身体に効く栄養成分・食材・調理方法 Welcome
Welcome



じょうずな献立の立て方








食事基準と食品構成表





食事療法を行うにあたっては,まず,その病気にとってどのくらいのエネルギーやたんぱ く質,脂質,ビタミン,ミネラルなどの栄養素をとったらよいか,それぞれ基準となる値 が医師によって示されます.これが「食事の処方箋」といわれるものです.

この処方箋に 示された食事基準に基づいて,病院では栄養士が「食品構成表」を作成します.これは, 一日に必要な栄養素を満たすために,どのような食品をどのくらい食べればよいかを組み 立てたものです.そして,この食品構成に基づいて,さらに一日の具体的な献立が立てら れます.

本書では,この食事基準から食品構成,献立への流れを,『食品の組み合わせと 献立の立て方』と題して,各疾患の献立例がはじまる前に掲載してあります.ここでは献 立作成をするさいに,一般的にどのような工夫をすればじょうずな献立が立てられるかに ついて述べてみます.



献立作成上の留意点






@栄義のバランスをとります

栄養のバランスをはかるとともに,その疾患に必要な一日の栄養基準量が必ず満たされた 献立でなければなりません.


A消化されやすい食事にします

病気のときは一般に消化能力が抵下していますから,調理はできるだけ消化吸収しやすい 形を選びます。.




B献立に変化をつけます

病気のときは,どうしても食欲が衰えがちになります.さらに,病院の場合には,現在の 医療保険点数内で,患者に十分満足させる食事内容にすることは困難でもあります.食品 の組み合わせや調理法に変化をつけ,できるだけ飽きのこない食事を工夫しましょう.




C嗜好を大事にします

とくに食欲のないときには,患者の好みを聞いて,治療にさしつかえない限り,素材や味 付けや調理法にその嗜好をとり入れ,喫食率を高めるようにします.




D季節の食品をとり入れます

句の食品は新鮮で味もよく,栄養的にも充実しています.その時期は価格も安いので,献 立の中に積極的に組み入れるようにします.





調理上の注意点






@新鮮な材料を選びます

鮮度の高い食品は,自然のままの味でもおいしいものです.食事療法では,とくに塩分や 砂糖が制限されるケースが多くありますから,新鮮な食品を使って,その食品の持ち味を 生かした料理をつくるようにしましょう.




A適切な固さとし,分量を守ります

繊維の多い固い部分は取り除き,消化吸収がされやすい調理法にします.また,それぞれ の疾患に応じた量を守るようにします.




B薄味に調理します

一般に病人は熱発やその他の症状で,しばしば口腔の中が荒れている場合がありますから ,味付けを薄めにします.




C料理は適温で出します

あたたかい料理は温かく,冷たい料理は冷たくして出すように心がけます.




D衛生に注意します

鮮度の落ちた食品を避けるとともに,調理器具や調理人の手指,服装などの衛生には,と くに気をつけます.





食欲を出す工夫.



病気の人は,出された食事を見て,まず,嫌いなものか,量が多いか少ないか,色どりが 美しいかなど,一目で判断して,食欲に結びつけるものです.

たとえ味付けがその人に適 していても,見た目で食欲をなくさせてしまっては食事づくりの苦労も台なしです.

そこで,食欲を促す主な条件をここにまとめておきます.




@嗜好にかなっていること

患者の嫌いな食品は,どんな盛り付けや味付けに工夫をこらしても食欲はわかないもので す.

その人の食べられる食品を聞いて,治療に影響がない限り,極力とり人れてあげる配 慮が必要です.




A盛付け,量や色彩,食器などの調和がとれていること

配膳された食事を見て”箸をつけてみよう” ”食べてみよう”と思わせるような料理を 作ることが大切です.

料理はまず視覚からそのおいしさを感じさせることができます.そ れには盛り付けがたいへん重要な意味をもってきます.材料の切り方や味付けがよくても ,盛り付ける段階で手を抜いてはせっかくの料理も台なしになります.盛り付ける人の心 が,その盛り付けに反映します.

器に小高くこじんまりときれいに盛ってあれば,箸が自 然に出ますが,ただ盛り付ければよいという考えで盛ってあったのでは心がなく,見た目 も汚ないはずです.いつも心をこめた盛り付けを心がけるようにしましょう.






