ANTLERS Diary Ant-mark



1999.09.04 2nd.ステージ 第 6節 


アビスパ福岡 vs
       鹿島アントラーズ

     ザ・ロードバック
        





今日のメインイベントは、後半17分にやってきた。それまでの本山がマジに軽く叩くと
見せておいて、相手DF二人の間を落した素晴らしいスルーパスから柳沢が決めた先取
点も、いまだにショックから覚めていなく、神懸り的なセーブを続ける高桑も、停滞し
きった室井のパフォーマンスも全ては序曲にすぎなかった。

中田の素晴らしいジャンプ力と余裕のあるヘディングによる勝越し点も、そして福岡の
富山では見られなかった素晴らしいファイトも全ては盛上げるためのものでしかなかっ
た。

ボールを呼込む事が出来なくてボールが来なければ消えている本山に代えて、彼がフィ
ールドに進んできた。1999年9月4日。2−2。後半17分。博多の森競技場。

熊谷がフィールドに帰ってきた。

彼を待望んでいたのは私だけではないだろう。サッカーダイジェスト誌は99開幕前の
展望記事で、去年のチヤンピオンチームを捕まえて「熊谷の負傷がなければ鹿島はも
っと楽に優勝していたに違いない」と最大級の評価を与えていた。今週のSDが楽し
みだ。

熊谷は一回り大きな上半身と、変な髪型で帰ってきた。一年半近くの間を経て帰って
きた。もう彼にはこの言葉は使いたくない。ずっと居続けて欲しい。

ジーコは彼を評して「熊谷はポジショニングを知っている選手だ」と言った。熊谷の
動きを見て、さすがジーコだと思う。本山はまだ自分の位置にボールが来ないと輝け
ない。熊谷は、ボールを持つと自分が輝ける位置に、スルスルっと上がる事が出来る。

この試合、阿部、中田とボランチが左利のこともあり、自然と左、左と片寄ってしま
う。本来ならば右でバランスをとるびすやんも今日は磐田戦のうごきが見えず後ろぎみ。
おかげで、FWへのフォローが少ない。特に右からの攻撃が少なく、内藤の上りも引出
せない。

そこへ熊谷の登場。もっとコンパクトに!とジーコの指示を全員に伝える。熊谷自身は
守備については、危険なフェルナンドにぴったりとマーク。

そして攻撃となると、ボールを要求するため、スルスルッと近づき、持つやいなやドリ
ブルを開始する。本山や増田とは違い、取れそうなドリブル。しかしボールは取れてい
ない。熊谷は自分の間合を持っていて、それでキープするだけでなく、ドンドンと前へ
飛込んでくる。

熊谷は決してしっかりとした守備を行うディフェンシブハーフではない。ジョルジーニョ
のような素晴らしいボランチとも違う。守備も出来る、ドリブルもパスも攻撃センスも
ある。立派なミッドフィルダーなのだ。本田、ビス、増田、ジョルジの中盤がきちんと
仕事が分担された中盤なら、熊谷、中田、小笠原(阿部に交代)で構成された中盤は全て
の人間が何でも出来る、万能型の中盤だ。ここにレオでもいればポルトガルのような中盤
が出来るだろう。

この試合では、熊谷はジーコの指示か内藤を大きく右サイドに上がらせ、自身は後ろを
カバーする体制でフェルナンドをカバーしていた。

そして後半32分。ポッカリと空いた右サイド。真空空間を埋めるように熊谷がフリーで
ボールを吸付ける。フリーのスペースの察知と素早い決断とフリーランニング。その後
のセンタリングは相手に当ててしまうがCKをゲット。

そのCK。ビスの蹴ったボールは、捲くように入ってきて、マジがブロックする事で
出来たスペースに秋田が飛込んでヘディングシュート。ゴォォォォーーール。3−2。
鹿島勝越し。アビスパ相手に、という話もあるが、少なくともこのホームでの福岡は
強かった。彼らは去年の経験を経て、ホームというものをしったのかもしれない。

「熊谷はポジショニングを知っている選手」そして、ドリブルで相手に取られない柔ら
かさと攻撃での勢いを持っている。まだミスばかりで完全ではない。しかし熊谷のロー
ドバックは始っている。あの熊谷が帰ってきたと確信することが出来た試合だった。

熊谷ばかりを書いてしまった。しかし一年書けなかったのだからこの試合ぐらいはいい
だろう。



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