生活習慣病
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急性肝炎
食事療法の基本方針
肝臓は新陳代謝の中心的な役割を果たす器官で,たんぱく質,糖質,脂質の三大栄養素と
,ビタミンや酵素のような微量活性物質の代謝,利用,貯蔵などでもっとも重要な働きを
営んでいます.
栄養の欠陥が肝障害の原因になることはよく知られており,肝臓病の治療
には食事療法がきわめて大きい意義をもっています.
◆発病初期・・・十分な水分の補給を,栄養は果物や輪液で
肝臓病の食事療法の特色は毎日,毎食,いろいろな食品を組み合わせて,適量を規則正し
く食べることです.
しかし,急性肝炎の発病初期で,食欲がなく,吐き気などの消化器症
状が強いときは,脱水にならぬように水分を少量ずつ回数多くとらせて,さらに果物など
でエネルギーを補給したり,ブドウ糖,各種ビタミンなどの輸液が必要です.
この時期に
は,たんぱく質,脂質の消化・吸収・代謝などが障害されるので,ある程度の肝庇護食が
食事療法の基本方針です.
そして,原則的には制限食というよりも栄養価の高い食事を少
量与え,かつ補液をします.
◆回復初期・・・食事量は食欲に応じて.とくに脂質制限は不要
急性期を過ぎて食欲が回復すれば,なるべく栄養価の高い食事を徐々に増やしていくよう
にします.
また,食べられる場合には,消化のよいものを中心に食欲に応じて食べさせて
かまいません.
欧米人は,通常,脂質の多い食事をとっているので,欧米においては一時
期の間,脂質を制限したほうが急性肝炎の経過によい影響を与えるという理由から,脂質
制限食を採用していましたが,その後,脂質を制限することは,かえって肝炎の治癒を遅
らせるということもわかり,あまり強い脂質制限食は行われなくなりました.
わが国でも
最近は,脂質の摂取量が欧米人並みになり,かなり摂取している人もあるようですが,中
高年者がふつうに摂取している程度なら,格別制限するほどのこともありません.
◆黄疸のある場合は脂質制限,重症期はたんぱく質の制限も必要
ただし,黄疸が持続して,胆汁排出がよくない場合には,脂質を制限する必要があります
.
また,重症の肝炎では,栄養素,とくに窒素の耐容量が低下しているため,原則的には
たんぱく質を制限しますが,そのような患者では食欲がほとんどないので,食事療法は問
題外になります.
このような場合は,むしろ糖液とビタミンを主体とした輸液で対応する
必要があります.
◆回復期には過剰のエネルギー摂取や,脂肪肝の出現に注意を
急性肝炎の極期を過ぎて黄疸が消退しはじめると,一般に食欲が回復し,あるいは逆に著
しく亢進してくることがあります.
そのため過剰のエネルギーをとることになり,回復期
には標準体重をオーバ一する場合が起こるので注意が必要です.
さらに,肝機能検査成績
の異常によって,糖液の補給を行っていることもあるため体重の増加が進み,急性肝炎は
全快しても脂肪肝が出現するようなことが起こります.
そこで食欲が回復すれば,標準体
重を考慮しつつ,輸液を中止して,食事療法のみに切りかえる必要があります.栄養所要
量は,個々人の目標体重(標準体重の100〜110%)により算出し,臓器の安静と機
能の温存をはかります.
慢性肝炎
食事療法の基本方針
◆寛解期と増悪期
一般に慢性肝炎は治りにくく,治療は長期にわたります.
この経過中には,自覚症状に乏
しくトランスアミラーゼ(GOT,GPT値)が150KU前後に落ち着いている寛解期
と,黄疸,全身倦怠感,食欲不振など症状を伴う増悪期とがあります.
慢性肝炎で特別な
食事療法が必要とされるのはこの増悪期で,具体的には後述します.
◆寛解期の食事
寛解期をできるだけ維持する食習慣を身につけましょう
慢性肝炎の多くの人は,寛解期に属し,正常人とほぼ同等の生活が可能です.
この慢性寛
解期では特別な食事療法は必要ありませんが,
この時期には別の重要な問題があります.
すなわち,寛解期をできるだけ長く維持する,あるいは病気の進行を抑えるという予防的
観点に立った食生活や,一般的な日常生活の習慣を確立することです.
◆バランスのとれた食事で肝細胞の修復を.偏食や不規期な食習慣は避けます
具体的には,たんぱく質,脂質,糖質,ビタミン,ミネラルが適量入った食事を規則正し
く食ベることです.