盛り付けの工夫



盛り付けるときに,ちょっとした工夫で思わぬ効果の得られる方法として,次のようなこ とがあります.

(l)皿数を多くして量は少なく,といった懐石料理風の盛り付けが喜ばれます.

(2)取り合わせる食品の色どりや器との調和を考えます. (3)器はいつも決まったものではなく,手近にあるもの(ガラスの食器や貝殻,民芸食 器など)を利用すると思いがけない新鮮な盛り付けができます.

(4)ご飯なども幕の内型や物相型などの型に抜いて,大皿におかずと盛り合わせるのも 楽しいものです.




B味付け,テクスチャー,温度などが,その料理に適していること

消化がよいほうがいいからといって,どれもこれもベチャベチャと柔らかいものばかりで は食欲が落ちます.

シャキシャキとした舌触り,滑らかなつるっと口に入るような組み合 わせは,自然に署が進みます.また,味付けも,どれもこれも薄味ではもの足りなさがあ ります.一品の味を重点的に濃くして組み合わせることも必要です.



C料理の味の組み合わせを配慮すること

おいしい献立とは”一つ一つの料理の味の調和がとれている”ことです.たとえば,主菜 が焼きものであれば,副菜は煮ものや酢のものや浸しもの,といったように,一食の中で 同じ調理法が重ならないようにして味の変化をもたせるようにします.








栄養制限がある場合




食品選択にあたっての留意点






たんぱく質制限がある場合




食品のたんぱく質含量に注意します




魚介類,肉類は食品によってたんぱく質の含有量に大きく差があります.

たとえば糖尿病 の食品交換表では,「表3」の食品1単位当たりのたんぱく質の平均は9gとなっていま すが,実際には4〜20gと大きな差があります.

したがって,できるだけたんぱく質の 少ない食品を選ぶことが重要です




肉類

鶏の胸肉,もも肉,手羽肉,豚ロース肉などを主に選びましょう.




魚介類

脂肪が少なく,たんばく質の多いひらめ,たら,かれいなどの白身魚は使用量は控えて, はまち,さんま,さば,ぶりなどの脂肪の多い食品を利用するとよいでしょう




乳・乳製品

カルシウムの補給のためには必要な食品ですが、たんぱく質を多く含む食品でもあるため 必要量にとどめます.またこれらの食品はリン含有量も高い食品です.したがって,過剰 摂取にならないように注意しましょう.




大豆・大豆製品

これらは,植物性たんぱく質の中でも良質なたんばく質を多く含む食品の代表ですが,動 物性食品に比べると,たんぱく価は低いものです.そこで,たんぱく質の制限が厳しいと きに,良質のたんぱく質を効率よくとるためには,値物牲たんぱく質に偏らないようにし ます.


野菜類

腎症が軽症な時期はとくに控える必要はありませんが,たんぱく質の制限が厳しくなるに 伴い野菜類の量も制限します.
その際注意することは,ほうれんそう,カリフラワー,ブ ロッコリー,もやし,芽キャベツなどはたんぱく質を多く含む食品なので,これらの食品 の合計を1日100g以内とします.






塩分制限がある場合

加工食品はできるだけ避け,新鮮な材料を用います.塩分の多い塩さけ,干物,イクラ, すじこ,たらこ,塩辛,佃煮類,練り製品なども避けます.また,これらの食品は塩分だ けでなく,添加物としてリンを含む食晶も多いので,できるだけ控えるようにします.厳 しい減塩には,調味料として減塩食品を利用するとよいでしょう.




カリウム制限がある場合

いも類,果物,野菜類にはカリウムが多く含まれています.カリウム制限の必要な場合に は,とくに蒸しいも,バナナ,ほうれんそうなど,カリウム含量の多い食品は控えましょ う.


エネルギー補給の必要な場合






特殊栄養会品を利用します


たんぱく質の制限に伴いエネルギー量が不足しやすくな ります.その際は特殊栄養食品として低たんぱく食品,低甘味ブドウ糖重合体製品,中鎖 脂肪酸製品などを利用するとよいでしょう.







