介護予防
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誤嚥性肺炎は予防できますか?
私はある程度予防できると考えていますが,
どういうことを,
どのようにすれば,
どこまで誤嚥性肺炎を予防できる,
というデータはまだ集積されていません。
外国の論文では嚥下障害に対してリハビリテーション訓練を行い障害を改善して,
その後の誤嚥性肺炎が減少したという報告があります。
今後,大きな研究プロジェクトを組んでとりかかるべき時期にきていると思います。
一般の高齢者にできることで,誤嚥性肺炎の予防に有効と思われることとして,
次の3点をお薦めします。
@食前食後の口腔・咽頭ケア
A食事の環境を整え,嚥下に意識を集中する
B食後の体位:腹部を圧迫しないように2時間以上上体を起こしている
むせたり肺炎の既往のある方は軽症の嚥下障害があると考えて,
さらに次の二つを行ってもらいます。
C食べる前の準備体操(嚥下体操=(Q63)
D呼吸訓練(口すぼめ呼吸=(Q67)
症例
78歳,男性:肺炎,多発性脳梗塞.脳血管性痴呆。
既往歴として,胃潰瘍,繰り返す肺炎
吐血で救急部に運ばれ,検査の結果,貧血,脱水,肺炎,胃潰瘍の診断で入院となりました。
貧血と脱水,胃潰瘍は改善しましたが,肺炎を繰り返すこと,
食事や水でむせがときどきみられるとのことで診察の依頼がありました。
初診時は絶飲食となっていて,点滴で栄養補給がされていました。
多発性脳梗塞があり,痴果で注意が守れませんが,歯がなく硬いものは噛めないにしても
口腔機能は良好で,ゴクンという嚥下反射もしっかりみられました。
基礎訓練と少量の飲水訓練を数日行ってから嚥下造影を施行しました。
その結果,はじめの数日は誤嚥も咽頭残留もありませんが,
後半になると嚥下筋の疲労で咽頭残留が増加し,
誤嚥がみられました。
食道は,逆流性食道炎を繰り返したために変形したと考えられる蛇行があり,
蠕動もやや不良で食塊が残留し逆流もみられました。
胃・・食道逆流による肺炎の危険性も高いと考えられました。
嚥下の体位は30度仰臥位・頸部前屈が最良で,
横向き嚥下,交互嚥下が有効でした(Q65,66)。
嚥下造影所見にもとづいて,次のことを徹底して行いました。
@摂食時の体位は30度仰臥位・頸部前屈。食後も2時間以上越こしておくこと。
夜間も15度ベッドアップして胃からの逆流を防止すること。
A言語療法上による摂食嚥下訓練,
家族(娘さん)ヘの指導:一口ごとに横向き嚥下,交互嚥下を行い咽頭残留を減らすこと。
休み休み食べること。
B段階的摂食訓練(Q61)。
C理学療法上による体幹訓練と排痰訓練。
約1か月でミキサー食の摂食が可能となり,退院しました。
その後はつかまり歩行,屋内での日常生活は軽介助,
食事は娘さんが管理することで肺炎を起こすことなく経過しています。
このように痴呆で注意が守れない患者さんでも,ご家族の献身的な介護があり,
病態を知って注意を守れば,繰り返す誤嚥性肺炎を予防できる例があります。
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