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糖尿病

(番茶を冷水で抽出して飲むと高い血糖値を

下げるのに効果的)







★番茶を冷水で抽出して飲むと高い血糖値を下げるのに効果的





清水峯夫(しみずみねお)

富山医科薬科大学薬学部助教授

1936(招和11)年、富山県生まれ。

薬学博士。

富山大学薬学部卒業後、母学に奉職。

文部省在外研究員と してアメリカ、ドイツ等に留学したほか、東南アジアをはじめ、世界各国を訪問し、伝承

薬物の調査研究や技術指導を行っている。





★「糖尿病によい」と戦前から報告あり


 緑茶、正確には番茶に血糖値を下げる働きがあることがわかったのは、ひょんなことか らでした。

 私は生薬学、とりわけ活性天然物化学が専門です。

簡単にいうと、古くから 利用されている天然薬物、和漢薬、民間薬に含まれているどのような成分が薬効を発揮す るのかを科学的に解明する、そして薬効の本体をつかんだら、その化学構造を調ベ、副作 用の少ない医薬品としての可能性を追求していくという学門です。

 一○年ほど前のこと です。

当時、私は糖尿病をテーマにおき、合成薬剤ではない、なにか天然で糖尿病に効く 成分(たとえば、血液中の糖の値、血糖値を下げるような物質)がないかどうかを研究し ていました。

 動物を使ってさまざまな和漢薬や植物について活性試験を行っているとき に、たまたま静岡県にある農水省の茶業試験場(現在「野菜・茶業試験場)から「健康や 病気治療に対する緑茶の効能について研究をしてほしい」という依頼が、当研究室に来た のです。

とりあえず文献をあれこれ調べているうち、戦前、京大の先生ウサギを使って行 った実験で、お茶が糖尿病によいという結果が出たと報告している文献が見つかりました 。 

「糖尿病」という私のテーマとも合致していたこともあって、本格的に研究すること にしたのです。





★血糖値を下げる成分を緑茶から発見


 私の場合、実験はラット(実験用シロネズミ)を使いました。

一応、最初は京大の先生 のレポートを参考にしたのですが、昔のことなのでどんなお茶をどんな条件で投与したの かわからない。

そこでいくつかのパ夕−ンに分け、一つずつ細かく実験を積み重ねていく ことにしました。




○ まず、お茶の種類です。


 お茶には、玉露から煎茶、番茶といくつもの種類がありますが、そのすべてを水で抽出 してエキスを作り、一つ一つラットに与えて観察したところ、いずれのお茶にも血糖値を 下げる傾向がありました。

なかでも、いちばん安価である番茶が、血糖値を下げる作用が 最も強いことが明らかになってきました。




○次に抽出条件です。


 どれくらいの温度で抽出したお茶のエキスが、最も有効か?これも熱湯から冷水まで何 段階かのレベルの温度に分け、それぞれのお茶の工キスについて調査しました。

 こうし た実験と分析をくり返した末に、一つの顕著な傾向が明らかになったのです。

 それは番 茶のエキス、それもより低温で抽出したエキスが、最も血糖値を下げる働きが強い」とい うことでした。

 分析の結果、冷水で抽出した番茶に焦点を絞ることになり、いよいよ私 の本来の研究である有効成分の特定作業に入ったわけです。

ただ、このへんになるとかな り専門的な細かい説明が必要になりますし、一般向けの本書の趣旨には直接関係ないので 省略します。

 要するに、さまざまな有機溶剤を使って番茶エキスを分離し、緑茶に含ま れるさまざまな成分を取り出し、それぞれの成分で血糖降下作用の活性を調べていったの です。最終的に血糖値を下げるお茶の有効成分として浮かんできたのが、ポリサッカロイ ド、つまり多糖体だったのです。

多糖体というのは、簡単にいえば糖の分子が六つ以上く っついている成分のことで、総じて熱に弱い特徴があります。

分析の段階で、同じ番茶で も熱湯よりも冷水で抽出したほうが有効性が高い、という理由がこれで明らかになりまし た。

 


★冷水で出した番茶を飲むのが効果的


 本来ならば、有効成分の本体を見つけたあとは臨床データを取り、最終的には、その有 効成分を化学的に合成する道を探るわけです。

残念ながら、それにはたいへんな制約があ るので、研究そのものはこの段階で中断しています。

 ただ、「お茶に血糖値を下げる働 きがある」こと、「その成分はポリサッカロイド、つまり多糖体である」ことははっきり しましたから、日常生活でお茶を積極的に活用する価値は大いにあると思います。

 ちな みに、より効果的ということで私がすすめるお茶の飲み方を紹介しておきましょう。 

前 述したように、お茶は番茶がべストです。番茶といっても、よく見かける茶色っぽい、ほ うじ茶のようなものではありません。

 本当の番茶は煎茶と同じ緑色で、秋口に採取する 「四番茶」のことを指します。

私たちがラットの実験で使用したのもこの番茶でした。

買 う際にも「四番茶」といったほうが確実でしょう。

 この番茶をできるだけ冷水で煎じて 飲むようにします。

番茶の水出しの方法は、水出し麦茶を作るのとほとんど同じです。

た だし、麦茶よりも時間がかかります。

 ボトルに番茶の葉を入れて水を注ぎ、冷蔵庫の中 に一日くらいおいておけばいいでしょう。

 急ぐ場合は、ミキサーに番茶と氷水を入れて 一○〜二○分かき混ぜ、布などで絞り出します。

私たちの実験ではこの方法を使いました 。

 飲む量についてですが、いくら番茶に副作用がないといっても、程度の問題がありま す。

やはり、日常生活で習慣的に飲んでいる量が目安でしょう。

 つまり、食事やひと息 入れるときに飲むお茶を、水出し番茶にすればいいのです。

 最近は缶入りの番茶という のが売られています。

ただし、成分が非常に薄く、血糖値を下げる働きではあまり効果は ないと思われます。









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