- 虚血性疾患の食事療法の基本方針
- 食品選択にあたつての留意点
- 調理にあたつての留意点
●危険因子の除去には食事療法が必要です
虚血性心疾患とは,狭心症と心筋梗塞のこ
とで,その成因は冠状動脈硬化です.虚血性
心疾患の予防や増悪防止には,いわゆる危険
因子の除去が必要となります.危険因子には
高血圧,高脂血症,肥満,糖尿病,痛風,喫
煙,運動不足,ストレス,性格などが考えら
れます.このうち,高血圧から痛風まではす
べて食事療法が必要です.
治療としては,発作時には絶食とし,臨床
症状が落ち着けば,1〜2日目より流動食,
軟食,常食へともっていきます.この場合,
心臓に負担をかけないよう,食事療法の基本
は低エネルギー食,低ナトリウム食とします.
●低エネルギー食
まず肥満のある人では,
減食によって体重減少を図らなければなりま
せん.肥満は心臓に余分な負担をかけ,心臓
部への脂肪沈着をきたします.また過食は,
腹部膨満のため横隔膜を押し上げ,呼吸困難
を起こしやすいものです.
肥満が除去されたあと,あるいはやせの強
い人では,食欲不振のためむしろ低栄養とな
りやすくなります.したがって,たんばく質
は十分に,しかも良質のものをとらなければ
なりません.
●低ナトリウム食
食塩は6〜8g くらい
としますが,むくみのある人はさらに食塩制
限をします.しかし,厳しい食塩制限は一般
的に味がまずくなり,なかなか食欲が起こり
ませんから,食品選択や調理をするうえでい
ろいろな工夫が必要です.食塩をまったく使
用しない調理でも,日本食の場合,1日に1〜2
gの食塩が含まれてしまいますから,実際は
食品に添加してある塩分の合計プラス1〜2g
がからだに入る塩分量になるということを覚
えておきましょう.
●主食となる食品
ここで注意しなければならないのは,加工食品の塩分です.パンは
8枚切り100gには1.3g,即席ラーメン100g
中には4〜6g,即席うどんにも3〜6g,即席ス
パゲティ3〜4gの塩分が含まれています.心臓病などの病気をもった場合にはとても食べ
られない食品が多くあります.また惣菜コー
ナーで売られているパック詰のすしやおにぎ
り,焼きそばなどにも相当量の塩分が含まれ
ているため注意しなければなりません.した
がって,米が一番よいと思われますが,米ば
かりでは毎日が単調になり,食事の楽しさを
味わうことができませんので,かぎられた塩
分のなかで,うどん,パンなどを少しずつ取
り入れてもよいと思われます.
●主莱となる食品
良質のたんばく質源で
ある魚,肉,卵,大豆とその製品,牛乳を,
部位や種類を選びながら取り入れていくこと
が望ましいでしょう.最近,脂肪酸のエイコ
サペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸が血液
凝集能を抑制する働きをもつといわれていま
す.これは,さんま,さば,いわし,あじな
どに多く含まれていますから取り入れましょ
う.
肉は飽和脂肪酸が多いので,油の少ない部
位や鶏肉などをとるとよいでしょう.
大豆は,不飽和脂肪酸を含むため積極的に
取り入れていきたい食品です.豆腐,納豆,
凍り豆腐,湯葉など,1日に1回は料理に取
り入れましょう.
卵はコレステロールが多い食品の代表的な
ものです.コレステロール値が非常に高い場
合は卵白のみとし,卵黄はとらないようにし
ます.しかし,コレステロールはからだのな
かでもできるので,食品に含まれるコレステ
ロールばかりに注意を向けず,からだ全体か
らみるようにすることが大切です.コレステ
ロールを含む食品は,他の大切な栄養素も含
んでいることに注意すべきです.
●副菜となる食品
ビタミン,ミラネルを豊富に含んでいる野菜,きのこ,海藻,果物
を取り入れていきます.しかし,あまり消化
の悪い食品は,初期の段階ではとらないよう
にし,病状が落ち着いた状態になったらとる
ようにしたほうがよいでしょう.
●間食
エネルギーが多くなりやすい菓子,
ジュース類などは避け,果物と牛乳にかえた
ほうがバランス的によいでしょう.
● 入院して1〜2日は絶食し輸液で対処しま
す.その後,数日で流動食,軟食,常食へと
食事段階を上げていきます.
●流動食
主食が流動食のときは,副食も
それに合わせ,ヨーグルトや,かぽちゃの裏
ごし,ミルクセーキなど,流動性で栄養のあ
るものを選んで調理します.
●軟食
主食が三分がゆ,五分がゆ,七分がゆ,全がゆとだんだん上がっていきますが,
それぞれに合った副食を選び,調理形態もミ
キサー状,とろみ状,刻み状,正常な形態へ
ともっていきます.
●常食
おもに,少ない塩分量でおいしく
食べる工夫が大切になってきます.これは一
般的に高血圧症食や動脈硬化症食などの食事
の留意点と同じです.違うところは,脂質量
を総エネルギーの20%前後に保つことです.
したがって,あまり油っこい料理は控えたほ
うがよいでしょう.調理に使う油も質を考え
て,不飽和脂肪酸の多い大豆油,とうもろこ
し油,綿実油などにします.バター,ヘッド,
ラードなどは飽和脂肪酸が多く,動脈硬化を
促進しますから注意してください.
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