- 脱水症とは何ですか?重大なことなのですか?。
- 高齢者の脱水症の主な原因は何ですか?。
- 脱水状態を簡単に発見する方法はありますか?。
- 脱水状態を発見したら、まず何をしたらよいですか。
- 脱水状態にならない方法はありますか?。
- 人は寝ているだけで1日どのくらいの水分を失うのでしょうか?
。
- 命を支える最小限の水分量とは?。
- 水分はできるだけ多くとるほうがよいのですか?。
- 食事からはどの<らいの水分がとれますか?。
- 1日何杯のお茶・水を飲めばよいですか?。
- 水分補給には,何を飲めばよいのでしょうか?上手な水分補給法を教えて下さい。
- 下痢や嘔吐,多汗の時は,何を飲めばよいですか?。
- イオン飲料とはどんなものですか?。
- 脱水症で意識を失うことがありますか?。
- 緊急な脱水症状への対応を教えてください。
体液量(体内の総水分量)が不足した状態をいいます。
体液には水と電解質が含まれているので、正確には水と電解質(特にナトリウム)
の不足といえます。
水とナトリウムの不足の割合によって各種の病態がありますが、
高齢者では意欲低下、無気力,せん妄(意識のくもり)などの精神神経症状が出やすい
という特徴があります。
脱水症になると血液が濃縮され,血栓(血の塊)ができやすく、
脳梗塞や心筋梗塞なども起こりやすくなります。
また、高齢者ではたやすく意識障害を来すので,対応が遅れると命の危険を招くことも少なくありません。
脱水状態を早期に発見して迅速に対応することが最も大切です。
@老化により水分を蓄えておく筋肉の量が減り、代わりに脂肪の量が若い人の約2倍に増えます。
A老化により基礎代謝量が減少し、代謝によって生成される水分が減ります。
B老化により細胞数が減少し、細胞内液が少なくなります。
Cのどが渇きにくくなるため(渇中枢の感受性低下)、適切な水分補給ができなくなります。
D夜間頻尿や失禁,誤嚥を恐れて飲み物を飲まずに我慢する傾向があります。
E各種の病気や摂食・嚥下障害、日常生活動作(ADL;activities of daily liVing)障害などのほか、
意欲低下、知能の低下などから水分摂取が思うようにできなくなります。
皮膚や口唇、舌の乾燥、皮膚の弾力性の低下、あるいは微熱などから疑います。
また、何となくぐったりして元気がない、ぼんやりして反応が鈍いというように意識のくもり(せん妄)
がみられる場合にも、脱水を疑います。
しかし、このような症状が出る前に、早期に脱水状態(慢性的水分不足状態)を発見する方法があります。
それは,1日3回の食事摂取量と食事以外の飲み物の量を観察し、記録することです。
これによって、脱水予備状態を早期に発見することができます。
まず脱水の原因(食欲不振や意識障害、歯の痛み、口内炎など)を探し、
根本的な治療が必要かどうかを考えます。
次に食事摂取状況を調べます。
水分摂取量を調べると同時に、嚥下困難や咀嚼機能など食べる機能の低下、
食形態についても検討します。
また、水分の不足と合わせて低栄養の存在を疑います。
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まず食事をきちんととることです。
日頃からしっかりと必要な水分を補給していれば、脱水は防ぐことができます。
いつでもすぐ飲めるように、手近に飲み物を置いて、摂取量を観察することも大切です。
十分な水分摂取は、認知症状による、異常行動を防ぐことができるとの報告もあります。
ちょっと様子がおかしいと感じたら、すぐに医師の判断を仰ぎましょう。
寝ている時も呼吸(皮膚呼吸+肺呼吸)はしています。
呼吸で失われる水は,不感蒸泄(自分では意識しないうちに蒸発している水分)といいます。
不感蒸泄(ふかんじょうせつ)は、体重1kg当たり約20ml(成人)とされていて、
体重50kgの人では約1,OOOmlになります。
Q6で述べたように、何もしないで一日中寝ているだけでも呼吸で水分を失っています。
つまり、少なくとも、不感蒸泄は外から補給する必要があります。
体重50kgの人なら約1000mlの水が命を支える最小限の水であるといえます。
ただし、これは発熱(発汗)、下痢、嘔吐などない場合です。
脱水症状がなければ、無理に多くとる必要はありません。
基本は食事です。
1日の総水分摂取量の中に、食事からとれる水も計算に入れましょう。
食事以外の飲み物をやたらに飲もうとする人がいますが、水分の過剰摂取は、
漢方では水毒(水代謝障害)と称して各種の病態の要因と考えます。
また、腎臓病や心臓病では飲み物の量を医師から制限される場合もあります。
食事から約1.OOOml(1日3食,一汁三菜,1,400kcal/日),
