高齢者の病気と食事。
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老化に伴う

  1. 脳卒中えん下障害の食事のすすめ方。
  2. 食事の基本方針
  3. 食品選択にあたっての留意点
  4. 調理にあたっての留意点
  5. 調理形態の留意点
  6. 食品群別調理の工夫







  7. 1)★脳卒中えん下障害の食事のすすめ方。



    ●脳卒中には脳出血,脳梗塞,クモ膜下出血 などの種類があります.これらは多くの場合, 言語障害や手足の麻痺などの後遺症を残しま す.そして目に見えない後遺症の一つにえん 下障害があります.えん下障害があると,食 べるのに時間がかかり,口のなかに入った食 物やよだれが口角から出たり,舌を上下左右 に動かすときの顎関節の硬直ぐあいにより差 はありますが,いつまでも口のなかに食べ物 が残っていたりします.これは食事をとる姿 勢も関係しているようです.これらの状況は 個人差が大きく,食事療法もそれにより大き く変わってくるのです.






    2)★食事の基本方針。



    ●肥満のある場合は食事量を適正にします。

    自分の標準体重を知り,1日に食べてもよ い食事の量を守りましょう.標準体重は〈身 長−100〉の計算でよいでしょう.また三度の 食事はきちんと食べ,長い時間をかけてだら だら食べないようにします.とにかく,過食 に注意して高中性脂肪血症を起こさないよう にすることが大切です.

    ●高血圧のある場合は塩分を制限します。  

    高血圧のある場合は塩分を制限します。 食品の塩分含有量を知り,薄味にする調理 のコツを覚えましょう.

    ●高脂血症のある場合はコレステロールの多 い食品は控えます。  

    動物性脂質を控えて植 物油を多くします.また食物繊維を多めにと るようにします.さらに果物,ケーキ,ジュースなどの菓子類を控えるようにします. 脂質 は総エネルギーの20〜25%を目安にしてくだ さい.

    ●たんばく質の不足に注意します。  

    高齢者は食欲不振,消化不良,嗜好などが原因でた んばく質が不足しがちです.体重1kg当たり 1gを目安に不足のないように注意してくだ さい.また脳卒中後の患者は血液濃度が高く, 血液の流動性が低いといわれています.その ためにも,良質で消化のよいたんばく質をと りたいものです.

    ●糖質の過剰に注意します。  

    嗜好,脱歯などが原因で,比較的食べやすい,糖質の多い 食品に偏りがちになりますから注意してくだ さい.

    ●食物繊維を積極的にとります  

    便秘の予防,糟質,脂質の吸収をゆっくりさせたり, 胆汁酸,コレステロールなどの排泄を促すた めにも食物繊維は積極的にとりたいものです. しかし,とりすぎは栄養素の吸収阻害を招き ますから注意してください.






    3)★食品選択にあたっての留意点 。



    ●脂質性食品

    質に注意して動物性脂質(バター,チーズ,ラードなど)を少なく,植 物性脂質(ごま油 コーン油,米油など)を 多くとるようにします.ただし,植物性脂質 でのなかでも,やし油,ココナッツ油や,何 度も使ったり古くなった油は避けます.

    ●たんばく質性食品  

    不足にならないよう に注意しながら,動物性に偏らず,動物性と 植物性の割合が同量を一つの目安にしましょ う.豆類,大豆製品を積極的にとります.ま た血栓防止によいといわれるEPA(エイコ サペンタエン酸)が,青魚のいわし,さば, さんまなどに多く含まれていますから利用し ましょう.

    ●糖質性食品

    とりすぎに注意しながら, ゆっくり吸収されるいも類,めん類,ごはん, パンを利用するとよいでしょう.

    ●果物

    とりすぎに注意します.

    ●その他刺激の強い食品

    食品そのものに アクの強いもの(ぎんなん,やまといもな ど),酸味の強いもの,辛味・甘味の強いも の,香辛料などは刺激が強いので注意してく ださい.




    4)★調理にあたっての留意点。



    ●安易に経管栄養に頼らないこと。

    えん下障害の状態は,

    @口のなかで食物の移動が困難,

    A飲みこむのが困難,

    B飲みこんだ後,喉につかえる,

    C胸のあたりでつかえる

    , D心窩部でつかえる,

    に大別できます.このう ち,脳卒中の後遺症としては,言語障害が現 れ,舌筋の機能も低下した@の障害が多くみ られます.不注意に食事を与えると,気管に 詰まり危険です.しかし,調理の工夫,食べ 方の工夫で口から食事をとることが可能にな ります.安易に経管栄養に頼らないようにし ましょう.






    5)★調理形態の留意点。



    (1)水や流れの早いものはむせやすく,気管に入りやすいものです. 調理形態としては半 流動で少しのとろみ,ねばり気がほしいとこ ろです.くず粉,寒天,ゼラチン,かたくり 粉を利用するとよいでしょう.

    (2)おもゆの多いかゆより全がゆのほうがよ いでしょう.

    (3)食品,調理法によって,刻み食,ミキサー 食,プリン食,ゼリー食,ペースト状と工夫 をします.

    (4)大きさは一口大より少し小さめがよいで しょう.こんにゃく,さといも,バナナは口 の中ですべってしまいます.したがって,つ ぶすか,小さくちぎって食べるようにします. つぶすか,みじん切りにするとほとんどの食 品が食べられます.

    (5)味が濃いとむせやすくなりますから,薄 味を心がけてください.

    (6)酸味,辛味はむせやすいので利用しない ようにします.もし利用するときは,だし汁 で薄め,その香りを食品に添える程度に調味 します.

    7)わかめ,大豆の皮などは喉にぴったりつ いてしまいますから,単品での利用は避け, 他の食品と混ぜて食べるようにします.

    (8)食べ物の温度は熱すぎず,冷たすぎずを 心がけてください.食べ物が口の中でしばら く遊べるようなものはむせが少ないものです.

    (9)調理形態が半流動になりやすく,全体の ボリュームが多くなりがちですから,質だけ ではなく量にも注意しましょう.








    6)★食品群別調理の工夫。



    ●かゆ

    あまり水っぽくせず,水から米を 煮て,煮立ったら弱火で40分から1時間くら い煮てねばり気を出します.

    ●パン  

    牛乳などに浸して食べるか,パン がゆ,パンプディングのような形で食べます.

    ●いも類  

    軟らかく煮るか茹でるかして, つぶすか裏ごします.汁気が必ず欲しいとこ ろです

    ●魚類  

    刺身は少し細かめにすれば喉を通 りやすくなります.煮魚,ムニエルのクリー ムソースかけ,マヨネーズソースかけ,蒸し 魚のあんかけなどは食べやすい料理です.ぎ んだら,からすがれい,白身魚を利用すると よいでしょう.

    ●肉類  

    挽肉料理として肉団子の煮こみの ようなもの,治部煮のようなものをミキサー にかけてとろっとさせます.

    ●卵  

    半熟、温泉卵,蒸し卵、卵豆腐, 軟らかオムレツなど,むせずに喉をとおりや すいものが多いので利用しましょう.

    ●牛乳  

    水はむせても,牛乳は少し濃度が あるので喉ごしがよいものです.くず粉でと ろみをつけたり,プリンのようにして利用す るとよいでしょう.

    ●豆腐  

    比較的喉ごしがよいものです.

    ●野菜類

    軟らかく煮て裏ごしたり,マッ シュしてミキサーにかけます.生野菜はジュ ースにしてとろみを出します.

    ●果物

    缶詰を利用したり,牛乳と一緒に ミキサーにかけとろっとさせます.




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