あまり食事について神経質になることはありませんが,肝細胞自身の
再生力と修復力に期待しなければなりませんから,偏食と不規則な食習慣は改めなければ
なりません。
極端な高たんぱく質・高エネルギー食と安静は肥満や脂肪肝のもとただ,極
端な高たんぱく質・高エネルギー食や安静は,肥満や糖質代謝異常を生み,脂肪肝の発現
をみることになります.
また,アルコールは肝細胞毒として働くので,断酒をするのが望
ましいでしょう.
◆食事量は目標体重を目安に.たんぱく質は良質のものを
食事量は,体格に合わせて常に目標体重を目安にすることが必要です.
寛解期すなわち,
GOT・GPT値が150KU以下で推移し,あるいは肝組織検査で非活動性の所見を示
す場合には,一般に食欲も良好で自覚症状も乏しい状態にありますから,日本人の平均栄
養摂取量程度でよいでしょう.
たんぱく質についていえば,日本人の食事では個人差が大
きく,肉や卵を多く食べる人,魚中心の人,穀類からたんぱく質をとっている人などさま
ざまですが,要はたんぱく質の質が問題となります.
「急性肝炎」の項でも述べたとおり
,肝臓が悪いと,アミノ酸からたんぱく質を合成する効率が低下し,また余分なアミノ酸
を分解して生じた窒素を無害な尿素にまで合成して排泄する機能も悪くなりますから,健
康なときよりいっそう良質のたんぱく質を摂取する必要があります.
良質のたんぱく質な
ら量が少なくてすみます.
最近,高たんぱく質食は腎臓に負担をかけると考えられ,体重
当り1〜1.3g程度の指示となっています.
脂質はとくに制限する必要はありませんが
,糖尿病や肥満の人では,エネルギーを一定に制限します.
◆増悪期の食裏
糖質を増やし,良質のたんぱく質と消化のよい食品を.腹水・浮腫のあるときは塩分を
◆制眼
増悪期すなわち,黄疽,全身倦怠感,食欲不振などの自覚症状があり,GOT・GPTが
300KU以上を示して,急性増悪期が考えられたり,肝組織検査で活動性の所見を示す
場合には,急性肝炎初期に準じて糖質を増やし,良質のたんぱく質で消化のよいものを中
心に脂質を制限した食事にします.
ときに腹水や浮腫が認められる場合もありますから,
このようなときは,塩分を制限します.食欲回復とともに本来の食事に戻していきます.
急性肝炎の調理にあたっての留意点
急性肝炎の初期から極期までは食欲がないので,食べる人の好みや,食習慣などを十分に
考慮して,季節の食品をじょうずに使って調理をすることが大切です.
盛り付けも食欲を
そそるように,色彩や形に気を配って,味覚を促すように工夫する必要があります.
◆食欲がないときの食事の工夫
@汁(スープ)をうまく利用します・・かゆ,くず湯,ポタージュ,野菜スープ,煮めん
A酸味・香味を利用します・・梅干し,酢の物,ゆず,レモン,木の芽
B温かい料理は温かく,または逆に冷たい料理は冷たくして食べます・・茶碗蒸し,雑炊
,ゼリー
C主食に変化をもたせます・・ちらしずし,おむすび,サンドイッチ
D牛乳と糖質を組み含わせます・・パンプディング,ビスケット,カステラ
◆じょうずな食べ方の工夫
@1日4〜5回に分けて少量ずつ食べます.
A食べたいもので食欲を起こさせます.
B口あたりのよいものにします.
C脂質は乳化されたバター,マヨネーズから摂取します.
慢性肝炎の調理にあたっての留意点
療養期間が長期に及ぶため,運動不足になったり,肥満傾向になります.
そのため,摂取
エネルギーは,標準体重が維持される範囲内にとどめてコントロールする必要があります
.
また,慢性肝炎の食事療法は,けっして一律なものではなく,これまで述べた基本線を
守り,あとは一人一人の状態に合わせた食事内容にし,食べやすい調理法を工夫すること
が大切です.
@調理法や材料をいろいろ変えて,食欲が出るように季節の食品を生かし,薄味で調理す
るように心がけます.
A香辛料をうまく利用して食欲増進をはかります,
B長い療養生活の中の食事療法ですから,毎日の食事には,とくによいだしを使うなどお
いしい味付けを工夫し,味覚をそそるような盛り付けをします.
左側のフレーム内にmenuが表示されている場合は、
使用しないで下さい。

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