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快楽系から幸福系へ







私たちは、一つの欲望系で動いているわけですが、だからといって、いわゆる欲得だけで 動いているわけではありません。

アメリカにおいて、人間を部分に還元せずに全体として みていこうという人間性心埋学を学んだ心理学者マズロー博士(一九○八〜七○)は、人 間の欲求を、次の五つに分類しています。




@、生理的欲求

A、安全の欲求

B、所属と愛の欲求

C、承認の欲求

D、自己実現の欲求




最初の「生理的欲求」というのは、性欲、食欲、睡眠欲など、本能だとか欲望などといわ れているものです。

この欲望が満たされると、次に「安全の欲求」が現れてきて、これも 満たされると「所属と愛の欲求」が現れる。

そうして、最後に「自己実現の欲求」に至る と、マズロー博士は唱えているわけです。

このマズロー博士の「欲求段階説」は、広く知 られている理論であり、私もことあるごとに引用しているので、みなさんもよくご存じで しょう。

そこで、本書ではこの理論について、もうひとつ重要なことを付け加えたいと思 います。私は、これまでいちばん最後の「自己実現の欲求」を、いちばん高次で、いちば ん脳内モルヒネがたくさん出る欲求であると説いてきました。

そのことだけでも、ずいぶ ん各界に波紋を投げかけたわけですが、じつは次のようなことも言いたかったのです。

そ れは、「自己実現の欲求」とは、遺伝子のプログラミングに沿った生き方をしてみたいと いう欲求であるということです。

私たちのからだが、遺伝子というもののプログラムによ ってつくられていることはよく知られていますが、生きかたそのものも、遺伝子レベルで プログラムされている。

そのように、私には思えてなりません。

そのこととも関連するの ですが、食欲中枢について見てきたように、私たちの行動の多くは、脳のなかの物質でコ ントロールされています。

自分の意志で行っていると考えられていた多くのことが、じつ は脳のなかの物質のコントロールによるものであったのです。

そのことが、最近の分子生 理学などの学問のめざましい進歩によって、分かってきました。

そこで、次のように考え ることができるのではないでしょうか。

私たちの行動の多くをコントロールしている脳内 モルヒネ系は、何によってつくられているかというと、それは遺伝子系です。私たちの遺 伝子が、見事に私たちの脳をつくり、中枢神経系のプログラムのなかで生きているわけで す。

だから、その遺伝子系が納得をしない限り、ダイエットは成功しない。

たとえ一時的 に減量に成功しても、必ずリバウンドがきて、ほんとうの意味でのダイエットの成功には ならない、と。

マズロー博士のいう「自己実現の欲求」にまで、欲求の段階が到達してい なければ、私たちは「生理的欲求」や「安全の欲求」「所属と愛の欲求」などを我慢する ことができない。

三か月とか一年というように、期間を限定すれば、我慢できる人もいる でしょうが、一生となるとこれはもう絶対に我慢できないといってよいでしょう。

そうす ると、我慢できなくなった時点で、旧来の生清習慣・食習慣へと逆戻りをし、体型もリバ ウンドしてしまうことになるのです。

英米では、女優とか社会的にレベルの高い人には肥 満者が少ないという現実を指して、セルフエスティーム(selfesteem。自尊心 )といっています。

そのことについて、私も最初は意味がよく分からなかったのですが、 そのうちにこれは「自己実現の欲求」と非常に関係があるのだということが分かってきま した。

マズロー博士のいう「自己実現の欲求」とは、私の解釈によれば「遺伝子プログラ ムと合致する欲望」であり、「脳内モルヒネ系の高次な欲望」のことです。つまり、セル フエスティームによって痩身を維持している人というのは、脳内モルヒネ系を上手に使っ て自然にダイエットをしているわけであって、我慢して痩せたり、我慢して食欲を抑えて いるのではないということです。

ダイエットというのは、ただたんに体型を整えるという だけではなくて、何を真理とし、何を善として行いを律するか、そしてそれをかたちにし た美、いわゆる真善美というようなものが、とても大切になってくるのです。見た目がど うだというのではなく、もっと根源的な価値が、そこには秘められているのです。








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