- 高血圧の食事療法の基本方針
- 食品選択にあたつての留意点
- 調理にあたつての留意点
- 薄味調理のコツ
● 高血圧はいろいろの原因によって起こりま
すが,もっとも多く,しかもその成因が不明
なものが本態性高血圧です.本症は,肥満や
塩分摂取量の多い人にその頻度が高いことが
知られています.したがって,高血圧症の治
療には降圧剤と,平素からの適正な生活と食
事が大切になってきます.降圧剤はあくまで
も対症療法ですから,まず心身の過労を避け,
過食と塩分の過剰摂取を避けて,いわゆるな
にごとも控えめの中庸を守ることが大切です.
●肥満を防止します。
過食と多飲を避け,バランスのとれた食事をすることです.適正
な糖質,良質なたんばく質,脂質は飽和脂肪
酸より植物油や魚油に多い多価不飽和脂肪酸
の割合を多くすることが大切です.
●塩分を制限します。
日本人は,1日10g以下の塩分にすることが望ましいのですが,
高血圧の度合いにより5〜8gくらいにするこ
とが大切です.少ない塩分でおいしく食べら
れる献立の工夫が必要です.
●ビタミン,ミネラルを十分にとります。
意識して新鮮な野菜,果物,海藻を十分に
とるようにします.これらには,ビタミン,
ミネラル(とくにカリウム),食物繊維が豊富
に含まれています.降圧剤を飲んでいる人で
は,薬の作用でナトリウムと一緒にカリウム
も排泄されますから,とくに十分にとること
が大切になってきます.
●加工食品の塩分に注意します。
最近,料理に手間をかけたくないという傾向が強く
なっており,加工食品,惣菜類はますます普
及していくものと思われます.デパートの食
品売り場では,家庭の味,おふくろの味と銘
打って,惣菜類が非常に多くなってきていま
す.このような加工食品,惣菜類には,化学
調味料がよく使われています.この化学調味
料にはナトリウムが含まれており,食塩と同
じ作用をします.そして,材料のもち味,舌
ざわり,他の調味料とのバランスなどがミッ
クスされていますから塩辛く感じません.こ
のように,加工食品は意外に塩分が多いので,
十分注意してください.
●外食の塩分に注意します。
外食産業の進出には目をみはるものがありますが,外食は,
味付けが濃いのが特徴です.最近は昼も夜も
外食する人が増えてきています.朝食だけで
は塩分やエネルギーの調節はむずかしく,栄
養が偏りますから,外食はせめて1日に1回
程度にしたいものです
●主食となる食品(エネルギー源食品)
加工されている食品,たとえばインスタン
トラーメン,食パンなどは塩分が含まれてい
ますから注意してください.
●主莱となる食品
魚,肉,卵,大豆およびその製品,牛乳は,必須アミノ酸など良質
たんばく質を含んでいますから,1日三食にうまく取り入れていくように心がけます.た
んばく質食品を選ぶにあたっても,やはり加工されたものには塩分が多いので,新鮮な
工されていない食品を選び,家庭で味付けを
するようにしましょう.たんばく質食品は,
脂質も一緒にからだに入りやすいので,質,
部位,種類もよく選んで買うことが大切です・
とくに肉は飽和脂肪酸が多いので注意してく
ださい.
● 副莱となる食品
ビタミン,ミネラルの
豊富に含まれる野菜,きのこ,海藻,果物を
取り入れていくようにします.できれば1食
に2品くらい添えると十分にとれます.1品
は主菜の付け合わせとしてうまく利用しま
しょう.
●果物
食後のデザートとして,また10時3時のおやつとしてとるとよいでしょう.
●●
食品の選び方も大切ですが,どのような調
理方法にするかで1日のエネルギーが増えた
り,塩分が増えたりしますので注意してくだ
さい.
●知っておきたい調味料の塩分
外国と比べますと,とりわけ塩分の多いのが日本の食
事の特徴です.みそ,しょうゆ,食塩の三大
調味料からの塩分量の占める割合も多く,た
とえば薄口しょうゆの場合,16.2%の塩分が
含まれていますから,小さじ1杯(6g)使う
とすれば約1gの塩分をとることになります・
このように,調味料に含まれる塩分がわか
れば,料理の味付けでどのくらいの塩分をと
ることになるのか換算することができます.
そしてこれを何回か繰り返すことで,塩分量
の正確な量をつかむことができます.あとは
より塩分の少ない調味料をじょうずに使う工
夫をすることです.いろいろの調味料を使い,
食事に変化をもたせることが必要です.
●新鮮な材料を使います。
活きのいい魚,旬の野菜,果物など,そのもち味を生かすた
めには薄味でないと,調味料の味になってし
まいます.
香りや風味を利用します。
しその葉,木の芽,ねぎ,みつば,みょうが,しょうが,
ごま,パセリなどは,香りや風味が薄味をカバーしてくれます.
海藻やきのこを利用しまする。
昆布,かつお節、しいたけなどの旨味成分を活用します.
焼き味、焦げ味の香ばしさを利用します。
魚は,塩を振って焼かずに,素焼きにして
焦げめをつけてもおいしく食べられます.し
かし,焦げもひどくなると,がんの予防上問
題があるといわれていますから,ほどほどに
してください.
●酸味を利用します。
揚げ物に絞るレモン,
鍋物のボン酢など,さわやかな酸味をもつ食
品をうまく利用します.
酢を利用します。
酢を使うことにより塩
分を少なくできるだけでなく,魚の生臭さを
とったり,野菜を酢で洗い水っぼさをなくす
など下ごしらえにも重宝します.食卓に常備
しておいて,野菜炒めに振りかけても油のし
つこさをやわらげます.
●油を使って旨味を出します。
一般的に油料理は,塩分が少なくてもおいしく食べられ
る調理法です.食品のもち味を逃さず,高温で手早く処理するので栄養的にも有効です
●香辛料を利用します。
香辛料のぴりっと
した辛さは,それだけで食欲をそそりますか
ら,じょうずに調味に取り入れていくとよい
でしょう.
●調味料は控えめにします。
しょうゆのか
わりにソース,ケチャップ,マヨネーズ,ド
レッシングなどを適度に使います.また下処
理にはなるべく塩を使わず,食べるとき,つ
けじょうゆ,かけじょうゆとして利用します.
●減塩調味料を利用します。
塩分制限の厳しい人には,減塩の調味料を利用するのもよ
いでしょう。
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