その他の飲み物で約1,OOOmlを1つの目安としましょう。
一汁三菜の一般的な献立で朝昼夕の3食(約1,400kcal)食べた場合,約800〜1,OOOmlの水分がとれます。
ただし,全量摂取した場合です。
なお,食事のときに飲むお茶など献立以外のものは含まれません。
お茶や薬を飲む水などは食事以外の水分として計算します。
Q9で示したように,食事からは約1,OOOmlの水分がとれるので,
その他の飲み物は,コップ(200ml)約5杯,小さな容器(約150ml)なら6〜7杯とれれば普段は問題ありません。
健康なら何杯飲んでも尿として排出して調節できますが,
心臓病や腎臓病では尿を排出する力が弱くなるため,
塩分や水分の制限を指示されている場合もありますので,確認することが大切です。
水分の補給時には必ず食事からとれている水について考慮し,計算に入れましょう。
ワンポイントアドバイス
水を飲んでもらうことは介護の大切な仕事です。
根気よく続けましょう。
また,食事以外にどのくらい水分を飲んだか,常に意識して記録をとることは,
1日の摂取水分量を算出する上で大変重要です。
脱水状態の早期発見のためにも習慣づけましょう。
好きな飲み物なら何でもよいので,こまめに少しずつ飲んでもらうようにします。
手の届くところにいつも飲み物を用意し,どのくらい飲んだかを確認し,
自分で積極的にとらない人には声をかけて促し,介助します。
入浴中や就寝中は想像以上に発汗しているので,入浴前後,朝目覚めた時,就寝前,
夜中に起きた時なども水分補給のチャンスです。
むせのある人ではトロミをつけます。
摂取状況を観察して,最適の濃度に調整しましょう。
前日24時間の食事や飲み物からの水分摂取量の合計が1,OOOml以下(体重50kgの人の場合)
なら脱水予備状態と考え,積極的に水分を補給します。
下痢や嘔吐,多汗では,水分だけでなく電解質の喪失も起こります。
したがって,水と電解質を速やかに補給する必要があります。
水と電解質の補給としては,Q13に示すようなイオン飲料の利用が便利です。
ただし,冷たい物をとることはよくない場合があるので,温めるなどの工夫が必要です。
吐き気が強く,口からの補給ができない場合には補液が必要なので,医師に相談しましょう。
スポーツドリンクや経口補水塩といった電解質,糖分を含んだ飲み物です。
水と電解質,糖分を同時に補給できます。
含まれている電解質や糖分の濃度は製品によって異なるので,症状,
状態に合わせて使い分ける必要があります。
例えば,嚥下困難のある高齢者が,市販のスポーツドリンクなどを500ml以上飲むのは至難の技です。
その場合は,塩分濃度が3倍である経口補水塩を利用すると効率よく補給ができます。
脱水予備状態にある人が高熱,急な嘔吐,下痢を起こしたり,高温環境などに置かれると,
たやすく意識の混濁(脱水性せん妄)や失神を起こすことがあります。
脱水による意識障害で救急車を要請する回数は予想以上に多いのです。
周囲の人たちが意識の障害に気づかず対応が遅れると命取りになりかねないので,
十分な注意が必要です。
ワンポイントアドバイス
高齢者では脱水症状が起こりやすいということで,
食事摂取が十分な高齢者に対してもせっせと水分補給を行っている人を見かけます。
しかし,中には心臓病や腎臓病で尿がうまく出せず,水分の制限が必要な人もいます。
例えぱ,腎臓病の人はカリウムの排泄がうまくいかず,
医師によりカリウム制限食の指示が出されている場合があります。
経口補水塩には,500ml中390mg(バナナ約1本分)のカリウムが含まれているものもあるので,
水分補給時には飲料のカリウム含量をチェックしましょう。
個々の病態をよく把握し,その人に適した水分補給を行うことが重要です。
緊急時は補液が最も有効なので,まず主治医へ報告しましょう。
風邪や肺炎の熱発症状から起こる脱水症は,命とりになりかねません。
発熱のある場合,高熱は水分を失うため,
まず水分補給と冷却を行うことが基本です。
次いで,座薬などにより解熱を図ります。
@意識のあるとき:
のどの渇きを訴えない方もいますが,まず第一に水分を口から与えます。
飲める物を探して,勧めてみましょう。
一般的に,甘い物,冬であればしょうが湯やはちみつ入り飲料のような香りのある物,
トロミの付いたくず湯などがよいようです。
A意識のないとき:
わずかでも口からとれる場合には,イオン飲料を飲ませますが,
思うように飲めない場合には一刻も早く点滴で水分,電解質を補給しなければなりません。
B大量の下痢,嘔吐,多汗:
イオン飲料の経口補給,または主治医に相談して補液を行います。
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