調理にあたっての留意点






たんぱく質制限がある場合




かさを多く見せる工夫をします


たんぱく質源の食品は,いずれも多くは主菜の材料になる食品です.
このため,できるだ けこれらの製品を使わないようにし,いも類や野菜類の利用を工夫します.
また,たんぱ く質源の食品を使った副菜も控えめにします.しかし,主菜にたんぱく質源の食品を使わ ない場合はそのかぎりではありません.いずれにせよ,少量のたんぱく質源の食品を,た とえばフライ,てんぷらなどにしてかさを多く見せるようにします.



塩分制限がある場合




塩,しょうゆ,みそなど極力控えます.減塩の調味料を利用するのも一つの方法ですが, 次のような工夫も心がけましょう.


(1)材料の持ち味を生かします.


(2)酸味(だいだい,ゆず,すだち,レモンなど)の汁をでき上がった料理にかけたり ,香味野菜(しょうが,にんにく,しそ,みょうが,セロリーなど),香辛料(わさび, 辛子,七味唐辛子など)を使用します.


(3)だしをきかせます.


(4)和え物は食べる直前に味付けします.

(5)肉類,魚,野菜(ねぎ,なすなど)は,焼き料理にしてほどよい焼き目をつけ,焦 げ口の旨味を利用します.


(6)所要量の範囲内で油料埋をじょうずに利用します.炒め物,ムニエルなどの料理に 酸味をプラスするなどの工夫をするとよいでしょう.




カリウム制限がある場合



茄でたり洗うことによりカリウムは減少しますから,生野菜は切ったら水に浸します.ま た下処理として,いも,野菜類は一度たっぷりのお湯で茄でます.果物の場合は,生より も缶詰のほうがカリウムが少ないのでじょうずに利用しましょう.




リン制限がある場合



リンは,魚,肉,卵,大豆,豆類,乳類など,たんぱく質を多く含む食品に含まれるので ,1日の摂取量を守りましょう.多めに含まれているものは1日にいろいろ重複してとら ない,多いものと少ないものを組み合わせるなどの配慮が必要です.なお,種実類,チョ コレート,インスタントコーヒーなど菓子類,嗜好飲料にもリンが多く含まれているもの がありますので,多いものは避けてください




ごはん,パン,めん類


胚芽米,インスタントラーメン,日本そばに多いので避けます.ラーメンは生中華そばを 用い,自家製スープとします.その他の主食,小麦粉,パン粉は量を守ってとるようにし ます.




魚,肉,卵,大豆製品


いずれもリンが多く含まれていますから1日の指示量を守ってください.かに,たこ,鶏 手羽,挽肉,絹ごし豆腐などは少ないですから便用の割合を増やしてもよいでしょう.い わし,わかさぎ,魚佃煮,ハム,ソーセージ,チーズなどには多く含まれていますから避 けます.




いも類,野菜,海藻,きのこ類


いも類,野菜は茄でることにより,リンは10〜30%減少しますから,茄でてから調理 します.海藻はリンは少ないが,カリウムが多いので,カリウム制限のある場合には控え めにします.カリフラワー,ごぼう,オクラ,もやし,えのきたけ,しめじなどには多く 含まれますから多くとらないようにします.




乳飲料


牛乳,ヨーグルトは指示量を守り多くとらないようにします.リン制限の強い場合は,低 リンミルクを使用します.




調昧料


油,バター,砂糖,粉あめ,はちみつ,みりん,ジャム,マーマレード,ショートニング には,リンはほとんど含まれていないので,エネルギー源として不足しないように摂取し ます.ルウの便用はなるべく控え,使用するときは1日1回以内とします.インスタント ポタージュスープ類は避けます.




嗜好飲料


お茶,コーヒー,ココアにはリンは含まれていませんが,インスタントコーヒー,インス タントココアには多く含まれていますから注意します.




菓子類


種実類,卵,牛乳を使用した冷菓類および菓子類にはリンが多く含まれ,常用量の摂取で 100mgを超えますから原則として避けます.南部せんべい,麦こがし,らくがん,チ ョコレート,あんを使用した菓子類,ポテト系スナック菓子,ミルクキャラメルなどにも 多く含まれていますから控えめにします.でんぷん,寒天,ゼラチン,果物,ジャム,砂 糖を主原料とし,小麦粉の少ないものを選ぶとよいでしょう.






左側のフレーム内にmenuが表示されている場合は、
使用しないで下さい。
TOPに戻る