- 食事基準と食品構成表
- 献立作成上の留意点
- 調理上の注意点
- 食欲を出す工夫
● 食事療法を行うにあたっては,まず,その
病気にとってどのくらいのエネルギーやたん
ばく質,脂質,ビタミン,ミネラルなどの栄
養素をとったらよいか,それぞれ基準となる
値が医師によって示されます。これが「食事
の処方箋」といわれるものです.この処方箋
に示された食事基準に基づいて,病院では栄
養士が「食品構成表」を作成します.これは,
一日に必要な栄養素を満たすために,どのよ
うな食品をどのくらい食べればよいかを組み
立てたものです.そして,この食品構成に基
づいて,さらに一日の具体的な献立が立てら
れます。
@栄養のバランスをとります。・・とくに食事回数を減らさないこと.
老後の健康を守って長寿を達成するために
は,なによりもまず栄養的にバランスのとれ
た食事をとることが大切です.そのためにも
規則正しい食生活は必要です.
決まった仕事のないお年寄りにとっては,
1日3回の食事は,生活のリズムをつくる基
本です.決められた時間の食事がとれないと
お年寄りはいらいらしやすいものです.また,
お年寄りだけの世帯やひとり暮らしの場合は,
ともすれば朝食を抜いたり,1日2食という
場合が多いようです.1回にたくさん食べら
れないお年寄りにとって,食事回数を減らす
ことは,いろいろな食品の必要量・・すなわ
ちバランスのとれた栄養量を満たすことがで
きにくくなりますので,とくに注意します・
A献立に変化をこらし,嗜好を大事にします・
高齢期では,一般に若い人に比べて少食で
あり,また少しの体調の変化でも食欲が衰え
がちになります.食品の組み合わせや調理法
に変化をこらした献立を工夫しましょう。
とくに食欲のないときは,お年寄りの好み
を聞いて,さしつかえのない限り素材や味付
けや調理法にその嗜好をとり入れ,喫食率を
高めるようにします.
Bと<に牛乳・乳製品を不足しないように気をつけます.
牛乳・乳製品は骨粗髭症の予防のために効
果のある食品です.一般に高齢者は,これら
の食品をとる習慣が少ないために,カルシウ
ム不足になりがちです.牛乳を紅茶やコー
ヒー,ココアに入れたり,デザートとしてミ
ルクゼリーやプリン,ババロアにしたり,ま
た料理(グラタン,コロッケ,シチューなど)
に組み入れるようにします.
C家族と同じ献立にし,調理法を変えます.
お年寄りの分だけ献立を変えるのは疎外感
のもとになりがちです。献立は共通にし,調
理の段階で軟らかくするとか,細かくすると
か,薄味にするとかして,なるべく家族と同
じメニューにします.
@咀しゃく力に応じた切り方や調理法を。
高齢期では,咀しゃく力が若いときより落
いていますから,軟らかさ,切り方などに工
夫をします.歯が悪くなると噛めないだけで
なく,唾液の分泌も少なくなりますので,消
化のよい,軟らかく,食べやすく切ったもの
を心がけます.唾液の分泌が減ると反射機能
を鈍くなり,飲み込んだはずのものがのどに
つかえてむせたりすることがあります.水分
の多いもの,とろみをつけてのどごしをよく
したものなどを心がけます.
噛む力が弱くなると糖質のものに偏りがち
になりますので,食事づくりにはとくに注意
します.
A食事の演出にも配慮を.
お年寄りは若い人と違って,たくさん盛ら
れているとかえって食欲を失いがちになりま
す.料理に合った器に彩りよく少しずつ盛り
付けるようにします.重い器も,力が弱くなっ
たお年寄りには持ちにくいものです.薄手の
ものに盛り付ける気配りをしましょう.
B減塩の工夫を.
味付けの濃さには習慣性が強く,また年を
とると味姓のなかでもとくに塩味が衰えてき
ますので,濃い味付けを好む傾向があります.
薄味でもおいしく食べられる工夫をして減塩
に心がけるようにします.
C料理は適温で出します.
@盛付けを工夫しましよう.
(1)皿数を多くして量は少なく,といった懐
石料理風の盛り付けが喜ばれます.
(2)取り合わせる食品の色どりや器との調和
を考えます.
(3)器はいつも決まったものではなく,手近
にあるもの(ガラスの食品や貝殻,民芸食器
など)を利用すると思いがけない新鮮な盛り
付けができます.
(4)ご飯なども幕の内型や物相型などの型に
抜いて,大皿におかずと盛り合わせるのも楽
しいものです.
Aテクスチャーを生かします
消化のよいほうがいいからといって,どれ
もこれもベチャベチャと軟らかいものばかり
では食欲が落ちます.歯がしっかりしていれ
ば,シャキシャキとした舌触り,滑らかなつ
るっと口に入るような組み合わせは,自然に
箸が進みます.
B料理の味の組み合れせを配慮します.
おいしい献立とは“一つ一つ料理の味の調
和がとれている”ことです.たとえば,主莱
が焼き物であれば,副莱は煮物や酢の物や浸
し物,といったように,一食の中で同じ調理
法が重ならないようにして味の変化をもたせ
るようにします
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