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脳内麻薬とα波で、「高所=恐怖」を消し去る治療法
ヒトも動物も条件付けの際には、脳内快感物質が出ることを求めて行動します。
それは、
逆にいうと、不快感が伴う行動は避けるようになるということです。
ヒトは快と感じると
リラックスします。
不快感は、それが強いほどストレスと感じ、リラックスしません。
リ
ラックスすればするほど、脳渡のα渡が増え、そのときには脳内快感物質も増えます。
そ
のことについては、実際に私たちが測定をしました。
瞑想とメディカル・マッサージによ
ってα波を増やし、そのときにβ−エンドルフィン値を計測したのです。
α波とβ−エン
ドルフィン量は、人によって異なっていますが、だいたいの傾向として、α波とβ−エン
ドルフィン量が比例関係にあると読むことができます。
α波が増えるとβーエンドルフィ
ン量も増えているわけです。
次に、高所恐怖症の治療法を例にとって、そのメカニズムを
ご説明しましょう。
高所に登ったときに激しい不安などがあると、それが原因となって高
所恐怖症になります。
高所に登ったとき、たまたま体の調子が悪くて、ものすごい動悸が
したということであっても、本人には、〈高所=恐怖〉というように記憶されてしまうわ
けです。
そうすると、今度は高所に登るというようなことを想像しただけでも、胸がドキ
ドキしてきて汗をかくというような、心身症状をあらわすようになります。
そのように、
好ましくない条件反射が、定着してしまうわけです。
その条件反射をなおすためには、ど
のようなことをすればよいのか?
〈高所=恐怖〉という好ましくない条件反射を解いてあ
げればよいわけです。そのためには、まず最初に自律訓繰法を会得してもらいます。
自律
訓練法とは、注意の集中や自己暗示の練習によって、心とからだの状態を自分自身で上手
に調整できるようにする方法のことです。
この自律訓繰法を会得すれば、自分自身で十分
にα波を出せるようになります。
私の理論では、脳内麻薬を十分出せるように訓練すると
いうことです。
その訓練が完成しますと、まず最初に自律訓練法を行ってリラックスをし
、脳波をα波に変え、脳内麻薬を多量に分泌させておきます。
そうしたうえで、その人に
「自分はいま、デパートの屋上にいるんだ」というような架空のイメージを描いてもらい
ます。
すると、その人は不安を感じ、動悸が高まります。
いわゆる高所恐怖症の症状が表
れてくるわけです。
そうすると、そこでまた自律訓練法を行ってもらいます。
十分にリラ
ックスをしてもらって、脳内麻薬を分泌してもらいます。
それができれば、またしてもそ
の後に、高所から下を見ているというイメージを思い描いてもらいます。
と、またしても
、不安を感じ動悸がするようでしたら、そこでイメージを打ち切り、自律訓練法に入りま
す。
そのようにして、〈リラックス=α波=脳内麻薬の分泌〉で〈高所=恐怖〉をサンド
イッチにしていくわけです。
そうすると、しだいに〈高所=恐怖〉が解けていって、高所
恐怖症がなおってしまうのです。
これは先ほど例にあげた白いネズミに恐怖感を持ってい
たピーター少年が、飴玉という快感物質をくり返し与えることで、白いネズミを好む少年
に変わっていくのと同じ原理です。
飴玉を利用するか、リラックス法としても自律訓練法
という手段を利用するかの違いはありますが、脳内快感物質である脳内麻薬の条件付けを
利用している点では、共通していると思われます。
高所恐怖症の脱感作治療は、実際には
、その後に本当に高い所に登ってみて、もしもまだ不安を覚えるようであったら、そこで
自律訓練法を実行してもらい、高所に対する不安や恐怖感を完全に脱感作してもらいます
。
そうして、はじめて完成となります。
この治療法では、イメージで不安感が消えた段階
で、もう成功は約束されたようなものです。
その後のことは、念押しのような作業である
といってよいでしょう。
このような治療法が、いま現実に心療内科という分野で、病気の
治療法として活用されているのです。