられないことが原因で拒食になったり,

    逆に記憶力の低下,満腹中枢の機能低下のため過食しやすくなります。


    D「毒が入っているので食べられない」などの被害妄想により,食べない場合があります。

    この場合は少量の薬物治療で妄想を抑えれば食べられるようになるので,精神科医師との連携が必要です。












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