ANTLERS Diary Ant-mark



1999.12.19  2nd.ステージ 第14節 


名古屋グランパス vs
       鹿島アントラーズ

     Last Battle Of 90's
        





鹿島の90年代最後の戦いは、ロスタイムでの2失点というあまりにもあっけない幕切れで
終わってしまった。4年ぶりの無冠。しかし鹿島アントラーズは何も終わったわけでは
ない。また新しいチームとして、ミレニアムを迎えることになるだけだ。

この試合、試合の結果は2-1で、終盤に逆転という情けない状態になってしまったが、相
手の能力の高さもあり、かなり見応えのあるものだった。試合の結果に反してそれほど
落ち込まなかったのは、来年も指揮をする監督がこの采配というわけではなく、来年はい
ない選手がプレーしてこの結果だという事、そして何よりもこの試合で見せた個々のパフ
ォーマンスに未来を感じたからだ。

この試合のMVPは、なんといっても中田浩二だろう。冬になると調子がいいのか。この試
合の中田は、まさに鹿島の中盤を支えるボランチだった。試合前は、攻撃が大好きでフ
リーマンなダブルコウジで、また攻撃ばかりに走るのだろうとおもっていた。

しかし試合が始まってみれば、前で激しく動き、攻撃のアクセントになる熊谷浩二は変
わっていないが、中田は決して自分のポジションを見失わず、熊谷が攻撃的な分、しっ
かりと後ろで危険の目を摘んでいた。

グランパスの再三の中央からの攻撃をしっかりとスタンデングタックルでカット。危な
いという時に何時の間にかそこにいるインターセプト。中田のフラットスリーで見せた
守備がボランチというフィールドの中央で展開されていた。

これであの精度の高いロングパスと、ここぞという時に見せる守備の放棄「俺が上がっ
てくるby高校選手権決勝」による豪快なドリブルがでてくれば、まさに和製ファルカン。
優雅で大型なボランチが鹿島にも誕生する。そしてその日は遠くないはずだ。

中田が活躍した。そして活躍できなかったが平瀬にも凄さを感じた。立て続けにチャン
スを外し、結局敗戦の主たる原因となったが、その決定的なチャンスを作る姿は、まさ
に才能の開花という感じだった。高校選手権という低いレベルで見せた才能が、日本の
トップチーム同士の戦いでも見せることが出来たのだ。

2度にわたるスルーパスからの斬れ込み。マジのスルーパスには、RoRoコンビで見せた
ロマーリオのロナウドを生かそうとする意思を感じたが、それ以上に平瀬の動き、ゴー
ルへのビジョン、そして何よりもスピードに魅力を感じた。

決定力が低く正確なボールタッチが劣るのはU23代表でも証明済み。得点という結果が
出なかったのは対戦相手のレベルが違い、中盤が創造するチャンスの数が違うからだ。
平瀬は代表だけで活躍するわけではない。彼がスタメンで常時出場するようになり、
修羅場を潜り抜け、今年得たような自信を再び得るようなチャンスがあれば、さらに
いい選手になるだろう。

鹿島の選手は高い能力を持つ。それだけは確かだ。先制点を奪った名良橋の見事なスラ
イディングシュートとオーバーラップ。秋田の落ち着きを増した守備。高桑のみならず
ベンチの曽ヶ端までも代表のGK選抜にまで選ばれている。増田、柳沢、ビスやんについ
てはいうまでもない。今期は育児疲れの見えた相馬も来年は自分を取り戻す。熊谷は鹿
島のボランチとして、そして日本を代表する攻撃的なボランチとして来年ブレイクする
だろう。

後はその高い能力を限界まで発揮できるメンタルタフネスと、コンビネーション、そし
て厳しい生存競争があればいい。今年失ったもの。それはジョルジの魂であり、鍛えぬ
かれたフィジカルであり、紅白戦での厳しい戦いだろう。

鹿島には来年野沢という将来のエースと嘱望されている10番が入団する。すでにジーコ
とともにブラジルのリオクラブで大会に出場中という話もある。それだけではなく、ユ
ースからも高校生からも何人かの優秀な選手も加入する。

本山、小笠原らもいる。今年を怪我で棒にふった金古もいる。去年ユースカップを優勝
したルーキーも一年間、トップのキツイ練習で鍛えられている。長谷川、本田らベテラン
も来年には復活する。恐らく新監督は一人か二人のブラジル選手とともにくるだろう。
鹿島は現在でもタレントの宝庫なのだ。このようなチームは磐田と名古屋、清水と鹿島
くらいのものだ。

タレントを溢れさせておき、鍛え上げるというのは昔のベルディもそうだった。ベルデ
ィと鹿島が違うのは、弱体化を覚悟しつつ世代交代を実行している事だ。最後にはベテ
ランしか残らなかったベルディとは違う。

今年強い鹿島ではなく、10年強い鹿島のため、今年はあったのかもしれない。(いくつか
の不運で、結果を逃したという事はあるが....)来年も同じような年かもしれない。し
かし来年はアジアクラブ選手権がある。磐田と三星水原と鹿島、そしてイランとサウジ
の戦いだろう。そこに石にもかじりついて勝ち、勝者としての自信を取り戻そう。

そして、再来年スタジアムの完成と同時に、再び鹿島スタジアムにチャンピオンフラッ
グをなびかせたい。


鹿島の創世記と宿願の達成を目指したナインティーズは終了した。


鹿島のアジア制覇と、新しい黄金期がダブルオーと供に迎えられますように。








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